tag:blogger.com,1999:blog-84500717037019822202024-03-14T08:53:02.875+09:00Space of ishtaristishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.comBlogger29125tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-69371179749732406862019-06-26T20:56:00.001+09:002019-06-26T21:17:19.643+09:00政権交代に必要なこと ―書評 三春充希『武器としての世論調査』<h5>
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著者の紹介</h2>
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三春充希さん(Twitter ID <a href="https://twitter.com/miraisyakai?lang=ja">@miraisyakai</a>)は、内閣支持率や国政選挙の分析を行う「未来選挙プロジェクト」を一人で運営しています。そのフォロワー数は14万人を越え、与野党を問わず多くの政治家からも注目される存在です。<br />
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その三春さんの初めての著書『武器としての世論調査―社会をとらえ、未来を変える』が、ちくま新書から出版されました。この本の、世論調査の基礎知識や豊富なデータ・深い分析などについては、他の方の書評に譲ることにします。本ブログでは、あえて「裏側」から、おそらくあまり注目されないであろう側面を取り上げます。<br />
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データがもたらす社会の視野</h2>
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本書は豊富なデータとグラフで、政治をめぐる日本社会の状況を語ります。たとえば、口絵の「野党列島と与党列島」は、野党より与党が支持されている地域が西日本に集中し、東日本では野党の方が支持されているということを、見事な方法で可視化しています。<br />
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こうした様々な地図や推移グラフを見ていると、社会を見渡す視界が得られたかのような気分になります。確かに社会の実態を正しく知ること、それは政策決定において最も重要なことの1つです。<br />
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昨今、政府統計をめぐる改竄が明らかになり、政府発表は信用できないとして日銀が独自のGDPを発表するほどの事態になっています。もし、政府の経済統計がすべてデタラメなら、どうやってアベノミクスが成功したか失敗したかを判断すれば良いのでしょうか。その意味で、データを重んじる本書の存在は、安倍政権の「首相にとって都合が悪いことはそもそも存在しなかったことにする」体質に対する、強烈なカウンターパンチとも言えるでしょう。<br />
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世論調査の向こう側にあるもの</h2>
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しかし、私があえて取り上げたいのは、「世論調査の限界」と題されたわずか10ページほどの章です。そこで、世論調査の結果は世論そのものではない、と著者は強調します。「世論をになうのはあくまで人間」であって、そのひとりひとりが、たった1つのかけがいのない人生を背負って生きています。その経験や思いが深ければ深いほど、簡単にはその思いを数字に表せない。世論調査とは、その「世論」という実体に、一方向から光を当てた影のようなものです。<br />
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世論を理解するということは、世論調査の数字の向こう側にある人生経験・社会経験を理解するということなのです。そのためには、世論調査の限界を知り、他の統計や知見と照らし合わせて、その背後にある、ひとりひとりが営んでいる具体的な生活と経験を洞察する必要があります。データの向こう側にある「生きた人間」を洞察する、その姿勢こそが世論を生かして行動する際に決定的に重要なのです。<br />
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著者が言うように、世論調査では「量的な側面だけが強調され、その量を変えるための安直な方法が求められがち」です。しかしそのとき、その世論を担っているのが個々の人間であることを忘れてしまっていることが多い。しかし、そうした安易な「プロモーション」が世論を動かすことはありえません。<br />
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私の責任で、1つだけ具体例を挙げます。数年前の国政選挙時に、「選挙に行こうよ」というキャンペーンがあったことを記憶している人も多いと思います。しかし、その効果はほとんど認められませんでした。それは、この社会の何を変えるのか具体的な政策も掲げず、安直に投票率だけを上げようとしたからでしょう。そのプロモーションを行った人たちは、「人が選挙に行くのは投票率を上げるためではなく、自分の生活や社会が変わることを、候補者・政党に期待するからだ」という当たり前のことを忘れていたのです。<br />
<br />
世論調査をきちんと調べれば、「無党派層の動向こそ政権交代の鍵である」という認識を得ることができます。その認識それ自体は正しいものです。しかし、それで自身が社会に対して俯瞰した視点を得た気分になって、「無知蒙昧な無党派層を啓蒙してやろう」と行動するとき、その政党や市民団体は広範な支持を得ることは決してありえません。ごく単純に言って、「あなたは無知な人間だ」という態度を取る人間に、誰も耳を傾けたいと思わないからです。これではその人たちは孤立し、民主主義の選挙では負け続けます。<br />
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認識の限界としての無党派層</h2>
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では、どうすれば良いのでしょうか。<br />
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本書第六章「時代を生きる人々」で、著者は無党派層の分析に取り組みます。世論調査の限界を意識しつつ、それでもなお、無党派層を様々な角度から理解しようとするのです。<br />
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私の責任であえて大胆に言い換えてみます。多くのリベラルは無党派層を「政治に関心がなく政治的意見を持たない人々である」と断定し、批判してきました。それに対して、著者は「無党派層とは、私たち自身の認識や調査、そして選挙制度の限界である」と視点を転換した。「無党派層」の問題の本質は「もの言わぬ人々」にあるのではなく、「彼らの言葉を聞き取ろうとしない私たち」にあるのだと、いわば「コペルニクス的転回」を行ったのです。<br />
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具体的な分析内容を紹介します。まず著者は、現在の年代構成では、そもそも若い世代の投票行動が選挙結果に反映されにくい事実をデータに基づいて指摘します。<br />
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特に興味深いのは、2014年に行われた「戦後70年に関する意識調査」です。ここでは、戦後の日本に大きな影響を与えた3つの出来事を選択させています。この中で、「バブル経済とその崩壊」を答えた人は、80代では10%代後半ですが、20代から40代では50%を超えているということです。また、バブル崩壊よりは低いですが、「リーマンショック」と答えた人が20代・30代で20%もいます。明らかに、50代~60代以上の人と、それ以下の世代の人で、経済の認識に大きな断絶があるのです。<br />
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また、世代別の政党支持率を見ると、2018年の衆議院選挙比例区の年代別得票率では、10代・20代では自民党が多いのに対して、立憲民主党は60代が中心であることがわかります。しかし、実際のところ、若い世代で自民党支持者が多いわけではありません。若い世代では与党も野党も支持を落としているが、若い世代の野党支持がほぼ壊滅状態なのです。<br />
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しかし、政権交代が起きた2009年では、そうではありませんでした。20代から80代までまんべんなく、20%以上の得票率を取っていたのです。ということは、そのときに民主党に投票した若い世代の相当部分の人が、2012年の選挙以降、おそらく何らかの失望と共に、民主党の支持から離れ、多くは無党派層になったことを示唆しています。<br />
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著者が言うとおり、「政治がある世代を大事にしなければ、その世代が政治を信頼しなくなる」のは当然です。無党派層が政治に関心がなかったのではない、むしろ政治の方が若い世代に関心を持たず、結果的に無党派層に追いやってしまった。著者の分析は、そのことを示唆しています。投票率の低さを嘆いたり、投票率を安易に上げるべく啓蒙しようとする前に、政治に携わる側がなすべきことがあるはずなのです。<br />
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政権交代のために必要な条件</h2>
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『武器としての世論調査』には、政権交代のために必要なエッセンスが詰まっています。世論調査や社会調査は、人間を理解し、社会を理解するための最大のツールです。<br />
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しかしより大切なことは、世論調査の向こうに「人間」がいる、という事実を意識し続けることです。そして、様々な統計調査を通じて、事実を尊重しつつも、その向こう側の「人間」を理解しようとすること。彼らの声に耳を傾けること。そして一人一人と向かい合い、大切にすることです。<br />
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そうして、リベラルが目指す社会を身をもって示していく。それこそが、人権が尊重される社会を創り上げる「不断の努力」ではないでしょうか。その、他者と事実を尊重する態度こそが、安倍政権との本当の対立軸のはずです。政権交代は、あくまでその過程にしかありえません。<br />
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本書はその事を、膨大なデータと深い分析、そして調査や認識の限界を常に意識する節度を持って示しています。その意味で本書は、政治家や政治に関心がある市民すべてに、繰り返し読んでもらいたい。そして、社会科学を研究するすべての研究者に長く読み継がれてほしい。私はそう心から願っています。<br />
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最後に</h2>
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野党の政治家への呼びかけです。本気で政権交代を行いたいなら、この本で予備的に提示された調査プログラムを採用するべきです。
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</iframe>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-8846802840371778532018-06-05T01:27:00.001+09:002018-06-05T01:34:05.955+09:00働き方改革は、日本経済の息の根を止めるか?―ブラック企業合法化の末路―<h3>ブラック企業が合法化される</h3><p>5月31日の衆院本会議で、「働き方改革法案」が可決されました。安倍首相が本国会の目玉と位置づけるこの法案が通れば、労働基準法は骨抜きにされ、ブラック企業が合法化されることになります。</p>
<p>「ブラック企業合法化」というと驚かれるかもしれません。しかし、働き方改革法案という名の労働基準法改正案の原文を読んでもらえれば理解できます。</p>
<blockquote><p>第四十一条の二 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、<u>この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない</u>。</p></blockquote>
<p>これは「高度プロフェッショナル制度」の条文です。この法案には、成果に応じた働き方などといった文言は一切ありません。一定の条件を満たす労働者を、労働基準法の保護から外すというのがその本質なのです。そう整理すると、「ブラック企業合法化法案」がもっとも的を射ていることがわかってもらえると思います。</p><p><br>
この法案は当初、年収1075万円以上の人間にのみ適用されることになっています。しかし第一次安倍政権の頃から、財界の主張は年収400万円以上への適用拡大でした。そしてこの年収要件は省令によって―すなわち選挙によって選ばれた議員による国会審議を通すことなく―変更可能です。</p>
<p>財界の要求通り、高度プロフェッショナル制度の適用が拡大された将来の日本社会では、ブラック企業がいまよりもずっと蔓延することになるでしょう。</p><p>労働規制の弱体化に繋がる可能性が高い労働基準監督署の民間委託が今年8月から始まること。労働時間の短縮に繋がるかのようにデータを捏造し、その事実が発覚したのに働き方改革法案をなお押し通そうとする安倍政権の姿勢。それらを見る限り、政策としてブラック企業の合法化を狙っていることは疑いありません。100時間ぶっ続けで働かされるような会社でも違法性がなければ、訴える先がない。そんな「美しい時代」がひそかに幕を開けようとしているのです。</p>
<h3>日本経済を殺すのは誰か</h3><p>もちろん、労働者として権利どころか生命を脅かす危険なものであることは、これまでも十分に指摘されてきました。しかし、この制度によってどのようなマクロ経済的な効果があるのか、その議論はほとんどなされていません。<br>
</p><p>その背景には、労働生産性と経済成長が直結するという、日本人特有の固定観念があります。言い換えれば、働けば働くほど経済が発展すると、右から左まで信じ込んでしまっている。だから、「働き方改革」による生産性向上は必要であると、なんとなく思ってしまう。</p><p>逆にこのロジックに乗っかってしまったリベラル側の「知識人」は、これ以上の労働強化を拒否するために、「経済成長を諦めましょう」という主張をしてしまう。例えば藤田孝典は次のように<a href="https://twitter.com/fujitatakanori/status/1001872920480628737">ツイート</a>しています。</p><blockquote><p>これやると経済成長する、あれやると経済成長する、とかもううんざり。何やっても30年近く経済成長していないし、これから先も基本的には成長しないって。これ以上経済成長を求めれば、長時間労働でさらに人が死ぬよ。</p></blockquote>
<p>しかし本当の因果関係は「日本人が働かされすぎだから、経済停滞してきた」。私が著書<a href="https://www.amazon.co.jp/gp/product/B076DQQRGV/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B076DQQRGV&linkCode=as2&tag=irisheyes-22&linkId=f387599aa1d99798a8bcbfae47fbedec">『人権の経済システムへ』</a>で論証したように、過去二十年間の日本経済は、「過労デフレ」の時代だったのです。</p><p>年間30兆円近くサービス残業の被害総額、ブラック企業による不当なダンピング、非正規雇用の増加、官製ワーキングプアなどによって給与総額・労働分配率が抑えられ、結果、消費者にお金が回らない。そうすれば企業の売上も伸びようがなく、経済成長全体が抑えられる。お金を持っていない人にモノを売りつけることはできないのですから、考えてみればこれほど当たり前の話はありません。</p><p><br>
そう整理すると、政府が今「働き方改革」の名の下でやろうとしていることが、どれほど日本経済にとって危険なことか、簡単に理解できます。安倍政権は、企業が法的に正当な賃金さえ払っていない現状を放置しながら、「商品が売れないデフレ経済状況は、労働者の働き方が非効率なせいに違いない」と考え、労働をいっそう強化し、不払い労働を合法化する法案を押し通そうとしているのです。労働者から消費に使うお金も時間も奪っておいて、それでこそ経済が成長すると政府は信じているのです。</p>
<p>働き方改革法案は、日本経済の滅びの道です。経済が死ねば、社会保障制度も教育制度も破綻します。こどもに満足な教育を与えることはおろか、育てることすらできない。日本国民の命と生活を犠牲にし、日本を滅ぼそうとしているのはいったい誰なのか。いま、私たちの生活と労働が苦しいのは誰の責任なのか。いまこそ現実に即して考えなおすべきときではないでしょうか。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-79839302897349334562018-04-10T01:44:00.001+09:002018-04-10T02:54:54.912+09:00森友問題が内閣総辞職に値する理由―人権を擁護しない首相は要らない―<h3>
森友は些末な問題か</h3><p><br>
森友学園事件について、「野党は些末な問題を追及している」としばしば批判されます。30%前半より下がらない政権支持率をみると、モリカケに辟易している人が相当いるのは事実でしょう。<br>
しかし、喧噪の中で、最も大事なことが忘れられているような気が、私にはしてなりません。それは、子どもたちの人権です。</p><p>
森友学園は、陰惨な児童虐待を行い、教育勅語を暗唱させる超国家主義教育を行う塚本幼稚園を運営していました。その学校法人の名誉校長に首相夫人が就任し、安倍首相が「しつけに共鳴」と国会で答弁した。土地取引に関与していなくても、本来それだけで内閣総辞職に値するはずです。</p><p><br>
想像してみて下さい。仮に、ドイツのメルケル首相が極秘裏にネオナチ小学校を支援していたり、イヴァンカ・トランプがKKKの教育機関の名誉校長になっていたとしたら。数十万人の怒号が議事堂を囲み、一瞬で政権が吹っ飛んでいることは疑いないでしょう。それが国際標準の、正常な人権感覚というものです。</p><p>海外報道では、ultra-nationalistのMoritomo School をPM Abeが支援していたと必ず書かれますが(たとえば<a href="https://www.ft.com/content/44bc98c0-25be-11e8-b27e-cc62a39d57a0">Financial Times</a>)、そこでは安倍政権と、政権を許している日本国民の人権感覚こそが疑問視されています。</p><p><br>
さらに森友学園は、安倍首相周辺の「一群の人たち」にとって、彼らが目指す公教育の方向性を指し示している可能性も十分にあります。森友学園事件で問われているのは、日本の未来を担う子供たちに対してどのような教育を行うのかという、その国家の根幹にかかわる問題なのです。</p><hr>
<h3>幼児虐待と教育勅語の間</h3><p>
2017年2月から3月にかけて、森友学園の異常な教育がメディアで報道され、首相夫妻が支援していたという事実もまた明るみになりました。しかしながら、政権支持率は5%程度下落した程度で、50%代前半と高止まりしていました(<a href="https://twitter.com/miraisyakai/status/955764846825431040">はる 未来社会プロジェクト</a>)。実際、教育勅語について、「私学がどのような教育をしようと自由だ」という声が、いわゆる右派だけではなく、リベラル派市民からも聞かれました。</p><p><br>
しかし、塚本幼稚園の幼児虐待は、教育勅語と切っても切り離せない問題です。<br>
</p><p>整理しましょう。塚本幼稚園では、決まった時間にしかトイレに行かせない(週刊新潮2017年3月16日号)、お弁当の中身や鞄を一方的に捨てる、おもらししたうんちをパンツでくるんで鞄に入れて持ち帰らせる(日刊ゲンダイ 同年2月22日)、など数々の虐待報道がありました。</p><p>
こうした報道がありながら、安倍首相が「しつけ等をしっかりしているところに共鳴した」(参院予算委員会 同年2月28日)と驚くべき答弁をしています。「しつけ」という言葉で、幼児虐待を正当化したとも取れる発言を、国会の場で行ったのです。<br>
</p><p>もちろん、安倍夫妻が虐待の実態について知らなかった可能性も十分にあります。しかし、結果として塚本幼稚園の広告塔として安倍夫妻が虐待に荷担してしまった、その道義的責任は免れられないのではないでしょうか。<br>
</p><p>その道義的責任を共産党の小池晃に問われ、安倍晋三は次のように答弁しています。</p><blockquote><p>
教育方針については今私は申し上げる立場にはないわけでありますから、認可をされているわけでありますから、言わば認可の責任は、これは言わば認可した大阪府があるということではないかと思いますし、教育内容について、私が私学の教育内容について云々する、 また意見を申し上げる立場にはないわけであります。(3月1日 参院予算委員会)</p></blockquote>
<p>安倍総理の、人権に対する無感覚さと無責任さが如実にわかる答弁だと思います。<br>
しかし、なぜ安倍首相や、その周辺の人たちは、塚本幼稚園に好意的だったのでしょうか。それは、教育勅語と無関係ではないはずです。<br>
</p><p><br></p><p>教育勅語は親孝行や夫婦仲良くなど、たくさん良いことが書いてあると擁護する人がいますが、そんな一般論なら教育勅語に教えてもらう必要はありません。<br>
</p><p>教育勅語は、「朕惟フニ」から始まり、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」という文言にその本質が集約されています。つまり、「万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ」(文部省による正式な翻訳)と天皇が臣民に命じている、それが教育勅語の精神です。<br>
</p><p>そう整理すると、塚本幼稚園が行った教育の問題点がわかるはずです。年端もいかない幼稚園児に、「お国のために死になさい」と教えた。その幼児教育を、あろうことか、わが国の首相夫妻が支援した。<br>
</p><p>「お国のために死になさい」と国家が教え込むことは、人権侵害の最たるものです。子供の命は国家のために存在する―そう信じるからこそ、塚本幼稚園は躾のつもりで虐待を行い、安倍夫妻はそれを黙認したのではないでしょうか。幼児虐待と、教育勅語暗唱は明らかに地続きなのです。</p>
<h3>公民教育から基本的人権が削除される</h3><p>
さらに、森友学園の人権侵害教育が、今後の日本の公教育のモデルになっているのではないかという懸念があります。<br>
</p><p>これは、大変残念ながら、杞憂ではなさそうです。NHK解説アーカイブスの「<a href="http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/293696.html">新高学習指導要領の問題点</a>」を要約します。</p><ul><li>
2022年度から高等学校と特別支援学校高等部の指導要領が施行される。</li><li>「現代社会」が廃止される一方、「公共」が必修科目として新設される。</li><li>「公共」の目標として、愛国心をもつことが明記されている。</li><li>「公共」から、「基本的人権の保障」と「平和主義」が抹消されている。</li></ul>
<p>基本的人権は、少なくとも民主主義国家では、国家と社会の基本です。公教育から基本的人権を削除し、国家への献身を教えこむ超国家主義ultra-nationalismを志向する限り、日本は民主主義国家とも先進国と見なされなくなるでしょう。それが、昨今の日本の外交的孤立の遠因だと思われます。</p>
<h3>安倍周辺が目指す「人権」抹消</h3><p>
森友学園の支援、そして公共教育からの基本的人権の抹消。それらは、安倍首相が民主主義とは別の形の国を目指しているということを示唆していないでしょうか。</p>
<p>安倍首相のブレーンと呼ばれる人間に、八木秀次・高崎大学助教授がいます。その著書『反「人権」宣言』は、次のような内容です。<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4480058982/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_Oo5YAbTD6J8YE">https://www.amazon.co.jp/dp/4480058982/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_Oo5YAbTD6J8YE</a></p>
<blockquote><p>王は神を追放し、人はその王を、「人権」の名のもとに排除した。それは「人権」が、民族や宗教、国家すらも超えた、普遍的なものであると考えられたからである。その結果、「人権」に異を唱えるだけで差別主義とされかねない空気が広がり、私たちの日常生活は様々な混乱に見舞われている。</p></blockquote>
<p> 人権に異を唱えるだけで差別主義とされかねない、とはさっぱり理解が困難ですが、少なくとも彼にとって「差別」は悪だが、人権の否定は悪ではないことだけは汲み取れます。差別がダメなのは、人権侵害だからであるという常識は、この人間には通用しなさそうです。</p>
<p>数ある傍証の中から、もう一つだけ挙げておきます。2012年5月10日、安倍晋三が会長をつとめる創生「日本」の会合で、「国民主権、基本的人権、平和主義の三つをなくさなければ、本当の自立自主憲法にならない」との発言が大喝采を浴びました。</p><p><br></p><iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/zYHLPPV30xk" frameborder="0" allowfullscreen="" allow="autoplay; encrypted-media"></iframe>
<p>発言者は長勢甚遠、第一次安倍政権時の法務大臣です。出席者の中に安倍晋三の姿は確認されていますが、この発言に対して拍手をしたのかどうかは定かではありません。</p>
<h3>憲法に違背する安倍晋三に、総理大臣の資格はない</h3><p>
このように見ていくと、安倍首相とその周辺が、基本的人権をターゲットにしていることは明白です。国家の仕組みから基本的人権を抹消すること、それが安倍やその周辺の日本会議人脈の狙いでしょう。<br>
森友学園事件では、「人間のための国家」なのか、「国家のための人間」なのかが問われるべきだったのです。<br>
</p><p>そして、この「国家のための人間」という超国家主義の暴走こそ、安倍晋三が「みっともない憲法」と呼んだ日本国憲法が抑止しようとした当のものです。だからこそ1948年、衆参両院は、教育勅語の排除と無効を決議したのです。</p><p>いまこそ日本国憲法を読み直すべき時です。</p>
<blockquote><p>(日本国民は)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。(日本国憲法前文)</p></blockquote>
<p>本来、政府は国民による、国民のための存在である。政府が暴走し惨禍を巻き起こし、我が国と他国民の人権を侵害するにいたった。その事実を反省し、基本的人権と平和を守るために、国民主権を宣言する。―これが日本国憲法の論理構造です。</p>
<p>日本国憲法の三大原則、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の中で、最も根幹に位置するのが基本的人権であり、それは「侵すことのできない永久の権利」(第11条)です。</p><p>
ですが、安倍首相とそれに連なる人脈は、侵してはならない私たち日本国民の権利を剥奪しようとしています。安倍首相は、幼児虐待を行い、国家のために死ぬべきと教える幼稚園を、国会という国権の最高機関において正当化し擁護した。これは明らかに日本国憲法に違反しています。<br>
</p><p>日本国憲法第99条は、国務大臣の憲法尊重擁護義務を定めています。</p>
<blockquote><p>天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。</p></blockquote>
<p>この条文の裏を返せば(対偶を取れば)、憲法を尊重し擁護する義務を負わない人間は、国務大臣ではないということになります。基本的人権という侵すべからざる至上の権利を擁護しようとしない安倍晋三は、もはや国務大臣である資格がない。日本国憲法を厳密に解釈するならば、安倍晋三がどれほどの権力者であろうと、彼がいま行使している権力は、法的には正統化することのできない私権にすぎないのです。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-69153434099210053062017-12-02T21:27:00.001+09:002017-12-02T21:27:13.565+09:00レヴィナスの言語論・ウィトゲンシュタインの隔時性―二つの<語りえぬもの>をめぐって―<p>15年ほどに書いた、レヴィナス哲学に関する未発表の論文を公開します。自分が書いた 文章の中で、個人的に最も気に入っているものです。</p><hr><a name='more'></a><p><br></p><h3>「存在するとは別の仕方で」とはいかなることか</h3><p>後期レヴィナスの主著『存在するとは別の仕方で あるいは存在することの彼方へ』<sup>1</sup>は、謎めいた書き出しではじまる。</p><blockquote><p>超越に何らかの意味があるとしても、その意味するところは、存在するという出来事──存在性──存在することが、存在とは他なるものへと過ぎ超すという事態をおいてほかにありえない<sup>2</sup>。</p></blockquote><p>だが、直後にレヴィナスも問うように、そもそも「存在とは他なるものとは一体いかなるものなのか」。そして他なるものへの超越──「存在するとは別の仕方で」とは、いかなる事態を指すのだろうか。「存在とは他なるもの」、それは<他者>である。超越あるいは「存在するとは別の仕方で」は、<他者>に対する<私>の関係性であると考えて差し支えない。だが、そのように言い換えたところで、謎が解消されるわけではない。そして、次の警句は、問いの深刻さをいっそう大きくする。</p><blockquote><p>別の仕方で存在することではなく、存在するとは別の仕方で。それは存在しないことでもない。存在と存在しないことが相互に証明し合ってつむぎ出す思弁的弁証法でさえ、あくまで存在を規定するものにとどまる。存在を排斥しようとつとめる否定性も、存在を排斥したとたん、存在のうちに没してしまう<sup>3</sup>。</p></blockquote><p>「存在するとは別の仕方で」は、決して道徳や当為ではない。もしそれが何か我々が「なすべき」ことを語っているのならば、それは「別の仕方で存在すること」になるだろう。それだけではなく、「存在するとは別の仕方で」は、如何なる意味においても、存在論でも否定神学でもありえない。</p><p>だが、もしレヴィナスが主張するとおりならば、我々には彼の言葉を有意味なものとして理解することは、不可能なのではなかろうか。彼が言うように、「存在を排斥しようと努める否定性も、存在を排斥したとたん、存在のうちに没してしまう」のだ。事実、現存するほとんどの「レヴィナス解釈」は、レヴィナスが通常の意味における「倫理」を説いているか、あるいは新たな「存在論」を提示していると見なしている。</p><p><br></p><p>一例だけ挙げよう。熊野純彦の『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』は、レヴィナスの「存在論的解釈」の典型であると考えることができるだろう。レヴィナスにおいて、<他者>との関係性は、「隔時性」diachronie という非常に特異な時間概念として、示されている。隔時性とは、「一度も現前したことがない」過去<sup>4 </sup>である。単に記憶が不完全だからではなく、「記憶によっても歴史によっても回収することの出来ない」<sup>5</sup> 絶対的外部性なのである。レヴィナスは語る。</p><blockquote><p>存在内での連携でも、超越論的統覚の統一性のうちにこの連携が反映されることでもなく、 ──近さは、<自我>から<他人>へと、二つの時間に引き裂かれている。だからこそ近さは超越なのだ。近さは時間化する。ただし、隔時的時間によって時間化する。意識は想起によって回収される時間のうちに宿り、かかる時間のうちで維持される。また、体験されるものとして存在および存在者が現出するのも、想起によって回収される時間においてなのだが、近さは、このような時間の外で、その彼方で、それを超えて、隔時的時間によって時間化するのだ。<sup>6</sup></p></blockquote><p>だが、現在と共役不可能なこの時間、言い換えれば存在論へと回収される事なき絶対的な過去とはいかなることか?これが、レヴィナスの他者論の中核である。そして、熊野の論考も、主にこの不可解な「隔時性」概念をめぐって考察されている。</p><blockquote><p>呼びかけを受容する私の現在は、他者による呼びかけそのものの現在に常に・すでに遅れている。他者にとっての(呼びかけの)現在は、私にとっては取り戻しようのない過去になっている。他者の呼びかけは、だから私の現在に回収できない、否応のない「外傷」であり、他者の現在そのものがその「痕跡」なのだ。<sup>7</sup></p></blockquote><p>だが、熊野の上のような論述は、我々の困難な問いに対する回答であるというよりは、端的に問題の抹消ではなかろうか。熊野は、現在から撤退するところの相対的な過去として、「隔時性」を了解しているように見受けられるのだ。彼はその副題が示すとおり、<他者>を現前から「移ろいゆくもの」として、一貫して解釈している。もちろん、レヴィナスにおいても、現象におけるミクロなずれ・遅延は、極めて重要であることは否めない。しかしながら、我々は、レヴィナスが次のように語っていることを見逃す訳にはいかないのである。</p><blockquote><p>どんな現在よりも古き過去、一度たりとも現在と化したことのない過去は、その起源なき古さ故に、隠蔽と開示の「ゲームに加わった」ことがなく、また、未だ記述されざる今ひとつの意味を保持し続けている。<sup>8</sup></p></blockquote><p> レヴィナスにおいては、現象に刻み込まれた外傷ないし「時間的位相差」と、そのさらなる彼方としての「隔時性」とは、──「近さ」として接続されながらも──そのステータスを厳格に異にしている。だが熊野は、そのテクストの総体にわたって、この二つの次元の絶対的差異に無頓着であると言えるだろう。ここでは<他者>の他者性が、現在=現前の痕跡ないし撤退として、現前と相関的に了解されているのである。だがこのとき、「存在論の彼方」を語ろうとしたレヴィナスの自身の声は、抹消されてしまっているのではないか。</p><p><br></p><p>解釈におけるこのような「裏切り」、それはレヴィナスを解釈する者のテクスト読解能力が不足しているからではない。レヴィナスによれば、「存在することの彼方」の存在論的解釈への頽落は、むしろ原理的な必然である。</p><blockquote><p>存在とは他なるものが言表されるや否や、存在は、存在とは他なるものを出口なしの宿命のうちに幽閉してしまう。<sup>9 </sup></p></blockquote><p>それは、何かを理解するということがそれについて語りうるということと同値である限りにおいて、まさに言語それ自体の限界なのである。したがって、「存在するとは別の仕方で」は存在論的にしか「理解」する余地がないのだ。</p><blockquote><p>私たちの諸言語は、いかなる王権よりも強く、また、廃位することもない存在の王権を単に反映しているだけではない。そうではなく、私たちの諸言語は存在のこの王位そのものなのだ。しかるに、背面世界というまやかしの超越以外のどんな超越も無意味なものと化してしまう。言い換えるなら、<天の国>も実は地上の国の上空を回っているにすぎないのだ。<sup>10</sup></p></blockquote><p> では、「存在するとは別の仕方で」は、言葉に尽きせぬ神秘、言語の端的な外部なのだとレヴィナスは主張しているのか。そうではない。レヴィナスにおいては、<語ること>は、それが<他者>へと語るということである限りにおいて、まさに「存在するとは別の仕方で」なのだ。</p><blockquote><p>起源に先立つ言語としての語ることは、語ることと語られたことが相関関係であるような言語に一変する。…存在と存在者の区別さえ、語ることのこの両義性に支えられている。語ることと語られたことの相関関係、つまり、語られたこと、言語学的体系、存在論への語ることの従属は、現出という事態が要求する代償なのである。…主題化されるや否や、存在する とは別の仕方で、存在するとは他なるものは自分を裏切り、存在の存在することとして主題のうちに現出する。…あたかも、存在とは他なるものが、存在という出来事であるかのようだ。<sup>11</sup></p></blockquote><p><語ること>は、原理的に<語りえぬもの>である。より正確に記すならば、<語る>という<語りえぬもの>を、それでもレヴィナスは<語ろ>うとするが、その言葉は、読む者において必然的に、「語りうる」と「語りえない」という存在論的差異の「戯れ」として回収されてしまうのだ。先の熊野の解釈における躓きは、その転落を地で歩んだ結果であろう。だが、レヴィナスが<語ろ>うとしていたもの、それはまさに、「存在と無を隔てる差異のそのまた彼方なる差異」<sup>12</sup> なのである。だが、その「差異」とは一体いかなることなのであろうか?</p><blockquote><p>けれども、このような顕出が意味の一様態であるとするなら、<語られたこと>から<語ること>へと遡行しなければなるまい。<語られたこと>および<語られなかったこと>が<語ること>全体を汲み尽くすことはない。<語ること>はあくまで<語られたこと>の手前にとどまる。あるいはまた、<語ること>は<語られたこと>の彼方に赴くのだ。<sup>13 </sup></p></blockquote><p>我々は、レヴィナスと共に、「<語られたこと>から<語ること>へと遡行」する必要があろう。それはまた、「存在するとは別の仕方で」とはいかなることかという、冒頭の不可能な問いを、解決することでもある。その問いは、<語ること>がなぜ<語りえぬ>のか、そして<語ること>がなぜ<語られたこと>の手前にとどまり/彼方へと赴くのか、と言い換えることができるのである。</p><h3><語りえぬもの>をめぐ って──レヴィナスからウィトゲンシュタインへ── </h3><p>しかし、存在論へと回収されざる<語りえぬもの>とは<何>かという問いは、根源的に無意味ではなかろうか。<語りえぬもの>は、否定的であれ肯定的であれ、現前と相関的に解釈されざるをえないからだ。あるいは、その通りであろう。だが、われわれがここで立ち止まるならば、少なくともレヴィナスの哲学が<何>を語ろうとしたのかが、全く理解不可能になる。特に、レヴィナスの哲学が新たな存在論ないし否定神学の変形なのであれば、ハイデガーを含めた西洋形而上学=存在論に対する、<倫理>──これは道徳でも「倫理学」でもない──の先行性を、レヴィナスが一貫して唱え続けたことは、ただの狂気じみた矛盾であるということになってしまう。彼の哲学は、まさに、その「存在することの彼方」という不可能な問いをめぐってくりひろげられ、またそれを語ることをその使命としているのである。</p><blockquote><p><語ること>の自己背信を代償として、すべては現出する。語りえないものでさえが現出する。だからこそ、語りえないものを漏らすことも可能となるのだが、語りえぬものの秘密を漏洩すること、おそらくはそれが哲学の使命に他ならない<sup>14</sup> 。</p></blockquote><p>だがそうだとすると、我々は、以下のように反問する必要があろう。否定神学の上にさらに否定を重ねることによって<語りえぬもの>を語ろうとしても、必然的に存在論へと回収されて了解されてしまう。それにもかかわらず、「語りえぬものの秘密を漏洩すること」という哲学徒の使命を我々が引き受けるならば、「レヴィナスとは別の仕方で」、<語りえぬもの>を語るという危険さえ冒さねばならないのではないか、と。</p><p><br></p><p>「語りえぬものの秘密を漏洩すること」、レヴィナスがそのように語るとき、彼は明らかに 『論理哲学論考』のウィトゲンシュタインを念頭においている。彼は、その結論を、有名な自己破壊的なテーゼで締めくくったのであった。</p><blockquote><p>語りえぬものについては沈黙しなければならない。〔7〕<sup>15 </sup></p></blockquote><p>ここで我々は、レヴィナスがウィトゲンシュタインの哲学に反対していたと見なすべきであろうか。だが、事態はさほど単純ではあるまい。むしろ、ここにはレヴィナスのウィトゲンシュタインに対する根源的な共感すら存在すると考えるべきであろう。レヴィナス同様、ウィトゲンシュタインの哲学も、<語りえぬもの>をめぐって貫かれた思考だからである。おそらくは、レヴィナスはウィトゲンシュタインと同じ、あるいは相当に近い<何か>を見ていたはずである。ただ、彼らにとって、哲学のあるべき姿が、そこから逆方向を向いていたのだ。</p><p>レヴィナスのウィトゲンシュタイン哲学に対する共感と抵抗は、実は『存在するとは別の仕方で』に散見される、暗黙の言及のうちに示されている。たとえば、合田正人も指摘するとおり<sup>16</sup>、「懐疑論は反駁可能であるが、回帰する亡霊でもある」<sup>17 </sup>というレヴィナスの言葉は、『論理哲学論考』の「懐疑主義は反駁不可能なものではない。まぎれもなく非意義的なのである。」と語るウィトゲンシュタインを念頭においている。だが、レヴィナスは、写像理論に基づく前期ウィトゲンシュタインに対してのみ抵抗しているわけではない。むしろ、<語ること>と<語られたこと>の相関関係における「戯れ」jeu という言葉が、まさに「ゲーム」Spiel というコノテーションを内包させていたのではないかと、疑うべきであろう。</p><p>だとするならば、次のレヴィナスの言葉は、彼らの言語哲学の根源的な差異を示している。</p><blockquote><p>まさに<語ること>はゲームならざるものなのだ。Le Dire precisement n'est pas un jeu.<sup>18 </sup></p></blockquote><p>後期ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論は、おそらくは、前期から中期にかけての、<語りえぬもの>に対する極限的な思考から導出されたものである。<語りえぬもの>に対する彼らの相違は、彼らの言語哲学の相違を、したがってまた哲学とは何かを問うメタ哲学の相違をも、決定づけているに違いない。</p><p>しかし、<語りえぬもの>とは一体何か。いやそもそも、彼らの言う<語りえぬもの>とは同じものなのであろうか。もしそうだとして、なぜレヴィナスにとって、言語はゲームではないのだろうか。そうした問いを解くべく、我々は考察していこう。</p><p>だが我々は、本論考の当初の目的を忘れたわけではない。こうした諸問題は、単にレヴィナスとウィトゲンシュタインの言語哲学の差異を測定するためではないのだ。むしろわれわれは、独我論をめぐるウィトゲンシュタインの思考を媒介として、レヴィナスが言う「存在するとは別の仕方で」という地平をかいま見るであろう。そのとき、ウィトゲンシュタイン自身の意図に反して、「言語はゲームではない」という言葉の重みが理解されるはずである。</p><h3>ウィトゲンシュタインの独我論 ・ レヴィナスのイリヤ</h3><p>ウィトゲンシュタインにとって、沈黙しなければならぬ<語りえぬもの>とは一体何だったか。まず、『論理哲学論考』を遡及しながら、確認しよう<sup>19</sup>。</p><blockquote><p>語りえぬことについては、沈黙しなければならない。〔7〕</p><p>語りえぬもの、それは神秘的なるものである。世界はどのようにあるか、ということが神秘的なのではない。世界がある、ということが神秘的なのである。〔6.44〕</p></blockquote><p>ゆえに、世界の存在自体が、語りえぬものであるとウィトゲンシュタインは主張している。こうした命題は、また世界の独我論性に関する命題群と共鳴しあっている。</p><blockquote><p>世界と生とは一つである〔5.621〕</p><p>私とは、私の世界のことである。〔5.63〕</p><p>肝要なこと、それはこの「私」が、「超越論的主観」や身体的・精神的な「自我」ではないということである。むしろ、私とは世界の「存在すること」の境界なのだ。主体は、世界のうちに属するのではない。それは、世界の境界なのである。〔5.632〕</p></blockquote><blockquote><p>ここに、哲学において自我は非心理学的に問題になりうるということの意義が厳存する。すなわち自我は、「世界とは、私の世界である」ということを通じて、哲学の中に登場してくる。哲学でいう自我とは、人間、人間のからだ、あるいは心理学で取り扱われる人間の魂などではない。かの形而上学的なる主体、つまり世界の──一部分ではない──境界なのである。〔5.641〕</p></blockquote><p> したがって、ここで言う「世界」とは、表象された観念的な世界のことではない。それは、実在としての世界なのだ。</p><blockquote><p>ここからして、独我論は、厳格に押し詰めてみると、純粋なリアリズムに合致することがわかる。独我論でいう自我は、結局は延長のない点に収縮してしまって、残るものは、それに対置されていた実在だけである。</p></blockquote><p>だとするならば、私の死とは、世界が消滅することである。</p><blockquote><p>同じように、死においては、世界は変化するのではなくて、存在を停止してしまうのである。〔6.431〕</p><p>ところで、死は生の出来事ではない。人は死を体験することはできない。もしも、永遠とは限りない時間持続ではなしに無時間性のことである、と考えるなら、現在のうちに生きている人は、永遠に生きていることになる。われらの生に終わりはない。われらの視野に限りはないのと同じように。〔6.4312〕</p></blockquote><p>だが、独我論をめぐるこれらの命題は、実は<語りえぬもの>である。なぜなら、言語と世界が同じ論理形式を共有していると考えられる限りにおいて、まさにそれは言語の限界だからである。</p><blockquote><p>私の言語の境界が、私の世界の境界を意味する。〔5.6〕</p><p>以上の注意が、独我論はどの程度まで真理であるかという問いに解決の鍵を与えている。すなわち、独我論がいおうとしていることは全く正しいのであるが、遺憾ながらそのことは、語られえぬことである。みずからを示しはするけれども。…〔5.62〕</p></blockquote><p>したがって、この『論考』自体が、嘘つきのパラドックスと同じ自己反駁的な構造をもっていることに、我々は留意しなければならない。</p><blockquote><p>私の言いたいことを理解してくれる人ならば、まず私の諸命題を通り──その上にたって─ ─、それを乗りこえていくとき、最後には、それを非意義的なものと認めるにいたるであろう。このようなしかたで、私の諸命題は、解明的なものではありえよう。〔人は、はしごを登り詰めたときには、それを、いわば投げ捨てなくてはならない。〕</p><p>彼は、これらの命題を克服しなくてはならない。そのとき彼は初めて、世界を制止しているのである。〔6.54〕</p><p>したがって、最後の結論が導き出されるのである。語りえぬことについては、沈黙しなければならない。〔7〕</p></blockquote><p>語りえぬものと語ることとの間に厳密な線引きをすること、そして最後にその線を抹消すること、ここに哲学の使命は終わるのである。</p><p>レヴィナスの初期のテクスト『時間と他者』<sup>20</sup>は、──若干のねじれをここで捨象することが許されるならば──その独我論的側面において、『論理哲学論考』と奇妙なほどに呼応している。</p><p>レヴィナスは、「実存すること」exister<sup>21 </sup>の絶対的な孤独から説き起こす。</p><blockquote><p>孤独の深刻さは、いかなる点にあるのだろうか。陳腐な言い方ではあるが、我々は決して単独で実存しているのではない。我々は様々な存在や事物に取り囲まれ、これらの存在や事物と様々な関係を保っている。…私はある対象にふれる、私は<他者>を見る。しかし、私は<他者>であるのではない。私はまったくの独りきりである。<sup>22</sup></p></blockquote><p>孤独の深刻さは、ハイデガーにおける存在と存在者の区別をふまえつつ、実存者なき実存することへと接近することによって、より理解されうるであろう。存在の磁場とでも言うべき「実存者なき実存すること」、それはレヴィナスにおいてイリヤ il y a(・・・がある)と呼ばれている。この実存者なき<実存すること>に対して、我々はどのようにして近づいていけば良いのだろうか。</p><blockquote><p>このようにあらゆるものを想像の上で一掃した後に残るのは、何かあるものではなくて、イリヤ il y a(…がある)という事実である。あらゆるものの不在が、一つの現前として、つまり、そこですべてが失われてしまった場として、大気の濃密さとして、空虚の充実として、あるいは沈黙の呟きとして、立ち戻ってくるのだ。事物と存在とのこのような破壊の跡には、非人称的な<実存すること>の「磁場」があるのだ。<sup>23 </sup></p></blockquote><p> 匿名的な<実存すること>のうちに特権的な実存者があらわれ、<実存すること>を支配する。それをレヴィナスは位相転換 hypostase と呼ぶ。だがそれは、<自我> moi(=存在すること)の<自己> soi(=存在者)への束縛である。それは実存することの孤独を断ち切るのではなく、むしろ完成する。</p><blockquote><p>この匿名的な<実存すること>のうちに、実存者が存在しえるためには、この<実存すること>のうちに、自己からの出発と自己への回帰が、すなわち、自己同一性の活動そのものが、可能にならなければならない。自らの同一化ということによって、実存者はすでに自分自身に対して自らを閉ざしたのである。つまり実存者は単子 monade であり、孤独なのである。</p></blockquote><p>だがここでレヴィナスの言葉を注意深く読むならば、常識的な意味において、実存することを「世界」、実存者をそれに対置される「私」であると解釈するのは不当であろう。</p><blockquote><p> …「我」はそもそも一個の実存者ではなく、<実存すること>の様態そのものであり、厳密に言えば、「我」は実存していない…<sup>24 </sup></p></blockquote><p>したがって、世界を動詞的に理解するか、あるいは名詞的に理解するかという相違をおいておくならば、非人称的なイリヤは、ウィトゲンシュタインの独我論ととその照準するところをほぼ等しくするのだ。実際、レヴィナスがイリヤを、「ひとつの意識を授けるかのように」(p18)、「匿名的な覚醒状態」(p20) として語っていることは、それを裏付けている。逆に言えば、自分がこの身体であって、世界が対置されるという意識ないし常識的了解は、独我論的世界の「まどろみ」によって特徴づけられるのだ。</p><p>だが、死への近さは、意識の非覚醒を引き剥がす。死は<存在すること>に対する 実存者の支配を逃れ去る。死は、「神秘」として、現前へと回収することが不可能な出来事なのである。</p><blockquote><p>死は決して現在時ではない。死がそこに存在するとき、私はもはやそこには存在しない。というのは、いささかも私が無になるからではなくて、私が捉えることができないからなのである。<sup>25</sup></p></blockquote><p>このような死の「概念」が、『論考』のウィトゲンシュタインと共鳴していることは、疑いようがない。同様に、言語と独我論との関連においても、彼らはやはり近親性を帯びていると判断できる。レヴィナスは、次のように語る。</p><blockquote><p>すべてをその普遍性のうちに包括することによって、理性は再び孤独のうちに自分自身を見いだすのである。独我論は、錯誤でも詭弁でもない。それは、理性の構造そのものである。理性が結びあわせる諸感覚の「主観的」性質の故にでは全くなくて、認識の普遍性、すなわち、光の無制限性と、いかなるものにとってもその外に存在することができないという不可能性との故にそうなのだ。<sup>26</sup></p></blockquote><p>むろん、ここでレヴィナスは、ウィトゲンシュタイン流の写像理論を採用してはいない。というよりは、この段階のレヴィナスは、未だ一つの言語理論を確立していない。だが、理性=言語の独我論性という後期の論点の萌芽を、ここで我々は確認することが出来るだろう。</p><p>だが、ウィトゲンシュタインの対比において、レヴィナスの独我論的探究が決定的に際立っている点が、一つだけ存在する。それは、<他者>をいかにして「救い出す」か、という問題意識の存在である。常識から想像されるのとは逆に、レヴィナスが<他者>の他者性を独我論から救い出そうとしている訳では決してない。むしろ彼にとっては、独我論という事実の否認こそが、必然的に他者性の抹消を帰結するのである。</p><blockquote><p>こうして孤独の存在論的根源にまでさかのぼることによって、われわれは、この孤独がいかなる点で乗り越えられうるか、ということを漠然とながらも理解したいと考えている。この乗り越えが何でないか、ということを直ちにいっておくことにしよう。それは一つの認識ではないであろう。というのも、認識を通して、対象は、好むと好まざるとにかかわらず、主体によって呑み込まれてしまい、そして二元性は消滅してしまうからである。それはまた、一つの脱自でもないだろう。というのは、脱自においては、主体が対象のうちに吸収されて、主体はその統一性のうちに再び自己を取り戻すことになるからである。このような関係はすべて、他者の消滅ということに行き着くのである。 単子論 monadologie を放棄するならば、われわれは一元論 monism に行き着くことになるのである。<sup>27</sup></p></blockquote><p> <他者>の他者性と、<私>の独我論性とは、双対的な事態である。そもそも、論述の冒頭において、存在論的孤独は、「私は<他者>であるのではない」という事実として、開示されたことを思い返しておくべきだろう。</p><p>哲学の端緒における<他者>という問いの有無は、後のレヴィナスとウィトゲンシュタインの言語哲学の差異をかたちづくっていく分水嶺なのである。</p><h3>語りえぬこの「私」</h3><p>私が世界であるという命題、それをこれまでレヴィナスとウィトゲンシュタインの双方における初期の思考に見てきた。だが、独我論の神秘は、以上の命題につきるわけではない。その語りえなさが究極のところ「どこ」にあるのか、その独我論のいわば極北を、彼らは後につきつめているのである。</p><p>前期の写像理論と後期の言語ゲーム論に挟まれた、文法期といわれる中期ウィトゲンシュタインにあって、彼の独我論的思考は極点に達する。</p><blockquote><p>この独我論を、「私が見るものだけが本当に見られるものである」、と言って表現できる。そしてまた、「「わたし」という語で L・W〔ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン〕を意味してはいない。しかし、たまたまこの私が事実として L・W の意味にとってくれて結構だ」、と言いたい。だが、その代りに、「私は生命の器だ」、と言っても同じなのだ。注意してほしい。つまり肝心なのは、私の言うことを聞く人がそれを理解できてはならないことなのである。他人には「私が本当に意味すること」がわかってはならぬことが肝心なのだ。<sup>28</sup></p></blockquote><p>言うまでもなく、ここで L・W ならぬ「私」とは、一般的自我のことではありえない。もしそうなら、「私が本当に意味すること」は誰にでもわかりうるはずであろう。いわば、誰にも理解されることがない、言い換えれば存在論的な秩序にも言語論的網目にも回収されることがないような、法外な「意味」なのである。とするならば、ここに我々は、レヴィナスの語る「いまだ記述されざるいま一つの意味」を重ね合わせることができるのであろうか。だが、未だ答えを出すには早すぎる。さらに考察を深めよう。</p><blockquote><p>私が心底から私だけが見るのだと言ったとき、私はまたこういっても同じであった。本当は「私」という語で L・W を意味したのではない。ただ仲間の人々の便宜のために、私の本当に意味することでないのだが、「この場合、本当に見ている人間とは L・W である」と言っても良い、と。さらに、「私」とはいま L・W に宿り他人には見ることのできないあるもののことであるとさえ言えば言えたのである。<sup>29</sup> </p></blockquote><p> だがそもそも、なぜ「私」は固有名ではありえないのか。そして「私」が何なのか、原理的に私以外の誰にも理解することができないのであろうか。そのような「私」とはいったい何か?</p><blockquote><p>しかし私の根本的問題は、私というものはどう定義されるのか、である。この特別なものは誰なのか?私である。しかしそれが誰なのかを示すために私は手を挙げればいいのか。<sup>30</sup></p></blockquote><p> もちろん、ここで彼が言いたいことは、手を挙げたとしても、この「私」という言葉は、特定の身体および固有名として回収されてしまう、ということである。だが、そうだとすれば、彼はここで一体何を示したいのか。それは、ある意味では私たちにはどのようにしても理解しようがないと、彼自身語っているというのに。もちろん、このような極限的思考を、我々は「哲学者」の一時的な狂気や言葉遊びと一蹴することもできよう。実際、中期や後期の私的言語論を、前期の独我論を端的に否定したのだと見なす研究者も多い。だがそうではなく、やはり彼は何かを語りたかった、少なくとも、その何かの語りえなさを理解したかったと見なす方が、より適切であろう。中期において彼が反駁したかったのは、独我論自体ではない。むしろ、独我論を語ることが、ある身体や心・意識といった「存在者」の「同一性」へと、独我論を回収してしまうことな 8 のだ。そして、その様に語るときには、すでに独我論は隠蔽されてしまっているのである。だが、その独我論とは、一体いかなることなのであろうか?それを、いまいちど考察する前に、レヴィナスのテクストへと移ろう。</p><p>レヴィナスの思考における独我論の極北は、実は後期の著作群に確認することができる。『存在するとは別のしかたで』の第二章は、現象学あるいは存在論の、いわば独我論的還元から説き起こされる。</p><blockquote><p>哲学は真理を探究し、真理を表現する。言表や判断の特性であるよりも前に、真理は存在の暴露たることをその本義としている。だが、何が存在の名において真理のうちに現出するのだろうか。そしてまた、誰が見るのだろうか。<sup>31</sup></p></blockquote><p> 見ているのは、いわばこの「私」である。だが、この「私」とは「誰」のことなのか。だがこのように問うとき、すでにその「誰」は、いかようにしても、「何」すなわち「存在者」を問う存在論的問いへと回収されてしまい、抹消されてしまう。</p><blockquote><p>~であるところの某を問う問いは、「何」に、「~はどのようなものか」に帰着するか、あるいはこれらの問いのうちに消え去ってしまう。<sup>32</sup></p></blockquote><p>だが、この「誰」という問いが何を抹消していると言うのか。それは、現前しえない超越論的自我が、語られたことで、世界内の一存在者と混同されてしまうということなのであろうか。たしかに、次の言葉は、彼がさしあたりそのように唱えていると理解できよう。</p><blockquote><p>「誰が見ているのか」という問いはこの人あるいはあの人について問うているのではなく、「見るもの」一般の存在することについて問うているからだ。「誰が見ているのか」という問いは、「この誰は誰か」という問いとして、この「誰」はどのようなものかと問うているのであり、このとき「誰」に向けられる視線は存在に向けられる視線と同じ視線である。<sup>33</sup></p></blockquote><p> そのような意味で、レヴィナスは、この「誰」が<語りえぬもの>であるというのだろうか。しかし、ここで私たちは、レヴィナスが論理展開上、一度存在論を受け入れた上で議論を進めているということに注意しなければなるまい。この「誰」とは、究極のところ、唯一性としての<一者>、言い換えれば代替不能なこの「私」である。<sup>34</sup></p><blockquote><p>私は<自我というもの>一般ではもはやなく、唯一無二なるこの私である。主体は任意の自我ではもはやなく、──この私が主体なのであり──、そのような主体は一般化されることがなく、主体一般ではない。つまり、<自我というもの>一般はいまや、他の私ではなくこの私としての私へと移行したのである。<sup>35 </sup></p></blockquote><p>だがこの唯一性は、<語られた>ときには一般的な自我であることになる。にもかかわらず、私たちはその「唯一性」を「私」という一般的な言葉で語らざるをえない。</p><blockquote><p>ただし、言葉の誤用によって、唯一性を<自我>ないし<私>と例外的に命名することができないわけではない。とはいえ、この命名は代名詞化にすぎない。私と命名される何かが存在するわけでは全くなく、「私」は発語するものによって語られるのだ。代名詞は発語する唯一性をすでに隠蔽し、ある概念にこの唯一性を包摂し、唯一者の仮面ないしペルソナしか指示しないのだが、一人称で語りながらも決して名詞に転換されることのない私は、かかる仮面を打ち棄てる。<sup>36</sup> </p></blockquote><p>レヴィナスの「「私」は発語する者によって語られる」という言葉を、次のウィトゲンシュタインの叫びと併置させても、違和感は皆無であろう。</p><blockquote><p>「それを誰が言うのだって?」──「私だ!」じゃその〔「私だ!」を〕言うのは誰だ?── 「私だ!」──<sup>37</sup> </p></blockquote><p> だが「私」の「唯一性」とは一体何か?常識に従うならば、それは、柄谷行人が言うような、一般性と混同されてしまう単独性、「この性」のことであろう。実際柄谷自身は、レヴィナスが単独者としての他者を発見したのだという意味のことを、『探究Ⅱ』で述べている。<sup>38</sup>柄谷においては「私」と「他者」は、同一の存在論的平面に内属していると考えられている。従って、柄谷の言う「この私」とは単独性のことである。だが、レヴィナスにとっては、<他者>は「私」とは共通の現在には属していないのではなかっただろうか?まさにレヴィナスの『外の主体』における、結論めいた次の論述は、そうした安易な理解を拒絶する。</p><p>モナドのこの自同性に、いくら驚いても驚きすぎということはない。それは自我における唯一なる者の自同性であるのだが、ここにいう自我は、同じ類に属する他の諸個体に含まれた属性とは異なる属性の付加や、時空に個体が占める他に還元不能な位置による類の個体化として、あるいはまた、質量による例の個体化として論理的に正当化される必要はない。自我はその唯一性ゆえに異なるのであって、その差異ゆえに唯一者であるのではない。<sup>39</sup> </p><p>ここには驚くべきことが語られている。「私」は唯一なのであるが、それはなんらかの特性の差異によるものでないばかりでなく、その個体の占める場所の排他性、すなわち単独性によっても識別不可能なのだ。まさにそれは、「論理的には識別不能な第一人称の私の唯一性」<sup>39</sup> なのである。ここで彼が、ウィトゲンシュタインと同じ何かを語ろうとしていることは、疑うことができないだろう。だが、なぜこの「私」は論理的に識別不能なのであろうか?</p><p>ウィトゲンシュタインの言葉を引くところから、考察を再開しよう。</p><blockquote><p>私がボーイに言う。私にはいつでもコンソメを他の人にはみんなポタージュをもってきてほしい、と。彼は私の顔を覚えておこうとする。だが私の顔(からだ)が毎日全く変わるものとするとボーイは誰が私なのかどうしてわかるのか。…「もしチェスの駒が全部同じだったらどれが王だかわからないではないか。」<sup>40</sup></p></blockquote><p>だが、彼には私が誰であるかわからないけれど、私にはやはりわかるだろう。そこで、「私はある肉体の中に住んでいる何かの同一性を、私の心の同一性を、跡づけるのだという考えが生じてくる」。だが言うまでもなく、ウィトゲンシュタインが反駁したいのは、独我論を「意識」や「心」という何者かへと還元してしまうような思考の方である。実際、私たちは容易に次のような事態を想像できる。私が、身体だけではなく、「心」に帰属するものと一般に考えられている、感情や性行、私的感覚まで変わってしまうという事態である。にもかかわらず、私には私が誰であるかが容易に理解できる。いや、記憶を失えば、自分の同一性を同定することは出来ないという反論があり得るだろう。あるいはそうかもしれない。だが、そのレストランでボーイにポタージュを膝の上に零されて火傷して、医者に行ったら次のように言われたことを想像してみよう。「これからあなたの身体を取り替え、またすべての記憶を完全に抹消する手術をします。そしたら、あなたはあなたではなくなるので、もうそのレストランに行ってポタージュを零されても大丈夫ですよ」と。だが、そこで「私」は言うだろう。「いや、以前のすべての記憶がなくなっても、熱いと感じるのはこの「私」なんだ!」と。</p><p>ウィトゲンシュタインやレヴィナスの独我論とは、この水準の「唯一性」である。それは、まさに永井均が「独在性」とよぶ水準の問題なのである。ならば、我々も、永井流の思考実験をもう一つ展開しよう。</p><p>いまこうして私はディスプレイに向かって論文を書いているが、身体も記憶も、たったいま見ている情景も、感情も、すべてそのままで行為し、存続し続けながら、そのすべてがこの「私」ではなくなったとしよう。いわば身体も「心」も伴わない、「私」の死である。そのような事態は容易に想像できる。だが、そのとき、何が変わるのであろうか?何も変わりはしない、少なくとも「私」以外の人にとっては。抜け殻の筆者は、やはり今晩も家族と共に食事をし、友人とメールを交わすだろう。だが、誰もこの唯一の「私」がもはや存在しないということを、知ることは出来ないのだ。それは、人間の判断能力の限界のせいはない。ここでは、個体性も弁別不可能な特徴もなんら失われていない。したがって、いかなる神もそこに何らかの変化 があったか否かを、感受することが不可能なのだ。ウィトゲンシュタインの「私」、そしてレヴィナスの言う「論理的には識別不能な第一人称の私」とはこのことであろう。</p><h3>言語はゲームではない</h3><p>私たちは、ウィトゲンシュタイン-レヴィナスとともに、独我論の極北へと到達した。その語りえぬ「私」とは、いかなる超越論的視点からも弁別不可能な唯一性である。言い換えれば、それは存在論の限界を遙かに凌駕しているのだ。したがって、独我論を極限まで突き詰めたウィトゲンシュタインが、独我論について語ることがもはや無意味であると結論づけたのも、納得できよう。</p><blockquote><p>私が独我論的言明をしたとき指差しはしたが、指すものとそれで指されるものとを切り離せないように結びつけてしまい、そのため指差しから意味を奪い去ることになったのである。歯車その他で時計を組み立てたが最後に文字盤をその針に固定して針と一緒に回るようにしてしまったのである。こういうようにして、独我論者の「これのみが本当に見られるものである」は或るトートロジーを思わせるのである。<sup>42</sup></p></blockquote><p> 後期ウィトゲンシュタインは、もはやこの「私」についてほとんど語ることがない。だがそれは、通常言われるように、独我論を否定して共同体論へと向かったからではない。言語ゲームとは、永井均が言うように、<sup>43</sup>「語りえぬもの」について「沈黙しなければならない」とすら、語らないような地平なのである。言い換えれば、最強度の独我論的思考をくぐり抜けて後期ウィトゲンシュタインが到達した平野とは、ただこの「私」を透明に生き抜くという生のありかたなのであろう。言語ゲームとは、そのような透徹した生の存在様態そのものなのである。</p><p><br></p><p>言語ゲーム、それは決して<語りえぬもの>を神秘として聖域へと押しやることではない。むしろ、それを語る言葉がどこまでも言語ゲームへと回収され、「語りえない」とさえ「語られて」しまう。すると、「語られたこと」の内部に、「語りうるもの」と「語りえないもの」の境界線が出来てしまう。そのとき、逆説的にも<語りえぬもの>は隠蔽されてしまうのだ。ならば、<語る私>という<語りえぬもの>は、「語りうること」と「語りえないこと」、存在と無の双方を支配する「ざわめき」であろう。</p><p>ならば、我々はウィトゲンシュタインの「言語ゲーム Sprachspiel」は、レヴィナスが言うところの「語ること」と「語られたこと」の「戯れ」jeu(=ゲーム)と、同じ生の有り様を指し示していると考えることは出来ないだろうか。レヴィナスにおいても、<語ること>は、この「私」の動的な独我論的存在様態でもあるがゆえに、「語りえぬ」とさえ<語りえぬもの>であったからだ。実際、次の『探究』におけるウィトゲンシュタインの有名な比喩は、レヴィナスにおける「戯れ」としても解釈できるだろう。</p><blockquote><p> …われわれは、人々が野原でボール遊びに打ち興じ、現存するさまざまなゲームを始めるが、その多くを終わりまで行わず、その間にボールを当てもなく空へ投げあげたり、たわむれにボールをもって追いかけっこしたり、ボールを投げつけ合ったりして遊んでいるのを、きわめて容易に想像することができる。そして、このとき誰かが言う。この全時間を通じて、人 々はボールゲームを行っているのであり、それ故ボールを投げるたびに一定の規則に準拠していることになるのだ、と。でも、われわれがゲームをするとき──<やりながら規則をでっち上げる>ような場合もあるのではないか。また、やりながら──規則を変えてしまう場合もあるのではないか。<sup>44</sup></p></blockquote><p>レヴィナスは、生を「語ること」と「語られたこと」の両義性として把握していた。ここでは「語ること」は生の動(詞)な存在様態であり、それが「語られた」ことによって、名詞化され、固定化されると考えられている。そうしたダイナミズムを、ウィトゲンシュタインの「プレイ」と「規則」との関係に対比させることは、不自然ではなかろう。</p><p><br></p><p>とするならば、このような生の様態こそ、レヴィナスが語ろうとした<語りえぬもの>なのであろうか。だが、我々の予想に反して、レヴィナス自身は「<語ること>は戯れのまったき不在」であると語っているのである。われわれはここに、ウィトゲンシュタインに対する限りない共感 11 とはうらはらの、いや表裏一体の、レヴィナスの抵抗を読み取るべきである。もちろん、ここでレヴィナスは、独我論の根源性を如何なる意味においても否定してはいない。そして生の独我論性は、まさに存在論という言語の一元論的帝国主義へと反映されている。</p><blockquote><p>諸存在の自同性は、語ることに送り返される。けれども語ることは、ケリュグマないし布告としての語られたことを目指して進み、語られたことのうちに吸収され、そこでほとんど忘れられてしまう。諸存在者の自同性の源泉たる<語ること>は、あくまで<語られたこと>と相関的な<語ること>でしかなく、この限りにおいて、<語ること>は存在者の自同性を理念化し、そうすることで、この自同性を構成する。<sup>45</sup></p></blockquote><p> 要するに、あらゆる言葉は、必然的に存在すること=存在論へと回収されてしまうのである。「<語ること>が現出し、命題および書物の中に組み込まれるということ」は、「不可避な事態」なのだ<sup>46</sup>。だが先の引用の直後に、彼は語るのだ。</p><blockquote><p>人間がロゴスと相関的な<語ること>でしかないなら、主体性の価値を存在の関数ないし独立変数と見なしたとしても、何ら変わりないことになろう。しかるに、<語ること>の意味は<語られたこと>の彼方に赴く。発語する主体を生ぜしめるのは存在論ではない。<語ること>の意味することは、<語られたこと>のうちで集約された存在することの彼方に赴くのであって、それゆえ、<語ること>の意味するほうが逆に、存在の暴露ないし存在論に正当な根拠を与えうるのだ。<sup>47</sup></p></blockquote><p> ここで、<語ること>ということばが、二つの異なる意味で使用されていることに注意する必要があろう。レヴィナスは、おおむね次のようなことを主張している。<語ること>における時間は、存在論的時間と隔時性の、「二つの次元」に引き裂かれている。一つは<語られたこと>へと回収され、ともに<存在すること>という「逃げ場なし」を構成する。だが今ひとつの<語ること>は、隔時性として「存在することの彼方」へと赴くのである。それが「存在するとは別の仕方で」である。そして後者の方が前者に論理的に「先行」し、前者に「存在すること」自体に意味を与えているのである、と。そのような意味において、彼は「「存在するとは別の仕方で」はゲームないし戯れではない」と言い切ったのだ。<sup>48</sup> </p><p>だが、片方でウィトゲンシュタインと共に、「存在すること」の根源性を認めるのであれば、存在論へと回収されざる「存在することの彼方」をそれでも語ろうとするレヴィナスの企ては、狂気じみた自己矛盾としか言いようがないのではないか。我々のここまでの考察は、振り出しにもどされたのであろうか。</p><h3>存在するとは別の仕方で──もう一つの<語りえぬもの>──</h3><p> だが、ウィトゲンシュタイン-レヴィナスとともに辿ってきたここまでの考察は、すでにもう一つの<語りえぬもの>を指し示している。</p><p>ウィトゲンシュタインは、後期以降、独我論を語りえぬものとして沈黙したのであった。だが、それはいかなる意味において語りえないのであろうか。それは、私たちには、彼が「本当に意味すること」が理解しえない、という意味においてである。そのウィトゲンシュタインが「本当に意味すること」、それを<他者>の独我論と名付けよう。それは、唯一のこの「私」の独我論ではなく、ましてやすべての自我に当てはまるような認識論的独我論などではない。それは、たまたま「ウィトゲンシュタイン」と呼ばれたところの<誰か>であった<この私>──注意せよ!ここではこれ以上の表現が不可能なのだ──の独我論である。確かに、それは私たちの耳には決して届くことが出来ない。私たちには、彼が<誰>であったのか、知ることすらできない。独我論的他者は、文字通り、存在論の彼方である。だが、彼の不可能な独我論的言明は、彼であった<誰か>がそれでも「存在」したのだという<事実>を告げているのではないだろうか。</p><p>言うまでもなく、<他者>の独我論的言明を私たちが聴き取ろうとするときだけ、<他者>の独我論という<事実>が存在するわけではない。それは、自分が溺れているときだけ空気は実在する、と考えるようなものである。この「私」の独我論が、私が覚醒するか否かに関わらず真実であるならば、<他者>の独我論も同様であろう。むしろ、<他者>の独我論という<語りえぬもの>は、すべての<他者>の、ひとつひとつの言葉に、痕跡として刻み込まれているのではないだろうか。ウィトゲンシュタインは、<他者>の独我論の了解不能性を、文字盤(この「私」)と針(指示作用)が一緒に回る無意味な時計という、卓抜した比喩で表現したのであった。だが、針が存在するためには、そもそも「文字盤」が不可欠なのではないだろうか。ウィトゲンシュタインの意図に反して、我々にはむしろ、「いわれたことのすべてには、それを言った誰かがいる」<sup>49</sup> という存在論的には無意味な事実を、それでも示しているように思われるのだ。ならば、<他者>の独我論こそが、レヴィナスが言う「存在することの彼方」なのであろうか。たしかにそれは、存在論の彼方であり、また隔時性──「一度たりとも現前と化したことのない過去」、「記憶によっても歴史によっても回収することの出来ない起源以前のもの」──と呼ばれる資格を持ちうる。</p><p>だが、おそらくは、次のような反論が提起されるであろう。ウィトゲンシュタインを経由した、この論考のアクロバティックな論理展開は、レヴィナスのテクスト解釈からすでに大きく逸脱しているのではないか、と。ならば、レヴィナス自身に語らせよう。</p><blockquote><p> 認識することよりも高き秩序。この秩序は、ある使命が谺するなかで、個体性としての人間的なものを触発する。依然として類の一般性によって凝固したままの個体性ではあるが、それはすでに私の唯一性へと目覚めてもいるが、他の人間に対する責任の中では、それは選びのように忌避不能で愛を孕んだ唯一性であり、このとき他人もしくは愛されるものはこの私にとっては世界でかけがえのない唯一の者なのだ。唯一性から唯一性へ、一者から他の一者へ、それも一切の近親性とは無関係に。どんな外部性よりも疎遠なある唯一性から他の唯一性へ。<sup>50</sup></p></blockquote><p>次のような反論も予想される。ウィトゲンシュタインがそれを書いたという過去に我々がつねにすでに遅れているのは、単なるトートロジーなのではないのか。あるいはレヴィナスの語る隔時性とは、そのような「移ろいゆく」過去のことではないのか。だが、もしその通りだとすれば、それは現前と相関的な、回収可能な過去であることになろう。いずれにせよ、そのとき<他者>は存在論的平面へと回収されているのだ。「存在の彼方」をかいまみるためには、より極限的な場面と直面しなければならない。</p><p><br></p><p> レヴィナスはしばしば、<他者>を死にゆくものとして語る。</p><blockquote><p>自分自身の痕跡として、顔は私の責任に差し向けられるが、罪を犯したものとして、私はかかる顔を逸する。言うなれば私は、顔が死ぬことに対して責任を負うており、自分が生き残ったことに対して罪を負うているのだ。(p218) </p></blockquote><p>だが、なぜ私は自分が生き残ったことに対して罪を負うているのか。それは、私が死んでも良かったはずなのに、<他者>が死んだからであろうか。だが、そのように語るとき、私と<他者>とが同一の平面上に存在したことを前提としている。そればかりか、<他者>の死は、<私>の死との類比において、同じ程度かそれ以下の重みにおいて、了解されてしまっている。自らの存在と死に対する高貴な無関心・無視を語るレヴィナスにおいて<sup>51</sup>、決してそのようなことはありえない。レヴィナスにおいては、<他者>と「私」は絶対的に非対称であり、したがって<他者>の死は私の死よりも最悪の出来事なのだ。</p><p>そうではない。私は、無条件に他者の顔を逸することに、言い換えれば他者の死を引き受けられなかったことに、「あなたに何もしてあげられなかった」加害者として、先天的な無限の罪と責任を負うているのだ。その法外な罪を科せられた私の問いとは、「なぜ私ではなくあなたが死んだのか」ではなく、「なぜ私はあなたの身代わりになって死ぬことが出来なかったのか」という問いであろう。次の言葉は、そのような意味において、読まれなければならない。</p><blockquote><p>問いの最たるもの、あるいは最初の問いであるこの問いとは「なぜ無ではなく、存在があるのか」という問いではなく、「私には存在する権利があるのだろうか」という問いである。<sup>52</sup></p></blockquote><p>私が死にゆく他者の顔に向かい、<他者>の代わりに死にたいと祈るとき、極限的な苦悩と共に、いや極限的な苦悩として、<他者>の他者性の真の意味が開示される。「私は<他者>であることができない」。それは、私が<他者>の苦悩を知りえないからでも、体験しえないからでもない。たとえ私が<他者>の苦しみをすべて理解できたとしても、いや、私が<他者>の代わりに死ぬことが出来たとしても、それはそのときにはすでにこの私の苦しみでしかなく、私の死でしかないのだ。私は<他者>の代わりに──<他者>として──死ぬことが出来ない。いや、<私>には、その<他者>が<誰>であるかすら、知ることが出来ない。にもかかわらず、死へと至る病に苦悩し身悶えする<誰か>が、そこにいるのだ。<他者>は私から、無限に分離されている。そのとき、私は自らの独我論に覚醒する。このすべての世界が、名付けようもない唯一の「この私」でしかありえないということに。「私」が「存在すること」へと、この「私」へと放逐されているかのように。</p><blockquote><p>責任に基づいて捉えられた私は、自己を所有し自己を承認しつつ自己を定立するのではなく、自己を蕩尽し、自己を引き渡し、自らの場所を失い、自己を追放し、自己のうちに放逐され、そればかりか、自分の皮膚さえも存在のうちに身を隠す一つの仕方にすぎないと言わんばかりに、傷と侮辱にさらされ、非場所のうちで自己を一掃し、ついには他人の身代わりとなり、自己の追放の痕跡としての自己のうちにのみあることになる。<sup>53</sup></p></blockquote><p> 念のため、もう一度だけ確認しておこう。<他者>は死にゆくから、私たちのもとから去りゆくから<他者>なのではない。引き受けることのできない<他者>の生と死へ、それでも私が身代わりを願うとき、「私は何も出来なかった」という自分の存在よりも重い涙によって、<他者>の他者性の真実へと覚醒するのだ。<他者>が世界の彼方の、もう一人の<この私>であったことに。<他者>が、一度たりとも現前することなく、いや、如何なる意味においても引き受けられることのない、そのような<誰か>であったという事実に。<他者>は、まさに「存在することの彼方」なのである。</p><p><br></p><p><他者>との間に、言葉に出来ない「無限小の差異」が存在する。だが、その差異はまた、絶対的な懸隔でもある。<私>は<他者>として死ぬことすら出来ない。だが、その不可解な差異が存在するということ、それこそが、逆に<他者>の身代わりとなってこの「私」が死ぬということの、可能性の条件ではないだろうか。そこにこそ、<私>が<他者>のために身を捧げるということの意味が存在するのではなかろうか。</p><p>もし、私が他者でもありうるのならば、他者の苦痛と私の苦痛の絶対的な差異は、もはや存在しなくなるだろう。そして、他者の死と私の死は、一つの世界内の比較可能な出来事となるだろう。そこにおいてもし私が他者の代わりに死ぬことがありうるとすれば、それは一つの偶然的な事態の、場所の移転にしかすぎなくなる。だが、そのときにはまさに死の重み──世界が消滅するということ、絶対的な体験不能性であるということ──が抹消されてしまう!もしそれでも、そのような絶対の深刻さにおいて死を理解するならば、他者の死と私の死は、同じ死であるということになる!そこにおいて、他者の代わりに死ぬことは、もはや無意味であろう。</p><p>しかし実際には、<他者>と私の間には、言葉に出来ない絶対的な懸隔が存在する。私は<他者>であることができない。だからこそ、<他者>への献身が意味をなすのだ。</p><blockquote><p>他人によって息を吹き込まれることで、この息切れは<存在すること>を突き破る。息を吹き込まれることはすでにして息を吐き出すことであり、「魂を捧げて死にうること」なのだ!ありうる限りもっとも長い息、それが息吹きとしての精神である。人間とは中断することなく息を吸い込み、一方的に息を吐き出す、もっとも息の長い動物ではなかろうか。自己を超越すること、我が家から脱出し、ついには自己からも脱出するに至ること、それは他人の身代わりになることである。<sup>54</sup></p></blockquote><p>だが、<他者>への贖いは、単にこの私を抹消することではない。先ほど我々は述べた。それが決して聞き届けられることがなかったとしても、その手前にそれを語った<誰か>がいると。同様に、<他者>のために贈与しうるためには、「存在することの彼方」へ赴くためには、語りえない唯一のこの「私」が要請されるのである。私が友人にささやかなプレゼントをするときでも、いや、日常のおはようの挨拶を差し出すときでさえ、その<他者>をみたすために、かけがえのないこの「私」が召還されているのだ。誰にもこの「私」が<誰>であるか決して知られることがなかったとしても。「私」という発語には、そのようなこの「私」の<他者>への責任が賭けられている。</p><blockquote><p> <私>という言葉は、万事に、万人に責任を負うわれここに me voici を意味する。<sup>55</sup></p></blockquote><p><他>のために身をささげる<一者> l'un pour l'autre、それが「存在するとは別の仕方で」である。それは存在することから発しながら、存在することの彼方へと赴く。レヴィナスが冒頭で語った真の超越とは、このことに他ならない。いま一度引用しよう。</p><blockquote><p>超越に何らかの意味があるとしても、存在するという出来事──存在性──存在することが、存在とは他なるものへと過ぎ超すという事態をおいてほかにあり得ない。<sup>56</sup></p></blockquote><p> 別の仕方で語ろう。我々が見てきたように、独我論は究極の不条理、ないし無意味であった。それは端的に語りえないだけでなく、すべての生の内在的な意味を抹消してしまう。だが、「存在するとは別の仕方で」、<他者>へと身をささげうることにこそ、独我論それ自体の<意味>が存在するのである。</p><blockquote><p>ある (il y a) の不条理は、──他人のために身代わりになる一者の様態である限りで、支えられたものである限りで、──意味する。客体と見なされていかに否定されようとも、一切の否定の背後であるは再開し、あるのこのくり返しの無意味さが、すべての他人に対する臣従という宿命さながら、かかる臣従の主体たる私を押しつぶすのだが、このような無意味さは意味に対する無意味の剰余であり、この剰余ゆえに、贖いが<自己>にとって可能になる、──自己自身はまさにこの贖いを意味しているのだ。ある──それは他性の全重量である。<sup>57</sup></p></blockquote><p> 我々は問うた。<語られたこと>に先行する<語ること>とはいかなることか、<語ること>のもうひとつの<意味>とはなにか、と。<語ること>はあくまで<語られたこと>の手前にとどまる。<語る>ところの独我論的他者は、聞き届けられた<語られたこと>に先行し、そこに痕跡として刻み込まれているが、それは否定的にすら現前することがありえない。にもかかわらず、<語ること>は<語られたこと>の彼方へ赴く。唯一者としてのこの「私」は、存在論的平面にはいかようにも位置づけようがない<他者>へと<語る>のだ。<語られたこと>に回収されえない、いま一つの<意味>がここには「存在」する。この「私」の<意味>とは、この私のすべての言葉であり、献身であり、贈与である。それは、生も死も引き受けることが出来ない<他者>である唯一者が、それでも「存在」しなければ、言い換えれば他者に<魂>がなければ、この「私」のすべての愛は<無意味>になる、そのような<意味>なのだ。</p><p>レヴィナスであった<誰か>は、その語りえない<真実>を、その生命のすべてを賭して我々に語ろうとした。それこそが、彼の私たちへの<語ること>であり、身代わりであり、そして─ ─この言葉を使用することが許されるとすれば──愛なのだ。たとえその言葉が、語られたことで必然的に自らを裏切り、曲解され、私たちの世界の手前にとどまり続けたとしても。我々は、レヴィナスの炸裂せる言の葉に、彼の「われここに」を聴き取るべきである。もう一度だけ、レヴィナスの言葉を引いて、この論考を締めくくろう。</p><blockquote><p>哲学は、他人のために身代わりになる一者として、他人に対して無関心-ならざることとして、一者と他人との差異を意味づける、そのような<語ること>の従僕にとどまる。哲学、それは愛に仕える愛の叡智なのである。<sup>58</sup> </p></blockquote><p><br></p><p>1. Emmanuel Levinas “ Autrement qu'etre ou au-dela de l'essence , Nijhoff, 1978 = 合田正人訳『存在の彼方へ』講談社、1999。 </p><p>2. ibid., p20</p><p>3. ibid., p21 </p><p>4. ibid., p328 </p><p>5. ibid., p39</p><p>6. ibid., p204 </p><p>7. 熊野純彦『レヴィナス 移ろいゆくものへの視線』岩波書店、1999。p246</p><p>8. op.cit., p70 </p><p>9. ibid., p26 </p><p>10. ibid., p22 </p><p>11. ibid., p28-29 1</p><p>12. ibid., p22 </p><p>13. ibid., p67 </p><p>14. ibid., p31 1</p><p>15.『世界の名著 58』所収「論理哲学論」中央公論社、1971。以下本テクストおよび『哲学探究』は、節番号で引用する。</p><p>16. ibid., p464 </p><p>17. ibid., p381 </p><p>18. ibid., p26 = 原書 p17 </p><p>19. Op. cit.</p><p>20. Emmanuel Levinas Le temps et l’autre, 1948= 原田佳彦訳『時間と他者』 法政大学出版局、1986。 </p><p>21. ここで「実存すること」という概念は、後期レヴィナスの「存在すること」essence と全く同義として扱って差し支えない。 </p><p>22. ibid., p8</p><p>23 ibid., p13-14 </p><p>24. ibid., p23-24 </p><p>25. ibid., p60-61 </p><p>26. ibid., p48</p><p>27. ibid., p6 </p><p>28. ibid., p9 2.『ウィトゲンシュタイン全集 6』大修館書店、所収「青色本」p117。 </p><p>29. ibid., p119 </p><p>30 . ibid., 「個人的経験」および「感覚与件」について ,p352</p><p>31. Op.cit., p66 </p><p>32. ibid., p76 </p><p>33. ibid., p76 </p><p>34. 我々は、ここでレヴィナス自身の論理展開を無視し、主体性に関する部分だけ取り出した。レヴィナス自身の論理は、おおむね、以下の通りである。存在論は、<語られたこと>をその源泉としている。だが、<語られたこと>に、<語ること>は論理的に先行している。<語ること>は、<一者>によって発語される。言い換えれば、「見るもの一般」と一応措定された「誰」とは、まさに発語するこの「私」のことだったのである。 </p><p>35. ibid., p47-48 </p><p>36. ibid., p144 </p><p>37. Op.cit., p366 </p><p>38. 柄谷行人『探究Ⅱ』 講談社 1989。p29 </p><p>39. Emmanuel Levinas Hors Sujet, Fata Morgana, 1987 =合田正人訳『外の主体』みすず書房、1997。 p249-250 </p><p>40. ibid., p193 </p><p>41. Op.cit., p397-398 </p><p>42. ibid., p127 </p><p>43. 永井均『ウィトゲンシュタイン入門』筑摩書房、1995。p210-217 </p><p>44 .『ウィトゲンシュタイン全集8』大修館書店、1976。</p><p>45.『存在の彼方へ』p98 </p><p>46. ibid.p114 </p><p>47. ibid., p100 </p><p>48. ibid., p143</p><p>49. Humberto Maturana. & Francisco Varela. El Arbol del Conocimiento,- = 1987 管啓次郎訳 『知恵の樹』, 朝日出版社 ,p11 </p><p>50.『外の主体』p4 </p><p>51.『存在の彼方へ』p150 </p><p>52. Emmanuel Levinas De Dieu qui Vient a l'Idee, Librairie Philosophique J.VRIN 1982= 内田樹訳 『観念に到来する神について』, 国文社 1997。p313-314 </p><p>53.『存在の彼方へ』p315 </p><p>54. ibid., p405</p><p>55. ibid., p265 </p><p>56. ibid., p20 </p><p>57. ibid., p372 </p><p>58. ibid., p368</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-83223712829040380012017-10-27T18:35:00.001+09:002017-10-27T18:38:03.455+09:00松尾匡氏による書評:『人権の経済システムへ』<p>私の著書<a href="https://goo.gl/9muZMT">『人権の経済システムへ サビ残ゼロ・最賃アップ・消費税3%が開く新しい社会』(Amazonオンデマンド出版)</a>に関して、経済学者・立命館大教授の松尾匡氏から長大な書評をいただいたので、許可を得て転載させていただきます。</p><p>経緯を簡単に説明すると、<a href="https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660">7月にnoteでこの論考をリリース</a>したときに、松尾さんに購入いただき、分析内容と提言政策にほぼ全面的に賛同する旨のメッセージをいただきました。今回、Amazonで出版するに当たって簡単なコメントをお願いしたところ、思いもよらずA4で12枚にも及ぶ長大な書評をいただきました。</p><p>あまりにも長いので、松尾氏からいただいた短縮版を最初に掲載し、そのあと全文を掲載します。</p><blockquote><p>この論考「人権の経済システムへ」は、供給サイドに偏する日本の主要な経済論壇の状況をするどく批判し、総需要サイドの視点からの対案を提起するものである。著者は、「エキタス京都」の関係者である。この運動体の中から、このような論調の議論が世に出てきたことを、心から歓迎したい。 </p><p>「エキタス」関係者の議論だから、当然最低賃金引き上げが処方箋である。しかしこの論考で重要なのは、それが、いわゆる「サービス残業」の廃絶および消費税率の引き下げとセットにして提唱されていることである。この三者がセットになっていることには必然性がある。それが、日本経済衰退と労働者の貧困・疲弊の原因が総需要不足にあるという著者の認識から導かれるのである。総需要不足なのに、供給サイドばかり見る左右の経済政策が、事態の悪化を促進させているとされていて、著者の提言はその構造を断ち切る対案となっている。</p></blockquote><a name='more'></a><p><hr></p><p>「人権の経済システムへ」レビュー<p>松尾 匡<p> 評者もしばしば強調してきたことだが、経済学には供給サイドを重視するものと、需要サイドを重視するものがある。新自由主義政策のバックボーンになっている新しい古典派経済学は、前者の供給サイドを重視するものである。それに対して、欧米反緊縮派の政策のバックボーンのひとつになっているケインズ派経済学は、後者の需要サイドを重視するものである。<p> 新しい古典派が供給サイドを重視するのは、市場メカニズムがスムーズに働いて需要不足は速やかに解消され、供給能力どおりの生産が行われるとみなしているからである。この場合経済成長とは、生産性を高めて供給能力を増やしていくことを指す。規制緩和などはそのために主張されているものである。<p> しかしケインズ派経済学からは、それに対して、いくら生産能力を高めても、世の中全体の財やサービスを買おうとする力=「総需要」が少なかったなら、実際の生産はそれに合わせて少ないまま、雇用も少ないままだとする批判がなされる。むしろ、生産性を高めたら、なけなしの需要に合わせた生産に必要な労働がさらに少なくてすむのだから、雇用は減ってしまう。この立場からの経済成長とは、総需要を拡大することによって、それに合わせて財やサービスの生産を増やし、失業者を減らしていくことを指す。<p> 前者の、供給能力の拡大を掲げる「成長戦略」は、小泉構造改革のスローガンからアベノミクス「第三の矢」に流れ、「希望の党」「維新の会」の看板政策(「規制緩和」「規制改革」)にも生き続けている。「第三の矢」の「成長戦略」など、労働規制緩和にせよ特区にせよ、庶民の立場からは「もうたくさん」というものばかりなのに、マスコミの論調はもっぱら、この意味での「成長戦略」が足らないと言うものばかりである。まだ消費需要の拡大が弱く、十分にデフレ傾向を抜けていない中では、人々の雇用不安を解消するためにも、むしろ総需要を成長させる政策こそが必要なのに、それに対しては、近視眼的な小手先の政策であるかのような扱いが目立つ。むしろ、あきらかに消費需要を抑制するはずの消費税率の引き上げを支持する社説ばかりである。<p> これはマスコミばかりではない。マルクスの『資本論』の失業分析がもっぱら、正常に稼働された資本の、労働節約的技術変化や蓄積減退に帰因させるもので、総需要不足による過小稼働にともなう失業が考察されていないことは、この本の分析目的が資本主義経済システムの長期的な再生産構造とその持続可能性の検討にあることを考えれば適切だろう。しかしマルクス経済学者がその前提を忘れ、生産能力どおりの生産を前提した『資本論』の議論のまま経済停滞を論じていては、総需要拡大政策が提唱できないのも当然である。また、エコロジー系論客にとっては、供給制約こそ問題意識の焦点だから、やはり総需要の方が過小で生産の制約となる事態は認識しにくい。<p> このような知的背景のもとで、日本の左派、リベラル派の世界では、総需要拡大政策への言及が弱く、語るとすれば長期の産業支援政策などの話が中心になりがちである。むしろ、日本の長期不況を、少子化などによる供給能力の停滞がもたらした必然とみなし、総需要の拡大によって解消できるものとみなさない論調が力を持ち、若者をはじめ雇用不安に怯えるおおくの人々を安倍自民党の支持へと追いやっている。<p> すなわち、左右の主要な経済論調がともに、供給能力サイドの視点にのみ偏重して、需要サイドの視点を欠落させてきたために、雇用の不安と低賃金に苦しむ多くの人々のニーズを汲み取れなくなっていたと言える。<p> 評者は以上のような認識から、日本の左派の中に、総需要サイドを重視した経済政策体系を提唱する論者の影響がもっと強まることを期待してきた。左派系の運動の中でも特に、最低賃金引き上げを主張する運動「エキタス」については、その社会的意義は大きいと考え、評者が提唱する認識に立つように願ってきた。<p> この論考「人権の経済システムへ」は、以上に述べたような日本の主要な経済論壇の状況をするどく批判し、総需要サイドの視点からの対案を提起するものである。著者は、「エキタス京都」の関係者である。この運動体の中から、このような論調の議論が世に出てきたことを、心から歓迎したい。<p> 「エキタス」関係者の議論だから、当然最低賃金引き上げが処方箋である。しかしこの論考で重要なのは、それが、いわゆる「サービス残業」の廃絶および消費税率の引き下げとセットにして提唱されていることである。この三者がセットになっていることには必然性がある。それが、日本経済衰退と労働者の貧困・疲弊の原因が総需要不足にあるという著者の認識から導かれるのである。総需要不足なのに、供給サイドばかり見る左右の経済政策が、事態の悪化を促進させているとされていて、著者の提言はその構造を断ち切る対案となっている。<p> 著者は、上野千鶴子の議論に典型的に見られ、民進党のブレーン(だった?)井手英策にも見られる傾向の論調を、「みんなで痛みを分かち合って衰退を受け入れる」社会モデルと呼んで批判する。そして、民進党のオール・フォー・オールの考え方について、「年収2000万円の人間から400万円を徴税するということと、年収200万円の人間から40万円徴税することとは、命の重みという観点では決定的に異なる」と指摘し、「民進党が言っていることは、三食ろくに食べられない独身派遣社員の口から食べかけのカップラーメンを奪いつつ、「将来あなたに子どもができたら教育費を無償にしてあげるから安心でしょ」と言いくるめるようなことではなかろうか」と言う。<p> 著者は、リベラル系に見られがちなこのような議論に対して、「経済を救うことは、ひとの生命を救うことである。それを非現実的だと言って簡単に諦めるとすれば、そのような政治に存在意義はない」と評しているが、全くそのとおりである。<p> 他方で著者は、安倍政権が推進する「人づくり革命」と「残業代ゼロ法案」を、「ブラック経済」の推進と合法化の企みとして批判する。<p> そしてこうしたリベラル側の経済衰退論と安倍政権の労働政策には、「深い共通点」があると指摘する。それは、「働けば働くほど、経済が発展する」というパラダイムだと言う。労働強化して経済発展しようとするのか、労働生産性上昇も労働力人口増大も無理だから衰退を受け入れようとするのかの違いで、前提は同じだというのである。<p> これを著者は批判し、本当の因果関係は、「日本人は働き過ぎだから経済衰退している」のだと言う。鍵は「有効需要不足」である。総生産が需要不足の制約を受けて増やすことができないところに、労働投入を増やしたならば、当然労働生産性は低下する。働けば働くほど日本経済は貧しくなる。<p> そして曰く。「なぜ日本人は消費しなくなったのか。若者が無欲になったためだとか、将来不安のためだとか言われているが、それが的外れな指摘であることは当の若者が一番よくわかっている。ごく単純に、手持ちのお金がないからだ。」その通り!<p> 著者は給与総額と名目GDPの極めて高い相関を示し、賃金が上がれば消費需要が拡大して日本経済は復活すると言う。これは、逆因果を計測している可能性も高いのだが、それはこの際重要なことではない。賃金分配率が抑制されていることが消費停滞の原因であることは誰も否定できないだろう。<p> こんなふうになっている主要な要因として、世上よく言われる「格差社会」という問題についても、それが正規・非正規の格差を指すものとしては、著者は疑問を呈している。非正規の低賃金や労働条件ももちろんひどいが、著者は、日本の正社員がいかに過酷に働かされているかを詳細なデータで示す。サービス残業による労働者の損失は、年26.8兆円にのぼると言う。<p> それに対して著者が示す要因は、1997年から98年にかけて起こった、本格的デフレ不況への突入である。これ以降、デフレ不況の深化と、非正規化・賃金低下・労働のブラック化との双方が、相互に因果スパイラルを起こして深刻化していったことが論証されている。「サービス残業がサービス残業を生み、給与低下がさらなるリストラを生む。そうして個人消費がどんどん低迷して経済が低迷する、この地獄の「過労デフレスパイラル」に日本は20年間とらえられている」と言う。著者の指摘どおり、このデフレ不況への突入の重要な一因が、消費税の3%から5%への引き上げにあったことは言うまでもない。<p> このような状況に対して、安倍政権が企てる労働強化政策は、事態を悪化させるだけだとする。また、民進党が企てた消費税の引き上げも、「可処分所得を目減りさせる消費税増税によって、個人消費低迷と給与カットのデフレスパイラルが加速することは疑いない」と斬って捨てる。「経済をこれ以上崩壊させて、どうやって社会保障制度を維持することが可能となるのだろう」と。全くそのとおりである。<p> 著者による、最低賃金大幅引き上げ・サービス残業廃絶・消費税率引き下げの三点セットは、以上のような現実認識をふまえ、この負のスパイラルを逆回ししたプラスのスパイラルをもたらすものとして構想されている。最低賃金引き上げの結果、「賃金が底上げされた分、個人消費が増えて、全体としては企業の売上げが上がる。そうしてまた雇用が増え、給料が上がる」とされているのだが、それはサービス残業廃絶と組み合わせなければならない。<p> というのは、サービス残業廃絶なしの最低賃金引き上げは、ブラック正社員化を進めるだけとされる。逆に、最低賃金引き上げなしのサービス残業廃絶は、正規雇用の非正規への取り換えを進めるだけで、ともに消費需要の拡大にはつながらないと言う。<p> また、最低賃金引き上げを法的に強制するだけでは筋が悪く、「労働力の需給を逼迫させれば、自ずと賃金水準は全体に上がるはずだ。」サービス残業を廃絶すれば、大量に労働需要が増える。残業代の増加から消費需要が増えるので、やはり景気がよくなって労働需要が増える。このことから、労働市場が逼迫して賃金が上昇する。正社員数が増えるので、非正規の労働市場の労働供給が減ってそこでも賃金が上がる。このように言う。<p> しかし、現在急進的にこれらの改革をしても、「企業の資金繰りが悪化し、連鎖倒産する危険性がある。」そこで著者がセットで提唱するのが、消費税率の3%への引き下げである。消費需要が拡大して企業業績が上がる。さらに一定規模以下の企業への消費税支払い免除、「社会保障費の負担軽減や、人件費の融資・立替払いなど、さまざまな政策パッケージが考えられる」とするが、いずれも、最低賃金引き上げ・サービス残業廃絶とセットにしてこそ意味があり、それなしには企業支援が景気一般の底上げにつながることはないとする。<p> 以上がこの論考の主張の概説である。評者は以上示した議論の筋について、何も異論がない。全くそのとおりであり、心強く思う次第である。実際に示されている消費税率や最低賃金の目標数値や実現スピードについては、今後データを精査して少しでも正確な算定をすることをお互いの課題としたい。<p> 以下では、いくつか補足の説明と提案をしたい。<p> まず、最低賃金引き上げがなぜ景気拡大に貢献するかということについて、一言補足したい。<p> 現在行われている「インフレ目標政策」が目指しているのは、借金が将来目減りする予想を人々につけることで、設備投資や住宅投資、耐久消費財購入を促し、総需要を拡大することである。しかし、設備投資の主体である企業にとっては、売値が上がれば借金が目減りするかもしれないが、住宅投資や耐久消費財購入の主体たる一般労働者にとっては、賃金が上がらないと借金は目減りしない。今、多くの人は、将来賃金が上がる予想をあまりしていないと思うが、一般物価が上がる予想だけして、賃金が上がる予想をしなければ、一般労働者は将来に備えてかえって貯蓄を増やして消費を抑えてしまい、総需要拡大の足がひっぱられてしまう。<p> だから、住宅投資や耐久消費財投資にもこの効果が及ぶためには、将来賃金が上がっていく予想を人々が抱かなければならない。最低賃金は法定すればいいのだから簡単である。将来に向けて一定率で上がっていくスケジュールを公定すればいいのである。<p> 最低賃金が上がれば、企業は同じことをさせるのに非正社員を雇うメリットが減るので、正社員化が促進される。そうすると、正社員の労働需要が増えるので、正社員の賃金も上がっていくことが予想されることになる。<p> それから、当面まだ景気拡大が十分でない間、最低賃金を大幅に上げたときの、中小企業の資金繰り支援の問題であるが、著者の示唆した「人件費の融資・立替払い」については、政策金融公庫債を日銀がほとんどゼロ金利で買い入れた資金を使って、政策金融公庫が中小企業に超低金利で融資するスキームを提案したい。なおこれはサービス残業廃絶でかかる残業代の支援のためには使うべきではない。残業代を払うことよりも、残業をなくす方が促進されるべきだからである。<p> 一般に、賃金が上昇したら、企業が同じプロジェクトへの投資をするために借りるべき資金額が増える。すると、日銀が十分な金融緩和をし ていないと、金利が上昇して断念される設備投資が発生する。そうなると、総需要拡大の足が引っ張られる。だから、最低賃金の大幅引き上げは、十分な金融緩和とセットで行わなければならない。 </p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com11tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-68546814783929821802017-09-28T01:32:00.000+09:002017-09-28T12:45:58.191+09:00日本政府、新興宗教「不二阿祖山太神宮」宣伝イベントを全面後援 ―安倍昭恵とカルト国家の淵源―<p>9月26日号の日刊ゲンダイに<a href="https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/214250">「隠れの昭恵夫人 今度はカルトイベントの名誉顧問に就任」</a>というタイトルの記事が掲載されました。記事を読むと、これは「昭恵がオカルトに毒されている」という問題よりはるかに深刻な、国家の根幹に関わる問題であることがわかります。</p><blockquote><p>森友学園と加計学園に関与したとされる安倍昭恵夫人。雲隠れしたまま説明責任から逃げ続けているが、またぞろ怪しげなイベントの広告塔を買って出ていることが明らかになった。10月14日から2日間の予定で熊本県で開催される「みんなのFUJISAN地球フェスタ“WA”2017」というイベントの名誉顧問を務めるのだ。顧問には石破茂氏、谷垣禎一氏といった国会議員もズラズラと名を連ね、<u>内閣府、経産省、防衛省といった主要官庁のほとんどが後援団体になっている。</u>(下線部引用者)</p></blockquote><p>「私人」である安倍昭恵氏が、どの宗教法人と関係があっても、それ自体はたいした問題ではありませしん。しかし、特定の宗教法人がらみのイベントを主要官公庁が後援しているのは、政教分離原則への侵害です。そこに一私人が介入していたとすれば、これは国家の根幹を揺るがす大事件のはずです。</p><p><br></p><a name='more'></a><hr><h3><br></h3><h3>Fujisan地球フェスタの概要</h3><p><br></p><p>今年10月14日・15日、「<a href="http://www.chidama.net/festa_top.html">Fujisan地球フェスタ WA 2017</a>」というイベントが熊本県阿蘇市で開催されます。その主旨は、</p><blockquote><p>FUJISAN地球フェスタWAは、「美しい地球と和の心を子ども達に」をテーマに、若者達が中心となって 「日本人の心のふるさと富士山から、日本と世界の子ども達の明るい笑顔と、日本の古き佳き伝統文化を発信し、音楽・ダンス・武道・芸術・食を通して、国境も人種も言葉の壁も乗り越えて、 一つの大きなWA(和・輪・環)を広げ、未来の子ども達に争いのない美しい地球を残してあげたい…」という願いを込めて開催致します。</p><p><br></p></blockquote><p>このイベントの後援団体一覧には、内閣府や経産省・厚労省以下、ほとんどすべての主要官公庁が名を連ねています。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-BbaovegLTt8/WcvSWA3dG9I/AAAAAAAAA8E/FF8bko7cqysZzWOwuabys0kIcjK-ao51gCHMYCw/s1600-h/image3"><img width="625" height="149" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-E0WeS5RSPYE/WcvSXO3ll2I/AAAAAAAAA8I/0TBNZHSUFyIFFkKGcBa8xBJaPH6OtqDewCHMYCw/image_thumb1?imgmax=800" border="0"></a></p><p><a href="http://www.chidama.net/festa2017/contents/outline.html">イベント概要</a>を見れば、「<a href="http://www.chidama.net/festa2017/contents/participant.html">省庁後援コンテスト</a>」の授賞式も入っており、記念品は環境省推薦「エコアクションポイント」です。「<a href="http://www.chidama.net/festa2017/contents/schedule.html">総額100万円相当</a>」という記載もあるので、ここに、国民の税金が支出されている可能性が高いでしょう。</p><p><a href="http://www.chidama.net/festa2017/contents/yakuin_list.html">役員名簿</a>には、名誉顧問として安倍昭恵・石破茂・谷垣禎一が就任し、顧問には自民党を中心に国会議員70名以上が名を連ねています。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/--5_zUC2hic0/WcvSYFInPkI/AAAAAAAAA8M/hnWc1uvV74sPN_wM38uqh7X9FZUpMLDGgCHMYCw/s1600-h/image14"><img width="607" height="263" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-RNInaVkVPgI/WcvSZgZOPOI/AAAAAAAAA8Q/KYNtgJrTLcA2v6d1KVfF-vJo9-gycLqWACHMYCw/image_thumb5?imgmax=800" border="0"></a></p><p><br></p><p>さて、このイベントのロゴを見ると、「愛と平和のシンボルである”WA"の象徴 富士山は合掌した姿 すべてはこの祈りから始まる」とあるわけです。昭恵ときて、「祈り」ですから、そこはかとなく怪しげな香りが漂ってきますね(笑)</p><p><br></p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-AXfDgx85Iqw/WcvSbKZOgtI/AAAAAAAAA8U/bwqsVzYhaTwbRM8EsMBV6YxagVHaJBBxwCHMYCw/s1600-h/image15"><img width="348" height="199" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-CiIK_VvJnew/WcvScNxGQAI/AAAAAAAAA8Y/RC7u9VkKrQ4RpnRWh_EW4i5AZcBZXRUFQCHMYCw/image_thumb6?imgmax=800" border="0"></a></p><p><br></p><p>では、このイベントの本質はいったいなんなのでしょうか。その鍵は、大会実行委員長にあります。</p><p>実行委員長である渡邊政男は、実は「不二阿祖山太神宮」なる新興宗教の教祖、渡邊聖主です。<a href="http://www.chidama.net/festa2017/images/top_img_big.jpg">大会パンフレット</a>と、教祖様としての<a href="http://joy-healing.jp/readings/special/81.html">対談</a>の顔写真を見比べれば一目瞭然です。まあ、そもそも対談で、渡邊政男=渡邊聖主と書いている訳ですが(笑)。<br>
</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-CZHGMsI6AtA/WcvSdrKaWxI/AAAAAAAAA8c/8v02_6ykXXQCqdIlBnJWS7wvPoX0hL6OQCHMYCw/s1600-h/image19"><img width="269" height="150" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-sEiiUy5fB74/WcvSeYplIxI/AAAAAAAAA8g/eXMtnxaIxlcheVSNNBhya32RGOaddF7NACHMYCw/image_thumb8?imgmax=800" border="0"></a><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-6XaLYl0Uy-c/WcvSfZDwCjI/AAAAAAAAA8k/RTTzjX4lubIMgTNtA5vYXZCXuyJcTm1vwCHMYCw/s1600-h/image22"><img width="218" height="244" title="image" style="margin: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-iVQerK8ew-o/WcvSgCJ8hjI/AAAAAAAAA8o/JPDhncqaV3Yo4KkxRim9lqCLhlGP9FytACHMYCw/image_thumb9?imgmax=800" border="0"></a></p><p><br></p><p>そして、このイベントの<a href="http://www.chidama.net/festa2017/contents/sponsorship_list.html">協賛者様一覧</a>の筆頭に、(宗)不二阿祖山太神宮が入っています。</p><p><br></p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-iEzbR8cklBE/WcvSgwzNWOI/AAAAAAAAA8s/5giFV70Zvfkz_kL_ckEUs7MM7u8kyEypACHMYCw/s1600-h/image26"><img width="477" height="201" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-hlsL9oTGR-Q/WcvShlpXrAI/AAAAAAAAA8w/jgUkmSywv3Mk9VZ1hpi42WdGThEKStodACHMYCw/image_thumb11?imgmax=800" border="0"></a></p><p><br></p><p>ちなみに注目すべきは、「運営費を除いた全額を富士山を守るため、また富士山周辺の環境整備支援/青少年育成/不耕起農地再生のため、公共団体、公益団体 <u>など</u>に寄付致します。」</p><p>話が怪しくなってきました。「など」ってどこでしょうか?下手をすれば、これ、カルトの教祖様がイベントをやってるというだけではなく、カルトの資金集めイベントの可能性だってありえます。</p><p><br></p><h3>不二阿祖山太神宮とは</h3><p><br></p><p>さて、不二阿祖山太神宮とは、どんな宗教法人なのでしょうか。</p><p><a href="http://fujiasoyama.com">これがホームページ</a>です。頭痛にならない自信がある人だけが、見てください(笑)。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-XAu7InbLt2M/WcvSj1vvDBI/AAAAAAAAA80/5Pt7j3shbWowQvW0Pl7d1fdl6lR7Z0FowCHMYCw/s1600-h/image30"><img width="453" height="288" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-XNlEknjGL2o/WcvSk8mmv8I/AAAAAAAAA84/hL7XqLCmJY004ONsk34AefCjOBpTYmr7QCHMYCw/image_thumb13?imgmax=800" border="0"></a></p>
<p>「ご由緒」というページには、こんなことが書かれてます。</p><blockquote><p>始原神であり唯一神、宇宙の創造神たる「富士太神(不二太神)」を祀る日本最古の神宮である。不二高天原の御世は、凡そ三百万年前から二百万年前、此の地で国常立天皇により興され、富士太神(不二太神)を皇祖皇大神宮 別祖太神宮に祀り、祭政一致の神都として繁栄していく。</p></blockquote><p>300万年前から200万年前ですよ(笑)。われらホモサピエンスが出てきたのが20万年前。富士山がいまの場所で噴火し始めたのが数十万年前。安倍昭恵がらみの「日本最古の神社」を謳う新興カルト「弊立神宮」だって二万年の歴史しか主張していませんから、もうちょっと謙虚になれよと突っ込みたくなります(笑)。人類史も地質学も完全に覆すこの勢い、このモリモリ感、もはや完全にネタとしか思えません。よく考えれば、そもそも「不二阿祖山太神宮(ふじあそやまたいじんぐう)」というネーミング自体が、「富士」「阿蘇」「邪馬台国」をあわせた(以下略</p><p>ともあれ、日刊ゲンダイの取材に対して関係者は、「我々は神道の宗教法人でありカルト団体ではありません」と言っているのですから、ちょっと絶句してしまいますね。</p><p>で、不二阿祖山太神宮の「<a href="http://fujiasoyama.com/saiken.html">再建と意義</a>」というページには、こんなことが書かれています。</p><blockquote><p>不二阿祖山太神宮は、未来の子ども達へ素晴らしい地球を残し、世界平和を祈り続けるために最も重要で大切な太神宮でございます。</p></blockquote><p>先ほど、同じような文章を見たこと覚えているでしょうか。そう、Fujisan地球フェスタの主旨にあった「未来の子ども達に争いのない美しい地球を残してあげたい」と全く同じ事を言っています。</p><p><br></p><h3>Fujisan地球フェスタは政教分離を完全に逸脱した</h3><p><br></p><p>ここまでくれば、Fujisan 地球フェスタは事実上、不二阿祖山太神宮の主催イベントであると多くの人が疑うのは当然でしょう。その決定的な証拠をお見せします。</p>
<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/tkhWbovElfs?start=180" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe>
<p><br></p><p>昨年のFujisan地球フェスタWA2016の特別講演「富士王朝と高尾山古墳の謎」の動画です。大会実行委員長の渡邊政男と対談しているのは、『月刊ムー』の編集長、三上丈晴。三上氏は</p><blockquote><p>不二阿祖山太神宮が復活したこのタイミングで、天皇が生前退位、何か始まったのかな</p></blockquote><p>という発言をしています(3分ごろ)。これで、Fujisan地球フェスタは、不二阿祖山太神宮の宣伝イベントであることは確定しました。</p>
<p>問題の本質は、ここまであからさまなカルト集団の宣伝イベントを、ありとあらゆる官公庁が後援していることです。これは、宗教法人側の問題というよりむしろ、よく下調べもせず簡単に後援し国民の税金を使った政府側・政権側に責任があります。</p><p>日本国憲法第二十条には次のようにあります。</p><blockquote><p><dt>日本国憲法 第二〇条
</dt></blockquote><blockquote><p>一 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
</p><p>三 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。</p></blockquote><blockquote><p><dt>日本国憲法 第八九条
<br></dt><p>公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。</p></blockquote><p>これが、いわゆる「政教分離原則」の憲法上の根拠です。Fujisan地球フェスタが政教分離原則を明らかに逸脱しています。</p><p>カルトの宣伝イベントを政府ぐるみで支援していた、この責任は追及される必要があるでしょう。そして国民の公金を使用している以上、ここで集まった資金が不二阿祖山太神宮へと流されていないか、Fujisan地球フェスタ実行委員会は国民に対して説明する義務があるはずです。</p><p><br></p><h3>官公庁を動かしたのは、「最強忖度発生装置」安倍昭恵首相夫人?</h3><p><br></p><p>いかにもアレな新興宗教がらみのイベントを、なぜあらゆる省庁や地方自治体が後援し、多くの政治家が顧問に参加するに至ったのでしょうか。彼らを動かしたものは一体何だったのでしょうか。</p><p>ここで、どうしても疑いの目を向けざるを得ない人間が一人います。「最強忖度発生装置」こと、安倍昭恵首相夫人・名誉会長です。</p><p>初回のFujisan地球フェスタ2014の実行委員会名簿の中には、安倍昭恵の名前はありません。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-EzkEFzvFRY0/WcvSmJ6m4eI/AAAAAAAAA88/EjHI1jLzbvsi2UuLbHwhHea7TAC1oIdJQCHMYCw/s1600-h/image%255B4%255D"><img width="503" height="272" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-0Al10TrTIpM/WcvSm1pUpGI/AAAAAAAAA9A/4mMMMAO6KkskBRxR8meYP6ok03CHGye9wCHMYCw/image_thumb%255B1%255D?imgmax=800" border="0"></a></p><p>目につくのは。名誉会長の愛知和男、後援団体の外務省および日本会議でしょう。なお、日本会議は翌年の後援団体から消えています。</p><p><a href="http://www.chidama.net/festa2015/festa_top.html">フェスタ2015</a>になると、安倍昭恵が「第90代、96代、97代内閣総理大臣 First Lady」の肩書きで名誉会長に就任。それと同時に後援省庁の数が、内閣府以下、文部科学省|環境省|経済産業省|農林水産省|厚生労働省|防衛省|外務省|総務省|に急増し、顧問に就任した政治家も激増しています。</p><p>安倍昭恵夫人は同年、クラウドファンディング<a href="https://readyfor.jp/projects/5558">子ども達のために「FUJISAN地球フェスタWA2015」を開催したい!</a>で応援メッセージを寄せています。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-mPpTV8wo4z0/WcvSoctyKQI/AAAAAAAAA9E/oXzThkPVIOQ4-8yuMyW69Iz6znPwkrsvQCHMYCw/s1600-h/image%255B8%255D"><img width="432" height="368" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-FcupLEbl8LI/WcvSppoKRjI/AAAAAAAAA9I/apaGAOaQWlMW24iYuW_sfWUlIAOXyWa9wCHMYCw/image_thumb%255B3%255D?imgmax=800" border="0"></a></p><p>一番左側が教祖様=実行委員長の渡邊政男氏ですね。余談ですが、ここで昭恵夫人が手に持っているのは<a href="http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2012/08/post-017d.html">出口王仁三郎の耀椀</a>だと思われます。</p><p><a href="https://m.facebook.com/akieabe/posts/10153292715391779">安倍昭恵氏のFacebook</a>では、2015年5月6日に不二阿祖山太神宮に参拝しています。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-RdkpK5mDSyo/WcvSqYJvvYI/AAAAAAAAA9M/NatcAiw6QhM9vxQrsmiQicOUszMAFdrMwCHMYCw/s1600-h/image%255B12%255D"><img width="431" height="209" title="image" style="display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-4O0SuqxEwZg/WcvSrFUX-RI/AAAAAAAAA9Q/LFrlEjiwnhwrnZkYIZt4GAhJ52wzcQq5gCHMYCw/image_thumb%255B5%255D?imgmax=800" border="0"></a></p><p>こうした一連の流れを見ると、やはり安倍昭恵首相夫人が名誉会長に就任し、内閣府の中から各省庁に圧力をかけ、このカルト集団の宣伝イベントのために、日本国憲法における政教分離の原則を捻じ曲げさせたというのが、最もありうるシナリオではないでしょうか。</p><p>ここで疑われているのは、カルトの影響を受けた一私人が、国会議員でも政府役人でもないのに、国政に不当な仕方で介入したという疑惑です。そうだとすれば、その介入を許した「最高責任者」である安倍晋三首相自身の責任も到底免れ得ません。</p><p>安倍晋三・昭恵夫妻には、偽証罪の縛りをかけられたうえで、国会で自身の潔白を証明する必要があるのではないでしょうか。</p><p><br></p><p><hr></p><p>本ブログ記事は転載・拡散・印刷配布、完全に自由です。</p><p>引用元、筆者ともに明記の必要はありません。<br></p><p>どんどん広めていってください。</p><h3></h3><dd><br></dd>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-65559828765173202372017-07-30T00:00:00.001+09:002017-07-30T00:06:16.268+09:00「過労デフレ」時代の処方箋―「人権の経済システムへ」要約<p>この文章は、エキタス京都からリリースされた私の論考<a href="https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660"><font size="3">『人権の経済システムへ―サビ残ゼロ・最賃アップ・消費税3%が開く新しい社会』</font></a>の要約です。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-y61yvrDifI4/WXyjC2e1kCI/AAAAAAAAA6c/QrheNScHtaQUALjA-DAzk64toh88cR6OACHMYCw/s1600-h/N%25C2%25B4%25C3%2587%25C3%2595%25C3%25AC%255B3%255D"><br></a></p><p>本論の目的は、生命と人権に立脚した、全く新しい経済政策を提案することである。労働者を犠牲にする経済から、誰もが人間らしく生きられる経済へと転換することが、労働者だけではなく日本経済をも救うということを示したい。</p><p>日本社会は過去20年間にわたって、「経済のため」という名目で、多大な犠牲を労働者に強いてきた。正社員の過剰労働、非正規雇用の拡大、消費税増税、増大する社会保障負担などである。<br>
特に<strong>サービス残業</strong>は深刻で、いまや<strong>正社員の約半分</strong>に浸透し、その<strong>被害総額は年間約27兆円</strong>にも及ぶ。にも拘わらず、日本経済は先進国の中で唯一衰退し続けている。</p><p> <a href="https://lh3.googleusercontent.com/-y961fhOcXuk/WXykXCqZpxI/AAAAAAAAA7M/k0iKJAXb5eMw_A5n2Aj1LwQtGI-6a7G5gCHMYCw/s1600-h/Image"><img width="169" height="172" title="1" style="display: inline; background-image: none;" alt="1" src="https://lh3.googleusercontent.com/-Xi6TZFGHqlk/WXykXhgCLVI/AAAAAAAAA7Q/ew6NknswgGsLofJ0nHCI4p8tI_Q7Q01GgCHMYCw/Image?imgmax=800" border="0"></a><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-urx9hBv_6TM/WXykZdIki7I/AAAAAAAAA7U/31unnYW6BmsEf2G9EEn6qLqjWYVMbxnRACHMYCw/s1600-h/Image"><img width="151" height="172" title="2" style="display: inline; background-image: none;" alt="2" src="https://lh3.googleusercontent.com/-gk9G2YrXyBc/WXykZ5_hYPI/AAAAAAAAA7Y/Bfso2ZKV4rQGD_nclfSCVK2fP6VTSV_cgCHMYCw/Image?imgmax=800" border="0"></a></p>
<p> 「働いているのに経済が回らない」。それが働く人の素直な実感だろう。そして昨今、「日本人の働き方が非生産的だからだ」という考えが浸透しつつある。だが本当は、「<strong><font color="#ff0000" size="3">働きすぎだから経済が回らない</font></strong>」、これが正しい因果関係である。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-y61yvrDifI4/WXyjC2e1kCI/AAAAAAAAA6c/QrheNScHtaQUALjA-DAzk64toh88cR6OACHMYCw/s1600-h/N%25C2%25B4%25C3%2587%25C3%2595%25C3%25AC%255B3%255D"><img width="314" height="345" title="過労デフレ" style="display: inline; background-image: none;" alt="過労デフレ" src="https://lh3.googleusercontent.com/-95I7dOLzR2w/WXyjGZedXWI/AAAAAAAAA6w/HqnXk5OCUuMmsZLeWYP8vt4KrgLCtqAXACHMYCw/N%25C2%25B4%25C3%2587%25C3%2595%25C3%25AC_thumb%255B1%255D?imgmax=800" border="0"></a></p>
<p>97年の消費税増税以後、リストラによって失業者が増え、残された正社員に過剰な労働負担が押し付けられた。サービス残業が失業者を産み、賃金がカットされ、給与支給総額が下がった。個人消費が減少したために、企業の業績が悪化して、さらに人件費が削減される悪循環が続いた。<br>
小泉構造改革は、この失業者層を非正規雇用へと転換し、失業率を大幅に下げた。だが、これが正社員と非正規雇用のダンピング競争の始まりだった。正社員が減らされ非正規雇用が増え、残った正社員は、給料は増えないのに残業時間はさらに長くなっていった。働けども働けども、消費者は生活必需品すら買えなくなり、商品価格は下がり、労働生産性が低下した。この<font color="#ff0000" size="3"><strong>「過労デフレ」スパイラルが日本経済衰退の原因</strong></font>である。</p><p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-lNgJ2xdBo1g/WXyjHOQFhqI/AAAAAAAAA60/w_ypBjatEvE-8x1q0_IEDhrAycEsWzPrgCHMYCw/s1600-h/Image"><img width="339" height="264" title="10" style="display: inline; background-image: none;" alt="10" src="https://lh3.googleusercontent.com/-j3K3jB2u5WI/WXyjHV9wDoI/AAAAAAAAA64/Gm0HqBLbOvAyd3fhWbcott6duepE9OKJQCHMYCw/Image?imgmax=800" border="0"></a></p>
<p>日本経済の現状に対して、安倍政権は、「残業代ゼロ法案」などさらなる労働強化で経済成長を目論んでいる。民進党は、増税によって将来不安を除き、経済成長は諦めろと主張する。一見正反対に見える両政策だが、共通しているのは、過去20年間繰り返してきた、国や経済のために国民に犠牲を強いる姿勢である。どちらの道を歩んでも、過労デフレを加速させ、日本経済を崩壊させる。</p>
<p>サービス残業がさらなるサービス残業と非正規雇用を産み、ブラック企業が日本経済をブラック化する悪魔の循環を止めること、それが日本経済を再生させるただ1つの方法である。必要なのは<font color="#ff0000" size="3"><strong>「サービス残業全廃」、「最低賃金アップ」、「消費税減税」</strong></font>、このワンセットの政策パッケージである。<br>
消費税減税によって企業体力をつけ、サビ残全廃と最賃アップによって給与を底上げする。ブラック企業が市場から撤退し、その不当な利益が生活者とホワイト企業へと還元される。そうすれば、労働環境が正常化し、経済は自律回復の道をたどる。死ぬまで働かされる<strong>「犠牲の経済」から、「人権の経済」への転換が、私たちの生活だけではなく、日本経済と社会をも救う。</strong></p><p><strong><br></strong></p><p>私の論考に興味を持たれた方は、ぜひ本論をご参照ください。「過労デフレ」のメカニズムをデータと理論から実証しています。原稿用紙換算で50枚、A4で20ページほどの内容ですが、noteで100円で購入できます。収益の半分は、エキタス京都へのカンパになります。また、別途カンパもできます。</p><p><a title="https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660" href="https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660">https://note.mu/aequitaskyoto/n/n9127c3108660</a></p><p>よくわからないけど共感する、という方も、ぜひ拡散いただければと存じます。日本の労働環境と経済システムを変えていくプロジェクトに、ぜひご参加ください。</p><p>※この論考は、エキタスおよびエキタス京都の公式見解ではありません。文章の内容は私ishtaristに責任があります。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-49699177843943112062017-06-12T23:27:00.001+09:002017-06-13T08:55:18.625+09:00希望の経済学にむけて―サービス残業が日本経済衰退の原因だ<p> <p>某所で経済について講演をしたので、若干修正をして公開します。 <p>******************************************************************************************************************************* <p>今日は、経済の話だけでなく、選挙の話、憲法の話、今噂になっている日本会議の話、そういったものがどういうふうに繋がっているのか、経済というのはそもそも何なのかというところから、お話していきたいと思います。 <p> <h4><b>日本経済と労働の実態</b></h4> <p>まず、こちらのグラフをごらんください。一人当たり名目GDPこの20年間のグラフです。経済停滞していたのは先進国の中で、日本だけなんです。 <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-uP2wzNA7tQo/WT6koUgXGnI/AAAAAAAAA38/_zXAo5Waeh88E8EKuPnEVXPwDatgx_-jACHM/s1600-h/image%255B3%255D"><img width="442" height="250" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-uARsPaB4cKQ/WT6ko-3R8VI/AAAAAAAAA4A/AoySHTQrvI8mMyapUpBfA1VqQT0C1U6GACHM/image_thumb%255B1%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>「資本主義の終焉」や「人口構造」「グローバル化」「ネオリべラリズム」といった一般論ではなく、日本固有のメカニズムがあるはずです。なぜ日本だけこんなことになっているのか、誰もきちんと説明していません。 <p>一般論ですが、原因があって結果があるわけです。診断があって初めて、治療ができる。なのに、エコノミストや財界や政府は、日本が貧しくなった固有のメカニズムを説き明かすことなく、「お金を刷ればいい」とか「痛みを伴う構造改革」とか、適当なことを言って、おかしなドラッグを飲ませ続けた。それが現在の日本経済の姿です。 <h4>働き過ぎだから日本人は貧しくなった </h4><p>今日私がお話ししたいことは、第一に経済の問題とは、「人権」であり、「生命」の話であるということです。日本人が貧しくなった理由は、「人権」を大切にしないからだ。 <p>「日本人は懸命に働いているが、貧しくなっている」ーそれは、日本人の生産性が悪いからだとかよく言われるがそうではない。 <p><strong>働きすぎるから、貧しくなっている。</strong>それが本当の因果関係です。 <p>なぜ働きすぎると貧しくなるのか?当たり前の話です。どれだけ働いて物を作っても、買う人がいなければ経済がまわらないからです。 <p>例えば、トヨタとか「若い人はなぜ車を買わないんだろう」とか言って、市場調査とかしてるんです。 <p>なぜ買わないか?若者自身にとっては答えは自明です。お金がないからなんですよ。当たり前のことが、企業や経済学者には今一つわかっていない。 <p>私は、経済問題に特化していなくて、森友問題、原発問題、などツイートしているが、圧倒的に反響があるのは労働問題です。3万リツイートというのは、右から左までが反応しないとそうはならない。ネトウヨから労働者から経営者まで共感しないと得られない数です。 <p>若い世代にとって、労働問題は切実なリアルなんです。 <p>労働と生活の苦しさについて、若い世代の人は、どうしてこうなっているのかという説明と、救済を求めている。「中国共産党が民主党と共産党を操って、日本を守ろうとしている安倍政権を必死になって叩こうとしている」と信じている人が多い。 ただし、そういう物語が支持される現状があり、おそらくその背景に理不尽なまでの労働の実感がある。安倍晋三という人は、反日の理不尽さに立ち向かう人として立ち現れる。だから、安倍政権の個々の政策は全く支持されていないのに、支持率は50%を切らない。 <p>でも安倍さんの「働き方改革」はまやかしで、月100時間で合法とした。第一次安倍政権で進めたのがホワイトカラーエグゼンプション(一定年収の労働者には残業代ゼロ)。経団連は400万円以上を主張しています。単に残業代を払わないというだけでなく、労基法の無効化を狙っている。まさに、ブラック企業合法化です。 <p>無党派層から野党が積極的な支持を得るためには、私たちが人権の立場に立って、「反日勢力が日本を貶めようとしている」なんて無理やりの物語を「日本会議」よりも積極的な救済物語を提示するしかない。 <h4><b>日本人はこんなに貧しくなった。</b></h4> <p>正規職員 平均年収1998年 419万円→2014年 361万円</p> <p> <a href="https://lh3.googleusercontent.com/-tqFyhTKLQeY/WT6kpc2MTvI/AAAAAAAAA4E/b6kKwAUFxOcwOTGT8fawHF71hFp7RmXAQCHM/s1600-h/image%255B7%255D"><img width="332" height="209" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-e1LDYL3Lniw/WT6kpxsV3vI/AAAAAAAAA4I/ZekaUr1be2ACuqFNiOY1RG5a9cwwjjchwCHM/image_thumb%255B3%255D?imgmax=800" border="0"></a></p> <p>男性1986年、残業は週5時間弱だった。2006年では週平均13時間。週5日で一日2時間残業。一日当たりの労働時間のグラフ→段々上が伸びていて、一日12時間、16時間働いている状況です。 <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-j3Gw5n58MdM/WT8opBZMBnI/AAAAAAAAA5U/7LxiVecZ5qsEwtRn0AgaLNVEzkmUr6qNACHM/s1600-h/image8%255B1%255D"><img width="306" height="229" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-CVKD1jn-vck/WT8op4bFMmI/AAAAAAAAA5Y/LiTAxJrlIcUsL1W3OJq2d1SDcmhNaRMjQCHM/image8_thumb?imgmax=800" border="0"></a> <p>昨年、山添拓さんの労働実態調査に参加したとき、10代から30代の手取り20万円以上の人が半分(会場ざわつく)。 <p>みなさん、これ新宿の話ですよ?(会場どよめく) <p>たとえば、月280時間勤務で月手取り12万のプログラマーがいる。 <p>今、こういう時代なのです。 <p><b></b> <p>6割の事業所でサービス残業が行われている。サービス残業の被害総額が年間約27兆円。日本のGDP530兆円の5パーセントが残業代が支払われていない。給料がそれだけ押さえられている。だから、企業の売り上げも下がる、そして給料が抑えられるという悪循環にはまっている。 <p>27兆円がきちんと支払われたら、おそらくこの5倍ぐらいGDPの経済効果がある(乗数効果)。逆に言えば、その27兆円の不払い賃金によって、150兆円とか200兆円とか、本来あるべきGDPが抑制されているのです。 <h4><b>経済ってなんだろう?</b></h4> <p>そもそも、経済とはなんでしょうか。おそらく人類史上もっとも深く経済について思考した人はカール・マルクスだと思います。彼の考えでは、経済とは生命の繋がりの円環のことです。 <p>例)私が養鶏家だとする。飼料を買う。→育ててそれを肉屋に売る。→肉屋は肉を売る。→鶏を買った人がフライドチキンを作り食べる。→食べた人のエネルギーになる。→その人が鶏の飼料を作る。→私が飼料を買って鳥を育てる。 <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-pOujMUPNV8g/WT6krtYRB6I/AAAAAAAAA4U/btwD9499CgIAvFdFOPZbT9u1HyD4PZ5owCHM/s1600-h/image%255B53%255D"><img width="181" height="261" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-M73TLJZpXTE/WT6ksH3cEsI/AAAAAAAAA4Y/konKMR5MsTsgcUkHxNHCruiSqA1qxPy4QCHM/image_thumb%255B26%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>「生産」は「消費」によって次の「生産」につながっていく。 <h4><b>経済成長とは何か?</b> </h4> <p>多くの政治家や経営家は経済界の人たちは「経済が衰退しているのは、労働者が働かないからだ。」と考えている。 <p>だから安倍政権はブラック企業を合法化しつつ、自民党改憲草案で基本的人権を制限したいと考えている。 多くの人が生活を犠牲にして、労働者に働かせることで、経済成長につながると考えている。 <p>それに対して、一部の学者は経済成長を目指さずに、生活を大事にしましょう。とか、みんなで衰退を受け入れましょうと言う。 <p>どちらの立場も、生活を犠牲にして企業が利益を出すことで経済が成長する、と認識を持っている。だけど、その認識が根本的に間違っているのです。 <p>ここで一つの例を出しましょう。ジャイアンとのび太が、一年に一度、真珠とお金を交換するもっとも単純な経済システムを仮定します。 <p>のび太はジャイアンから真珠100個を全財産1万円で買った。ジャイアンは、真珠100個をのび太から買い戻すときに暴力をちらつかせて、最初の年1万円で売ったものを9000円で買い戻す。初年のGDPは19000円。 <p>翌年以降も、のび太がジャイアンから真珠を買い、さらにジャイアンがのび太から1割引きで買いたたく・・この経済システムの20年後のGDPはいくらでしょうか? <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-AnJKJS0yASU/WT6ksuG5A0I/AAAAAAAAA4c/N5dAMEXmFqgStAz2xDU6iCrK2S0hSi4wgCHM/s1600-h/image%255B25%255D"><img width="362" height="269" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-njpHLvH_TKc/WT6ktAw366I/AAAAAAAAA4g/wpuVxMMgtPQDMuzkd2POstcEPCDU0OuuQCHM/image_thumb%255B13%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>答え。20年後のGDPは2567円です。 <p>10000円で買ったものを、9000円で売る。のび太さんは9000円しかないから、真珠を9000円以上で買い戻すことができない。それをジャイアンが買いたたこうとすると、8200円とかになる。こうやってのび太の収入もジャイアンの収入も減っていく。利益だけは増えていくが、GDPは減り続けていく。 <p>大事なことは、GDPを8分の1まで減少させたおそるべき<strong>経済衰退は、 ジャイアンが自分の利益を最大化しようとした結果</strong>だということです。 <p>多くの人が、経済は金もうけだと思っている。ですが本当は、<strong>経済システムは、「誰かが利益を独占すれば、必ず全体が衰退する」システム</strong>です。これは、資本主義でも同じ、普遍的な真理です。それを経済学者のほとんどが理解していない。 <p>実はこれは何かに似ているとおもいませんか? <p>企業が内部留保をためる。貯蓄率下がっていって、給料も下がっていく、GDPも下がっていく。これ、日本の現状にすごく似てますよね。 <h4><b>高度経済成長とバブル崩壊</b></h4> <p>高度経済成長期に一番借金していたのは企業です。貯蓄をしていたのは家計。 利益を出して貯蓄する。企業が銀行を通して家計から借金をすることで経済が回っている。 給料をもらって、消費して残りの二割ぐらいを貯蓄してそれを融資して、全体に回っていたのが高度経済成長期でした。 <p>それに対して、バブル以降何が起こったのか? バブルの時に企業が借金して財テクに走った、銀行に乗せられて、絵とか土地とか買った。 借金して儲けるのが賢いということで。 <p>ところが、バブル崩壊で資産価値が暴落してしまって、企業の借金が残った。バランスシートが崩れる。 債務超過になってしまって、各企業が儲けた利益で借金返済に回す。投資が激減をして経済が縮小。 その代わりに政府が莫大な財政支出を行った。これが現在の財政危機の原因。 <p>このような「バランスシート不況説」を唱えたのがエコノミストのリチャード・クーですが、その説明は1997年までは全く正しい。ですが、その後の長期経済衰退は、バランスシート不況説では説明がつかない。 <h4><b>1998年</b><b>以降何が起こったか? 人件費抑制による経済停滞へ</b> </h4> <p>97年の消費税増税と98年の金融恐慌 のときに、企業が賃金を抑制したために消費が停滞し、企業の売り上げが伸びなくなった。 <p>過去30年間をみてみると、統計学的に言って、日本のGDPは99%給与所得によって決定されている。 <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-nLNa4Zkid9M/WT6ktRCHVaI/AAAAAAAAA4k/4LFT6rM8lEELlION6_kH0czfUZJzT_ukgCHM/s1600-h/image%255B29%255D"><img width="404" height="321" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-OuL3D3Gmnq8/WT6kt9lXvXI/AAAAAAAAA4o/TjpWrsxaouIGeIMeZPgxJESXVybAM3jCQCHM/image_thumb%255B15%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>要するに、給料を抑制したから消費が増えなくなった。 消費が停滞し、企業の利益がなくなりさらに給料が下がる。 <p><b></b> <p><b></b> <h4><b>人件費がなぜ抑制されたのか?</b> </h4> <p>ごく簡単に説明します。1998年を境に、企業は金融危機と消費税増税による財政難もあって、人件費に手をつけた。 リストラをしたので、サービス残業をせざるを得なくなった。失業者が増えた。 <p>サービス残業がサービス残業を産み、1社がサービス残業をすると、他の会社も追随してサービス残業せざるを得なくなる。こうなると、企業努力では歯止めが効かない。歯止めを効かせられるのは唯一政府。完全に政府の失政。 <p>安倍政権はブラック化を止めようとしていない。 <h4><b>ブラック経済の自己強化メカニズム</b> </h4> <p>じゃあ、サービス残業を産み出した原因は何か?実は、サービス残業自身です。サービス残業は、実はさらなるサービス残業を産み、経済の隅々に浸透することで、経済をブラックに染めてしまう恐るべき能力を持っています。そのメカニズムを簡単に説明します。</p> <p><b>① </b><b>賃金不況スパイラル</b> <p>重要。98年ぐらいからリストラして、給与総額が低下したので個人消費が低迷して企業の業績が悪化したので、リストラをした。悪循環に突入。 <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-gxBVacJoeRA/WT6kuo8y4zI/AAAAAAAAA4s/f-HeiQOHr60yqO8QizCqS0ePCv6ZoDEGgCHM/s1600-h/image%255B33%255D"><img width="308" height="295" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-gwGmYBgflI4/WT6ku-Od8dI/AAAAAAAAA4w/SzMVqABWsxQJZm6YX4zIVfRRwY8brJiZQCHM/image_thumb%255B17%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p><b>② </b><b>失業者増加による給与低迷</b> <p>サービス残業をさせると失業者が増える。サービス残業は年間27兆円の被害総額。サービス残業は違法でどろぼう、だから被害総額です。被害総額28兆円を平均的な給料、年収350万から400万円の給料を払ったら、800万人が雇用できる。サービス残業はそれだけ失業者を増やす。失業者を増やすと労働供給が低下するために、賃金は低下する。この人の代わりがいると思ったら、給料は下がる。完全失業率と給料の上昇率は非常に高い相関関係にある。 <p> <a href="https://lh3.googleusercontent.com/-9YVEAKKYaik/WT6kvqcplsI/AAAAAAAAA40/rtcHbR5A0T0ogFceWt70SXQhchHeJETQACHM/s1600-h/image%255B37%255D"><img width="485" height="210" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-K-5ntL9A0dY/WT6kwADjSZI/AAAAAAAAA44/io0cqnPbSzca29cwO01Y76G99k4XI3EuwCHM/image_thumb%255B19%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p><b></b> <p><b>③ </b><b>職場崩壊</b> <p>リストラをする。残りの人が業務を押し付けられる。業務を押し付けられた人が耐え切れなくなって突然やめる。引き継ぎもないまま、うつ病になったり、突然出社拒否する。そうすると、残った人でサービス残業をして離職してということがあちこちで起こっている。ツイッターで「職場崩壊を経験したことがある」というアンケートをとったら、63%だった。 <p><b></b> <p><b>④ </b><b>ブラック企業による業界ブラック化</b> <p>いわゆる業界最大手に君臨しているブラック企業を調べると、面白いことがわかります。みんな、1998年か2000年ぐらいから急拡大しているのです。極端なコストリーダーシップ戦略をとって、シェアを拡大する。 それを可能にしたのが、サービス残業であることは明白です。 <p>1社がサービス残業をやってしまうと業界の企業がサービス残業をやらざるを得なくなる。これも歯止めを効かせられるのは国しかない。 <p><b></b> <p><b>⑤ </b><b>正規・非正規の二極化と相互強化</b> <p>非正規の問題は重要だが、二次的な問題だと思っている。 ネオ・リベラリズムとか、竹中平蔵のせいで、派遣のせいで日本がだめになったとよく聞くと思われるが、その時期にはGDPは伸びている。 <p>もっと手前で問題が発生している。98年によるリストラによるサービス残業が増加し失業者が増加し、それを背景に非正規雇用を制度化したので、労働者が二極化した。<b></b> <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-5C8pT9dtiNk/WT6kwiRa-AI/AAAAAAAAA48/dyOIHrZ9S5YpUhfVVAGcZyIN2DQe78mbACHM/s1600-h/image%255B57%255D"><img width="342" height="280" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-Wt5T9oqAQF4/WT6kxGcQeLI/AAAAAAAAA5A/cSi1AebUxwMvD4v1NZpxCT7Tr7t1d3x3wCHM/image_thumb%255B28%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>派遣会社で最低賃金を切る給料というのはないが、正規で最低賃金を切るというのはある。 <p>先ほど言った280時間働いて月の手取り給料12万円というのは、時給500円切っている。どう考えても正社員でしかありえない。 <p>喩えて言うなれば、私たちは陸にあげられた金魚のような存在です。右側の池にはクロコダイル、左側がピラニアの池がある。右側に行ったらブラック企業というクロコダイルにぱくっと食われる。左側に行ったらちょくちょく食われてしんどいけど、もうちょっと長生きできるというのが非正規だったりする。 <p> <a href="https://lh3.googleusercontent.com/-RAMsqRdXXpM/WT6kyiBZTHI/AAAAAAAAA5E/NO-pWJiZoxQhbF4BLJwNWFjVKIlCo-G8ACHM/s1600-h/image%255B52%255D"><img width="338" height="340" title="image" style="border: 0px currentcolor; padding-top: 0px; padding-right: 0px; padding-left: 0px; display: inline; background-image: none;" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-E0kQ9ZmiGx0/WT6kzUIHDfI/AAAAAAAAA5I/2To7UuzWjyAMdt-7mvOV7dWtbd6srmjfQCHM/image_thumb%255B25%255D?imgmax=800" border="0"></a> <p>正規雇用に耐えられなくなった人が、非正規雇用に選ぶということが起こっている。こういうことをしていると、労働生産性も下がる。 <p><b></b> <p><b></b> <h4><b>ブラック経済の精神的原因</b> </h4> <p>日本人は、右から左まで、 「自己を犠牲にして公に献身する」物語が大好き。そして、組織的な危機を末端の人間の自己犠牲を強要することで乗り切ろうとする。 (特攻隊・竹槍作戦など) 。ブラック企業はそうした自己否定的な精神性の土壌に育ってきた。 <p>すなわち、日本を衰退させたブラック経済という問題は、自民党改憲草案や森友学園事件と根っこが一緒。人権意識の欠如こそがすべて。 <p>森友学園問題で谷さえこさん、総理大臣夫人付が勝手にやったと言われている。 これは、菅野完さんが指摘するように、労務問題なのです。 <p>安倍はこれまでもブラック経済を推進してきたし、これからも必ず推進する。日本人が自己を犠牲にして国家のために働けば働くほど、日本が発展すると信じているから。これが、安倍が言うところの「戦後レジームからの脱却」という言葉の一つの意味です。 <p>何が何でも消費税は減税しないし、ブラック企業は最終的に合法化する。 <p>だから私たちはそういう意味で勝ち目はある。 <p><b></b> <p><b></b> <h4><b>経済と人権</b></h4> <p>経済とは生命の問題であり、人権の問題である。 <p>私たちがやらなければいけないこと。すでに20代、30代、40代の労働者はすでに戦争状態、奴隷状態にある。 <p>少なくともそういう人が20パーセントから30パーセントいて、みんな友達から聞いて知っている。 <p>そういうところで、「戦争反対」とか言うけど、私たちはすでに戦争状態なんですよと、なのにそっちは放置なんだと感じてしまう人はいる。それが正しいかどうかは別として、そう感じてしまうという事実がある。そういう状況で精神的に追い詰められているからこそ、ネトウヨ的な世界観に惹かれてしまう。 <p>ある意味経済の問題が解決されれば、精神的な問題が解決される。 <p>生活苦と労働苦からの救済の道を積極的に示すことが大切です。 <h4><b>経済回復のための三つのステップ</b></h4> <p><b>① </b><b>消費税減税(8%→3%)</b> <p>消費税を減税したら、使えるお金が増える。→企業の売り上げがあがる。 <p><b>② </b><b>サービス残業全廃</b> <p><b>労働基準監督署の大幅強化(人数不足)</b> <p>全国2900人しかいない。少なくとも10倍に増やす。 労働相談は全国で100万件 。これでは監督官は査察に入れない。企業はやりっぱなし。 <p><b>サービス残業の厳罰化が必要。</b> <p>雇用者が大幅に増えて、失業率が下がり、企業の売り上げも上がる。 そうすると、無理なく最低賃金も上げやすくなる。 <p><b>③ </b><b>最低賃金アップ</b> <p>企業の体力が上がったら、最低賃金1500円も実行可能。 <p><b>この①~③の順番が大切。</b> <p><b></b> <h4><b>希望の経済学に向けて</b></h4> <p>将来憲法が改正されれば、基本的人権が制限される、と人は言います。でも、現にブラック労働の蔓延という、これだけの人権侵害を私たちは見過ごしてきた。労働者も唯々諾々とそれに従ってきたし、訴えたくても、訴える先がないという状況もあった。 <p>これは奴隷制度に近い。 <p>基本的人権と人権侵害の闘いであって、基本的人権を制限しようとする「自民党改憲草案」に対して、日本国憲法の精神をどれだけ守っていけるのかという闘いだと思うんです。 <p>リベラルが、 いわゆる無党派層と言われる人たちを味方につけられるとするならば、「私たちにとって一番の関心はあなたの人権なんですよ」というその博愛の精神を己の中心に据えること。その上で、真摯に希望の経済を訴えること、その一点にかかってくると思います。 <p>ご清聴ありがとうございました。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com6tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-28578298106148507012016-07-09T09:44:00.001+09:002016-07-09T09:44:18.446+09:00安倍内閣が進める「一億総社畜化計画」<h3>はじめに</h3> <p>先日、<a href="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html?spref=tw">「アベノミクスの本丸、ブラック企業合法化法案がやってくる」</a>というタイトルのブログ記事を書きました。先日塩崎厚労大臣の発言についても書いたのですが、やはり「法案を曲解しすぎだ」という批判が来ます。</p> <p>ところで、最近、<strong><a href="http://toyokeizai.net/articles/-/38399">「ヒラ社員も残業代ゼロ」構想の全内幕</a></strong> という記事について読み、驚愕しました。2年前の東洋経済の記事ですが、<font color="#ff0000"><strong>安倍晋三と経団連・経産省が「全従業員の労働時間規制・残業代規制の撤廃を計画していた」</strong></font>ことが、極めて詳細に書かれています。</p> <p>もう一つ重要なことは、<strong>安倍の言う「一億総活躍」と「女性が輝く社会」というアイディアが、どういう意図のもと、どういう経緯で産まれたのか、二年後の今だからわかります。</strong></p> <h3>「ヒラ社員も残業代ゼロ」構想の全内幕</h3> <p>「ヒラ社員も残業代ゼロ」構想の全内幕 東洋経済オンライン<br><a href="http://toyokeizai.net/articles/-/38399">http://toyokeizai.net/articles/-/38399</a></p> <p>この記事は非常に具体的かつ緻密ですが、それだけに一読ではわかりにくいので、要点をかいつまんで説明します。</p> <ul> <li>2014年4月22日、<strong>内閣府</strong>の経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議で、「<strong>労働時間と報酬のリンクを外す「新たな労働時間制度」を創設するとして</strong>、<strong>Aタイプ(労働時間上限要件型)と</strong>Bタイプ(高収入・ハイパフォーマー型)が提示された。 <li>Aタイプは一見意味不明だが、内閣府副大臣の西村康稔、厚生労働副大臣の佐藤茂樹を中心に関係者が集ったその前の非公式会合では、<strong>「スマートワーク」</strong>という名前だった。 <li>その中身は、「<font color="#ff0000"><strong>本人の同意と労使合意さえあれば、どんな業務内容の新入社員でも労働時間規制が及ばず、残業代なし、深夜・休日割り増しなしで働かせることができる</strong></font><font color="#000000">」というもの。この非公式会合の出席者からは、原案を問題視する声は上がらなかった。</font> <li><font color="#000000">スマートワークの発案者は、経済産業省経済産業政策局長の菅原郁郎。</font><font color="#000000">ただし、第一次安倍政権時に「ホワイトカラーエグゼンプション」で失敗していることもあって、安倍周辺も慎重な物言いを隠せず、経団連も矢面に立つつもりがなく、強力な推進薬が不在。</font> <li><font color="#000000">そこで菅原郁郎が着目したキャッチフレーズが<strong>「女性の活用」。柔軟な働き方を望む子育て世代や親介護世代の女性の活用のため、という建前に組み替えた。</strong></font> <li><font color="#000000">22日の会合で</font><font color="#ff0000"><strong>安倍首相は「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討していただきたい」と発言。</strong><font color="#000000">また、5月1日にも</font><strong>「もっと柔軟な働き方ができるように労働法制を変えていく。やり遂げなければ日本は成長できない」と発言。</strong></font><font color="#000000">この発言をきっかけに、労働規制緩和のレールが敷かれた。</font></li></ul> <p><font color="#000000">この記事は、安倍内閣の本音を示す上で極めて重要な資料です。要するに、安倍政権と財界としては、<strong><font color="#ff0000">全労働者に対して労働基準法を除外させて、深夜・長時間定額で働かせたい</font></strong>というのが本音。かつ、記事も「東洋経済」という非常に信頼できるソースです。</font><font color="#000000">この記事を読んだ人から、次々と<strong>「これは社畜化だ」「日本国民の奴隷化だ」</strong>という声が上がったのも無理はありません。</font></p> <p><font color="#000000">大事なことは、安倍政権としては、世論の声を非常に恐れているということ。記事でもかかれているように、労働規制緩和が「本音であるスマートワークまで近づくかは世論の動向次第」です。だからこそ私たちは、彼らの方便にとらわれず、彼らの本音を理解し、常にNOを突きつけていくことが大切だと私は考えます。</font></p> <h3>自民党改憲草案と一億総社畜化計画</h3> <p>ここで一つだけ、あまり語られていない補助線を引いておきます。2012年に自民党が出した<a href="http://constitution.jimin.jp/draft/">改憲草案</a>との関係です。私は以前、<strong><a href="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html">「ブラック企業合法化」の思想と、自民党改憲草案の精神は、根っこが同じである</a></strong>と書きました。</p> <p>憲法改正と言うと、「9条」ばかり語られることが未だに多いですが、この草案の本質は<strong>「基本的人権の制限と、政府に対する国民の従属」</strong>にあります。たとえば、改憲草案の第12条は、のようになっています。</p> <blockquote> <p>(国民の責務)<br>第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。<strong>国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。<br></strong>(太字は現憲法からの変更箇所)</p></blockquote> <p>つまり、基本的人権は与えてやるけど、「公益及び公の秩序に反するな」ということです。これは、「給料出してやってるんだから、会社の利益のために何時間でも働くべきだ」というブラック企業の思想と合致します。それだけではなく、たとえ世論の反対があって「全従業員の社畜化」に失敗したとしても、この憲法改正が通れば、憲法を盾にブラック企業が全面的に合法化されることが十分に考えられます。</p> <p>でも、<strong>憲法って抽象的なものだし、私たちの暮らしはあんまり変わらないんじゃないの?</strong>というのが多分大部分の日本人の感覚でしょう。確かに日本国憲法は、私たちの生活に直接関係していることは見えにくかった。それは日本国憲法が権力を縛るものだからです。</p> <p>日本国憲法には、そもそも憲法尊重擁護義務というものがありました。それは、私たちの基本的人権を守るために、権力を委託されている人は日本国憲法を守らなければならない、というものです。</p> <blockquote> <p>天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。</p></blockquote> <p>自民党改憲草案は、憲法尊重義務は国民に課されています。</p> <blockquote> <p><strong>第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。<br></strong>2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。</p> <h3></h3></blockquote> <p>つまり、<strong>労働者が自分たちの権利(残業代や休暇その他)を主張するのは、「公益に反する」とみなされその人は憲法尊重擁護義務に違反したことになる。また、賃上げのためのストライキなどは、明らかに「公の秩序」に反することになる。</strong></p> <p>こんな憲法を、まさに政府の人間は擁護する義務を課されているわけです。つまり、国会議員が労働者の権利を擁護し、ブラック企業を再び非合法化しようとすると、「憲法尊重擁護義務」違反ということになります。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-78608623879073391782016-07-02T22:02:00.001+09:002016-07-03T01:02:11.384+09:00もっと教えて?自民党のこと。<p>もうすぐ参議院選挙ですね。どちらに投票するにしても、「この道しかない」って自民党が進める政策を、これからも任せて大丈夫かどうか、って選挙ですね。</p> <p>それで、今回は、自民党ってどんな政党か、自民党の人の発言から調べてみました。どちらを応援ってことはなくて、みんなが使える客観的な資料を提供します。投票の際の考える材料になるとうれしいです。</p> <h3>稲田朋美 自民党政調会長(次期首相候補)</h3> <blockquote> <p><font size="3">国民のための生活が大事なんて政治は、私は間違っていると思います。いま私たちが生きているのは、私たちの今の生活だけが大事なんじゃなくて、先人から引き継いできた・・・世界中で、日本だけが、道義大国を目指す資格があるんです。</font><iframe style="height: 195px; width: 345px" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/VoSlvgCsbsM" frameborder="0" width="560" allowfullscreen></iframe></p></blockquote> <blockquote> <p><font size="3">税金や保険料を納めているとか、何十年も前から日本に住んでいるとかいった理由で参政権の正当性を主張するのは、国家不在の論理に基づくもので、<strong>選挙権とは国家と運命をともにする覚悟のある者が、国家の運営を決定する事業に参画する資格のことをいうのだという“常識”</strong>の欠如が、こういう脳天気な考えにつながっているものと思います<br>その国のために戦えるか」が国籍の本質だと思います(</font><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B01547KHLU/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=B01547KHLU&linkCode=as2&tag=irisheyes-22"><font size="3">日本を弑する人々 国を危うくする偽善者を名指しで糺す</font></a><font size="3"><img style="border-top-style: none !important; border-bottom-style: none !important; border-right-style: none !important; margin: 0px; border-left-style: none !important" border="0" alt="" src="http://ir-jp.amazon-adsystem.com/e/ir?t=irisheyes-22&l=as2&o=9&a=B01547KHLU" width="1" height="1"> )</font></p></blockquote> <a name='more'></a> <blockquote> <p><font size="3">自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないのです。決死の覚悟なくしてこの国は守れません。</font></p> <p><font size="3"></font> <a title="https://youtu.be/dLVmLzDiXZ0?t=1m24s" href="https://youtu.be/dLVmLzDiXZ0?t=1m24s">https://youtu.be/dLVmLzDiXZ0?t=1m24s</a></p></blockquote> <h3>安倍晋三 自民党総裁 内閣総理大臣</h3> <blockquote> <p>(稲田朋美・森雅子の二人について)こういうことを言うと、多少、<a href="http://www.asahi.com/topics/word/%E8%87%AA%E6%B0%91%E5%85%9A.html">自民党</a>内では波紋を呼ぶと思うが、まだまだたくさん総理候補はいますが、お二人はきわめて有力な候補者だろう。安倍首相、森氏・稲田氏を「きわめて有力な総理候補」:朝日新聞デジタル <a href="http://www.asahi.com/articles/ASJ2K6VRDJ2KUTFK00Y.html">http://www.asahi.com/articles/ASJ2K6VRDJ2KUTFK00Y.html</a></p></blockquote> <p>ちなみに安倍晋三は、内閣官房長官時代に、日本人を食い物にしてきた韓国のカルト<strong>「統一教会」に祝電</strong>を送っています。</p> <blockquote> <p>岸信介総理大臣のお孫さんであり現内閣官房長官、衆議院議員の安倍晋三様・・・祝電をいただきました。</p> <p><iframe style="height: 187px; width: 324px" height="270" src="//www.dailymotion.com/embed/video/xykyk7" frameborder="0" width="480" allowfullscreen></iframe><br><a href="http://www.dailymotion.com/video/xykyk7_%25E6%258B%25A1%25E6%2595%25A3%25E5%25B8%258C%25E6%259C%259B-%25E8%2587%25AA%25E6%25B0%2591%25E5%2585%259A%25E5%25AE%2589%25E5%2580%258D%25E6%2599%258B%25E4%25B8%2589%25E6%25B0%258F-%25E7%25B5%25B1%25E4%25B8%2580%25E6%2595%2599%25E4%25BC%259A%25E4%25BA%25BA%25E8%25BA%25AB%25E5%25A3%25B2%25E8%25B2%25B7%25E5%25BC%258F-%25E7%25A5%259D%25E9%259B%25BB_news" target="_blank">【拡散希望】 自民党安倍晋三氏 統一教会人身売買...</a> <i>投稿者 <a href="http://www.dailymotion.com/tairanomunemori" target="_blank">tairanomunemori</a></i></p></blockquote> <p>2,002年の早稲田大学の講演会では、次のような発言をしています。</p> <blockquote> <p><strong>有事の際</strong>に、自衛隊の活動とか国の活動において、皆さんの国民の権利、<strong>基本的人権が</strong>一時制約されるのではないか、ということです。これは<strong>制約されます</strong>。(略)パレスチナを見てください。国家が崩壊したら、彼らの人権を誰が担保するんですか。権利を担保する国そのものが存続の危機を迎えている時には、それは当然、ある程度我慢をしなければならない。そういう理屈が当然だと思う(<a href="http://saigaijyouhou.com/blog-entry-2544.html">情報速報ドットコム</a>)</p> <p>憲法上は原子爆弾だって問題はない。小型であれば。(- J<a href="http://realtime.wsj.com/japan/2012/12/21/%E5%AE%89%E5%80%8D%E6%99%8B%E4%B8%89%E6%B0%8F%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%A6%B3%EF%BC%9A%E9%81%8E%E5%8E%BB10%E5%B9%B4%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A8%80%E3%82%92%E6%8C%AF%E3%82%8A%E8%BF%94%E3%82%8B/">apan Real Time – WSJ</a>)</p></blockquote> <p>2015年の発言なので覚えているかと思いますが、こういうのもありました。</p> <blockquote> <h5><font style="font-weight: normal">「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」(LITERA/リテラ <a href="http://lite-ra.com/2015/12/post-1830_5.html)">http://lite-ra.com/2015/12/post-1830_5.html)</a></font></h5> <h3></h3> <h3></h3></blockquote> <h3>長瀬甚遠 元法務大臣 (第一次安倍政権時)</h3> <p>2012年5月10日、創生「日本」(安倍晋三会長) 東京研修会 第3回での元法務大臣の「自民党会見草案」による発言です。</p> <blockquote> <p><strong>「国民主権。基本的人権。平和主義。これは堅持する。」と言っているんですよ。皆さん,この3つは,マッカーサーが日本に押し付けた戦後レジームそのものじゃないですか。この3つを,なくさなければですね,本当の自主憲法にならないんですよ。</strong> <iframe style="height: 195px; width: 354px" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/BrxAi30Szpw" frameborder="0" width="560" allowfullscreen></iframe></p></blockquote> <p>ちなみに、この会合には安倍会長も当然出席しています。</p> <h3><strong>西田昌司 参議院議員</strong></h3> <p>「朝まで生テレビ」で「<strong>そもそも国民に主権があることがおかしい</strong>」と言ったらしいですが、本人も認めているように「日本国憲法無効」論者(=明治憲法有効論者)なので(<a title="https://www.youtube.com/watch?v=AVSOpyXzYFc" href="https://www.youtube.com/watch?v=AVSOpyXzYFc">https://www.youtube.com/watch?v=AVSOpyXzYFc</a><strong>)</strong>、「国民主権」を否定するのは当然でしょう。</p> <blockquote> <p align="left">私は(日本国)憲法を認めていません。</p> <p align="left"><iframe style="height: 247px; width: 294px" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/cCQSCbHO_hY" frameborder="0" width="420" allowfullscreen></iframe></p></blockquote> <h3><strong><font color="#333333">麻生太郎 副総理(追記)</font></strong></h3> <blockquote> <p>(ナチスについて)誰も気が付かずに(憲法が)変わったんだから。あの手口に学んだらどうだね?</p><iframe style="height: 188px; width: 302px" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/dSQD8RPtOo8" frameborder="0" width="560" allowfullscreen></iframe> <p> </p></blockquote> <h3><strong><font color="#333333">さいごに</font></strong></h3> <p>まだまだいろんな参考になる発言がありますが、今回はこれぐらいにして、最後に一つだけ。</p> <p>マスコミで出てくる自民党とは、また別の側面を知ることができたと思います。</p> <p>以前の自民党とは相当に変質しているというのは事実ですが、その理由をベストセラーになった菅野完著「日本会議の研究」を読めば、かなりの謎は解けます。</p><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4594074766/ref=as_li_ss_il?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4594074766&linkCode=as2&tag=irisheyes-22"><img border="0" src="http://ws-fe.amazon-adsystem.com/widgets/q?_encoding=UTF8&ASIN=4594074766&Format=_SL110_&ID=AsinImage&MarketPlace=JP&ServiceVersion=20070822&WS=1&tag=irisheyes-22" width="119" height="180"></a><img style="border-top-style: none !important; border-bottom-style: none !important; border-right-style: none !important; margin: 0px; border-left-style: none !important" border="0" alt="" src="http://ir-jp.amazon-adsystem.com/e/ir?t=irisheyes-22&l=as2&o=9&a=4594074766" width="1" height="1"> <p>簡単に言うと、安倍政権に非常に大きな影響力を及ぼしている、日本会議や日本政策研究センター、そして数人の国会議員、それらがすべて「生長の家」という新興宗教から離脱した原理主義者カルト集団であることを立証した本です。ちなみに、冒頭にあげた次期首相候補 稲田朋美も、生長の家原理主義につながる人脈です。</p> <p>ぜひご購入して、ご自身の目で確かめてください。</p> <p>追記</p> <p>2012年の自民党改憲草案について、わかりやすい解説書が出ました!これも超お勧めです。みなさんで一緒に、自民党の目指す憲法の在り方について学びましょう。</p><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4811807936/ref=as_li_ss_il?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4811807936&linkCode=as2&tag=irisheyes-22"><img border="0" src="http://ws-fe.amazon-adsystem.com/widgets/q?_encoding=UTF8&ASIN=4811807936&Format=_SL110_&ID=AsinImage&MarketPlace=JP&ServiceVersion=20070822&WS=1&tag=irisheyes-22"></a><img style="border-top-style: none !important; border-bottom-style: none !important; border-right-style: none !important; margin: 0px; border-left-style: none !important" border="0" alt="" src="http://ir-jp.amazon-adsystem.com/e/ir?t=irisheyes-22&l=as2&o=9&a=4811807936" width="1" height="1">ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-52445035032938716252016-07-02T16:32:00.001+09:002016-07-08T11:10:40.121+09:005分でわかる! ブラック企業合法化法案とアベノミクスの正体<a class="twitter-share-button" href="https://twitter.com/share" data-via="ishtarist" data-text="【拡散希望】5分でわかる! ブラック企業合法化法案とアベノミクスの正体 #与党が勝つと残業代ゼロになります" data-url="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/07/5.html" data-size="large">Tweet</a> <script>!function(d,s,id){var js,fjs=d.getElementsByTagName(s)[0],p=/^http:/.test(d.location)?'http':'https';if(!d.getElementById(id)){js=d.createElement(s);js.id=id;js.src=p+'://platform.twitter.com/widgets.js';fjs.parentNode.insertBefore(js,fjs);}}(document, 'script', 'twitter-wjs');</script> <p><font size="2">先日、ブラック企業合法化法案について書きましたが、長いとお叱りを受けたので、サクっと概要がわかるように要約してみました。拡散用に、是非ご活用ください。より詳しく知りたい方は、</font><a href="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html#more"><font size="2">先のブログ</font></a><font size="2">をお読みいただければと思います。z</font></p> <p><strong>皆さん、残業代不払いや超長時間労働を合法化する法案、<strong><font color="#ff0000">ブラック企業合法化法案が</font></strong>、</strong><strong>参議院選後すぐに通る見込み</strong>だということは、皆さんご存じでしょうか?</p> <p>残業代不払制度の導入は、第一次政権時からの安倍晋三と財界の悲願です。第二次安倍政権とともに、「アベノミクス」の「第三の矢」の中心政策として、復活しました。人件費を削って長時間労働させれば、日本経済は復活する、と安倍と財界は考えているようです。</p> <p>でも、この法案が可決されたら、私たちの生活はどうなるのでしょう?そして日本経済は本当によくなるのでしょうか?</p> <a name='more'></a> <h3></h3> <h3>ブラック企業合法化法案って?</h3> <p>2015年4月3日に、政府は労働基準法改正法案を提出しました。そこに含まれる「高度プロフェッショナル制度」。政府の説明によれば、一定の要件さえ満たせば、「労働時間と賃金のリンクを切り離した働き方ができる制度」と説明していますが(<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/kibou_sigoto.html%EF%BC%89">首相官邸</a>)、それって要するに、<font color="#ff0000"><strong><font color="#000000">一</font><font color="#000000">定の年収のサラリーマンは、労働基準法は適用せず、定額使い放題OKですよ!</font></strong></font>ってことですよね。</p> <p>この法案が通ると<strong>企業はどれだけ働かせても、残業代を払わなく済むだけじゃなくて、過労死基準を大幅に超える超長時間労働も、合法になります。</strong>たとえば、①5日の有給休暇を与えれば360日連続で勤務OK!②年間104日休ませれば、24時間連続勤務OK!です。</p> <p>このブラック企業合法化制度が適用される「一定の年収」っていくらなの?って話ですが、今のところ1075万円です。なんだ、私たちには関係ないね、と思ったあなた。安心しないでください。この<strong>法案の年収要件</strong>は、厚生省令で変えられるんです。つまり、<strong>国会審議を通さずにせずに、明日からあなたの残業代が払われなくなる、ってこともありえます</strong>。それも政府の一存です。</p> <h3>ブラック企業合法化の背景は、「若者のせいで日本がだめになった」という妄想</h3> <p>「高度プロフェッショナル制度」っていうぐらいだし、そんな労働者みんな残業代なくなるとか極端すぎない?って思う人もいるでしょう。実際のところどうなのか、少し遡って、向こうの「本音」を知る必要があります。</p> <p>元々、「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれたこの制度は<font color="#000000">、「<strong>年収400万円以上の人間には労働基準法を適用しないでくださいね</strong>」というのが経団連の希望でした。</font></p> <p>2006年に、経団連会長の御手洗冨士夫(キヤノン)のバックアップを受けて、第一次安倍政権が誕生、この制度を導入しようとします。そのときに、安倍=経団連が推進したのは、教育改正による公徳心・愛国心教育で、その先に憲法改正を見据えていました。</p> <p>なぜ財界が教育改正を求めたか、経団連が2007年念頭に出したビジョンに「<a href="https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/vision.pdf">希望の国、日本」</a>を読めば、<strong>「権利ばかり主張する自己中心的な若者が、今の日本をダメにした」という考えが見え隠れします</strong>。その諸悪の根源が「戦後民主主義教育」。</p> <p>残業代不払い法案の背景にも、この思想があります。つまり。<font color="#ff0000"><strong>「会社が儲かってないのに残業代を請求する若者は実にけしからん!労働者が権利を主張できないように法律も教育も憲法も変えよう!それで日本経済が復活する!」。</strong></font><font color="#000000">これがブラック企業合法化の背景にいる人たちの思想です。</font></p> <p>この制度は、国民の大反対を受け、法案提出もできずに頓挫。<a href="http://www.asyura2.com/07/senkyo41/msg/1134.html"><u>3億円脱税がバレそうになったこともあって</u></a>総理大臣の座を追われた安倍心臓でしたが、<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4594074766/ref=tmm_pap_title_0?_encoding=UTF8&amp;qid=&amp;sr="><u>日本会議とかいう生長の家原理主義者が作ったカルト集団</u></a>の後押しを受けて再度首相に復活。「アベノミクス」その「第三の矢 成長戦略」の本丸として、ブラック企業合法化法案もまた復活するわけです。</p> <p>ただ、前回の反対があったので、「年収1075万円以上」という条件をつけました。それに怒ったのが経団連。経団連会長が「制度が適用される範囲をできるだけ広げていっていただきたい」と記者会見で言ったので大批判を呼び、塩崎厚労大臣がたまらず財界人100人集まった会合で言いました。</p> <blockquote> <p>まあ、我々としては小さく産んで大きく育てる・・・ですから皆さん、それはちょっとぐっと我慢して頂いてですね、まあとりあえず通すことだと言って、合意をしてくれると大変ありがたいと思っています。</p></blockquote> <p>というわけで、やはり彼らとしては、<strong>ブラック企業合法化が目的</strong>です。ただ、国民の目をよりうまくごまかすために、いきなり熱湯に放り込むのではなく、ぬるま湯の窯に入れてじわじわ温度をあげていく、ゆでガエル作戦に変えただけです。</p> <h3>ブラック企業合法化で生活と経済はどう変わる?</h3> <p>さて、ブラック企業合法化で、彼らは日本経済が復活すると信じているようです。確かに、人件費を削ったら、企業は一時的に利益を上げます。でも、それは経済成長につながるでしょうか?</p> <p>このグラフを見てください。</p> <p><img alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-ZAtTZ7AuA3E/V3QNPKrO5BI/AAAAAAAAA04/u9GNktftuI4/image_thumb%25255B2%25255D.png?imgmax=800"></p> <p>給与所得総額とGDPはほぼ完全に(98%)連動しています。つまり、給与をカットすればするほど、経済は落ち込むのです。1998年からずっとリストラ・サービス残業・非正規雇用拡大で<strong>人件費を削り続けた結果、経済が低迷したのが「失われた20年」の本質</strong>です。ブラック企業合法化は、この流れを総仕上げとなり、日本経済を奈落の底に突き落とすでしょう。</p> <p>そのメカニズムをごく簡単に説明します。</p> <p><strong>①すべての企業がブラック企業になる。</strong><br>この法案は、一部のブラック企業を合法化する、と考えれば大間違い。むしろ、<strong><font color="#ff0000">日本のすべての会社がブラック企業になる</font></strong>と考えるべきです。だって、経営者の立場に立って考えてみてください。同業他社が従業員使い放題制度を導入したら、ホワイト企業が太刀打ちできますか?倒産するか、自社もブラックになるか、二者択一です。</p> <p><font color="#333333"><strong>②個人消費が低迷する<br></strong>残業代支払われなくなった分、給料は減ります。給料が減れば、個人消費も減ります。残業時間が長くなった分、消費する時間も減るわけです。</font></p> <p><strong>③企業の業績が悪化する</strong><br>個人消費が低迷すれば、企業の売り上げが下がります。そしたら、利益を圧迫します。</p> <p><font color="#333333"><strong>④失業者が増えて、賃金がさらに下がる<br></strong>残業代ゼロ法案が通れば、会社は従業員をリストラし、残った人に業務を押し付けてコストカットします。なので、失業者が数百万人増えます。失業率が上がれば、平均賃金はさらに下がります。代わりの人はいくらでもいますから。</font></p> <p>消費と生産は一つの円環、というのが<font color="#000000">経済の基本です。消費者がお金を持っていないと、生産しても売り上げになりません。そして、消費者の持ってるお金は、企業が払った給料なのです。なので、給料をカットすれば、生産も停滞する。中学生でも理解できる、ものすごく当たり前の話です。</font></p> <p><font color="#000000">その経済のイロハすら理解していない</font><font color="#ff0000"><strong><font color="#000000">政財界の「偉い人」たちが、サービス残業を蔓延させて、非正規雇用を増やして給料をカットし続け日本経済を停滞した挙句に、自分が招いた経済の低迷を「働かない若者」のせいにし、</font><font color="#000000">「ブラック企業」を合法化しようとしている。それがアベノミクスの正体です。</font></strong></font></p> <p><font color="#000000">ブラック企業合法化法案の結果、日本経済は奈落の底に落ちるでしょう。でも、それに苦しむのは彼らではなく、私たちです。でも、今ならまだ、間に合います。</font><font color="#ff0000"><strong>ぜひこのブログをできるだけ多くの人に拡散してください。</strong></font></p><a class="twitter-share-button" href="https://twitter.com/share" data-via="ishtarist" data-text="【拡散希望】5分でわかる! ブラック企業合法化法案とアベノミクスの正体 #与党が勝つと残業代ゼロになります" data-url="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/07/5.html" data-size="large">Tweet</a> <script>!function(d,s,id){var js,fjs=d.getElementsByTagName(s)[0],p=/^http:/.test(d.location)?'http':'https';if(!d.getElementById(id)){js=d.createElement(s);js.id=id;js.src=p+'://platform.twitter.com/widgets.js';fjs.parentNode.insertBefore(js,fjs);}}(document, 'script', 'twitter-wjs');</script>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-47207138588983333452016-07-01T22:10:00.001+09:002016-07-01T22:38:34.614+09:00塩崎厚労大臣が語っていた、ブラック企業合法化法案の本音<p>参院選後に通過する見込みの労働基準法改正案について、「ブラック企業合法化法案」が目的であると前回書きました。<a title="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html#more" href="http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html#more">http://ishtarist.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html#more</a></p> <p>そうしたら案の定、「高度プロフェッショナル制度をブラック企業合法化だと解釈するのは無理がある」、という感じの反応がありました。</p> <p>さて、その制度がどのような目的なのか、については、私たちが詮索するより、当事者に語ってもらいましょう。それでは、塩崎厚生労働大臣、よろしくお願いします!</p><iframe height="315" src="https://www.youtube.com/embed/-tX5RC_0rs4" frameborder="0" width="560" allowfullscreen></iframe> <blockquote> <p>高度プロフェッショナル制度はまあ、1千万円以上もらっている人って、実は働いている人の4%くらいしかいないんですね。そのうちの1・5%は役員ですから、残り2・5%でそれも希望者だけとなればものすごく少ないところでスタートするんですけど、まあ、我々としては小さく産んで大きく育てるという発想を変えて、まあ、時間法制ではかからない、労働時間法制はかからないけど、健康時間ということで別の論理で健康はちゃんと守って、だけどむしろクリエイティビティを重んじる働き方をやってもらうということで、まあ、とりあえず入っていくので、経団連が早速1075万円を下げるんだといったもんだから、まああれでまた質問がむちゃくちゃきましたよ。 <p> ですから皆さん、それはちょっとぐっと我慢して頂いてですね、まあとりあえず通すことだと言って、合意をしてくれると大変ありがたいと思っています。(ブラック企業被害対策弁護団 <a href="http://black-taisaku-bengodan.jp/siozakihatsugen/)">http://black-taisaku-bengodan.jp/siozakihatsugen/)</a></p></blockquote> <p>これは法案提出勅語の2015年4月20日、日本経済研究センターの「会員会社・社長朝食会」において100人の財界人を前に語った音声だそうです。 <p>なぜこのような発言をしたかというと、4月6日に榊原経団連会長が記者会見で、 <blockquote> <p>制度が適用される範囲をできるだけ広げていっていただきたい <p>実効性あるものにするには、(1075万円以上の)年収要件を緩和し、対象職種も広げないといけない <p>少なくとも全労働者の10%程度は適用を受けられるような制度にすべきだ。 <p><font size="1">(「年収1075万円以上」の要件緩和を 「脱時間給」めぐり経団連会長 : J-CAST会社ウォッチ </font><a href="http://www.j-cast.com/kaisha/2015/04/13232901.html"><font size="1">http://www.j-cast.com/kaisha/2015/04/13232901.html</font></a><font size="1"> </font> <p><font size="1">経団連会長の「残業代ゼロ制度の対象を広げてほしい」発言に、労働者から悲鳴<a href="http://irorio.jp/nagasawamaki/20150407/219526/">http://irorio.jp/nagasawamaki/20150407/219526/)</a></font></p></blockquote> <p>といった発言があり、それに対する反発が大きかったようです。 <p>そこで塩崎厚労大臣はたまらず、「みなさんの要求はわかってますし、私たちも同じ思いです。国民感情を荒立てずに合意を作っていくために、お願いだから目立つ発言は控えてください。あとから対象者を大きく拡大していきますから。」とお願いしたということです。 <p>今は私たちに影響がないのだから、そのときに反対すれば良い、って思う人がいるかもしれません。でも、国会での議論なしに年収要件を少しずつ下げられて、1000万円を900万円にする厚生省令が出されたとき、私たちは反対するでしょうか?900万円が800万円になったら?・・・そうやって500万円が400万円になったら?あなたはいつ反対しますか? <p>私は、今反対します。ゆでガエルの実験台になる前に、釜に放り込まれる前に声を上げたいとおもいます。</p>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-48614898588955988202016-06-30T03:02:00.001+09:002016-07-08T11:04:51.282+09:00アベノミクスの本丸、ブラック企業合法化法案がやってくる<a class="twitter-share-button" href="https://twitter.com/share" data-text="アベノミクスの本丸、ブラック企業合法化法案がやってくる #与党が勝つと残業代ゼロになります">Tweet</a> <script>!function(d,s,id){var js,fjs=d.getElementsByTagName(s)[0],p=/^http:/.test(d.location)?'http':'https';if(!d.getElementById(id)){js=d.createElement(s);js.id=id;js.src=p+'://platform.twitter.com/widgets.js';fjs.parentNode.insertBefore(js,fjs);}}(document, 'script', 'twitter-wjs');</script> <p> </p> <h3>安倍政権が狙うブラック企業合法化</h3> <p>7月10日の参議院選挙の争点を、自民党は「アベノミクス」であると言っています。それに対して、リベラル・野党連合はそれはまやかしであって、本音は「憲法改正」であると考えています。確かに、日本国憲法の廃止は、安倍政権や日本会議にとって長年の悲願でした。自民党が2012年に出した憲法改憲草案は、基本的人権に対して「公の秩序」を優位に起き、立憲主義を否定するものです。賛否両論ありますが、国の根幹を大きく変えるものだ、という見解では、ほとんど全員一致すると思います。</p> <p>でも、ちょっと待ってください。アベノミクスはそんなに簡単に扱っていいものなのでしょうか?そもそも「アベノミクス」とは何なのでしょう。それは、どのような経済を目指す経済政策なのでしょうか?正規と非正規の格差拡大?一部の富裕層への富の集中?否、それらはアベノミクスの結果の一側面ですが、アベノミクスの本質をついてはいない、と私は考えています。</p> <p><strong>みなさんご存じでしょうか?「アベノミクス」の本丸とも言うべき重要な法案が、いま現在国会で審議されており、参院選後すぐにでも可決されようしているということを。</strong>昨年提出された<strong>労働基準法改正法案、いわゆる「残業代ゼロ法案」</strong>と呼ばれるものです。</p> <p>その法案が施行されると、企業は残業代を一切払わなくても、過労死基準を遙かに超える超長時間労働を労働者に強いても、すべて法律によって正当化されます。その結果を考えると、「残業代ゼロ法案」というのは生ぬるく、実態を考えると「<strong>ブラック企業合法化法案</strong>」というべきものです。<strong><font color="#ff0000">ブラック企業の合法化こそ「アベノミクス」の本丸</font></strong>なのです。</p> <p>詳しくは後で説明しますが、この法律が施行されると、ホワイト企業は駆逐され、日本経済全体がほぼブラック化します。あなたも私も、たとえば手取り25万円で1日14時間働くか、それとも時給1000円の非正規雇用で一日8時間働くか、どちらかを選ばなければならなくなります。</p> <p>「戦後民主主義のせいで日本人が自己中心的になり、日本が衰退した」―日本の財界と、安倍晋三周辺の人間たちは、どうやら本気でそのように信じているようです。だから、日本経済を復活させるために、労働者を「死ぬまで働かせ」ようとしている。</p> <p>しかしブラック企業合法化法案は、その意図はどうであれ、考えられる限りで最悪の一手です。それは単に私たち労働者を苦しめるだけではありません。それは日本経済を再生させるどころか、ほとんど再起不能なまで痛めつける結果になるでしょう。<br>今回の選挙で、自民党を通せば、私たちの労働環境と家計がどういう状況になるのか、このブログ記事では簡潔に説明しようと思います。</p> <a name='more'></a> <h3>ブラック企業合法化法案って?</h3> <p>「ブラック企業合法化法案」について、すでにわかりやすい解説がいくつもありますので、そのうちのいくつかを紹介しておきます。</p> <ul> <li>ブラック企業被害対策弁護団 「ブラック法案によろしく」 <a href="http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/">http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/</a> <li>高度P制(残業代ゼロ)法案は参院選の重要争点です <a href="http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20160627-00059313/">http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20160627-00059313/</a></li></ul> <p>簡単に概要を説明します。政府は2015年4月3日に「労働基準法等の一部を改正する法律案」を提出しました(リンク<a href="http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-42.pdf">http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-42.pdf</a>)。「残業代ゼロ法案」と呼ばれるのは、その中の「高度プロフェッショナル制度の創設」です。その制度では、一定の年収以上で高度な専門的労働者には、労働時間、休日、深夜の割増賃金等に関する労働基準法の規定は適用しなくて良い。つまり、<strong><font color="#ff0000">一定の年収以上のサラリーマンには労働基準法は適用されませんよ</font></strong>、ということです。</p> <p>日本社会ではただでさえほとんど守られていない労働基準法が、ある要件を満たせば適用されなくなる。その要件は、現在のところ平均年収の3倍相当、1075万円以上ということになっています。しかし細かく読むと、年収制限・対象業務・適用条件は厚生省令で変更して良いことになっています。</p> <ul> <li>【3-1】ホワイトカラー・エグゼンプションが人事・労務管理に与える影響|日立ソリューションズの労務管理コラム <a href="http://lysithea.jp/column/whitecolor/01.html">http://lysithea.jp/column/whitecolor/01.html</a></li></ul> <p>つまり、この法案にはいわばバックドアがついていて、<font color="#ff0000"><strong>年収などの適用条件を政府の一存で変えることができる。 </strong></font><font color="#000000">「残業代がなくなるのは、どうせ一部の高収入の人だけでしょ、べつに私には関係ないし。自分に被害が及びそうになったら反対すればいいや」と思っていても、国会を通さずにいきなり年収要件を引き下げられるわけで、抵抗の余地なく残業代がなくなり、長時間労働を強いられる可能性がいつまでもつきまとうのです。</font></p> <h3><font color="#000000"></font></h3> <h3>ブラック企業合法化は、10年来の財界と安倍晋三の悲願である</h3> <p>この「高度プロフェッショナル制度」は、いったい何を狙っているのでしょうか?もともとこの制度は、「ホワイトカラーエグゼンプション」と呼ばれたものです。2005年に厚生労働省の研究会ヒアリングで経団連が提出した<a href="http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/06/s0624-5b.html">資料</a>によれば、年収400万円以上の人間をターゲットとして、「労働時間、休憩、休日及び深夜業に係る規制の適用除外とする」ことが財界の要請であることがわかります。つまり、<font color="#ff0000"><strong>年収400万円以上の人間には労働基準法を適用しない</strong></font><font color="#000000">でね、というのが経済界の希望だったわけです。これを、ブラック企業の合法化といわず、なんと言えば良いのでしょうか。</font></p> <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-1P92ArKb31s/V3QNNWZ-SNI/AAAAAAAAA0g/GhWOpd7kWbo/s1600-h/image4.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-q8qmkOKpwyY/V3QNOBQaT2I/AAAAAAAAA0o/hR6FhMlDHPM/image_thumb2.png?imgmax=800" width="641" height="279"></a></p> <p>このブラック企業合法化政策を政府として実現しようとしたのが、2006年にできた第一次安倍政権でした。彼は、当時経団連の会長だった御手洗冨士夫とタッグを組んで、ブラック企業合法化・憲法改正・「教育再生」に取り組んだのです。</p> <p>その成果の一つが、「教育基本法」の改正による「愛国心教育」「公徳心教育」でした。2007年1月に経団連が発表した <a href="https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/vision.pdf">「希望の国、日本」</a>では、教育について次のように書かれています</p> <blockquote> <p>現在の教育において最も欠けているのは、克己心、公徳心の慣用という視点である。自己中心的な考えが蔓延し、他人に迷惑をかけないといった最低限のモラルも確立されているとは言いがたい。(p.78)</p></blockquote> <p>キヤノンをはじめ労働基準法という最低限の規範さえ守ってない財界に、このような説教を聞かされるいわれはないと憤る向きもありましょうが、ともあれ、「戦後教育によって自己中心的になった若者」という認識から、彼らの甘やかされた根性をたたき直すために、国旗・国家を強制しようと主張する訳です。</p> <blockquote> <p>新しい教育基本法の理念に基づき、日本の伝統や文化、歴史に関する教育を充実し、国を愛する心や国旗・国歌を大切にする気持ちを育む。教育現場のみならず、官公庁や企業、スポーツイベントなど、社会のさまざまな場面で日常的に国旗を掲げ、国歌を斉唱し、これを尊重する心を確立する(p.120)</p></blockquote> <p>ここにあらわれた「自己中心的で公共心のない若者」という意識が、「基本的人権に対する公の秩序の優位」をかかげた2012年の自民党改憲草案に通底しているわけです。実際、先の経団連の資料でも、「今後10年以内に重点的に講じるべき方策」の最後に、まさに憲法改正があげられています。</p> <p>大切なことは、この<strong><font color="#ff0000">「憲法改正」と「教育再生」、「ブラック企業合法化」は、すべて根っこが同じ</font></strong>だということです。その背後には、「<strong><font color="#ff0000">権利ばかり主張する若者たちのせいで、日本がダメになった</font></strong>」という<strong><font color="#ff0000">妄想</font></strong>があります。彼らの考えを代弁すれば、「<strong>会社が利益を上げていないのに残業代を請求する利己的な若者たちのせいで日本経済が停滞している</strong>、だから労働基準法を変えなければならないし、憲法を改正して基本的人権より公の秩序が大事なことを教えなければならないし、愛国心・公徳心を教育で植え付けなければならない。」という訳です。</p> <h3>アベノミクスが目指すブラック企業合法化</h3> <p><a href="http://www.asyura2.com/07/senkyo41/msg/1134.html">週刊現代による3億円脱税疑惑</a>をきっかけに、第一次政権を途中で投げ出した安倍晋三ですが、彼が目指した「ブラック企業合法化」を決してあきらめることはありませんでした。</p> <p>みなさん、アベノミクスの三本の矢を覚えているでしょうか?「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」でした。</p> <p><a href="http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html"><img src="http://www.kantei.go.jp/jp/headline/img/20160201/sanponnoya.gif" width="630" height="352"></a></p> <p>ホップステップジャンプで、なんと空を飛ぶ訳ですが、「規制緩和等によって民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ」って具体的にどういうことなのでしょうか?アベノミクスについて解説した首相官邸のホームページに、次のような文言が残っています。</p> <blockquote> <dl> <dd> <p>時間が人を左右するのではなく、人が時間を左右する働き方へ!</p> <p><strong>時間ではなく成果で評価される働き方をより多くの人が選べるようになります。</strong></p> <p> <dl> <dt>政府の主な取組 <dd>一定の年収要件を満たし、高い能力・明確な職務範囲の労働者を対象に、労働時間と賃金のリンクを切り離した働き方ができる制度を創設します。</dd></dl></dd></dl> <p>(人材の活躍強化 ~適した仕事を選べます~ | 首相官邸ホームページ <a href="http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/kibou_sigoto.html)">http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/kibou_sigoto.html)</a></p></blockquote> <p>この「労働時間と賃金のリンクを切り離した働き方ができる制度」とは、要するにどれだけ働いても残業代が出ないということです。<font color="#ff0000"><strong>ブラック企業を合法化し、日本人の社畜化を合法化する規制緩和によって経済が飛躍的に成長する、それがアベノミクスの思想</strong></font>なのです。</p> <h3>ブラック企業合法化で労働者はどうなる?</h3> <p>現在まで話を戻します。「残業代ゼロ法案」がこのまま通ると、労働者はどうなるのでしょうか?この法案では通常の労働基準法が適用外になる代わりに、適用対象者に以下の健康確保措置のいずれか一つをとることになっています。(「ブラック法案によろしく」 <a href="http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/)">http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/)</a></p> <blockquote> <p>(1)労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し,かつ,深夜業の回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。 <p>(2)健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。 <p>(3)四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を確保すること。</p></blockquote> <p>これらの措置が「どれか一つ」で良い、ということに注意してください。つまり、5日の有給休暇を与える代わりに360日連続で勤務させられたり、104日以上の休日の代わりに24時間連続勤務をさせられたり、という、<font color="#ff0000"><strong>過労死基準を優に超える超長時間労働が完全に合法化</strong></font>されるのです。これが、労働者の心身の健康にとって、そして自民党が重視する家族の和にとって、どれだけ有害なのかだれでも容易に想像できるでしょう。 <p> <h3>日本のすべての会社がブラック企業になる日</h3> <h3></h3> <h3></h3> <p>しかし、「今までのブラック企業が合法化されるだけでしょ、ホワイト企業に勤める自分には特に関係ないし」と思う人も多いかもしれません。でも、よく考えてください。あなたの会社が残業代ゼロ制度を導入しなかったとしても、ライバル企業が導入したらどうなるでしょうか?ホワイトな働き方ができるあなたの会社は、同業他社が残業代を払わずに人件費を削りに削っても、太刀打ちできるでしょうか? <p>これは「囚人のジレンマ」的な状況です。経営者の立場に立ってみれば、「他社がホワイトである限り、自社がホワイトでも大丈夫。<strong>でも、同業他社が一社でも先にブラック化すれば、自分たちは圧倒的に不利になる。最悪の場合倒産する」</strong>。このジレンマは、経営者が品行方正であるかとか、従業員に対して思いやりがあるかとか、ぜんぜん関係なく強いられる選択です。自社がつぶれないために、あるいは従業員を食わせていくために、他社よりも先にブラック化せざるを得ない状況に陥るのです。 <p>実のところ、これが2000年代にブラック企業が蔓延し、いくつかの業界では丸ごとブラック化したメカニズムです。ただ、それでも曲がりなりにも、これまでは労働基準法が存在し、建前上ブラック企業は違法だということになっていました。しかし、労働基準法改正によって、その最低限の歯止めさえなくなってしまうのです。私たちがいくら長時間労働や残業代未払いを訴えても、「労働基準法」という最大の武器を手渡してしまった以上、ほとんど勝ち目がなくなります。 <p>つまり、すべての企業にとっては、残業代を支払うメリットが一切なくなり、逆に、残業代ゼロ制度導入が同業他社より遅れるデメリットが甚大になる。失業者も増えるため、残業代を払わなくても、代わりの人材はいくらでも調達できる。その結果ははっきりしています。ごく一部の例外を除いて、<font color="#ff0000"><strong>すべての企業が合法ブラック企業になる、これが残業代ゼロ法案の論理的帰結です。</strong></font> <p><strong><font color="#ff0000"></font></strong> <h3></h3> <h3><strong><font color="#000000">ブラック企業合法化で、日本経済が衰退するこれだけの理由</font></strong></h3> <p>でも、そもそもどうしてブラック企業合法化が、経済成長戦略になるのでしょうか?おそらく、財界人や政治家の認識は、「人件費を削れば削るほど、企業の利益が増える、だから経済が成長する」というものです。でも、その考えは、企業の利益と経済成長を同一視するという時点で、誤った考えです。実際には、<strong>企業が従業員を酷使して長時間働かせ、人件費を削って短期的に利益を上げれば上げるほど衰退していくのが経済なのです</strong>。2000年代に日本経済が停滞したのはそういう事態だったのですが、ブラック企業合法化によって、必ずや日本経済は壊滅的な打撃を受けます。その理由を簡単に説明しましょう。</p> <ol> <li><strong>個人消費が大きく落ち込む。</strong><br>「経済が復活しないのは若者が賃金に見合った分働かないからだ、残業代を払わなければ経済が回復する」、という財界=安倍の経済思想は倒錯した妄想です。<br>なぜか。<strong><font color="#ff0000">経済活動はは生産だけでなく消費によって初めて成り立つ、その当たり前の事実を忘れているからです。</font></strong>どれだけ頑張って車を100万台作ろうと、買ってくれる人がいなければ売り上げになりません。どんなにみんなが欲しがるものを作っても、消費者に手持ちのお金がなければ売れるはずがないのです。<br>よく、若者に欲がなくなったから消費が停滞した、という文脈で「若者の車離れ」的なことを言う人がいますが、とんでもない話です。<strong>実際に起きているのは「金の若者離れ」</strong>だ、ということはある程度若い人はみな実感していることでしょう。<br>ともあれ、ブラック企業合法化によって、今でさえ相当部分非合法に不払いが多い残業代は、今後合法的に、一切支払われなくなります。その額は、少なく見積もっても年間10兆円以上です。それが仮に10兆円だとすれば、その10兆円分(から貯蓄に回っていた分を除いた金額分)、個人消費が落ち込むことになります。 <br> <li><strong>企業の業績が悪化し、さらに人件費削減に<br></strong>個人がどれだけ犠牲になっても、それで経済が成長すればそれで良いじゃないか、と考える人もいるでしょう。あなたが中小企業経営者だったら、そう考えたくなるのも無理はありません。ですが、残念ながら、実際には、すこし長い目で見れば、企業の業績も確実に悪化するのです。<br>なぜでしょうか。<strong>個人消費が10兆円落ち込んだら、ちょうど10兆円分、個人消費財を扱っている企業の売り上げが下がる</strong>ことを意味しているのです。<br>残業代を払わなくて済む法律が出来れば、一時的に会社は莫大な利益を得るでしょう。そして株価も上がり、景気が良いかのように感じるでしょう。その一方で、従業員の賃金は下がり続けます(これが「アベノミクス」の名の下でいま現在起きていることですね)。でも、そうやって会社が溜め込んだ分、労働者=消費者にお金が回らず、個人向け企業の売り上げは結果的に低迷する。小売業が低迷すれば、運送業も、卸売業も、製造業も、タイムラグの後、すべて売り上げが低下し、業績を著しく圧迫します。<br>繰り返しになりますが、特にホワイト企業ほど業績の悪化が顕著になるでしょう。需要不足による業績悪化にとどまらず、同業他社とのコストカット競争に耐えられなくなるからです。これに対処するためには、残業代不払い制度を導入する以外にありません。こうして日本経済全体がブラックになります。<br> <li><strong>給与所得総額に連動して、GDPも悪化する<br></strong>給与総額が下がり、個人消費が減り、企業の売り上げが下がれば、言うまでもなくGDPも下がります。実際のところ、給与総額こそがGDPを決定しているのです。グラフを見てください。<a href="https://lh3.googleusercontent.com/-DdeWn2C7eMg/V3QNO1jqSII/AAAAAAAAA0w/jM3ia1uihhk/s1600-h/image%25255B5%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="https://lh3.googleusercontent.com/-ZAtTZ7AuA3E/V3QNPKrO5BI/AAAAAAAAA04/u9GNktftuI4/image_thumb%25255B2%25255D.png?imgmax=800" width="401" height="294"></a><br>これは、直近24年間の名目GDPと給与所得総額の推移を表したグラフです。あえてGDPと給与総額の軸を変えて、グラフの重なり具合が直感的にわかるようにしましたが、ほとんど重なっていることがわかります。<br>名目GDPに対する給与所得総額決定係数を求めると、驚愕すべきことに、0.98でした(1が最大)。つまり、<strong>GDPの98%は給与所得総額が決めている</strong>わけです。経済全体で人件費を5%削れば、GDPも5%下がる。人件費を10%削減すれば、GDPも10%下がる。政財界は、「わあ、人件費が削れてこれだけ儲かった」と喜んでいますが、それは自分の血液を売って儲かったと喜んでいるにすぎないのです。<br> <li><strong>税収が減り、財政状況が悪化する<br></strong>GDPが下がれば、とうぜん政府の財政状況が悪化します。所得が減ったので所得税収入も減り、年金・健康保険の収入も下がる。個人消費が減ったので、消費税からの収入も減ります。一時的に法人が利益を出しますが、法人税率が下がっていることと、長期的には利益が出ないため、税収は増えません。この状況を切り抜けるために政府はさらなる消費税増税で対応したら、さらに個人消費と企業の業績が悪化することになります。<br> <li><strong>失業者が増え、非正規雇用が増え、さらに賃金が下がる。</strong><br>企業が残業代を払わなくても済み、また長時間労働を強いても一切のリスクがないならば、企業は従業員により長時間の残業を強いるようになるでしょう。一人あたりの労働時間が長くなれば、企業はより少ない人数で回せるようになります。余った人間は―失業します。個人消費低迷で仕事が減るのだから、なおさらです。<br>試算する時間がないのですが、どう考えても<strong><font color="#ff0000">数</font><font color="#ff0000">百万人単位で失業者が増えます</font></strong>。失業者が増えれば、賃金は下がります。安い給料でこき使っても、代わりの人材が見つかりやすいからです。<br>ホワイト企業が駆逐されブラック企業ばかりになるため、正社員は全員「社畜」となり、体力的にギリギリの生活を強いられる。そういう働き方ができない人間、したくない人間は、どれほど家計が苦しくても、非正規雇用で働かざるを得なくなる。ブラック企業合法化によって正規雇用はさらに減り、賃金は下がり、非正規雇用が増えるでしょう。そうすれば、また給与所得総額が下がり、企業の業績が悪化し、GDPが急落する。日本経済は最悪の悪循環に突入します。</li></ol> <p>ブラック企業合法化によって何が起きるのか。<strong>賃金が大幅にカットされ、個人消費が激減し、失業者が増え、企業の業績が悪化する。<font color="#000000">日本経済はアベノミクスによって飛躍するどころか、逆噴射して縮小し続ける。</font></strong></p> <p><font color="#000000"><strong><font color="#ff0000">「この道しかない」、そのように断言し安倍晋三が進み続ける日本経済ブラック化の道は、日本経済衰退の一本道なのです。</font></strong></font></p> <p><strong><font color="#000000"></font></strong> </p> <h3>最後に</h3> <p>最後までお読みいただいてありがとうございました。納得いただいた方は、手遅れにならないうちに、どうか身近な人にこの内容についてお伝えください。</p> <p>ここまで議論についてきてくださった皆様に、もう一つだけ考えていただきたいことがあります。</p> <p>そもそもブラック企業合法化による日本経済衰退、その要因をあえて二つにまとめれば、①需給ギャップの拡大 ②失業者層の急増 でした。</p> <p>考えていただきたいのは、安倍政権の予期に反してGDPが低下し続け、政権基盤が危うくなったとき、安倍晋三や稲田朋美ならどのような「解決策」を選択するだろうか、という問題です。</p> <p>需給ギャップを解消し失業者を減らし、政権支持率をアップするために、どのような手段をもって彼らは消費財と人間を蕩尽するでしょうか。そして、そのために必要な法的・外交的・経済的な準備はどのようなものでしょうか?</p> <p>それを想像できた方は、その目でこれまで安倍政権がやってきたこと、そして今まさにやろうとしていることを眺めてください。すべてが一本の線で繋がって見えると思います。</p> <p><a href="https://lh3.googleusercontent.com/-vwgVvzID7fQ/V3QNPn44kAI/AAAAAAAAA1A/cnNDLwKjQag/s1600-h/88x31%25255B2%25255D.png"><img title="88x31" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="88x31" src="https://lh3.googleusercontent.com/-mXtj3-Ctmts/V3QNQEsLqyI/AAAAAAAAA1I/IZ-Pmwlb9gc/88x31_thumb.png?imgmax=800" width="92" height="35"></a></p><a class="twitter-share-button" href="https://twitter.com/share" data-text="アベノミクスの本丸、ブラック企業合法化法案がやってくる #与党が勝つと残業代ゼロになります">Tweet</a> <script>!function(d,s,id){var js,fjs=d.getElementsByTagName(s)[0],p=/^http:/.test(d.location)?'http':'https';if(!d.getElementById(id)){js=d.createElement(s);js.id=id;js.src=p+'://platform.twitter.com/widgets.js';fjs.parentNode.insertBefore(js,fjs);}}(document, 'script', 'twitter-wjs');</script>ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-10299228536218501822015-09-22T17:17:00.001+09:002015-09-22T18:18:15.767+09:00安保法案は可決していない その1<p>2015年9月19日未明の参議院本会議の採決を受けて、安保法案は可決された、とマスコミ各社は報道しています。</p> <p>しかし、私たちは諦める必要も、絶望する必要もありません。</p> <p>なぜなら、安保法案はいまだ可決されていないからです。</p> <p>民主主義を取り戻す闘いを行うにあたって、私たちはまず、その厳然たる事実を確認するところからはじめたいと思います。</p> <p>本ブログ記事の要点を挙げます。</p> <ul> <li>安保法案は憲法第9条に違反である。そして、憲法に反する法令や採決は、そもそも憲法第98条によって効力を有しない。</li> <li>参議院特別委員会で、採決が行われたという事実は存在しない。</li> <li>参議院特別委員会で委員長に「採決」もどきを強制し、野党の採決権を一方的に剥奪した自民党議員らは、公務員職権濫用罪の構成要件を満たしている可能性が高い。すなわち、特別委員会の採決は、単に無効であるだけでなく、違法である。</li> <li>違憲かつ無効な法案を、違法な手段で「可決」したと宣言したことは、政権与党によるクーデターであった。</li> <li><a href="http://netsy.cocolog-nifty.com/blog/">「安保関連法案の採決不存在の確認と法案審議の再開を求める申し入れ」への賛同のお願い</a></li></ul> <a name='more'></a> <h2>安保法案は違憲無効である</h2> <p>安保法案は、憲法第9条に明らかに反しています。</p> <p>今更確認するまでもないことですが、「学者の会」からの引用となりますが、再度確認しておきましょう。</p> <blockquote> <p>法案は、①日本が攻撃を受けていなくても他国が攻撃を受けて、政府が「存立危機事態」と判断すれば武力行使を可能にし、②米軍等が行う戦争に、世界のどこへでも日本の自衛隊が出て行き、戦闘現場近くで「協力支援活動」をする、③米軍等の「武器等防護」という理由で、平時から同盟軍として自衛隊が活動し、任務遂行のための武器使用を認めるものです。</p> <p><a title="http://anti-security-related-bill.jp/" href="http://anti-security-related-bill.jp/">http://anti-security-related-bill.jp/</a></p></blockquote> <p>憲法第9条を読みましょう。</p> <blockquote> <p>日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E6%A8%A9">国権</a>の発動たる<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E4%BA%89">戦争</a>と、武力による<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A8%81%E5%9A%87">威嚇</a>又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 <br>前項の目的を達するため、陸海空軍その他の<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E5%8A%9B">戦力</a>は、これを保持しない。国の<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E6%88%A6%E6%A8%A9">交戦権</a>は、これを認めない。 <p>1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 <br>2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。</p></blockquote> <p>どのように言い訳を行っても、武力を使用し、あるいはアメリカの戦争に武器・食料等の援助を(無償で!)行う安保法制は、文字通り戦争法案であって、違憲です。 <p>安倍晋三のいう「積極的平和主義」を、仮に文字通り受け取ったとしても、「同盟国である米国を始めとする関係国と連携しながら,地域及び国際社会の平和と安定」に寄与するために武力を行使すること、あるいは他国まで行って武力で威嚇することは、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という第9条に明確に違反しています。 <p>さて、憲法第98条には次のようにうたわれています。 <blockquote> <p><strong>1 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、 詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。</strong></p></blockquote> <p align="left">それゆえ、安保法案も、またその採決も、いっさいがっさい、すべて【効力を有し】ません。<strong>安保法案の採決など存在しなかったし、それが憲法に反する限り、一切存在しえないのです。</strong> <p align="left">どれだけ審議を積み重ねようと、またどれだけ正規の手続きを踏んで可決したとしても、<strong>そもそも安保法案は効力がないし、私たち国民はそんなものに唯々諾々としたがう必要はない。</strong>私たちは、まずその事実から出発する必要があります。 <h2> </h2> <h2>安保法案「可決」がクーデターである理由</h2> <p>さて、そうは言っても、もうすぐ安保法制のもとに海外派兵されることは、残念ながら事実です。しかし、憲法に違反した、無効の法案を根拠に海外派兵を行う安倍政権を、私たちはどのように考えたらよいのでしょうか。</p> <p>SEALDsの「アベはやめろ」というシュプレヒコールに対して、「対話的ではない」と批判する人がいたりします。じゃあ、どないせえっちゅうねん、それこそ「代案を出せ」と言いたい(笑)。でも、僕は親切なので、彼らの代わりに代案について考えてみました。</p> <p>そもそも、憲法第99条には次のように書かれています。</p> <blockquote> <p>天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。</p></blockquote> <p>つまり、安倍晋三内閣総理大臣(以下国務大臣・与党の国会議員)は、憲法第9条及び第98条を尊重しなければならない。つまり、憲法によれば、以下の三つしか選択肢はありません。</p> <ol> <li>安倍(以下国務大臣・与党の国会議員)は、憲法を尊重も擁護もできないので辞職する。</li> <li>安倍(以下略)は、憲法を尊重して、安保法案を廃案にする。</li> <li>安倍(以下略)は、安保法案にかなうように、正規の手続きを踏んで、憲法を改正する。</li></ol> <p>しかし、安倍は、この三つの選択肢のいずれも取らず、安保法案を無理やり国会を通してしまった。つまり、彼がとった手段は</p> <p><strong> 0 憲法を端的に無視する。</strong></p> <p>という暴挙だったわけです。を押し通して、言い換えれば、<strong>安倍晋三は、憲法よりも上位に自分を置いた。</strong>憲法学者の石川健治氏が、「法学上のクーデター」であるというのは、そのためです。</p> <p><a title="http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150718-00010001-videonewsv-pol" href="http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150718-00010001-videonewsv-pol">http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150718-00010001-videonewsv-pol</a></p> <p>別の言い方をすれば、<strong>憲法上は無効な法律に対して、無効な採決を行って「可決」したと宣言し、それをもって軍隊を動かそうというのは、文字通りの意味でクーデター</strong>です。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-16405714185388871212013-11-26T03:10:00.000+09:002013-11-30T20:49:53.064+09:00東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌 ―Googleトレンドは嘘をつかない― ②データ編<h3> </h3> <h3>理論編のおさらい</h3> <p>東京電力原発事故で、あらゆる健康被害が爆発的に増加しつつある。このデータを本稿でお見せいたしますが、その前に「<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2013/10/google.html">理論編</a>」のおさらいをしておきます。</p> <p>●東京の放射能汚染は、「放射線管理区域」相当の汚染状況である。</p> <p>●広島・長崎やチェルノブイリなどの過去の例からいって、被曝による健康被害の典型は癌ではなく、倦怠感・心不全・膀胱炎・ホルモン異常・免疫低下など、全身の多様な慢性疾患であること。</p> <p>●「科学的にいって放射能は安全である」という議論の元となっているICRPは、論理によってデータを排除し、残ったデータで理論を強化する「神話」の「循環構造」を構成している事。</p> <p>●東京電力原発事故の主たる放射性降下物は、セシウムを含む不溶性合金の放射性物質微粒子(ホットパーティクル)であることが実証されたこと。</p> <p>●人工放射性物質と自然放射性物質の唯一の違いは、ホットパーティクルを構成しうるか否かであること。</p> <p>●ホットパーティクルとよばれる人工放射性物質の微粒子のリスクを、ICRPの体系が過小評価していること。</p> <p>●バイスタンダー効果など最新の生物学の知見によって、ホットパーティクル(放射性物質微粒子)の危険性が明らかになりつつあること。</p> <p>上のことで、これからお見せするデータが、充分な理論的バックグラウンドでもって、予測・理解可能なことを示したつもりです。「科学的にいってこれは放射能のせいではありえない」という批判をしたい方は、ぜひ「理論編」を読んだ上で、批判を試みてください。</p> <p> </p> <p>なお、本稿のデータ・本文は、引用・転載自由です。全文転載は、非商用に限り認めます。このデータと手法が、私の手を離れてできる限り拡散することを望んでおります。</p> <a name='more'></a> <h3>Googleトレンドは嘘をつかない</h3> <h5>ICRPとECRR。決着の刻、来たれり。</h5> <p>前稿で、私は主にECRR側に立って、放射能の危険性について議論してきました。まず、東電原発事故によって、東京で放射線管理区域レベルの土壌汚染があったこと。放射能による健康被害は癌だけではないこと。ICRPでは内部被曝を測れない事。内部被曝で危険なのはホットパーティクルと呼ばれる放射性微粒子であること。そして、東電原発事故の主要な放射性降下物(の一つ)は、セシウム・ホットパーティクルであったこと。</p> <p>もし、私たちの議論が大筋で正しければ、これから日本で起こる出来事がどのようなものなのか、戦慄すべき想像が頭に浮かびます。何年か後、チェルノブイリ周辺地域と同じように、東京で生まれた子供のうち、健康な子どもが20%しかいない、という事態が起きてもおかしくない。私としても、そのようなことが起こるとは信じたくない気持ちもあるのですが、残念ながら、それが今、私に入手できる限りの情報と論理的思考から、たどり着く推測です。</p> <p>ただし、ここで、あえて前を向きましょう。事実はつねに、理論に優先します。以上の議論は、あくまでこれまで集めた情報と理論からえた、私(たち)の推測にしかすぎません。そして、内部被曝については、まだまだ判明していない事が多い。もし、現実に健康被害が起きていないならば、私たちの議論は、どこか根本的に間違っていることになる。</p> <p>事実というのは厳正なものです。たった一度でも、理論とあわないデータがあれば、その理論は修正ないし棄却されなければならない。ECRRは、チェルノブイリなどの膨大なデータをもって、ICRPを徹底的に批判してきました。その審判は、当然私が主に依拠しているECRRの被曝モデルに対しても、常に向けられるべきです。</p> <p>何が言いたいのか。ICRPの被曝モデルによれば、東京での健康被害は、晩発性の発癌以外には存在せず、癌も非常に微少な増加しかないはずです。すなわち、統計的な有意差は決して表われないはずです。それに対して、ECRRがもし正しいのだとすれば、主たる放射性降下物がセシウム・ホットパーティクルであったことから、東京でも癌以外のあらゆる健康被害が、2011年3月以降、増加し続けているはずです。</p> <p>チェルノブイリ原発事故の時は、あらゆる健康被害の増加のデータに対して、「放射線恐怖症」や、「ソ連崩壊に伴う社会環境の変化」といった因子で説明可能かもしれないという反論がありました。また、旧社会主義体制やその後の独裁体制による、情報の隠蔽もあった。そのため、放射能が安全か危険か、決着を付けることができないまま、両者の立場の違いが大きくなった。それに対して、東電原発事故の場合は、少なくとも東京では、こうした外的要因は相対的に小さい。「放射能が安全」であるという「科学的根拠」が社会全体に浸透し、「放射能恐怖症」の人間はごく一部となっている。311以降、社会構造の大きな変化は今のところ存在しない。そして、情報統制は、現時点では旧社会主義国ほどひどくはない。交絡因子が非常に少ないため、統計上、非常にクリアーな結果が得られる可能性が高い。</p> <p>健康被害を総合的・時系列的にあらわす統計データさえ存在すればいい。そうすれば、内部被曝が安全なのか危険なのか、ICRPとECRRの論争に簡単に決着を付ける事ができるはずです。</p> <h5>Googleトレンド 理想的な自覚症状の統計データ </h5> <p>ICRPとECRRで決着をつけることができる、東京の健康被害に関するデータがどのような類のものでなければいけないのか、その条件も制約されます。</p> <ol> <li>癌以外のあらゆる健康被害が個別に測定できるもの。もし可能ならば、個々の病名ではなく、自覚症状などの健康状態に関する指標がよい(病名で統計を出すと、病名が付けられにくい放射能健康被害が過小評価される)。 <li>時系列的に、発生時点を確認できるもの。 <li>他の非・被爆者を、参照群として選択できるもの。</li></ol> <p>さて、以上の条件を満たす、そのような都合が良い健康データがあるのか、という、根本的な問題にぶつかる事になります。普通に考えれば、そんなものなさそうです。なので、私としても、これまで医者に訊いたりしていましたが、統計データと呼べるものは入手できそうもありませんでした。当然と言えば当然です。統計的に有意と言えるようなデータを収集するためには、膨大なお金を使った疫学調査が必要となる。そして、政府はそういう統計を一切取ろうとしそうもないし、仮に資金繰りの問題が解決されたとして、民間でそのような調査を行おうとしても、きっとどこかから妨害が入るに違いない。</p> <p>そうすると、被曝について調べる人が、個人的に自分の周りや知人のネットワークを使って、個々の健康被害について訊いて回るしかない。これまで、内部被曝の危険性について気にしている人は、みなそうしてきました。でも、仮に変な症状が起きている人が周りにいたとしても、あるいは(私のように)自分の周囲の人間で明らかに健康状態がおかしい人が増えてきたとしても、それが統計的に有意であるとはとても言えない。たまたま、私がそういう情報を選択して仕入れているだけかもしれないし、たまたま、私の周りだけ、健康被害が起きているだけかもしれない。他人に「知人の誰々さんがこういう症状があって」と言っても、「それは放射能のせいじゃなくて、あなたの放射脳のせいよ」とか、「偶然でしょう」とか、もっと典型的には「でっちあげだ」と言われておしまいになる。そして、健康被害が本当に、爆発的に多発しはじめるまで、圧倒的多数の人間は、それが被曝症状だとは気がつかないことになる・・・。</p> <p>とまあ、私はそう半ば諦念していました。しかし、たった2-3ヶ月前、あるアイディアが、私に去来しました。おそらく一つだけ、リアルタイムで健康被害の統計として使えるツールが存在する事に気がついたのです。</p> <p>もし仮に、ECRRが正しいとして、何かしら、身体に異変を感じる人が増えてきたと仮定します。そうすれば、その人たちの一部は、何かしら情報を集めたり治療を行ったりするために、自分が抱えている自覚症状で、Web上のサーチエンジンで検索するはずだ。つまり、自覚症状の全体の検索数の中で、その自覚症状の検索の割合が、必ず増えているはずだ。</p> <p>そんなことが分かる、都合が良いサービスがあるのでしょうか。それが、あったことに私は突然気がつきました。マーケティングの分野ではすでに必須のツールとなっているため、ご存じの方も多いでしょう。Googleの無料サービス、<a href="http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q">Googleトレンド</a>です。</p> <p>Googleトレンドは、日本はもとより、世界中で使われているGoogleのサーチエンジンの膨大な検索に基づいて、ある検索キーワードのトレンドをグラフで表示してくれます。しかも、2004年以降なら、期間や地域を細かく規定して、その検索トレンドを調べることができる。まさに、上に挙げた条件を満たした、理想的なツールです。</p> <p>いや、Googleトレンドは、理想的以上と言って良いでしょう。</p> <ul> <li>2010年7月以降、それまで日本国内の検索エンジンのトップだったYahoo!がGoogleの検索エンジンを採用したため、以後現在に至るまで、日本における検索エンジンのシェアの9割を得ている。つまり、自覚症状についてサーチエンジンを検索する人のほとんどが、Googleを使用しているはずである。 <li>私たちはパソコンやタブレット、スマートフォンを持っているインターネットユーザーなら、誰でもそのサービスを無償で使える。そして、誰でも簡単に検証ができる。つまり、その情報はデマである・捏造だ、という批判を受ける余地が全くない。 <li>インターネットの普及率、Googleの検索エンジンのシェアなどによる検索ボリューム数などの変化などの外部要因による複雑な統計処理は、全部あらかじめGoogleがやってくれた上でデータを出してくれているため、非常に簡便である。 <li>調べる対象の検索キーワードを変えれば、別の角度や、別の症状、あらゆる角度から検証できる。</li></ul> <p>しかし、仮にそうだとしても、本当にGoogleトレンドは、身体症状に関する統計データとして使用できるのでしょうか?Google自身が、インフルエンザのリアルタイム統計として使えるということを既に検証して、その論文がNatureに掲載されています(<a href="http://www.nature.com/nature/journal/v457/n7232/full/nature07634.html">Detecting influenza epidemics using search engine query data</a> ※有料記事 Googleによる無料公開版は<a href="http://static.googleusercontent.com/media/research.google.com/ja//archive/papers/detecting-influenza-epidemics.pdf">こちら</a>)。</p> <p>簡単に内容を紹介すると、インフルエンザに関連する検索数は、インフルエンザ患者の医者の訪問数と非常に高い相関関係があると思われます。(インフルエンザらしき症状に罹った患者は、病院を検索するということでしょう)。そこで、複数の検索キーワードを重み付けして、インフルエンザ関連の病院訪問数を最も説明できる、線形的な検索キーワードの組み合わせを選ぶ、それが彼らの研究の目的です。</p> <p>アメリカ疾病予防管理センターのインフルエンザに関するデータを使用して、その増減傾向と合致する検索キーワードのトップ100を選んだところ、トップ45は全てインフルエンザ関連でした。その45キーワードに適切な重み付けをして線形的な予測モデルを作り、未解析期間のインフルエンザデータと合致させたところ、0.97という非常に高い相関係数で予測できました。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-6q8a8sGLHvk/UpOSzXvOvBI/AAAAAAAAAdw/wjAnsDBsaNY/s1600-h/image_thumb27%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb27" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb27" src="http://lh6.ggpht.com/-7Y89kVLCA-I/UpOS0KaOPuI/AAAAAAAAAd4/iEKYF_XQlx8/image_thumb27_thumb.png?imgmax=800" width="485" height="315"></a></p> <p>この手法は、もちろんきちんとした疫学データに代えられるものではないですが、通常の疫学データよりも優れた点があります。それは、疫学データよりも圧倒的にリアルタイム性が高く、パンデミックのいち早い予測と予防に使えるというところです。ここで開発したインフルエンザ予測ツールは、<a href="http://www.google.org/flutrends/intl/ja/jp/#JP">Googleインフルトレンド</a>というサービスして公開されています。</p> <p>さて、GoogleトレンドとGoogleインフルトレンドの違いは何かと言えば、前者が単一の単語の検索トレンドなのに対して、後者がそれらの検索トレンドを複数足しあわせて、現実のデータに合致するように、一定の重み付けをしたものだということです。言い換えれば、Googleインフルトレンドは、Googleトレンドを変数とした、多変数一次関数です。</p> <p>残念ながら、今回、被曝に関するデータは現実には未だ存在しないので、インフルトレンドのような手法は採用できません。ただ、先の論文がいうように、インフルエンザ関連キーワード単体でも、概ねインフルエンザ流行の動向とかなり高い相関関係がある。そう考えると、人が自覚症状で検索しそうなキーワードを適切に選びさえすれば、その背後にある健康被害の増減傾向を見る指標としては、十二分に使えそうです。少なくとも、ECRRとICRP、どちらがより正しいか、判定することぐらいはできそうです。</p> <p>ともあれ、被曝統計データとしてのGoogleトレンドというアイディアが私の脳裏に去来したとき、即座に確信しました。<strong>ECRRがもし仮に正しくて、微量の内部被曝が大きな健康被害をもたらすのだとすれば、日本語で数々の自覚症状でGoogleトレンドを検索すれば、必ず、2011年3月を境に、増加トレンドが見られるはずだと。</strong></p> <p>そして、覚悟を決めました。それまで私は、自分なりに色々調べていて、理論的に言っても実証的に言っても、ICRPよりもECRRの方が正しいだろうと考えていました。しかし、今回Googleトレンドを調べてみて、自覚症状の増加が見いだせなかったとしたら、理論はどうであれ、ICRPの方が現実に合致すると判断し、放射能安全側に立場を移そう、と。</p> <p><strong>Googleトレンド自体は、放射能安全派でも、放射脳でもない。それは、ただ現実を、より正確に言えば、たくさんの人が経験してきた現実を、映し出す鏡にすぎない。</strong>だから、Googleトレンドという手法の「発見」は、東電原発事故による癌以外の健康被害がないと信じているICRP側にとっても、「放射能危険デマ」を潰す、千載一遇のチャンスのはずです。</p> <p>大切なことは、立場を問わず、科学者として、あるいはこの世界に対して責任を負う一人の人間として、その現実に向かい合う勇気があるかどうかではないでしょうか。</p> <p>私は、ここですぐに結論は出しません。もしこの記事を、パソコンやスマートフォンなどから見ていらっしゃれば、簡単に自分で確かめる事が出来ます。あなた自身の目でで確かめてほしい。もし、紙で読まれていらっしゃるのでしたら、ぜひ、インターネットに接続できるパソコンやタブレット端末を用意してほしい。今から、そのご案内をいたします。</p> <h5>Googleトレンドの使い方</h5> <p>まず、Googleトレンドのページを訪問してみましょう。下のリンクをクリックしてみてください。</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q</a></p> <p>次のような画面が出てきたら、準備ができたことになります。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-b_JsmwoOR30/UpOS0nFI0ZI/AAAAAAAAAd8/v9nc1wekmrU/s1600-h/image_thumb29%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb29" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb29" src="http://lh5.ggpht.com/-IYUFIkbgdVk/UpOS1N1p8KI/AAAAAAAAAeI/2x_co4aEly4/image_thumb29_thumb.png?imgmax=800" width="505" height="440"></a></p> <p>ただし、ブラウザに制限があるようで、Internet Explorerだとうまくグラフが表示されないことがあるようです。うまく行かない場合は、ブラウザを代えてみてください。Googleが出しているブラウザGoogle ChromeやOperaでは、個人的に動作を確認できています。</p> <p>そこで、調べたいキーワードを上の検索ボックス、あるいは「キーワードを追加」のところに入れると、トレンドグラフが出てきます。試しに、好きな言葉を何でも入れてみてください。たとえば、「オリンピック」と入れると、四年に一度の大きなピークと、四年に一度の小さなピークが見られます。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-owf4nxIjQPo/UpOS156js9I/AAAAAAAAAeQ/iz7m0__jLew/s1600-h/image_thumb31%25255B1%25255D%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb31[1]" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb31[1]" src="http://lh5.ggpht.com/-8mk5pWIfOyo/UpOS2TOghUI/AAAAAAAAAeU/818LLT-AUnQ/image_thumb31%25255B1%25255D_thumb.png?imgmax=800" width="501" height="277"></a></p> <p>また、地域を絞るためには、「すべての国」から国→地域と選び、期間を絞り込む為には「2004年-現在」というところをクリックすればいいです。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-dVvY-ZQ9N6s/UpOS21cDSdI/AAAAAAAAAec/FzCLikuJf2k/s1600-h/image_thumb33%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb33" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb33" src="http://lh5.ggpht.com/-JRCVevFW1kk/UpOS3eUggwI/AAAAAAAAAek/BLyVCVhPCEo/image_thumb33_thumb.png?imgmax=800" width="449" height="297"></a></p> <p>ちなみに、Googleのアカウントを持っていれば、右上の歯車のマークから、CSV形式でダウンロード可能です。Excelなどで加工して使えます。</p> <p>注意点だけ付けておきます。これはビッグデータ解析なので、充分に検索数がある検索キーワードでなければ、有効なデータは出にくい。したがって、地域で絞ったときに有意なデータが出やすいのは、大都市圏ということになってしまう。</p> <p>もう一つ、これはあくまで、すでにGoogleによって統計処理されて指数化された数値なので、実際の検索ボリュームはわかりません。その統計処理のアルゴリズムは、私が知る限り公開されていないため、そこがブラックボックスになっている。つまり、私たちとしては、さしあたりGoogleを信用するしかありません。これが、Googleの指数が現実の検索トレンドを反映しているかどうかは、非常に複雑な検討が必要になってくるでしょう。</p> <p>さらに、これはGoogleも論文で書いており、容易に想像がつくことですが、ニュースなどで話題になったキーワードは、飛び抜けて高く表示されます。そのため、何か不自然に突出する動きが出てきた場合、そこにはそうした因子が混じっていないか、確認する必要があります。</p> <h5>自覚症状を調べてみる―まずは「心臓」から</h5> <p>これで準備は完了です。今から、Googleトレンドを検索してみましょう。</p> <p>まず、「心臓 痛い」で検索してみたグラフが次の通りです。</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-Rk9ZpJcZ7Gs/UpOS30df-DI/AAAAAAAAAes/RCA24CFoNBs/s1600-h/image_thumb35%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb35" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb35" src="http://lh3.ggpht.com/-0S-8sOzBI04/UpOS4GDTwlI/AAAAAAAAAe4/1GInBZwwcvA/image_thumb35_thumb.png?imgmax=800" width="501" height="192"></a></p> <p>ある時期から、明確にトレンドが変わり、爆発的な増加傾向を示しています。そのポイントが具体的にどこなのか、補助線を引いて見てみましょう。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-9wS2_SLRy9I/UpOS4_hyH5I/AAAAAAAAAe8/sC_OK8L51fw/s1600-h/image_thumb37%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb37" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb37" src="http://lh3.ggpht.com/-_wbeIzGIiKw/UpOS5YG-nYI/AAAAAAAAAfE/7V15jRN-FPA/image_thumb37_thumb.png?imgmax=800" width="503" height="197"></a></p> <p>少し色が薄いため見にくいと思いますが、2011年の前半のどこかが、ターニングポイントであることは疑いようがない。ちなみに、2011年3月を縦にマークしてみると、概ね合致しているようにも見えます。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-uq3z9PTkhyE/UpOS56ufBMI/AAAAAAAAAfM/VA45oly4aSM/s1600-h/image_thumb39%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb39" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb39" src="http://lh3.ggpht.com/-4J6nl3G70W8/UpOS6VtqH3I/AAAAAAAAAfY/a4e3TKRsugQ/image_thumb39_thumb.png?imgmax=800" width="506" height="194"></a></p> <p>地域別に絞ってみてみましょう。ただし、検索数の関係で、よほど大きな大都市圏でなければ、うまくグラフが表示されない事が多いです。そこで、今回の記事では、主に対象を東京に絞り、参照群として、大阪に絞ります。ただし、重要な事は、大阪であっても「非-被曝群」とはとても言えないということです。なぜなら、汚染された食品はすでに日本中を出回っていると考える必要があるからです。ただし、土壌汚染の度合いから考えると、直接の放射性降下物由来の呼吸からの内部被曝は、西日本ではほとんどないと言ってよいでしょう。そういう意味で、参照群にする意義は充分あります。</p> <p>東京 「心臓 痛い」</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-Ugq_TC85k08/UpOS7H32G3I/AAAAAAAAAfc/5q8CU-SHtyo/s1600-h/image_thumb42%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb42" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb42" src="http://lh5.ggpht.com/-YpI4s4tU-Tk/UpOS7yRmDxI/AAAAAAAAAfo/JiW5Hi5Le4A/image_thumb42_thumb.png?imgmax=800" width="510" height="198"></a></p> <p>大阪 「心臓 痛い」</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-Gf3pD-CeS1k/UpOS8afYcVI/AAAAAAAAAfs/wFH-IOrpjXI/s1600-h/image_thumb44%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb44" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb44" src="http://lh5.ggpht.com/-zt4btqm-CYI/UpOS8rhLqWI/AAAAAAAAAf0/r8xwG-QCLSA/image_thumb44_thumb.png?imgmax=800" width="511" height="200"></a></p> <p>今回、大阪は、2012年ぐらいまで全くなかったのに、急激に跳ね上がっているように見えますが、これは検索ボリュームが少ないときのグラフの特徴です。この場合は、さほど参考にはならないと言えるでしょう。それに対して、東京は、割と有意なグラフが表示されているように思われます。(これが、実は今回、東京の健康被害を前面に取り上げた、最大の要因です)。</p> <p>さて、ここで一つ、注意しなければならないことがあります。ちょうど2011年のところに「メモ」という項目があります。ここにマウスポインタを当てると、「Googleの地域区分の変更は2011年1月1日に適用されました」と表示されます。つまり、ここで、データの前後で不連続性がある、とGoogleは言っています。この件についても、具体的にどのように前後が接合されているのかブラックボックスとなっていますが、2011年1月1日をまたがない期間での増減傾向については信用できます。</p> <p>また、地域を限定しなければ、不連続性の問題は発生しません。おそらくは人口比の関係から、地域が限定されないグラフは、おおむね東京の動向ともっとも強い相関関係があるように思われます。</p> <p>より、このトレンドを明確にするため、関連しそうなキーワードのトレンドをあわせて参考にすることでよりデータを確実なものにできます。</p> <p>たとえば、「心臓 痛い」「不整脈」「胸 痛い」をあわせて、地域を絞らずに検索したのが次のグラフです。</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-TzmzfM-O7_A/UpOS9T0oICI/AAAAAAAAAgA/kNi8HJjeWrc/s1600-h/image_thumb51%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb51" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb51" src="http://lh4.ggpht.com/-x1OcWwOtFf4/UpOS97wdppI/AAAAAAAAAgI/NxkNFCmqN74/image_thumb51_thumb.png?imgmax=800" width="490" height="261"></a></p> <p>「胸 痛い」にだけ見られる11年5月のピークについては、よくわかりません。ただ、この三つをあわわせると、非常に明確に、2011年3月に、どの指標もそれまでのトレンドからのターニングポイントを迎えていることが、はっきりと分かります。どのグラフも、そこで近似曲線に変化が見られます。</p> <p>では、たとえば「心筋梗塞」で調べてみるとどうでしょうか?</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-aDFIfnF923Y/UpOS-T7LRiI/AAAAAAAAAgQ/_BG499KHJhk/s1600-h/image_thumb53%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb53" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb53" src="http://lh5.ggpht.com/-vdyRNkabYCk/UpOS_LoZkpI/AAAAAAAAAgU/Y5BfJJEKp04/image_thumb53_thumb.png?imgmax=800" width="497" height="203"></a></p> <p>そうすると、あからさまに突出したピークが浮かび上がってきます。ただし、このピーク上のアルファベットにマウスをあわせると、著名人が心筋梗塞になったニュースがあったため、検索が増えたということがわかります。そのため、病名は検索キーワードとして、気をつけなければなりません。なぜなら、病名の場合、メディアや本などでの一般的知識としての検索が混じってくるからです。それに対して、自覚症状で検索する人の大部分は、自分あるいは身近な人の症状を改善するために検索することが多い、と容易に想像できます。</p> <p>そのキーワードがどのような目的で調べられているのかは、下の「関連キーワード」の人気・注目を見るとよいでしょう。2011年11月23日現在の、「心臓 痛い」の関連キーワードは、以下のようなものでした。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-_qlnjsXKOgA/UpOS_oNjq_I/AAAAAAAAAgc/W_QTzLsW_KY/s1600-h/image_thumb55%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb55" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb55" src="http://lh4.ggpht.com/-eA_YSymY09A/UpOTAB7ctqI/AAAAAAAAAgo/1ccM_lsM5dk/image_thumb55_thumb.png?imgmax=800" width="499" height="223"></a></p> <p>こうしてみると、自覚症状を改善するために検索している可能性が、やはり高いように思われます。そして、右側の「注目」で「ストレス」が二つあることから、心臓の痛みは、ストレスが原因だろうと、現在の検索者は考えているらしい、ということも何となくわかります。</p> <p>さて、そうだとすると、おそらくGoogleトレンドのグラフは、「罹患率」よりも「発症率」と高い相関関係にあるのではないか、というのが私の予想です。なぜなら、人はその自覚症状の初期に原因や病院を調べるために検索すると思われるからです。おそらく、慢性的に抱えている場合は、初期よりも検索しなくなるのではないか。ただし、これは、今のところ根拠がない憶測にすぎません。</p> <p>また、このGoogleトレンドのデータには、もう一つ欠陥があります。それはトレンドが―おそらく発症率が―従来の何倍になったかは調べられますが、実際にそれが何人に、そして人工の何%に相当するのか、推定するのが非常に難しいということです。こうしたことは、おそらく現実の疫学データと付き合わせる必要が出てくるでしょう。</p> <h5>心臓の異変は「放射脳」のせいか?</h5> <p>先ほど見たように、心臓に関する自覚症状について、どの指標も2011年3月以降、明らかに急増していることがわかりました。あえて統計処理をするまでもなく、これは偶然ではありえない。そのときをきっかけに、何かが根本的に変わったのです。しかし、それが「放射能」のせいであると断言するのは、議論として拙速にすぎるかもしれません。念のため、他の可能性を検討しておきましょう。</p> <p>まず第一に、「放射線恐怖症」、あるいはいわゆる「放射脳」のせいで、身体に異変が起きている、あるいは異変が起きると思い込んでいるのではないか、という可能性を考えてみます。もし、関連があるとすれば、「被曝」や「放射能」というキーワードと、それぞれの自覚症状との間に、相関関係・親和性が見られるはずです。</p> <p>放射能(東京)</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/--qWkW3xVVrc/UpOTA5-7zbI/AAAAAAAAAgw/YnuSIkHBpKQ/s1600-h/image_thumb57%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb57" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb57" src="http://lh4.ggpht.com/-pSJkTaAIP2s/UpOTBrIibrI/AAAAAAAAAg0/_DoPqaI-C-0/image_thumb57_thumb.png?imgmax=800" width="483" height="188"></a></p> <p>「被曝」「セシウム」(東京)</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-Qq7t0DyXO7E/UpOTCIaztuI/AAAAAAAAAg8/_axnu_cjSFI/s1600-h/image_thumb60%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb60" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb60" src="http://lh6.ggpht.com/-NO-1D22EwjM/UpOTCs6g0PI/AAAAAAAAAhI/6mrc9S9Mv3M/image_thumb60_thumb.png?imgmax=800" width="486" height="267"></a></p> <p>どのグラフも、2011年3月をピークに、20分の1程度に減少しています。(セシウムだけは、2011年8月、米から微量に検出されたというニュースと相関しています)。グラフを出したのは東京ですが、これは日本ではどこでも変わりない傾向です。つまり、原発事故の直後はみな被曝について心配したけれど、ごく一部の人を除いては、急激に忘れ去ってしまったということを意味しています。放射能がその一方で、心臓の異変はあきらかに急増している。この二つの間には、まったく相関関係は見いだせません。</p> <p>「でも」、と「放射能安全派」の人は言うかもしれません。そのごく一部の「放射脳」の人が、心配して、「心臓が痛い」という気になっているかもしれないか、と。念のため、その可能性も検証しておきましょう。もしそうだとすれば、心臓の自覚症状について調べている人の大部分は、放射能などのキーワードと一緒に調べているはずです。</p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-_N7lFIdcoJI/UpOTDAZcviI/AAAAAAAAAhM/31Kgm9Y4_RE/s1600-h/image_thumb61%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb61" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb61" src="http://lh4.ggpht.com/-xEBDpGj_48o/UpOTDsEGIZI/AAAAAAAAAhY/UZvxhutDAjQ/image_thumb61_thumb.png?imgmax=800" width="244" height="164"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%80%80%E5%BF%83%E8%87%93&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%80%80%E5%BF%83%E8%87%93&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E8%A2%AB%E6%9B%9D%2C%20%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%80%80%E5%BF%83%E8%87%93&cmpt=q</a></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-E436gD9Puko/UpOTEFT4y5I/AAAAAAAAAhc/OlpkVbjirNs/s1600-h/image_thumb62%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb62" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb62" src="http://lh6.ggpht.com/-96JoWamp9_k/UpOTEiLIJLI/AAAAAAAAAho/rAygx0HJ21o/image_thumb62_thumb.png?imgmax=800" width="244" height="160"></a></p> <p>これが結果です。どうやら、日本人の圧倒的大部分は、心臓と被曝の関連についてほとんど想像していないらしい。そして、そもそも、自覚症状について調べる人のうち一定数以上が、その原因を被曝に関連づけているならば、下の「関連キーワード」のところに表示されるはずです。しかし、これから膨大な量のグラフをお見せしますが、そのどれ一つとして、放射能関連・福島第一原発事故関連のキーワードは出てきません。</p> <p>では、他の要因は何かあるでしょうか?たとえば、最近、福島周辺で、健康被害に関する症状について、「避難生活疲れ」によるストレスが原因とされることが多いようです。たとえば、毎日新聞の2013年9月8日の「<a href="http://mainichi.jp/select/news/20130908k0000m040107000c.html">震災関連死:福島県内で直接死上回る 避難生活疲れで</a>」という記事には次のように書かれています。</p> <blockquote> <p>東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者の死亡例のうち、福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が8月末現在で1539人に上り、地震や津波による直接死者数1599人(県災害対策本部調べ)に迫っていることが、毎日新聞の調査で分かった。少なくとも109人について申請中であることも判明。近く直接死を上回るのは確実だ。 長引く避難生活で体調が悪化したり、自殺に追い込まれたりするケースがあり、原発事故被害の深刻さが裏付けられた。〔中略] <br> 死因については多くの市町村が「今後の審査に影響する」と回答を避けた。復興庁による昨年3月末のデータを基にした県内734人の原因調査では「避難所などの生活疲労」33.7%▽「避難所などへの移動中の疲労」29.5%▽「病院の機能停止による既往症の悪化」14.5%など。自殺は9人だった。</p></blockquote> <p align="left">しかし、東京に絞っていえば、いまだに東京都内で避難生活をしている人は非常に少ないと思われるので、まず可能性としては排除できるでしょう。ちなみに、「心臓 痛い」「不整脈」「胸 痛い」で、東京で絞ったときも、絞らなかった場合と同じように、2011年3月以降どれも増加傾向にあります。東京の震災ストレスは、私が知る限り一過性のものと考えられるため、継続的な増加傾向は、震災ストレスが原因ではありません。</p> <p align="left">●「心臓 痛い」 「不整脈」「胸 痛い」(東京)</p> <p align="left"><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84%2C%20%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88%2C%20%E8%83%B8%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p align="left"><a href="http://lh6.ggpht.com/-AVtx8YnKYl4/UpOTFNIuWgI/AAAAAAAAAhs/gz6NEA8ibvk/s1600-h/image_thumb64%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb64" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb64" src="http://lh3.ggpht.com/-xq8tlI_mwj8/UpOTFkY1gnI/AAAAAAAAAh4/UWJWT9vm5dY/image_thumb64_thumb.png?imgmax=800" width="482" height="257"></a></p> <p>また、2011年3月以降、大きな社会構造の変化があったとは、私には思えません。また、景気も悪化しているどころか、一時的に改善してさえいる。これも、要因としては外せます。</p> <p>では、放射能が原因であるという可能性を否定・肯定する方法はないのでしょうか?あるとすれば、参照群を正しく設定して見る、ということになりそうです。もし、これらの身体症状の異変が関東以北に降り積もった「死の灰」が主たる原因なのだとすれば、大阪では全く違うグラフになるはずです。</p> <p>●「心臓 痛い」 「不整脈」「胸 痛い」(大阪)</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-0c3elhXi4N4/UpOTGWYEA2I/AAAAAAAAAh8/-tbKNHR7rTY/s1600-h/image_thumb66%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb66" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb66" src="http://lh6.ggpht.com/-KCmQgA5x97k/UpOTG9vDlNI/AAAAAAAAAiE/KP7t4C0qEU8/image_thumb66_thumb.png?imgmax=800" width="486" height="271"></a></p> <p>このグラフに見るように、どうもかなり違う様相が浮かびあがってきます。胸・心臓の痛みは、2011年12月以降から少しずつ増えているように見える。その後平行に推移し、2012年12月ぐらいからまた増えるようです。それに対して、不整脈はほとんどトレンドが変わらない。ただ、いずれにしても、大阪でさえも、健康被害が少しずつ増えてきているということは確からしい。これは、セシウムに汚染された食物が、秋に収穫される事で、主に体調が悪化すると考えれば、説明がつくような気がしますが、これについては、別途検討が必要でしょう。</p> <p>ともあれ、大阪を参照群としたときに、東京とのグラフのあからさまな違いから、何か根本的に異なるものがあるということは確かだと思われます。しかし、社会生活で根本的な差が311以降あるとも思えない。気候にしても、とりわけ東京が猛暑であったとか、寒冷であったとか、そういうこともなかったと記憶しています。</p> <p>だとすると、私には今のところ、一つの要因しか思い浮かびません。それは、セシウムによる土壌汚染です。バンダジェフスキーの議論における、不整脈と体内セシウム濃度との相関関係のグラフを出してみます。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-M1Q179blA-M/UpOTHZ2t2JI/AAAAAAAAAiQ/_Og4W6yL348/s1600-h/image_thumb68%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb68" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb68" src="http://lh5.ggpht.com/-UmW8HAlPYyo/UpOTIKLJ1VI/AAAAAAAAAiY/B1j5s77t9m0/image_thumb68_thumb.png?imgmax=800" width="471" height="364"></a></p><font size="2"></font><font size="2"> <p><font size="2">ただし、バンダジェフスキーの議論は、非常な批判に晒されています。私が知っている限り、批判者の根拠は、60Kgの人体で4000BqのK40を含んでいるからです。つまり、私たちの体は67Bq/kgの放射能を持っています。それにもかかわらず、10Bq/kg程度のCs137で心臓に異常が発生するわけがない、と。</font></p><font size="2"> <p><font size="2">自然放射能と人工放射能の違いについては、すでに述べたとおりなので、繰り返しません。バンダジェフスキー批判に対する再反論に限定すると、大山敏郎さんという方がブログなどで残されている議論が、もっとも説得力があるように私には思われます(</font><a href="http://blogs.yahoo.co.jp/geruman_bingo/8557672.html"><font size="2">セシウム内部被曝によるBandazhevskyのデータの理解</font></a><font size="2">)(より</font><a href="http://www.m-epoch.com/naibuhibakumondai/20130725ooyamaronbun.pdf"><font size="2">詳細なPDF版</font></a><font size="2">)。非常に専門的な議論ですが、簡単に要約すると、細胞のカリウムチャネルを通過する時間はカリウムの場合一瞬だが、セシウムはがちがちに嵌り、通過時間が非常に長くなる。そこでセシウムが崩壊すると、カリウムチャネルを壊す。心筋細胞の電位系は直列なので、ごく一部の細胞のカリウムチャネルの崩壊も、QT異常になって表れる、と。</font>とにかく、セシウムによる心臓異常を説明しうるメカニズムが存在する以上、「そんなことは科学的に言ってありえない」という「言い訳」は、もはや通用しません。</p> <p>もしバンダジェフスキーや大山氏が正しいとするならば、東京で心臓の自覚症状が増えていなければおかしいでしょうし、今回のGoogleトレンドのデータは、それを実証しているように見えます。ただ、それを最終的に確定的な事実にするためには、日本でも、セシウム濃度と不整脈との関係を、きちんと研究する必要があると思われます。</p> <p> </p> <h3>東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌</h3> <p>さて、ここまで、2011年3月以降、東京で心臓に関する異変が急増していること、そしてその最大の原因が、セシウムによる土壌汚染であるらしいことを確認してきました。</p> <p>では、他の健康被害についてはどうでしょうか?これについては、ただ、私はひたすら、グラフを貼付けていきます。<strong>以下のグラフは特に断りがなければ、すべて東京で絞り込んだもの</strong>です。リンクを貼っておきますので、お望みならば、大阪など他の地域と対照させてみたり、逆に地域の絞り込みを外したり、近いキーワードで調べてみることで、検証してみてください。</p> <p>特に注釈が必要でなければ、解説はいたしません。解説するまでもなく、結果が明白だからです。ただし、チェルノブイリと対照させたり、こういう異常な症例があったとか、そういう話があれば、その都度追加していきます。また、グラフもその都度追加していければと考えております。</p> <h3></h3> <h5><font size="3">その他 循環器系</font></h5></font></font> <p>●「<font color="#0000ff"><strong>血圧 高い</strong></font>」「<font color="#ff0000"><strong>血圧 低い</strong></font>」</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-9p2HK172gUo/UpOTIssfPRI/AAAAAAAAAic/mmf7ELLYTQw/s1600-h/image_thumb70%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb70" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb70" src="http://lh6.ggpht.com/-UZQ71sQALPE/UpOTJoRYMVI/AAAAAAAAAik/pgQlderlFIc/image_thumb70_thumb.png?imgmax=800" width="486" height="285"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%80%80%E9%AB%98%E3%81%84%2C%20%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%80%80%E4%BD%8E%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" 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title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>このグラフで、2010年12月と2012年1月のギャップ(40→60)は、地域変更による不連続性によるものだと思われます。実際、地域による絞り込みを外すと、このギャップは消失し、2011年3月以降急増する、すでに見慣れたグラフが表われます。</p> <p>●「<strong>動悸</strong>」(地域絞り込みなし)</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-xG0vMEo2pOc/UpOTLOQ6G6I/AAAAAAAAAi8/XX3u0XdMPgI/s1600-h/image_thumb74%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb74" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb74" src="http://lh5.ggpht.com/-ACVq7WmtyDg/UpOTLp3Xb5I/AAAAAAAAAjE/aq5lLLK1ZwU/image_thumb74_thumb.png?imgmax=800" width="498" height="195"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8B%95%E6%82%B8&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>貧血</strong></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-KvoNTWeZkRY/UpOTMZ-V5GI/AAAAAAAAAjM/8Jb0RB9YvEQ/s1600-h/image_thumb76%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb76" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb76" src="http://lh4.ggpht.com/-xFuRex1yPaM/UpOTM6EJwlI/AAAAAAAAAjY/pi0DPZU66VQ/image_thumb76_thumb.png?imgmax=800" width="501" height="195"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%B2%A7%E8%A1%80&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%B2%A7%E8%A1%80&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%B2%A7%E8%A1%80&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5><font size="3">全身症状</font></h5> <p>たまたま、先に循環器系を取り上げましたが、すでに述べたように、被曝症状の典型は、「ぶらぶら病」と呼ばれる、全身の倦怠感です。放射性物質の影響を判断するためには、それの有無を確認する必要があります。</p> <p><strong>●倦怠感</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-Bx-nkNpg1SU/UpOTNTPSp6I/AAAAAAAAAjc/HmNH88rEemM/s1600-h/image_thumb78%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb78" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb78" src="http://lh3.ggpht.com/-0iWHSjF62mI/UpOTN8IQWSI/AAAAAAAAAjk/EFEzgb35pFU/image_thumb78_thumb.png?imgmax=800" width="504" height="169"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%80%A6%E6%80%A0%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%80%A6%E6%80%A0%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%80%A6%E6%80%A0%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●だるい</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-b894CNmEQ-U/UpOTORg2-mI/AAAAAAAAAjw/e7EnYmClyig/s1600-h/image_thumb80%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb80" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb80" src="http://lh5.ggpht.com/-AEk4r6FQxSE/UpOTO2iCbKI/AAAAAAAAAj0/v59XEgx0Qmo/image_thumb80_thumb.png?imgmax=800" width="507" height="182"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>この二つには、明らかに年に一度、6-8月ぐらいにピークがありますが、それは梅雨・暑さによる季節性トレンドであると思われます。しかし、2011年以降は、明らかにピークが大きくなると同時に、もっとも低い冬の時期ですら、上昇トレンドであることがわかります。</p> <p>●<strong>疲れやすい</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-QrMlwTpUHQc/UpOTPVPyjxI/AAAAAAAAAj8/lxwrg3FXPkQ/s1600-h/image_thumb82%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb82" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb82" src="http://lh3.ggpht.com/-X7UcwikMJHc/UpOTP0uUgjI/AAAAAAAAAkE/bTAWo_220mk/image_thumb82_thumb.png?imgmax=800" width="508" height="172"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%96%B2%E3%82%8C%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%96%B2%E3%82%8C%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%96%B2%E3%82%8C%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●微熱</strong></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-PwM4VpkPpVo/UpOTQSWZfVI/AAAAAAAAAkM/xSMVlqVXav4/s1600-h/image_thumb86%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb86" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb86" src="http://lh4.ggpht.com/-kswF6A_dFtE/UpOTQ2bt-0I/AAAAAAAAAkU/GVmbQK2HULU/image_thumb86_thumb.png?imgmax=800" width="513" height="199"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BE%AE%E7%86%B1&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BE%AE%E7%86%B1&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%BE%AE%E7%86%B1&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5><font size="3">皮膚疾患</font></h5> <p><strong>●「<font color="#0000ff">湿疹</font>」「<font color="#ff0000">発疹</font>」</strong></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-F1A4_aVun7Q/UpOTREVY8jI/AAAAAAAAAkc/WnLqfY8s3Lw/s1600-h/image_thumb88%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb88" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb88" src="http://lh6.ggpht.com/-kpQ9aAF5ApM/UpOTR6czACI/AAAAAAAAAko/MtIwacXTpY8/image_thumb88_thumb.png?imgmax=800" width="512" height="180"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%B9%BF%E7%96%B9%2C%20%E7%99%BA%E7%96%B9&geo=JP-13&cmpt=q" 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title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●爪 剥がれる</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-RW_1YpDIPIU/UpOTTH7rLdI/AAAAAAAAAlA/6aWN_5OYYbI/s1600-h/image_thumb92%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb92" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb92" src="http://lh6.ggpht.com/-pbch9Q1mVwc/UpOTTx1jokI/AAAAAAAAAlI/bfd3u2qHpOk/image_thumb92_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="178"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%88%AA%E3%80%80%E5%89%A5%E3%81%8C%E3%82%8C%E3%82%8B&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%88%AA%E3%80%80%E5%89%A5%E3%81%8C%E3%82%8C%E3%82%8B&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%88%AA%E3%80%80%E5%89%A5%E3%81%8C%E3%82%8C%E3%82%8B&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●ほくろ</strong></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-KDnNaRIi5ZQ/UpOTURtl_yI/AAAAAAAAAlM/mqzWcWbH44U/s1600-h/image_thumb94%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb94" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb94" src="http://lh5.ggpht.com/-ncZ13ZJ_kKM/UpOTU2WGKeI/AAAAAAAAAlU/k628jke3Pwc/image_thumb94_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="168"></a></p> <p>「Togetter <a href="http://togetter.com/li/159459">ほくろが増えたのは原発由来の放射能のせい?</a>」2011年7月9日</p> <blockquote> <p>最近ほくろが増えた気がするというツイート<br> ↓<br>放射能のせいじゃないの?<br> ↓<br>わたしも増えた!あざも放射能のせい?という人続々<br> ↓<br>徐々に冷静なツイートも増加(←イマココ) </p> <p><br>放射能で増えたかどうかは定かではありませんが<br>TLには確実にほくろが増えているようです。<br>昨日あたりから。</p></blockquote> <p>確かに、ほくろは増えているようです。ちなみに、大阪でのトレンドと対照させて見ると、分岐点が明確に異なるのがわかります。</p> <p><strong>ほくろ</strong>(大阪)</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-SJyWUUBBvOI/UpOTVeV2c-I/AAAAAAAAAlc/lc3D9CAbhLw/s1600-h/image_thumb96%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb96" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb96" src="http://lh6.ggpht.com/-T6XHcT3qlDk/UpOTV_o_hRI/AAAAAAAAAlk/PrAmZgjtH9c/image_thumb96_thumb.png?imgmax=800" width="498" height="160"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%BB%E3%81%8F%E3%82%8D&geo=JP-27&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%BB%E3%81%8F%E3%82%8D&geo=JP-27&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E3%81%BB%E3%81%8F%E3%82%8D&geo=JP-27&cmpt=q</a></p> <p>東京・大阪のどちらにも、2013年6月のピークがあります。これはちょっと戸惑っていたのですが、原因がはっきりわかりました。このときに、「ほくろ占い」の爆発的な流行があったようです(笑)。</p> <p>参考 ほくろ占い</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-fFpUpq24iD4/UpOTWb3fFII/AAAAAAAAAls/NvCpvNFQPhk/s1600-h/image_thumb139%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb139" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb139" src="http://lh3.ggpht.com/-LIeyXjcKMaQ/UpOTWuuBv8I/AAAAAAAAAl0/aOwm5RinX-g/image_thumb139_thumb.png?imgmax=800" width="506" height="171"></a></p> <p>そのため、厳密には、ほくろ占いが除外されるキーワードを見つけなければいけないですが、「黒子」だと「黒子のバスケ」が混じってくるので、苦しいところです。たぶん、ほくろからほくろ占いを引いて処理をすればうまくいくのでしょうが、しかし、ちょうど他の皮膚疾患のピークもまったく同じ時期にあるため、かなり悩ましい。時間の関係で今回はパスさせてください。</p> <p><strong>●痒い</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-Ijlame09x3I/UpOTXHZ942I/AAAAAAAAAl8/ucLZKazOWW4/s1600-h/image_thumb98%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb98" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb98" src="http://lh6.ggpht.com/-FGV8vG1xT7k/UpOTXmioi2I/AAAAAAAAAmI/3ZYi4ikxh5Y/image_thumb98_thumb.png?imgmax=800" width="502" height="176"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%92%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%92%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%92%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●水虫</strong></p> <p>参考のために、水虫を出してみます。少しだけ上昇トレンドにあるようにも見えますが、他のグラフほど明確ではありません。むしろここ二年の猛暑などの気候要因の方が、今のところ主立ったものであるようにも思われますが、来年以降の動向を見ないと、判断は難しいでしょう。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-4bjIQpf05lM/UpOTYRB3eRI/AAAAAAAAAmQ/loCraKOQ7Ps/s1600-h/image_thumb100%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb100" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb100" src="http://lh6.ggpht.com/-6lcG8fQ1L3M/UpOTYzejvUI/AAAAAAAAAmU/szszCxw4294/image_thumb100_thumb.png?imgmax=800" width="502" height="195"></a></p> <h5><font size="3">呼吸器系</font></h5> <p>●<strong>咳</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-1OjPm59_kZM/UpOTZSWoWsI/AAAAAAAAAmg/lBwY-sV3bLo/s1600-h/image_thumb102%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb102" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb102" src="http://lh6.ggpht.com/-2syMWS0DKtk/UpOTZ-trbrI/AAAAAAAAAmk/mUAD8AH67hQ/image_thumb102_thumb.png?imgmax=800" width="505" height="175"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%92%B3&geo=JP-13&cmpt=q" 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title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%96%98%E6%81%AF&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%96%98%E6%81%AF&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%96%98%E6%81%AF&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>呼吸 苦しい</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-ozagY4f1yls/UpOTceAck5I/AAAAAAAAAnM/U2WUt5dfxlM/s1600-h/image_thumb108%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb108" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb108" src="http://lh4.ggpht.com/-OSDypTAwdxM/UpOTcgZGvSI/AAAAAAAAAnU/98Rt4zwukwY/image_thumb108_thumb.png?imgmax=800" width="511" height="171"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%91%BC%E5%90%B8%E3%80%80%E8%8B%A6%E3%81%97%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%91%BC%E5%90%B8%E3%80%80%E8%8B%A6%E3%81%97%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%91%BC%E5%90%B8%E3%80%80%E8%8B%A6%E3%81%97%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●痰</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/--0uDq0Pq-2U/UpOTdFvvVYI/AAAAAAAAAnc/yIjCC4k6vxQ/s1600-h/image_thumb110%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb110" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb110" src="http://lh4.ggpht.com/-uTehlJtqSDY/UpOTdmQ6S4I/AAAAAAAAAnk/FGDpeBnpzeA/image_thumb110_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="172"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%B0&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%B0&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%97%B0&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>血 吐く</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-Rsaogq2JZPc/UpOTeIpR6YI/AAAAAAAAAns/F5JiAM99k60/s1600-h/image_thumb130%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb130" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb130" src="http://lh5.ggpht.com/-c1hQCNWHJCU/UpOTes0v93I/AAAAAAAAAn0/7GDZm8C8ibg/image_thumb130_thumb.png?imgmax=800" width="515" height="166"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E3%80%80%E5%90%90%E3%81%8F&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E3%80%80%E5%90%90%E3%81%8F&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E3%80%80%E5%90%90%E3%81%8F&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>鼻血</strong></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-2BFc4zkV3io/UpOTfB56iwI/AAAAAAAAAn8/h7v0DoRICjU/s1600-h/image_thumb155%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb155" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb155" src="http://lh6.ggpht.com/-baGjHyru9lc/UpOTfbqtaUI/AAAAAAAAAoE/e0Hms3-EokE/image_thumb155_thumb.png?imgmax=800" width="515" height="170"></a></p> <h5><font style="font-weight: normal">鼻血に関しては、311の直後に、Twitterなどで被曝症状か否かということで、ずいぶん話題になったことがありました。このようにしてみると、やはり2011年3月以降、明らかに増えています。関連キーワードを見ると、子どもが鼻血を出していて、ちょっと異常なので、何かの病気ではないかとGoogleで親が検索している様子が目に浮かびます。</font></h5> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-aHR7N7GWci0/UpOTf9S7N1I/AAAAAAAAAoM/oSK7XoKlwPw/s1600-h/image_thumb157%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb157" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb157" src="http://lh5.ggpht.com/-ku-7Mc2938s/UpOTgbog4VI/AAAAAAAAAoU/qxAO_i_t_jw/image_thumb157_thumb.png?imgmax=800" width="497" height="189"></a></p> <p><strong>●喉 痛い</strong></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-Yi51xIRbjYM/UpOTgyzJ5oI/AAAAAAAAAoc/YrnnZ6lQjf0/s1600-h/image_thumb159%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb159" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb159" src="http://lh4.ggpht.com/-oixT8ZdIn_s/UpOThd3rV2I/AAAAAAAAAok/McBR5yS7VZw/image_thumb159_thumb.png?imgmax=800" width="517" height="177"></a></p> <p><a href="http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E5%96%89%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E5%96%89%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5>泌尿器系</h5> <p><strong>●膀胱炎</strong></p> <p>チェルノブイリにおいて、前癌状態である膀胱炎の多発が見られたことは、すでに述べました。東電原発事故ではどうでしょうか。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-FuCy8lOGWpo/UpOThgho4QI/AAAAAAAAAos/cOyo2zge2oE/s1600-h/image_thumb112%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb112" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb112" src="http://lh3.ggpht.com/-U54rPUCmXVs/UpOTiIFLZoI/AAAAAAAAAo0/CoUrwOJuoXY/image_thumb112_thumb.png?imgmax=800" width="506" height="171"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>ただし、これは先に述べた、地域の不連続性によって、ターニングポイントがやや不明瞭になっています。地域の絞り込みをなくしてみます。</p> <p><strong>膀胱炎</strong>(地域絞り込みなし)</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-9RpBoUbONcw/UpOTigkz-bI/AAAAAAAAApA/kYPreAv2-4U/s1600-h/image_thumb114%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb114" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb114" src="http://lh5.ggpht.com/-RaWvLDTCQes/UpOTjZ8k5pI/AAAAAAAAApE/7dq1Fvnxysw/image_thumb114_thumb.png?imgmax=800" width="511" height="171"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&cmpt=q</a></p> <p>◎がついているところが、2011年3月ですが、ここが明確にトレンドの分岐点になっていることがわかります。</p> <p>ついでに、大阪を見てみます。</p> <p><strong>膀胱炎</strong>(大阪)</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-8Kf4IVMxe9Y/UpOTjz6YMyI/AAAAAAAAApQ/PTzXin53TYg/s1600-h/image_thumb116%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb116" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb116" src="http://lh6.ggpht.com/-F3x8yv5G9Nc/UpOTkWRJbLI/AAAAAAAAApU/N39lm6V00eM/image_thumb116_thumb.png?imgmax=800" width="510" height="175"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-27&cmpt=q" 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src="http://lh3.ggpht.com/-rlC3herUa8M/UpOTlVSCwsI/AAAAAAAAApk/ddoURI8bKKI/image_thumb119_thumb.png?imgmax=800" width="508" height="166"></a></p> <p>これは、大阪においても、東京においても、単一の要因が、心臓の異変と膀胱炎の両方を引き起こしている、と考える他ないでしょう。これは、放射性セシウムが原因であると思われますが、統計的に有意かどうかは、現時点では省略させてください。</p> <p>●<strong>残尿感</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-Hed6IGh8Cow/UpOTl6YcybI/AAAAAAAAAps/SeY85I8SVQw/s1600-h/image_thumb121%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb121" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb121" src="http://lh5.ggpht.com/-vyHO6YRwCyo/UpOTmHsRZoI/AAAAAAAAAp0/_Py4hmRtKuQ/image_thumb121_thumb.png?imgmax=800" width="516" height="177"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%AE%8B%E5%B0%BF%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%AE%8B%E5%B0%BF%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%AE%8B%E5%B0%BF%E6%84%9F&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5><font size="3">消化器系</font></h5> <p><strong>●下痢</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-4iBi_vAJgVQ/UpOTmumNaqI/AAAAAAAAAp8/hD3LIl5rNCw/s1600-h/image_thumb123%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb123" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb123" src="http://lh4.ggpht.com/-BCRfZZTs4rE/UpOTnDEc0HI/AAAAAAAAAqI/P5ArrIDJbzs/image_thumb123_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="180"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8B%E7%97%A2&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8B%E7%97%A2&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8B%E7%97%A2&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>これは、分岐点は2011年1月ぐらいのように見えますが、これは地域の不連続性が要因かもしれない。ただ、もう一つ可能性があって、2011年1月頃に風邪が非常に流行っていたため、その季節性トレンドの効果で、分岐点が早まっているように見える可能性があります。</p> <p>参考 <strong>風邪</strong> </p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-JDO02tlEmeg/UpOTnmVC0gI/AAAAAAAAAqM/tT3JAhmA7jA/s1600-h/image_thumb125%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb125" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb125" src="http://lh3.ggpht.com/-VsJThdtP9Y4/UpOToGav5iI/AAAAAAAAAqY/FU0jib9JrTU/image_thumb125_thumb.png?imgmax=800" width="518" height="169"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E9%A2%A8%E9%82%AA&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E9%A2%A8%E9%82%AA&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E9%A2%A8%E9%82%AA&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>ただし、風邪もまた、2011年から上昇トレンドにあるように見えます。これは、免疫力の低下が原因ではないかと思われます。</p> <p>● 「<font color="#0000ff">吐き気」</font> 「<font color="#ff0000">嘔吐」</font></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-V4a39rfwZ34/UpOTopYlVQI/AAAAAAAAAqc/hnIb1SJYopA/s1600-h/image_thumb128%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb128" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb128" src="http://lh3.ggpht.com/-fGeuFnQ7a5I/UpOTpMlvXMI/AAAAAAAAAqk/UBMEky0ImJI/image_thumb128_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="185"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%90%90%E3%81%8D%E6%B0%97%2C%20%E5%98%94%E5%90%90&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%90%90%E3%81%8D%E6%B0%97%2C%20%E5%98%94%E5%90%90&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%90%90%E3%81%8D%E6%B0%97%2C%20%E5%98%94%E5%90%90&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>血便</strong></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-6puVO2KcvsA/UpOTpq7iZbI/AAAAAAAAAqs/valtX-Z9wJQ/s1600-h/image_thumb132%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb132" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb132" src="http://lh3.ggpht.com/-wrW67sVtXJE/UpOTqPHHl_I/AAAAAAAAAq0/pgXniv0Mq3E/image_thumb132_thumb.png?imgmax=800" width="519" height="174"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#geo=JP-13&q=%E8%A1%80%E4%BE%BF&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#geo=JP-13&q=%E8%A1%80%E4%BE%BF&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#geo=JP-13&q=%E8%A1%80%E4%BE%BF&cmpt=q</a></p> <p>このグラフ、見覚えがあるような気がしませんか?私は、これが、膀胱炎のグラフと非常に近いように見えます。同時に検索してみましょう。</p> <p>参考「<font color="#0000ff">膀胱炎</font>」「<font color="#ff0000">血便</font>」</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-1fBTvn4mWZQ/UpOTqptA-0I/AAAAAAAAAq8/AlWRmDhJxnE/s1600-h/image_thumb135%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb135" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb135" src="http://lh5.ggpht.com/-8g0U9b3eLNk/UpOTqz56FfI/AAAAAAAAArI/VGic1A7UmC4/image_thumb135_thumb.png?imgmax=800" width="514" height="184"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E4%BE%BF%2C%20%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E4%BE%BF%2C%20%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%A1%80%E4%BE%BF%2C%20%E8%86%80%E8%83%B1%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>便秘</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-nuyTt7ZCJDc/UpOTrkvBSeI/AAAAAAAAArM/mID3Y3f9ieQ/s1600-h/image_thumb137%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb137" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb137" src="http://lh3.ggpht.com/-QU50sbtEpIY/UpOTsB1X3_I/AAAAAAAAArY/sOhekhHwO9g/image_thumb137_thumb.png?imgmax=800" width="511" height="173"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%BE%BF%E7%A7%98&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%BE%BF%E7%A7%98&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%BE%BF%E7%A7%98&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>便秘も、血便や下痢と同じようなグラフを描いています。どのようなメカニズムなのかは分かりませんが、いずれにしても、消化器が弱っていることは確かなようです。</p> <p>●<strong>虫歯</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-V44bojr-MA0/UpOTsg1r9dI/AAAAAAAAArc/pyR3Cai0LTw/s1600-h/image_thumb151%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb151" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb151" src="http://lh6.ggpht.com/-5yjSLlS3NJI/UpOTtEsCTsI/AAAAAAAAArk/S-g5pLhJ60A/image_thumb151_thumb.png?imgmax=800" width="509" height="174"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%99%AB%E6%AD%AF&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%99%AB%E6%AD%AF&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E8%99%AB%E6%AD%AF&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>口内炎</strong></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-DSdx2t0CkzE/UpOTth2KKRI/AAAAAAAAArs/2IXJYbyygBY/s1600-h/image_thumb153%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb153" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb153" src="http://lh4.ggpht.com/-Sd-zBXSo8oc/UpOTt60xoHI/AAAAAAAAAr0/EIYULeRD-rw/image_thumb153_thumb.png?imgmax=800" width="509" height="177"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%8F%A3%E5%86%85%E7%82%8E&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5><font size="3">神経系</font></h5> <p><strong>●「<font color="#0000ff">目 ぼやける</font>」「<font color="#ff0000">目 かすむ</font>」</strong>(地域絞り込みなし)</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-E0c_-zzZlyQ/UpOTuS5k7PI/AAAAAAAAAr8/Wz-rroOuzJU/s1600-h/image_thumb163%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb163" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb163" src="http://lh5.ggpht.com/-jYRyi4HX7qI/UpOTuyzehLI/AAAAAAAAAsE/MHwnRmgE-lo/image_thumb163_thumb.png?imgmax=800" width="509" height="212"></a></p> <p>●<strong>覚えられない</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-pee9_e2sWic/UpOTvVAc71I/AAAAAAAAAsM/1XWIxAL_Zhk/s1600-h/image_thumb165%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb165" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb165" src="http://lh3.ggpht.com/-5Qcsq0yJCT8/UpOTv9Sc1FI/AAAAAAAAAsU/ri4QWdl9slg/image_thumb165_thumb.png?imgmax=800" width="513" height="174"></a></p> <p><a href="http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E8%A6%9A%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E8%A6%9A%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>頭痛</strong></p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-A2_GGNNGKwQ/UpOTwQpfgOI/AAAAAAAAAsc/RY2WKPn-nv8/s1600-h/image_thumb167%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb167" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb167" src="http://lh5.ggpht.com/-OC3wXBcBEdo/UpOTw7uaHnI/AAAAAAAAAsk/Jwh_hcLpMPk/image_thumb167_thumb.png?imgmax=800" width="507" height="176"></a></p> <p><a href="http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E9%A0%AD%E7%97%9B&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E9%A0%AD%E7%97%9B&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>●<strong>眠れない</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-UDk3BrRR7Eg/UpOTzvxbgQI/AAAAAAAAAsw/PHgu4WJsXO4/s1600-h/image_thumb168%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb168" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb168" src="http://lh4.ggpht.com/-585VR71Q5kA/UpOT0PjMoAI/AAAAAAAAAs0/V8RlRgaA4jQ/image_thumb168_thumb.png?imgmax=800" width="512" height="188"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%9C%A0%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%9C%A0%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E7%9C%A0%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <h5><font size="3">生殖器系</font></h5> <p>●<strong>「<font color="#0000ff">不正出血</font>」「<font color="#ff0000">生理不順</font>」</strong></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-Qlr9OTcUdJ8/UpOT0lBAIJI/AAAAAAAAAs8/eX9nS1br650/s1600-h/image_thumb142%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb142" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb142" src="http://lh3.ggpht.com/-SN8q2YOq3Co/UpOT1C_zdVI/AAAAAAAAAtE/RzliZr5g7hQ/image_thumb142_thumb.png?imgmax=800" width="508" height="178"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E5%87%BA%E8%A1%80%2C%20%E7%94%9F%E7%90%86%E4%B8%8D%E9%A0%86&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E5%87%BA%E8%A1%80%2C%20%E7%94%9F%E7%90%86%E4%B8%8D%E9%A0%86&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E5%87%BA%E8%A1%80%2C%20%E7%94%9F%E7%90%86%E4%B8%8D%E9%A0%86&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●子宮 痛い</strong></p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-fO2_tSS63iQ/UpOT1oRrXtI/AAAAAAAAAtM/TMx8fHgxfoo/s1600-h/image_thumb145%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb145" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb145" src="http://lh5.ggpht.com/-kZW0EjEO5tU/UpOT1_mqgzI/AAAAAAAAAtU/fUZoXKcFgks/image_thumb145_thumb.png?imgmax=800" width="507" height="167"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%AD%90%E5%AE%AE%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%AD%90%E5%AE%AE%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E5%AD%90%E5%AE%AE%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p><strong>●流産</strong></p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-odrpCaZ5b-I/UpOT2iJVw7I/AAAAAAAAAtg/X3-sxeydp5o/s1600-h/image_thumb147%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb147" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb147" src="http://lh4.ggpht.com/-E8hRIhjmL_o/UpOT3Ikg9wI/AAAAAAAAAtk/hpGtP5NXK9Y/image_thumb147_thumb.png?imgmax=800" width="512" height="180"></a></p> <p><a title="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%B5%81%E7%94%A3&geo=JP-13&cmpt=q" href="http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%B5%81%E7%94%A3&geo=JP-13&cmpt=q">http://www.google.co.jp/trends/explore?q=%E5%BF%83%E8%87%93%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84#q=%E6%B5%81%E7%94%A3&geo=JP-13&cmpt=q</a></p> <p>圧倒的なデータの前には、言葉を失うしかありません。関連キーワードは次のような感じです。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-AvHdGnfzws4/UpOT3toyhzI/AAAAAAAAAts/ieVG-fr_e14/s1600-h/image_thumb149%25255B2%25255D.png"><img title="image_thumb149" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; margin: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image_thumb149" src="http://lh5.ggpht.com/-WBRM5Aso-Uw/UpOT4LBNoUI/AAAAAAAAAt0/q4xJzfL_hak/image_thumb149_thumb.png?imgmax=800" width="508" height="227"></a></p> <p>この一つ一つのデータを形作っている、その魂の叫びが垣間見えそうな気がします。お腹の子どもを喪った、あるいは喪いかけているお母さんたち、あるいはお父さんたちは、どんな思いで、パソコンに向かって検索したのでしょうか。何が自分の子どもを殺しているのか、その答えは、インターネットを通じて得られたのでしょうか。</p> <h3></h3> <h5><font size="3">本章の最後に</font></h5> <p>以上のデータ自体は厳正なもので、かつ今後なんらかの改竄・データ変更やアクセス遮断がなければ、みなさんがご自身で確かめられるものです。どの自覚症状のキーワードをとっても、東京では、2011年3月を境にトレンドがまったく変ってしまった。そして、もしこれらの指標が、罹患率ではなくて発病率に近いという推測が正しければ、健康被害は現在もなお、おそらくは爆発的に増え続けていることになる。そして、この手法は、検索ボリュームが多い大都市圏でしか使えないため、今回は東京に絞りましたが、福島で起こっていることは、これよりはるかに悲惨な現実であることは、想像に難くありません。現在、震災関連死に関して、「避難生活ストレス」が原因であるとの見解が横行しておりますが、それもまた、このデータを元に、大幅に見直されなければならない。</p> <p>ともあれ、関東以北で、生活の質が大きく低下しつつある。そして、西日本も、決して人ごとではない。何らかの形で―おそらくは汚染食品とがれき焼却によって―健康被害が遅れて進行しつつある。</p> <p>それでもなお、このデータを否認するということもできるかもしれません。私自身、正直、信じたくない気持ちがあるので、理解できます。もちろん、これが「放射脳」のせいではないことはすでに示したとおりですし、このデータを充分に説明できそうな気候変動や社会変化も想像出来ません。これは何か他の要因こんなことが現実に起こるはずがない、と。ただし、Googleのアルゴリズムがそもそも間違っている、という批判?はありえるでしょうが、それは残念ながら私たちにはブラックボックスになっているため、検証は難しいでしょう。</p> <p>ただし、理論編を読んで、理解していただいた人はご存じのとおり、このデータは、あらかじめ予測されたものでした。これは、チェルノブイリ原発事故において、ウクライナやベラルーシにおいて起こった事とまったく同じ事のように思われます。そして、主たる放射性降下物がセシウムホットパーティクルであることから、理論的にいっても、「起こらないはずがない」出来事でした。</p> <p>それでもなお、「科学的にいってそのような事がありえない」と言う人はいるでしょう。ただし、その「ICRP」という名の「科学」が、事実の前に無力である事を示しているだけです。以上のデータは、ICRPよりもECRRの方が圧倒的に正しい事を支持しているように思われます。</p> <p>ただし、Googleトレンドのデータが、本当に間違いがないものであるかを確認するためには、疫学データや人口統計、薬の出荷量など、他のデータと付き合わせていく必要があると思われます。</p> <p>それと、本稿を書いた私の意図は、二つあります。一つは、もちろん、事実を示したいということです。そうすることで、たとえばいま、体調不良で苦しんでいる方が、対処する一助になれば、本望です。関東や東北から避難した人に、自分の選択が正しかったと思っていただけるなら―また、放射能を怖がっていることで、孤立し、避難など必要な措置がとれない人が、実証的・理論的に、必要な人を説得できるツールとして使ってもらえるなら、何より嬉しい。</p> <p>もう一つの意図は、Googleトレンドという手法を拡散することです。私は、残念ながら医学的素養が欠如しているため、上のデータを見ても、くみ取れる事は少ない。ただ、専門家がみれば、もっとわかることがあるかもしれない。たとえば様々な角度からデータを収集し、解析する事で、たとえば健康被害のうちの、呼吸経由と食物経由の内部被曝の比率を割り出す事もできるかもしれない。Googleトレンドという、誰でも容易にアクセスができる手法をベースにして、多くの国の、多くの分野の専門家や一般市民が集まって、集合知によって、東京電力原発事故やチェルノブイリの問題を分析を深めていったり、あるいはGoogleトレンドという手法そのものを洗練・進化させていったりできるかもしれない。それが、私の望みです。</p> <p>幸い、すでに国内外の専門家何人かにお話しして、手法とデータ双方に、非常な関心を持ってもらっております。この記事を今回投稿し、さらに多くの人と繋がっていければと願っております。本稿は、無断引用かつ非商用なら全文転載自由としたのは、そのためです。</p> <p>もし、皆さんも、こういうキーワードで調べたら興味深いことがあったとか、あるいは他のデータや事例と整合したなど、何かあれば、どんどん公表してもらえたらと存じますし、私にも教えていただければ、非常にありがたく存じます。</p> <h3>結論に代えて</h3> <p>ここまで読んでいただいた方の中で、データが告げるものを目の前にして、非常に暗い気分になった方も多いのではないかと存じます。私自身、胸が塞がれる気持ちで、いっぱいになることが多かった。</p> <p>でも、私は絶望を告げたくて、本稿を書いたわけではありません。むしろ、この絶望こそが希望なのだ、とさえ考えています。なぜなら、実際に東京で、あるいは日本全国で不可解な健康被害が増加しつつあったとして、それで苦しんでいる人の圧倒的大部分は、何が元凶なのか知らないまま、原因不明の不調を抱えて生きている。</p> <p>しかし、Googleトレンドは明らかにしました。そうした個々人の不調をマクロな視点から眺めれば、2011年3月に起こった出来事が原因であることをはっきりさせた。ならば、たとえそれが困難な敵であったとしても、対処方法はあります。</p> <p>被曝への対処方法については、他の人が書いていることでもあるので、ここでは簡単にまとめておきます。大切なのは、これ以上の被曝をしないことです。可能ならば、西日本あるいは海外に移住できるとよい。私が個人的に知っている人も含めて、西日本に移住する事で、劇的に体調が改善した人がたくさんいます。ほんとうに、自分が抱えている症状が被曝症状で、移住で改善する可能性があるかを確認するために、一度、ショートステイするとよいかもしれません。</p> <p>もし、移住することが困難なら、外出時にマスクを着用するだけでも、大丈夫でしょう。今回のセシウムホットパーティクルは、直径2μmなので、医療用の<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/N95マスク">N95マスク</a>で充分に防げるはずです。</p> <p>そして、これは西日本でも言えることですが、食品に気をつけること。私の推測では、今危ないのは農作物よりも、太平洋の魚です。土壌汚染は主にセシウムで、しかも土壌に定着しているため、チェルノブイリのときよりも、食物に移行する割合は低い。</p> <p>しかし、海は違います。超高濃度汚染水が漏れていますが、それらは燃料が溶解した原子炉を通過しているため、セシウム以外のあらゆるα線核種・β線核種が含まれている可能性が高いのではないか、そのように私は予想しています。にも関わらず、相変わらずセシウムしか測定していない。非常に危険なことだ、と思います。</p> <p>本当は、東京の除染など、国家レベルでできることもたくさんあるはずなのですが、それは現状、望んでも得られそうもないので書きません。ただ、事実に向かい合う事で、はじめて適切な対策を取る事ができる。それは、国家でも、企業でも、個人でもかわりありません。本稿が、将来的に、皆様の健康と幸福の一助になることを祈りつつ、筆を置きます。</p><a href="http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/" rel="license"><img style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-top-width: 0px" alt="クリエイティブ・コモンズ・ライセンス" src="http://i.creativecommons.org/l/by-nc/4.0/88x31.png"></a><br><span rel="dct:type" property="dct:title" href="http://purl.org/dc/dcmitype/Text" xmlns:dct="http://purl.org/dc/terms/">東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌</span> by <a href="http://ishtarist.blogspot.jp/2013/11/google.html#more" rel="cc:attributionURL" property="cc:attributionName" xmlns:cc="http://creativecommons.org/ns#">Naoki Okada</a> is licensed under a <a href="http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/" rel="license">Creative Commons 表示 - 非営利 4.0 国際 License</a>. ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com38tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-79657049241302476112013-10-28T07:22:00.001+09:002013-11-30T20:47:18.274+09:00東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌―Googleトレンドは嘘をつかない― ①理論編<h5> </h5> <h3>本稿のまとめ</h3> <p>2011年3月11日の東京電力原発事故によって、東京にも放射性物質が降りそそぎました。、それが原因となって、あらゆる被曝症状が急増しつつある。その健康被害の実態を、理論によって裏付けながら、膨大なデータをもって実証すること、それが本稿の目的です。</p> <p>まずはデータを御覧下さい。これは、Googleの検索キーワードのトレンドを表示する、Googleトレンドというサービスのデータです。膀胱炎・口内炎・動悸・生理不順、これらはすべて被曝症状の典型ですが、どれも2011年3月を明確に分岐点として、急増しています。このデータは、これら自覚症状を抱えている人の数と、非常に高い相関関係を持っていると考えられます。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-cFxrkb1Rj3c/UpORY3PyKNI/AAAAAAAAAcs/T1t7lGSH2q8/s1600-h/image%25255B8%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-j69gRfhDx3c/UpORZTeRoRI/AAAAAAAAAc0/KH09Otf15iI/image_thumb%25255B3%25255D.png?imgmax=800" width="489" height="269"></a></p> <p>私は、<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2013/11/google.html">データ編</a>で、膨大な量のグラフをもって、どれも2011年3月を境にして、関東を中心にあらゆる健康被害が急増している事、そしてそれらがストレスや「放射線恐怖症」のせいではありえないこと、そして原因は原発事故による放射性物質であることを示したいと思います。</p> <p>しかし、これらデータを目の前にして、「科学的にそんなことはありえない」という反論がくることが、容易に想像されます。いま、被曝の危険性を唱える人間は、―むかし原発が危険であるといった人間がそうであったように―「放射脳」などとレッテルを貼られ、危険人物扱いされ、排除されています。「原発安全神話」が崩壊したいま、「放射能安全神話」という防護壁が、最後の砦となって立ちはだかっているのです。</p> <p>データが事実として受け入れられるためには、「科学的にいって、放射能は安全である」という議論に、あらゆる角度から反論していく事。「科学的にいってありえない」という言説の神話性を露呈させる事。そして、放射性物質によって、これらの健康被害が科学的にじゅうぶん起こりうるということを理論的に示す事。それだけの論理的・理論的な裏付けがなければ、データの存在は―あるいは膨大な数の被害者は―端的に存在しなかったことにされてしまうでしょう。そう、チェルノブイリのように。</p> <p>「科学的にありえない」という反論を、徹底して封じ込めるのが、「理論編」の目的です。以下、次のような論理構成を取ります。</p> <p>●東京の放射能汚染は、「放射線管理区域」相当の汚染状況である。</p> <p>●広島・長崎やチェルノブイリなどの過去の例からいって、被曝による健康被害の典型は癌ではなく、倦怠感・心不全・膀胱炎・ホルモン異常・免疫低下など、全身の多様な慢性疾患であること。</p> <p>●「科学的にいって放射能は安全である」という議論の元となっているICRPは、論理によってデータを排除し、残ったデータで理論を強化する「神話」の「循環構造」を構成している事。</p> <p>●東京電力原発事故の主たる放射性降下物は、セシウムを含む不溶性合金の放射性物質微粒子(ホットパーティクル)であることが実証されたこと。</p> <p>●人工放射性物質と自然放射性物質の唯一の違いは、ホットパーティクルを構成しうるか否かであること。</p> <p>●ホットパーティクルとよばれる人工放射性物質の微粒子のリスクを、ICRPの体系が過小評価していること。</p> <p>●バイスタンダー効果など最新の生物学の知見によって、ホットパーティクル(放射性物質微粒子)の危険性が明らかになりつつあること。</p> <p>これらの理論構成によって、むしろ東京での健康被害が「ありえない」というのが神話であって、科学的に必然であることを示します。その理論を実証するのが、データ編です。</p> <p>理論に興味がなく、ただ事実を知りたい方は、そのまま<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2013/11/google.html">データ編</a>に進んでいただいても問題ありません。ですが、被曝問題に興味がある方、私たちの身体に何が起きているのかより深く知りたい方、あるいはこのデータに反論・否定したい方は、まずは理論編に目を通していただければと存じます。私は、このデータと論理によって、「放射能が安全である」という言説―すなわちICRP―の「神話性」とその破綻をしめすことができただろう、と考えています。ですが、その判断は、読者一人一人にゆだねます。</p> <p>なお、本稿のデータ・本文は、引用・転載自由です。全文転載は、非商用に限り認めます。このデータと手法が、私の手を離れてできる限り拡散することを望んでおります。</p> <a name='more'></a> <h3>東京の放射能汚染状況について</h3> <h5>放射性管理区域について</h5> <p>さて、東京はどれほど、放射能で汚染されているのでしょうか?東京の空間線量は、現在のところ<a href="http://ma-04x.net/image_png/graph_mext_13.png">0.05μSv/h程度</a>(2013年10月14日現在)であり、東電原発事故の影響はもはやほとんどないように見られます。しかしそれは、単に外部被曝の危険性が少ないということしか意味していません。首都圏の健康リスクは、むしろ空中線量つまり外部被曝よりも、むしろ呼吸や食物によって放射性物質を直接体内に取り込むこと、すなわち内部被曝によるものの方が高いと思われます。その意味では、土壌汚染に注目しなければなりません。</p> <p>土壌汚染の指標として、一つの基準になるのが、日本の様々な法律によって規定されている「放射線管理区域」です。「放射線管理区域」は、人が不必要な被曝を防ぐために設定されており、さまざまな制限が課せられております。たとえばそこでは18歳未満は立ち入りが禁止され、さらに、喫煙・飲食は禁じられています。言い換えれば、日本の法律によれば、放射線管理区域は、被曝によって健康が害される可能性が充分にありうる場所として規定されているわけです。</p> <p>放射線管理区域はどのような基準で決定されるのでしょうか。様々な基準が存在する訳ですが、その基準の一つは、アルファ線以外の放射線に関しては、<strong>4Bq/cm<sup>2</sup>を超えるおそれがある場所</strong>です。単位を換えれば、<strong>40000Bq/m<sup>2</sup></strong>です。また、土壌1KgあたりのBqに換算すると、文部科学省の換算式によればBq/kg=Bq/m<sup>2</sup>÷65で換算可能なので、<strong><font color="#ff0000">約615Bq/Kg</font></strong>以上の土壌汚染がある地域は、<font color="#ff0000">放射線管理区域相当</font>ということになります。</p> <p>(参考 日本保健物理学会 <a href="http://radi-info.com/q-759/">Bq/kgからBq/m2への変換方法について。</a>)</p> <p>東京に死の灰が二度降りそそいだ</p> <p>上記の基準に照らしあわせて、実際の東京の汚染状況はどの程度なのでしょうか?まず、<a href="http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/195/list-1.html">文部科学省が2011年3月19日から出している、「定時降下物」のデータ</a>を参照してみます。定時降下物とは、要するに原子力事故や大気圏核実験による放射性物質の降下(フォールアウト)、いわゆる「死の灰」のことです。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-Zr196IfAST4/Um2SMl5BdpI/AAAAAAAAALc/VuIhZH1J8HA/s1600-h/image7.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-xPAqKDT7wEQ/Um2SNKFHFWI/AAAAAAAAALk/Zf71GYTto5E/image_thumb3.png?imgmax=800" width="445" height="236"></a></p> <p>上の図は<a href="http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/3000/2411/24/1060_03_gekkan_2.pdf">2011年3月積算の降下物</a>です。福島県双葉郡は、Cs-134と137の合計で6440000Bq/m2 すなわち、放射線管理区域の150倍以上という値になっております。ところが、<strong>東京都新宿区</strong>も、また埼玉や群馬よりも汚染がひどく、I-131、Cs-134および137の合計で<strong>46500Bq/m<sup>2</sup></strong>もの死の灰が降った事がわかります。すなわち、<strong>2011年3月時点では、東京は(少なくとも新宿は)放射線管理区域</strong>相当の汚染状況であったと言えます。</p> <h5>首都圏の土壌検査結果</h5> <p>さて、現時点の土壌汚染はどうでしょうか?まず、ここでいくつかのことを考えなければなりません。</p> <ol> <li>文科省の「定時降下物」は3月17日以前のデータがないこと。首都圏には3月15日と3月21日、二回大規模なフォールアウトがあったわけですが、最初のフォールアウトはまったく換算に入れられていません。したがって、実際には上のデータより、実際の降下物の積算量が大きくなるはずです。 <li>ここで取り上げられている放射性物質は、ヨウ素とセシウムだけです。ただし他の、もっと測定が困難な放射性物質も存在する可能性はありますが、比較的少量だと考えられています。 <li>現時点の土壌汚染を知るためには、各放射性物質の半減期を換算にいれる必要があります。Cs-137の半減期は30年なのでほぼ考慮に入れる必要はないですが、Cs-134の半減期が2年、I131に至っては8日です。そのため、2011年3月時点よりも土壌汚染は減少しているはずです。 <li>大地に降下したセシウムは、その環境によって、流されたり、沈着したり、複雑にその姿を変えます。たとえば、雨とともにコンクリートに落ちてきたものは、側溝へ溜まり、川に入り、海に―つまり東京湾に―注ぐと考えられています。あるいは、土の上に降りそそいだセシウムは、土壌へと沈着すると考えられます。</li></ol> <h5><font style="font-weight: normal">ともあれ、汚染状況は、土壌検査をしてみるのが最も確実です。放射能防御プロジェクトによる</font><a href="http://web.archive.org/web/20130313151756/http://doc.radiationdefense.jp/dojyou1.pdf"><font style="font-weight: normal">首都圏土壌検査結果</font></a><font style="font-weight: normal">によれば、東京都23区の42箇所の平均で、1006Bq/kgということでした(</font><a href="http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/6ffe54f6c3c9f8a5f440edea1210ff41"><font style="font-weight: normal">木下黄太のブログ</font></a><font style="font-weight: normal"> 2012/3/23)。</font></h5> <p>この結果は、反原発派によって発信された信頼出来ない、という人もおそらくはいるでしょう。ですので、公的なデータも参照することにします。東京都福祉保険局が、東京都新宿区百人町の東京都健康安全研究センターで測定した結果が公表されています(<a href="http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/09/20l9k300.htm">土壌中の放射性物質の測定結果について</a>)。2011年9月6日の検査結果で、<strong>Cs合計で790Bq/kg</strong>も検出されております。ただし、この「東京都健康安全研究センター」が放射線管理区域として自らを指定して業務を制限したという話は、私は寡聞にして知りません。おそらく、都民の健康と安全のために、自分たちの身を犠牲にして、法律を無視して働いてくれているのでしょう。素晴らしい、献身的な自治体です。</p> <p>冗談はさておき、最近の土壌検査結果を公開しているWebサイトなどは非常に少ないのですが、たとえば、「日暮里放射能測定所にっこり館」による<a href="https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Ai9gYGFXR0VSdDVMVVZZYlQ4TmJJaFVxNXloTUxlTHc#gid=0">首都圏の土壌測定結果一覧</a>をみると、<strong>東京都文京区の住宅敷地土壌から1282Bq/kgのCsが検出されております。</strong></p> <h5>超高濃度汚染物質が都内に散在している</h5> <p>ただし、これら結果を見る限り、相当に結果にばらつきがあるということがわかります。たとえば、先ほどの放射能防御プロジェクトによれば、目黒区のカーポートに堆積していた土・砂は、セシウム合計で115881Bq/kgを記録しています(これは木下氏は、首都圏の土壌汚染平均からは、外れ値として除外されています)。</p> <p>このレベルの高濃度放射性物質が、都内に分散しているという情報がいくつもあります。たとえば、アーニー・ガンダーセン博士が東京の土を5つサンプリングして測定した結果、そのうちの一つ、渋谷地区から11260Bq/kgという値が発見されています。</p> <p>また、道路にシミのようにへばりついている「黒い物質」が、福島県南相馬市や東京都各地で発見されております。これは、藍藻とよばれる微生物であることが判明しておりますが、放射性セシウムを高濃度に圧縮するようで、非常に高い放射能を帯びております。たとえば、東村山市の「黒い物質」からは2万ベクレル、葛飾区水元公園からは190000~280000Bq/kgも検出されております(<a href="http://youtu.be/On6RIEY5Nfw?t=1h11m37s">小出裕章氏講演会</a>)。</p> <h5>「大人の事情」が、子どもたちを犠牲にする</h5> <p>ともあれ、以上の情報に、留保をつけておく必要があるでしょう。先ほどの土壌検査結果を見る限り、確かにその相当部分は放射性管理区域に指定されるべき、615Bq/kgを超えています。ですが、あくまで「土壌」の検査結果であって、アスファルトやコンクリートに落ちた大部分の放射性物質は、下水を通して海(つまり東京湾)へと流れていっている可能性が高いということです。そういう意味では、確かに、普通にオフィスで雇用されている人が生活する限り、さほど危険性は高くないと言えるかもしれません。ですが、逆に言えば、校庭で運動をし、公園で土にまみれて砂埃を吸い込みながら放射性管理区域内で遊ぶ子どもたちにとっては、健康への危険性は相当に高いということでもあります。まして、子どもは大人よりも放射能に対する感受性が高いことを考慮に入れる必要もあるでしょう。</p> <p>もう一つ付け加えるならば、先ほどの超高濃度汚染物質(黒い物質)は、道路のコンクリート上にも散在しています。日本の法律によれば、4Bq/cm<sup>2</sup>を超える「おそれがある場所」が、放射性管理区域として指定されることになっております。だとするならば、こうした物質が存在しうる道路もまた、やはり放射性管理区域として管理され封鎖されなければならない、ということになります。法律に則った処置が行われていないのは、ごく単純にいって、東京都23区内で都市機能が完全に機能不全に陥るからである、という大人の事情にしか過ぎないのではないでしょうか。ただし、何度も言いますが、こうした超法規的措置は、あくまで「事情を知っている大人」による「大人の事情」にしかすぎません。大人たちが「多少の被害もやむを得ない」というとき、その被害を負うのは誰なのか、誰の何が犠牲になっているのか、その痛みの非対称性について自覚している人は、どの程度いるのか、私は疑問に思います。</p> <h3>放射能は安全か?</h3> <h5>「科学的に言って放射能は安全である」</h5> <p>ここまで読まれた外国人や海外在住者がいらっしゃれば、不思議に思うのではないでしょうか。どうしてこれほどの汚染状況の中で、日本人は平気でいられるのか。まして、違法状態の汚染がある東京で、いかなるダメージもありませんと首相が全世界を相手に発信し、汚染を放置したままオリンピックを開催し、外国人を「おもてなし」できるような、厚顔無恥なことができるのだろうか、と。</p> <p>正直に言えば、私も、つきつめて考えればよくわかりません。そもそも、これだけの地震大国で、まともな耐震設計も津浪に対する対策もなく、原発を推進して、しかも国民の圧倒的大部分だけではなく、電力会社や為政者たちまで安全だと思い込んでいたわけですが、冷静に考えれば信じがたいことです。</p> <p>しかし、311以降、なぜ放射能が安全だと思われるに至ったのか、それは多くの人が記憶しているところでしょう。端的にいえば、「科学的にいって放射能が安全である」、という言説がメディアなどを通じて大量に流され、瞬く間に支配的なイデオロギーとなったからです。そして、放射能の危険性を説く人たち―もちろんその中には真っ当な科学者もジャーナリストも政治家もいるわけですが―、彼らの言説はデマと風評被害を煽る危険なものとして、言説の片隅へと隔離されてきたわけです。</p> <p>以前、原発の危険性を説いてきた人たちが、「頭がおかしい人たち」というレッテルを貼られて排除されてきましたが、それと全く同じのポジションに、放射能の危険性を説く人間は置かれています。言い換えれば、「原発安全神話」という防護壁が崩壊した現在、大量の言説によって「放射能安全神話」という新たな防護壁が即座に作られた訳です。しかし、国民を危険な情報から護る事ができても、国民は放射性物質から守られているかはまったく別の問題でしょう。</p> <p>ともあれ、「被曝についての科学的言説」は、典型的には、次のような内容で構成されています。</p> <ol> <li>人は食物や大地・大気から自然に放射線を被曝しており、それと比べると原発事故による被曝はたいしたことがない。 <li>100mSvの被曝で発癌率が0.5%上昇する確率が増える。(被曝の確率的影響) <li>放射能に対する恐怖心からくるストレスや、移住ストレスの方がリスクが高い。</li></ol> <p>さしあたり、ここで言われている内容について、科学的な検討を留保するとしても、よく考えると、常識的にいっておかしな内容を含んでいるように思います。以下、喩え話をいくつかしてみましょう。</p> <h5><strong>落ちてきた枝と棍棒―自然放射線と人工放射線の最大の違い―</h5></strong> <p><br>人が森の中を歩いていて、たまたま木から枝が落ちてきて誰かの頭に当って死んだら、それは「運が悪かった」と言うしかないでしょう。誰も責めることができません。ですが、もしその枝を誰かが拾い上げて、「あいつもこの枝で死んだんだから、もう一人死んでもたいしたことはない」と言って他の人間を殴り殺したらどうでしょうか?<br>この話は、実は元ネタがあって、<a href="http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ecrr2010_chap1_5.pdf">ECRR(欧州放射線リスク委員会)の2010年勧告(第四章)</a>に載っていたものを、ほぼそのまま転載しました。もちろん、「木から落ちてきた枝」は自然放射線の比喩で、「棍棒」は人工放射線です。「自然放射線から被曝してるから、人工放射線で被曝してもたいしたことはない」というのは、「あいつもこの枝が当って死んだから、もう一人殺してもたいしたことはない」というのと、論理的にはまったく同じです。自然放射線と人工放射線に、仮に物理的な違いがなかったとしても―実際にはあるということを後ほど論証いたしますが―、倫理的には、人間が創り出した放射性物質によって誰かが死んだらそれは「殺人」であり、誰かが健康被害を負ったらそれは「傷害」です。</p> <p>「人工放射性物質と自然放射性物質が同じである」という時に、まず隠蔽されているのは、原発事故や核実験が、誰かによる障害であり、殺人であるという事実なのです。</p> <p><strong>棍棒で殴られて死ぬ確率―確率的影響の欺瞞―</strong><br><br>さきほどの棍棒の話をもう少し続けましょう。誰か偉い人が、テレビで棍棒による傷害事件について、次のように説明したとしましょう。<br>「棍棒で100kgの力で殴られても、骨折して死ぬ確率はたったの0.5%です。だから、棍棒による健康への影響は確率的で、たいしたことありません。だから、あなたが見知らぬ人に殴りかからても安心ですし、その人を罪に問うことはできません。」。<br>この説明で、納得しておとなしく殴られる人が果たしているでしょうか?確かに当たりどころが悪くて死に至る確率は0.5%で、その意味では確率論的に語られうるものです。ですが、殴られたら、一部の人は骨折するでしょうし、骨折まで至らなかったとしても、打ち身や痣などはできる可能性はさらに高くなります。少なくとも、相当の痛みを被ることだけは、ほぼ確定的だと言えます。最悪の結果に至る確率をもって、痛みなどのダメージまで確率的影響だと仄めかすのは、詐欺ではないでしょうか。<br><br>ところが、放射能ではこのヘンテコな理屈が通用してしまう。被曝のメカニズムについては後ほど詳細に説明しますが、放射線物質を体内に取り込むと、細胞内の分子が破壊され、細胞がダメージを受け、変成したり死んだりします。この細胞レベルのダメージは、棍棒で殴られると痛いのと同じぐらい、ほぼ逃れようがない事実です。その事実を告げないまま、「癌になる確率」だけ言うのは、「棍棒で殴られても0.5%しか死なない」というのと、本質的にどこが違うのでしょうか。<br><strong></strong></p> <p><strong>腐った牛乳を飲んで癌になる確率</strong><br><br>まだ上の話は、放射能と癌の比喩としては、まだ少し甘いところがあります。むしろ、被曝については、次の例がより現実に即しているように思えます。<br>給食で、パックに入った変な匂いのする白い液体を出されて、先生に「さあ液体を飲みなさい」と言われたとしましょう。飲むのを躊躇してたら、周りのあらゆる人が「これを将来的に癌を発生する確率は0.025%しか増加しないことが科学的に証明されています。根拠がない非科学的な恐怖を克服して、ただしく怖がって飲みなさい」とつるし上げられて、仕方なく飲んだとします。<br>その子はそれを飲んだ結果、確かに癌にはなりませんでした。でも、ほんとはこの白い液体が、腐った牛乳だったとすればどうでしょうか。クラスのみんなはお腹を下し、嘔吐をし、発熱さえしましたが、ほとんどの子どもはあの液体のせいだとはつゆほども疑いませんでした。だって、先生がそんなこと教えてくれなかったのだから。一部の子どもは入院し、その保護者は、あの腐った飲み物のせいではないかと疑って、先生を問い詰めました。だけど先生は、「下痢や嘔吐や発熱は癌ではないから、腐った牛乳のせいではありえない」と頑として聞き入れようとはしませんでした。そして、治療費用は各家庭が負担せざるを得なかったのです。</p> <h5>放射能は腐った牛乳か?</h5> <p>発癌率が低いことをもって、健康リスクがないということを示せるのは、そもそも癌以外の健康被害のリスクが、ほとんど0のときだけのはずです。ですが、もしも癌が被曝症状の典型ですらないとすればどうでしょうか?私たちは、「発癌率はほとんどないから」と言われて、腐った牛乳を飲ませられている、その可能性はないのでしょうか。そして、多くの人が、日々体調があらゆる方面で悪化しながら、それがまさか放射能のせいだとさえ気がついていないとすればどうでしょうか。誰がその健康障害を抱え、誰が苦しみ、誰がそれを償うのでしょうか。</p> <h3>被爆症状、その多様な実態</h3> <p>人が被曝すると、どのような健康障害があらわれるのでしょうか。科学者やメディアが示唆するように、果たして癌だけなのでしょうか。それをいくつかの角度から検討していくことにします。</p> <h5>急性被曝</h5> <p>まず、高い線量の放射線を外部から浴びたときの被曝症状については、広島・長崎や医療被曝などの事例から、かなり詳しい事が判明しています。線量との関連については<a title="http://ja.wikipedia.org/wiki/急性放射線症候群" href="http://ja.wikipedia.org/wiki/急性放射線症候群">Wikipedia(急性放射線症候群)</a>(<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/放射線障害">放射線障害</a>)を確認していただくとして、急性症状を羅列すれば、倦怠感・悪心・嘔吐・下痢・免疫力低下・脱毛・赤班・肺炎・心膜炎・意識障害などがあげられます。また、晩発性障害として、白血病・白内障・癌・老化・奇形などがわかっています。</p> <p>広島で被爆者をみてきた肥田舜太郎氏は、高熱・下痢・嘔吐・口内壊死・紫斑・脱毛などが急性症状であったと報告しています(肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』)。</p> <p>また、広島・長崎の被爆者で、腰痛・高血圧・視覚障害から肺炎まで、あらゆる身体症状*が、一般国民よりも多いことが判明しています(今中哲二編 <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html">チェルノブイリによる放射能災害 国際共同研究報告書</a> <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html">チェルノブイリ原発事故:国際原子力共同体の危機より引用)</a>。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-HztHdiitGHI/Une_dUMqfyI/AAAAAAAAAL0/oS7aMqxAuI4/s1600-h/image4.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-ZqBSuz8JKvs/Une_eNodwEI/AAAAAAAAAL4/beFVg2WQc_M/image_thumb2.png?imgmax=800" width="479" height="412"></a></p> <p>放射線による被曝は、人体のあらゆる部位に、あらゆる形での疾患を発生させる。少なくとも高線量領域においては、これは科学的に確定している事実です。そして、ごく素朴に考えれば、これらの障害は多かれ少なかれ、原発事故による低線量被曝でも発生する可能性がある。それにも関わらず、なぜ低線量被曝においては、発癌しか存在しないことになっているのか。福島では、なぜ小児甲状腺癌しか調査されないのか。私が知る限り、この素朴な疑問に対して、説得力がある説明は、ほとんどありません。それは、端的に「存在しない」ことになっているのです。</p> <h5>チェルノブイリ</h5> <p>もちろん、それでも「現実に」、発癌以外の健康被害が発生していないというデータが存在するなら、その事実は尊重しなければいけません。ところが、チェルノブイリ原発事故においても、現地の医師をはじめ、様々な方面から、ありとあらゆる健康被害が報告されています。</p> <p>1997年 マルコ(ベラルーシ科学アカデミー)によれば、ベラルーシ ブレスト地域において、高濃度に汚染された地域とそれ以外の地域で、10万人あたりの疾患数を比較しています(図表は<a href="http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ecrr2010_chap13.pdf">ECRR2010日本語版第13章</a>より引用 もと論文「<a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html">チェルノブイリ原発事故:国際原子力共同体の危機</a>」)</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-BEGcvdWrAlU/UpB9OCJ1wnI/AAAAAAAAAP0/nh-7a9PIHqg/s1600-h/image5128.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-7m_55gveP6w/UpB9POpX9PI/AAAAAAAAAP8/76r_C02ZtA0/image51_thumb27.png?imgmax=800" width="483" height="289"></a></p> <p>マルコが指摘しているように、これらの身体疾患は、先に挙げた広島・長崎の被爆者の健康被害と、非常に似通っています。</p> <p>また、隣のウクライナでも、同様の健康被害が報告されています。グロジンスキー(ウクライナ科学アカデミー)「<a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Grod-J.html">ウクライナにおける事故影響の概要</a>」によれば、被災地域では1987年から1996年まで、子どもたちの慢性疾患が増加し、罹病率が2.1倍、発病率が2.5倍になりました。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-378HmSZiYvs/Une_f-XHIqI/AAAAAAAAAMQ/1n0Y2WhIUeM/s1600-h/image23.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-1XzbX_PxSeg/Une_ggLaI_I/AAAAAAAAAMc/ypJDqR-38mE/image_thumb12.png?imgmax=800" width="233" height="109"></a><a href="http://lh4.ggpht.com/-t7nS8cl5mwc/Une_hL1sEUI/AAAAAAAAAMk/ZamFf7xN9XA/s1600-h/image24.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-OHjr1vRX0Bc/Une_hnX5gsI/AAAAAAAAAMs/CC3tmYZQrgE/image_thumb13.png?imgmax=800" width="250" height="283"></a></p> <p>これは、原発事故前ととの比較ですが、チェルノブイリ原発事故直後の1987年では、子どもたちの罹病率は、1000人あたり786です。ところが、1994年では1000人あたり1651.9、すなわち子ども一人あたり1.6個も慢性疾患を抱えて生きているのです。罹病率の増加が最も激しいのは,腫瘍,先天的欠陥,血液,造血器系の病気です。</p> <p>これらの報告は、また、チェルノブイリから西へ150kmのホットスポット、ウクライナのナロジチ地域で被災者を支援してきた日本人医師、川田昌東さんの報告とも合致しています(川田昌東『チェルノブイリと福島』)。彼がナロジチ地区病院から得た生データによれば、成人の罹患率は10万人あたり6万、17歳以下の子どもの罹患率は、1000人あたり1900、すなわち子ども一人あたり二つほどの慢性疾患を抱えている。この地域の学校を訪れると、「うちの学校には健康な子が一人もいない」と言われることがたびたびあるそうです。そして、これらの慢性疾患のうち、癌・白血病は1割にも満たないのが現状です。</p> <h5>典型的な被曝症状</h5> <p>これまで、被曝症状が癌・白血病にとどまらないこと、放射能が全身の器官にあらゆる異変をもたらすことを確認してきました。ここからは、具体的な症状のいくつかについて、見ていくことにします</p> <p><strong> 全身倦怠感</strong><br><br>おそらく、被曝症状でもっとも多いのが、身体がだるく、疲れやすい、体力がもたない、といった全身倦怠感です。これこそが、被曝症状の典型であり、本来は被曝の第一の指標となるべきものでしょう。<br>広島の被爆者にみられた全身のだるさは、医師に診せても診断がつかず、市民の間で「原爆ぶらぶら病」と名付けられました。<br>肥田は、長崎の入市被爆者(原爆が落ちた後に市内に入って被曝した人)について、次のように報告しています。</p> <blockquote> <p>彼女は原爆後、半年ぐらい経った頃から、時々、急にからだがだるくなり、手足の力が弱くなって立っているのが辛く、どうしても座らなくてはいられなくなることがあった。半日ぐらいでよくなることもあるし、何日間か続くこともあった。医師に話したこともあったが、気のせいだと取り上げてもらえなかった。(『内部被曝の脅威』p52)</p></blockquote> <p>『広島・長崎の原爆被害とその後遺―国連事務総長への報告』には、「原爆ぶらぶら病」について次のように記載されています。</p> <blockquote> <p>i 被曝前は全く病気ひとつしたことがなかったのに、被曝後はいろいろな病気が重なり、今でもいくつかの内臓系慢性疾患を合併した状態で、わずかなストレスによっても症状の増悪を現わす人びとがある(中・高年齢層に多い)。[中略]<br>ii 簡単な一般検診では異常が発見されないが、体力・抵抗力が弱くて「疲れやすい」「身体がだるい」「根気がない」などの訴えがつづき、人なみに働けないためんひまともな職業につけず、火事も充分にやってゆけない人びとがある(若年者・中年者が多い)。<br>iii 平素、意識してストレスを避けている間は症状が固定しているが、何らかの原因で一度症状が増悪に転ずると、回復しない人びとがある。<br>iV 病気にかかりやすく、かかると重症化する率が高い人びとがある。</p></blockquote> <p>また、日本被団協の1985年の調査によると、「原爆ぶらぶら病」の発現率は、直爆者・入市被爆者にかかわらず、次の表に見るように高い確率で表われています(矢ヶ崎克馬『隠された被曝』p120より引用)。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-J6TXPDLRiJI/UpB9P1wCvEI/AAAAAAAAAQA/uAKo2pD__dw/s1600-h/image251.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-2f9CImozt-U/UpB9QullxYI/AAAAAAAAAQM/gppuEymlTgk/image25_thumb.png?imgmax=800" width="458" height="293"></a></p> <p>また、アメリカの医師ドンネル・ボードマンは、大気圏核実験によって多数の被爆米兵で、既存の病名に当てはまらない不定愁訴が多発していることを指摘し、「非定型症候群」と名付け、低線量被爆障害であると結論づけています。そして、これは原爆ぶらぶら病と同じものであると考えています(『内部被爆の脅威』p108-112)。</p> <p>また、湾岸戦争・イラク戦争・ユーゴスラビアにおいて、現地住民や戦闘に参加した米兵やがん、慢性疲労、白血病、免疫不全、記憶障害・倦怠感や関節痛・癌や白血病、子供の先天性障害が発生しているとの報告があり、これらは「湾岸戦争症候群」「バルカン症候群」と名付けられており、米軍が大量使用した劣化ウラン弾との関連が疑われています(<a href="http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-03-11">ATOMICA 劣化ウランの健康影響</a>) 。これらの症状の典型も、「原爆ぶらぶら病」に酷似しています。</p> <p><strong> 心臓疾患</strong></p> <p>チェルノブイリでみられた健康被害で、次いで顕著なのが循環器系の疾患です。ベラルーシのゴメリ医科大学初代学長、<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/ユーリ・バンダジェフスキー">ユーリ・バンダジェフスキー</a>は、被爆小児患者の病理解剖を行い、心臓、腎臓、肝臓、甲状腺・胸腺・副腎などの内分泌臓器におけるCs137の蓄積と、組織障害との関連性に関するた論文<a href="http://www.amazon.co.jp/放射性セシウムが人体に与える-医学的生物学的影響-チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ-ユーリ・バンダジェフスキー/dp/4772610472/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1383538488&sr=8-1&keywords=%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC">(『放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響』</a>を執筆し、その直後にベラルーシ政府によって逮捕されました。</p> <p>彼の研究の中でもっとも有名なのは、セシウムと心臓、とりわけ不整脈や高血圧・心筋梗塞との関連です。先の論文において、バンダジェフスキーは、ゴメリ州で突然死した人の病理解剖を行うと、99%に心筋異常が見られたと記述しています。また、論文 <a href="http://radionucleide.free.fr/Stresseurs/smw-Galina_Bandazhevskaya.pdf">Relationship between Caesium (137Cs) load,cardiovascular symptoms, and source of foodin “Chernobyl” children – preliminary observations after intake of oral apple pectin</a> において、彼は体内のセシウムの蓄積量による三つのグループを調査しました。すなわち、Group1は5Bq/kg以下、Group2は38±2.4Bq/kg、Group3gは122±18.5Bq/kgです。その三つのグループにおいて、自覚症状(subjective complaints)、動脈高血圧(arterial hypertention)、心音異常(abnormal heart sounds)、心電図異常(altered ECGs)を示したのが次の図です。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-SXhxsZ_o_Wk/UpB9R-hIgiI/AAAAAAAAAQc/zqGHhY7vVhg/s1600-h/image3315.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-2BSbkt72llE/Une_j1ufEMI/AAAAAAAAAQk/AyaLPhS3kwk/image33_thumb14.png?imgmax=800" width="492" height="112"></a></p> <p>このように、もっともセシウム蓄積量が高いグループで、ほとんどのこどもに心音異常・心電図異常が発生していることがわかります。</p> <p>また、それぞれのグループで、正常血圧、高血圧、低血圧を比べたのが次のグラフになります。セシウムの蓄積量が増えるにつれて、正常血圧(normotonic)の割合が減り、高血圧(hypertonic)および低血圧(hypotonic)の割合が増えていくことがわかります。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-jhIbAt5CPhE/Une_kY78HCI/AAAAAAAAANQ/kei_dmDUo_8/s1600-h/image40.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-MT1Rx6iKkCs/Une_kzF3P4I/AAAAAAAAANY/TEoazlG_Ncw/image_thumb21.png?imgmax=800" width="482" height="253"></a></p> <p>また、体内のセシウム濃度と不整脈との関連について、次のグラフがわかりやすいでしょう。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-dQ3Gixzg_zY/Une_lcChWcI/AAAAAAAAANk/K4_e2zZRyD4/s1600-h/image32.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-HVcgs6vif1M/Une_mM41vLI/AAAAAAAAANs/jay4bMuern0/image_thumb17.png?imgmax=800" width="465" height="342"></a>、</p> <p>上のグラフは、子供の体内のセシウム137濃度と不整脈の「ない」子供の割合を示したグラフです。すなわち、一定以上のセシウムの蓄積は、ほぼ確実に心臓の異常をもたらす、というのが、バンダジェフスキーの一連の研究から導き出される結論だったのです。</p> <p> <strong>チェルノブイリ膀胱炎</strong></p> <p>もうひとつ、被爆に典型的な症状に、膀胱炎があります。日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治博士は、大阪市立大学教授時代に、チェルノブイリ周辺における健康被害ついて調査をしていました。そして、良性の前立腺肥大によって一部切除された膀胱組織の病理組織の検討をしました。そこで彼はk中濃度汚染地域~高濃度汚染地域において、ほとんどの患者で膀胱の慢性炎症、そして多くの場合に早期癌を発見し、それを「チェルノブイリ膀胱炎」と名付けました(<a href="http://www.amazon.co.jp/内部被曝の真実-幻冬舎新書-児玉龍彦/dp/4344982290/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1383560820&sr=8-1&keywords=%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E7%88%86%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F">児玉龍彦『内部被爆の真実』</a>参照)。以下は、福島氏のデータをグラフ化したものです。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-em3SCThtFuU/Une_muKiCGI/AAAAAAAAANw/SZRCy_0jlic/s1600-h/image%25255B4%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-2hd0pWL_quA/Une_nIBSNyI/AAAAAAAAAN8/TnawZ3XLnFU/image_thumb%25255B1%25255D.png?imgmax=800" width="494" height="327"></a></p> <h3><strong>放射能の神話と科学</strong></h3> <h5>放射能安全神話、あるいは理論とデータの循環論法</h5> <p>前章で、被爆について、マスメディアでは語られない被爆症状の実態報告を見てきました。これらの症状は、IAEAや日本政府などの機関によって、十分な証拠がないとして否定されてきました。チェルノブイリでは、これらの多様な健康障害は「放射線恐怖症」によるものかもしれない。、あるいはソ連崩壊による社会構造の動乱が要因の可能性が否定できない。あるいは、チェルノブイリ以後精密検査するようになったため、病気が発見されやすくなったためだろう・・・などなど。</p> <p>今回の原発事故においても、おそらく例外ではありません。東電原発事故直後、内閣府に属する食品安全委員会の中に、「放射性物質の食品健康の評価に関するワーキンググループ」が立ち上げられ、2011年4月21日に第一回目の会合が開かれました(以下、議事録は<a href="http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20110421so1&fileId=710">こちら</a>。また、このWGについては哲野イサクさんの「<a href="http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/fukushima/01.html">核利益共同体に魂を売り渡した 日本の食品安全委員会</a>」を参照)」。そこで、放射線に関する知識に乏しい専門委員のために、「食品と放射線」という題名で専門参考人として講義を行ったのが、元原子力安全委員会委員長代理の松原純子です。そこで彼女は、KiKK研究に言及しています。</p> <p>KiKK研究とは、ドイツの原子力発電所の周辺で小児白血病が有意に増加しているという、ドイツ連邦政府・放射線防護庁の研究のことを指しています。同様に、原子力施設の周囲で白血病が増加しているという研究は、イングランドのセラフィールド再処理工場などで、多数報告されています。これらの研究については、国際的に公式の放射線の理論枠組みからは説明不可能でなものでした。この説明困難な事例を説明しようとした唯一の研究が、キンレンらの人口混合(ポピュレーションミキシング)説でした。</p> <p>話を戻すと、松原純子は、KiKK研究について、その人口混合説を持ち出して、ワーキンググループで次のように述べている訳です。</p> <blockquote> <p>結論は、原子力発電所のような新しい建築物の建築のときはいろんな地方からいろんな人が入ってきて、そしていろんな人間の交流が起こると、ポピ<br>ュレーションミキシングというのが起こって、そして白血病のような弱いウィルスが持ち込まれて、もしかしたら免疫性の弱い子には発病するのではないかというようなことで、原子力の放射線にするには余りにも放射線レベルが低すぎる、発がんするには放射線レベルが低すぎるので、やはりそれ以外のポピュレーションミキシングの要因ではないかというのが、大体のコンセンサスだったように思います。</p></blockquote> <p>この説明について、その白血病のウイルスなるものが発見されていなければ、それこそ科学的根拠に欠けています。少なくとも、実証されたとは到底言えません。</p> <p>ともあれ、なぜ松原がこのような珍妙な説を持ち出してきたのかというと、まさに彼女が言ったとおり、「発がんするには放射線レベルが低すぎる」からです。ここに見られるのが、「放射能は科学的に言って安全だ」という科学者たちの常套手段の典型です。</p> <p>従来の放射能のリスク理論と大幅に食い違うデータがあれば、「そのデータは信用できない」として、無条件に切り捨てる。そして、どうしても無視できないデータがあれば、「これは人口混合のせいかもしれない」「放射能恐怖症のせいだ」といった珍妙な仮説を、十分な検証抜きで出してくる。そして、「低線量被爆が危険であるというデータはない」、「放射能が安全であるということは科学的に証明されている」などという。</p> <p>理論にそぐわないデータがあれば「理論的にいってありえないから信用できない」と切り捨て、切り捨てた残りのデータでもって「データから理論の正しさは証明されている」と主張する。この方法論が素晴らしいところは、どのような考えも、信仰も、自らを正当化することが可能だというところです。</p> <p>逆に言えば、それは科学ではない。なぜなら、科学の本質は、実証データによって、絶え間なく理論を検証し、更新していく、その開かれた態度にこそ存在するからです。科学者の資質を定義するならば、「データと理論が整合していない場合に、理論の方が間違っていると考える人」のことです。「科学的にいってありえない」と都合が悪いデータを切り捨てている限り、「放射能が安全である」という言説は、「放射能安全神話」でしかありません。</p> <p>ともあれ、上の「理論」を唱える偽装科学者は、放射能の危険性について語る人―研究者や政治家や市民―を、被爆についての科学的知識を欠如していると揶揄します。でも、放射能の危険性を真摯に説いている人の、少なくとも一部は、その「理論」の内容と成り立ちについて研究した上で、データと理論の整合性に基づいて、あるいは他の科学分野の知見に基づいて、「放射能安全」論に根本的な欠陥があると、指摘しているのです。</p> <p>ただし、放射能の危険性を主張する側の立場に立つならば、「これが事実なのだ」と押しつけるだけでは、やや弱いのも事実です。「科学的に言って放射能は安全である」というその「科学」の中身を検証すること。それと同時に、こうした被爆症状の発生を説明しうる理論モデルを提出すること。最終的には、この二つが必要となるはずです。そうすることで、私たちはより適切に未来を推測し、対処する事ができるでしょう。前置きが長くなりましたが、これが本章の目標です。</p> <h5>Svの根拠を再検討する</h5> <p>放射能の多様な健康被害について、「科学的に言ってありえない」と科学者たちが言うときの最大の根拠は、自然放射線との比較です。たとえば、日本ーニューヨーク間を飛行機で一往復すると0.2mSv被爆する。バナナ一本には、20BqのK40が含まれており、実効線量は0.1μSvである。インドやブラジルのどこそこには、自然放射線によって空間線量が高い地域が存在する。しかし、それら自然の放射能によって、発癌率の上昇などの健康被害は見られない。したがって、微量の人工放射線あるいは放射性物質によって、健康被害が発生する事などありえない、と。</p> <p>さて、これらの議論には、一つの暗黙の前提があります。それはSvです。Svは、「ある一定の計算に基づいて、生体に対する生物学的影響の大きさを表す単位」です。その前提の上で、つまり、Svという単位を使用した上で、低線量被爆の危険性について主張すると、あたかも「10cmでも100cmより長い事がある」と非科学的なことを主張しているかのように見えてしまう。</p> <p>しかし、重要なことは、そもそもSvというのが測定可能な物理量ではなく、<strong>「ある一定の計算に基づいた」</strong>単位であるということです。そして、この計算方法は、国際放射線防護委員会(以下ICRP)という一民間機関によって、恣意的に決定されている。この組織が一体何ものなのかについては、あえてここでは触れません。興味がある方は、別のテクスト(たとえば<a href="http://www.amazon.co.jp/増補-放射線被曝の歴史-中川-保雄-ebook/dp/B009SKB2Z0/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1383571845&sr=8-3&keywords=%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E8%A2%AB%E6%9B%9D">中川保雄『放射線被曝の歴史』</a>)を当ってもらうとよいでしょう。ここでは、この民間機関が、IAEAやWHOや各国の「公式の見解と」なっている、ということだけ念頭においていただければ充分です。</p> <p>問題の本質は、そのICRPが決めた、Svを導出する「一定の計算」が、そもそも生物学的影響の大きさを表すのに適切な理論モデルか否かです。具体的に言えば、例えば1mSV相当の内部被爆で健康被害が多発しているなら、「低線量被爆でも健康被害が起きている」と主張するのではなく、「そもそもSvという単位の前提になっているICRPの被爆モデルが根本的に間違っている」と主張する必要があるのです。</p> <h5>ICRPの被爆モデル (ややこしいので読み飛ばしてもいいよバージョン)</h5> <p>さて、ICRPは、どのようにして被爆の生物学的影響の公式を決定しているのでしょうか。そのために、まず放射能についておさらいしてみます。</p> <p>代表的な放射線には、α線、β線、γ線の3種類があります。α線はヘリウム原子核、β線は電子、γ線は光子です。不安定な放射性の原子が崩壊し、別の原子になるとき、これらの放射線のどれかを放出します。(ただし、多くの場合、その崩壊した後の原子もまた放射性原子であって、さらに放射線を出して、別の物質へと変換していく。これを、崩壊系列と言います。)</p> <p>これらの放射線がある物体を通過するとき、その通り道で、物体中の原子から電子を引きはがします(電離)。そうすることで、物体中の分子が破壊され、また別の分子と結合したりする。これが、代表的な放射線が物体に及ぼす主な作用です。</p> <p>さて、この前提の上で、問題は、この物体が人体(あるいは生命体)の場合、どのように悪影響を及ぼすか、です。それを、ICRPは次のように計算しています。</p> <p>放射線源が人体の外部にある場合、たとえば医療被曝の場合、Svの計算方法は非常に簡単です。それは、放射線によって、受けた<strong>1kgあたり</strong>のエネルギー(吸収線量)に、放射線の種類ごとに異なる係数(放射線加重係数)を掛けたものが、Sv(等価線量)となります。</p> <p>等価線量[Sv]=吸収線量J/kg×放射線加重係数</p> <p>したがって、Svもまた1kgあたりの単位です。この放射線加重係数が放射線によって異なるのは、電離作用の大きさが各放射線によって異なるからですが、それはICRPによって恣意的に決定されています。</p> <p>ともあれ、人体全体に一様に被爆することの多い外部被爆の場合は、さほど大きな問題は提起されておりません。最大の争点は内部被爆、すなわち、放射性物質を体内に取り込んだ場合の、Svの計算方法です。ICRPは、この場合も外部被爆の計算方法をそのまま適用します。まず、取り込んだ放射性物質について、それが蓄積される臓器単位で、キログラムあたりの等価線量を計算します(どの放射性物質がどこに蓄積されるかは、あらかじめICRPが、コンピュータ上の人体形状モデルを用いて計算しています)。それに、臓器ごとに臓器あたりの係数を掛けます(臓器荷重係数)。臓器荷重係数は、放射線への感受性(というのはこの場合発癌しやすさのことです)によって、全身の被曝線量を分割する係数のことです。</p> <p>それを被爆した臓器で全て足しあわせたものが、実効線量となる訳です。</p> <p>(実効線量 [Sv]) E = Σ(臓器 T の等価線量 [Sv])HT × (臓器 T の組織荷重係数) wT</p> <p>ただし、内部被爆の場合、外部被爆と根本的に異なることがあります。外部被爆の場合、多くは医療被曝や原爆など、一回きり放射線を浴びる事が多い。それに対して、内部被爆においては、放射性物質が、場合によっては何十年も身体の中 にとどまり続ける事になる。そのため、その期間(大人は50年、子どもは70年)の被曝線量をすべて積分する。これを、預託実効線量といいます。すなわち、摂取時間t0から時間τ経過した時までの、臓器あたりの預託等価線量HT(τ)は、</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-vo3BO9K8hR8/UoLk621FAuI/AAAAAAAAAOQ/m0qJ3iF5sBk/s1600-h/image%25255B41%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-E7TXLG2aSIc/UoLk7RcA5WI/AAAAAAAAAOU/9KnUHtGkIbI/image_thumb%25255B36%25255D.png?imgmax=800" width="249" height="81"></a></p> <p>で表され、したがって預託実効線量は、それを全ての臓器について足し逢わせたもの、すなわち</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-ietZSHgRhm8/UoLk74gCOrI/AAAAAAAAAO4/QXAJD8TfHIc/s1600-h/image%25255B56%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-yQV1QTRWvwI/UoMkLnWgKDI/AAAAAAAAAPA/haP6-Mxr1oc/image_thumb%25255B51%25255D.png?imgmax=800" width="240" height="76"></a></p> <p>となるわけです(ICRP4.2.2)</p> <h5>ICRPの被爆モデル (わかりやすいので読んでねバージョン)</h5> <p>いままで、ICRPに基づいて、Sv、すなわち放射能の生物学的影響のモデルを説明してきました。同じような言葉、等価線量とか実効預託線量とか、数式とかが並んで、一見とても複雑で厳密なように見えます。ところが、よくよくかみ砕いてみると、実は非常に単純なモデルなんです。</p> <p>水がたっぷり入った、1リットルのペットボトルを想像してください。それを60本組み合わせて、60kgの人体の模型を作ります。そのペットボトル人体にビームを当てます。そのときに、各ペットボトルの温度が何度上がったかが、吸収線量です。それに、放射線の種類と、当った場所によって、あらかじめ決められた数字を掛け合わせると、Svという単位が出てくるわけです。</p> <p>内部被爆の場合も、考え方は一緒です。放射性物質を、いくつかのペットボトルに混ぜて、よく振ります。そして、放射線で上昇したペットボトルごとの温度に、ペットボトルごとの係数と、放射線ごとの係数を掛ければ、Svができあがるのです。β線とγ線は同じ放射線荷重係数なので、ストロンチウムも、カリウムも、セシウムも、みんな同じです。</p> <p>こうやってペットボトルに当てられた熱量によって、健康被害が測れるとICRPは主張しているわけです。ある一定の高線量以上で、線量に応じて、白内障や脱毛などといった、様々な確定的症状が必ずあらわれる。それとは別に、1Svごとに5%の割合で致死性の発癌が発生します。そして、100mSv以下の低線量被爆においては、急性被爆で見られた多種多様な健康被害はなぜか完全に消えて、発癌率だけが残る。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-7AIJG7QgLvY/UpORZz5cbUI/AAAAAAAAAc8/Ti2biAfS8ek/s1600-h/image%25255B16%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-9WxB-9xkp-c/UpORaoru4rI/AAAAAAAAAdA/v2REfiFPFKA/image_thumb%25255B7%25255D.png?imgmax=800" width="227" height="146"></a><a href="http://lh3.ggpht.com/-ktPS0xadnPs/UpORa6WguRI/AAAAAAAAAdI/DpfJMEV_vas/s1600-h/image%25255B15%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-khEfKlRxzoY/UpORbh0RRzI/AAAAAAAAAdU/DJ5B8wnasO4/image_thumb%25255B6%25255D.png?imgmax=800" width="244" height="162"></a></p> <p>(公益財団法人原子力安全研究協会運営 緊急被ばく医療研修のホームページ<br>確率的影響と確定的影響)</p> <p>そして、100mSv以下では、発癌率の発生割合も、さらに半分になる(リスク低減係数 DDREF)。</p> <p>つまり、10mSvでの発癌率は、</p> <p>5÷1000×10÷2=0.025%</p> <p>ということになります。これに、わずかな遺伝性疾患を加えて、これが低線量における健康被害のすべてであって、それ以外のものは、放射能の影響ではありえない、と主張します。</p> <h5>ECRR もう一つの被曝モデル</h5> <p><font style="font-weight: normal"> 今まで仮にICRPの言ってる内容をご存じなかった人は、その「科学」の単純さに拍子抜けされたんじゃないかと思います。このモデルは、人間をペットボトルかドラム缶かと同じものとみなしています。実際、この理論の優れたところは、人間でなくても、ペットボトルやドラム缶や掃除機やストーブに対する「生物学的影響」を導き出せる点です(組織荷重係数の代わりに部品荷重係数を決めてしまえば)。そこでは、人間の細胞のメカニズム、それぞれに異なる化学的特性をもつ放射性物質がどのように細胞に影響を及ぼすか、細胞間のシグナル、組織と組織の影響関係、そうした知識は一切必要ありません。</font></p> <p><font style="font-weight: normal">実際、DNAが遺伝物質であることが科学的に確定したのは1952年、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を発見したのが1953年です。それに対し、ICRPがSvを導出する物理学的な理論モデルを提出したのが1950年。その後、分子細胞生物学などの大幅な進化にも関わらず、微妙な変更を除けば、ICRPの被爆モデルは維持されたままです。</font></p> <p><font style="font-weight: normal">ともあれ、このモデルが現実の被曝の健康被害の実態と合致しており、被爆時の現実の健康被害をよく予測できるなら、理論モデルが多少矛盾してても、生物学的に荒唐無稽でも、実用にはさほど問題はない。ところが、先にあげたドイツの原発周辺の白血病でも、セラフィールドやルアーグの再処理工場でも、大気圏核実験でも、イラクでも、もちろんチェルノブイリでも(そして広島・長崎でも)、ICRPのモデルによっては到底説明がつかない健康被害が、非常に数多く報告されている。それに対して、多くの場合、ICRP側は責任ある応答をせず、「科学的に言ってそのようなことはありえない」と、自らの理論の無力さを告白するばかりです。ですが、その「科学」を口実として、各国政府はICRPを論拠に、被害者への賠償を拒否してきた訳です。確かに、そういう意味ではICRPは非常に役に立つ理論です。</font></p> <p><font style="font-weight: normal">それに対して、あらゆる角度から徹底的にICRPを批判しながら、ICRPとは別の被曝モデル・防護モデルを打ち立てようとしているのが、欧州放射線リスク委員会です(以下ECRR)。その市民組織は、欧州議会の緑の党が開催したブリュッセルでの会議において、1997年に設立されました。この組織の目的は、端的にいうと、現在世界中の多くの国において通用してしまっているICRPに代わる、新しい被曝の理論・予測モデルと、放射線防護規準を打ち立てることです。</font></p> <p><font style="font-weight: normal">ECRRが発祥することになったきっかけというのが、欧州原子力共同体指針の問題、とりわけ放射性廃棄物の消費財へのリサイクル利用問題であったこともあって、ECRRのリスクモデルは低線量被曝、とりわけ内部被曝を重視します。結論からいえば、ECRRが提出したリスクモデルは、</font></p> <ol> <li><font style="font-weight: normal">低線量領域において、癌・白血病・遺伝性疾患以外の、多様な慢性疾患を認める。</font> <li><font style="font-weight: normal">最近の様々な実証データに基づいて、<strong>内部被曝については、</strong><strong>発がん率においても、ICRPの500倍~1000倍のリスクを認める</strong>。</font></li></ol> <p>という特徴があります。</p> <p>これが、ECRRが過激だと呼ばれるゆえんですが、ECRRに言わせれば、ICRPが内部被曝を極端に過小評価している、という主張になります。ともあれ、これだけの差があれば、ICRPとECRRどちらかが間違っているか、あるいは両方間違っているか、三つの結論のどれかということになります。</p> <p>本章の残りは、ICRPに対する様々な批判を通じて、被曝の科学的メカニズムについて、現時点で判明していることを解き明かしていきます。その際、ICRP批判については、主にECRRに依拠しますが、他の論者の議論も援用したり、新たな視点を付け加えていくことになります。</p> <h5>方法論の対立、あるいは神話と科学の間</h5> <p>ECRR2010によると、ICRPとの違いは、まず第一に、科学的方法論の違いです。ICRPは演繹的な手法を採用しております。演繹とは、<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/演繹">Wikipedia</a>にあるとおり、「一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る推論方法」のことです。つまり、ICRPは、一般的な原則として、Svで表された実効線量と、人体への被害が比例関係にあるという「普遍的前提」から、「内部被曝」における健康被害を機械的に導き出します。</p> <p>それに対して、ECRRは、ICRPの手法によって、あまりにも多くの被害者が切り捨てられてきていると批判しています。なぜなら、ICRPのモデルによる健康被害の予測と、実際の予測が大幅に異なるとき、「その健康被害は他の原因によるものである」という結論を自動的に導き出すからです。たとえば、チェルノブイリにおいても、前章でみた多様な健康被害について、「放射能恐怖症」によるストレスが原因であると主張するのです。しかしながら、この推測も、一瞬で論破することが可能です。なぜなら、チェルノブイリでは、人間以外の生命にも深刻な遺伝子異常が発生していますが、「放射能恐怖症」がハツカネズミや小麦など他の生命体に影響を及ぼすことは不可能だからです。</p> <p>しかしながら、ICRPは様々な内部被曝の事例について、端的に無視するという態度を取っています。じじつ、驚くべき事に、<a href="http://www.amazon.co.jp/国際放射線防護委員会の2007年勧告-ICRP-Publication-日本アイソトープ協会/dp/4890732020/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1384603552&sr=8-1&keywords=ICRP2007">ICRPの2007年勧告</a>を見る限り、チェルノブイリの事例に基づいて、自らの被曝モデルの妥当性を真剣に検討した節が、全くといってよいほど見られません。たとえ、現実にチェルノブイリでの健康被害がごく限られたものであったとしても、それは、おそらくはその時点で過去最大の放射能漏洩事故、とりわけ低線量領域あるいは内部被曝の膨大なサンプルであって、、事例を検討して、自らの「仮説」を実証すべき例のはずです。ICRPが演繹的であるというのは、すなわち、彼らにとって大切なのはモデル自体であって、現実の健康被害の予測と予防には役に立っていないということです。</p> <p>それに対して、ECRRが採用している手法は「帰納的」である、と彼ら自身は主張しています。帰納的とは、これも<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/帰納">Wikipedia</a>にあるとおり、「個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする推論方法」です。すなわち、たとえばチェルノブイリ原発事故のあと、現実にあまりにも多様な慢性疾患に苦しんでいる人間が多発しているという事実から出発し、その事実を説明可能なモデルを構築する、というのがECRRの基本的な態度です。</p> <p>別の見方をすると、ICRPは物理的で、ECRRは生物学的なアプローチであるという言い方もできるでしょう。ICRPは、物理的な単位である吸収線量によって、基本的には健康被害が直線的に発生するという、物理学的(というか即物的な)アプローチを。それに対して、ECRRは、生命については判明していないことが多いという前提に立った上で、放射性物質が人体や細胞内でどのようなメカニズムで働いているのかを、実際の膨大なデータに基づいて仮説をたて、検証していくスタイルを取っています。</p> <p>ECRRは、内部被曝に関して、ICRPの500倍から1000倍のリスクを主張するため、特に「極端」であると批判されます。しかし、ECRRによれば、主にγ線の外部被曝によるデータを、α線・β線も含む内部被曝に誤って適用しており、それゆえにICRPが内部被曝を極端に過小評価しているということになります。</p> <h5>健康被害は癌だけではない</h5> <p>被曝リスクについて、両者の科学的方法論の違いは、(ICRPでいうところの)低線量領域における被害範囲について、大きな違いとなって表われています。すでに述べたように、ICRPは、100mSv以下の領域では、癌とわずかな遺伝性疾患以外の影響を認めておりません。それに対して、ECRRにおいては、心臓病や出生率低下・その他すべての健康被害が考慮に入れられています。以下は、<a href="http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ecrr2010_chap6_9.pdf">ECRR2010の第7章</a>に掲載されている表です。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-E9_wkfGWJIo/UpB9S-nTZaI/AAAAAAAAAQs/Y4cuIannmbw/s1600-h/image8.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-XfA_26QBtcE/UpB9TrwovNI/AAAAAAAAAQ0/M0FUTeDu3Ys/image_thumb3.png?imgmax=800" width="487" height="256"></a></p> <p>実際、チェルノブイリその他において、癌は典型的な疾患ではなく、全身のありとあらゆる器官に慢性疾患が表われている事は、前章で詳しく見たとおりなので、ここでは繰り返しません。</p> <p>ここで強調したいことは、高線量被曝においてさえ、癌は決して典型的な被曝症状ではないということです。そのことは、とりわけ広島・長崎のデータについて、そのメカニズムは明らかではないと言いながらも、ICRPもしぶしぶ認めています(ICRP2007年勧告 付属書A)。にもかかわらず、ICRPによれば、なぜか癌以外の典型的な被曝症状は、100mSvまでで消えてしまうことになっています。しかし私が知る限り、ICRPに限らず、高線量では存在を認められている非癌影響が、低線量領域で完全に抑制されるそのメカニズムについて、充分に説明した人はおりません。それは、端的に「存在しない」ことになっているのです。</p> <p>これは私の個人的な考えですが―つまりデータに即していない可能性を現時点では否定しませんが―、癌以外の「確定的影響」と、癌の「確率的影響」という二分法自体が、相当に恣意的なものではないかと疑念を抱いています。ある一定の線量で確実に表われる被曝症状は、より低い線量では確率的に表われる、と考える方が自然ではないでしょうか。放射線被曝の確定的影響という考え方は、低線量領域における多様な健康被害を排除するために、でっちあげられた概念ではないかということです。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-SIKMGOHnUo0/UpORcFhN9tI/AAAAAAAAAdc/nA6HuTCvFSQ/s1600-h/image%25255B20%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-jkaHsG4m1zM/UpORcq5sTQI/AAAAAAAAAdk/8KgjqgThbFo/image_thumb%25255B9%25255D.png?imgmax=800" width="452" height="323"></a></p> <p> </p> <h5>再びチェルノブイリについて</h5> <p>100msv以下の線量では、発癌以外の影響は存在しない、したがって、そのほかの健康被害が実際に発生しても、それは放射能の影響ではない。そのICRPの循環論法がもっともひどい形で適用されたのが、チェルノブイリでした。</p> <p>チェルノブイリの被害者数について、もっとも健康被害を低く見積もったのは、日本政府ではないかと思います。2011年4月15日、政府官邸は「<a href="http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g3.html">チェルノブイリ事故との比較</a>」という文書を発表しました(執筆者は長崎大学名誉教授・長瀧重信 日本アイソトープ協会・佐々木康人)。そこでは、原発内で被曝した28名と、小児甲状腺癌で死亡した15名以外は、いかなる健康への影響も認められないとしています。</p> <p>ここで、文章を注意深く読むならば、一貫して<strong>「健康への影響が認められない」</strong>という言葉遣いをしており、「健康への影響がない」とは言っていないことに気がつくはずです。つまり、実際にチェルノブイリ以後、健康被害がなかったのではなく、健康被害が仮にあったとしても、それは「<strong>原発事故の影響とは私たちは認めない</strong>」と―巧みに主語を隠しながら―言っているのです。その論拠となっているのが、「事故後清掃作業に従事した方」24万人の被曝線量が平均(!)100mSvであること(ということは一定以上の人は100mSvを超えてるはずなんですけれど)、周辺住民はそれ以下であるということです。ここに、「放射能が安全である」と主張する「科学者」たちの「演繹的方法」の典型が見いだされます。</p> <p>ともあれ、ICRP的に言っても、それではさすがに過小評価がすぎます。100mSv以下の、発癌の確率的影響について、まったく記述していないからです。それについて、おそらくICRPの立場に最も忠実なのが、IAEAが主催した2005年の「チェルノブイリ・フォーラム」の発表であって、そこでは、清掃作業従事者(リグビダートル)2200人、高汚染地域居住者27万人のうち1600人の発癌による(将来的な)死亡者を認めています。</p> <p><a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/imanaka-2.pdf"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-QRF4YOMDcRA/UpB9UF7YbOI/AAAAAAAAAQ8/MSZYOVxRf_c/image13.png?imgmax=800" width="472" height="176"></a></p> <p>それに対して、ECRRのPredicting the global health consequnces of the Chernobyl accident Methodology of the European Committee on Radiation Risk’によれば、ECRRおよび土壌汚染に基づく手法(トンデル)に基づいて、癌だけで49万2000人から140万人、非癌リスクを考慮すると、さらに増えるだろうという結論でした。これは、ニューヨーク科学アカデミーによる’Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment’の98万人という値と、おおむね一致しています。もちろん、非癌リスクについては、ここには含まれていません。</p> <h5>統計の罠</h5> <p>今回の東電原発事故も含めて、なぜ放射能については安全側と危険側で、ここまで被害の見積りが非常に大きいのか。そこには、様々な要因がありますが、本節では、もう一つ、非常に見逃されている論点を提供したいと思います。</p> <p>チェルノブイリにおいて、現地の医師や支援団体など、あるいはウクライナなどの現地政府も然りですが、直接現場を見ている人間の論文・レポートは、放射能の被害を非常に大きく見積もる傾向があります。それに対して、ICRPやIAEAなど、国際原子力共同体の機関は、そうした現場の報告を、疫学的な厳密さに欠けるものとして排除する傾向にあります。(しかしその一方で、ICRPの2007年勧告が引用する報告書や論文の大部分は、ICRPなどの機関によるものか、その関係者の論文である事がECRRから批判されています)。それに対して、ECRRは、「ピア・レビュー審査付き学術誌に発表された研究の結果だけでなく、審査には廻されていない報告書類、書籍、そして論文が与えている結果についても併せて考慮に入れています。</p> <p>この、ICRPとECRRのアプローチの差によって、なぜ被害の見積りが大きく異なるのか。それは、そもそも「統計」の取り方に気をつけないと、被曝を過小評価してしまうからです。そもそも、被曝が原因であると思われる健康被害に対して、特定の病気の罹患率によって測ることが不適切です。</p> <p>なぜなら、人工の放射性物質の大部分は、もともと地球上に存在しない物質だからです。核爆弾の爆発や核施設の事故が発生するまで、それらを生命体が取り込んだことは、38億年の生命の歴史上、一度たりともなかったと言っても、決して過言ではないでしょう。そうした異物が人体に入ったとき、細胞や組織がどのように反応するか、その生命自身も含めて、誰も知らない、全く未知の領域なのです。したがって、放射性物質に対する生体の反応の多くが、既存の病名にまったく当てはまらないのは当然です。実際、広島・長崎の報告書、チェルノブイリのレポートなどを見ると、今まで見た事も聞いた事もないような、不可解な症状が多発している状況がわかります。たとえば、母乳を出す70歳の女性についての症例を、どうやって統計化すればよいのでしょうか。</p> <p>ところが、そうした多様な症状を、ある特定の、とりわけ既存の病名で統計化してしまうなら、その基準に当てはまらない不可解かつ診断不可能な症例は、すべて不可視のものとされてしまいます。それゆえ、現場を知らずに統計データを見せられた人間は、科学者も含め、必然的に被曝症状を過小評価することになる。ところが、現場にいた人間にとっては、その診断できない「不可解」な事例の数々こそが、放射能の影響である証拠だという確信を抱かせることになります。</p> <p>もちろん、ここで私は、全ての統計データを否定する意図がある訳ではありません。ただ、統計の取り方によって、被害を過小評価されてしまうということを、指摘したいのです。個々人の生にとって重要な事は、個々の病名ではなく、健康状態全体のクオリティではないでしょうか。そうすると被曝の実態を見積もるためには、病名ではなく、吐き気などの身体症状・自覚症状をベースとして、トータルの健康状態を測る統計手法を採用する必要があるでしょう。</p> <h5>放射線荷重係数を再考する</h5> <p>ここからは、帰納的にECRRが導き出した内部被曝のリスク、すなわちICRPの500倍~1000倍の大きさについて、説明しうるメカニズムを中心に説き明かしていきます。それは別の言い方をすれば、ICRPがどのようにして、内部被曝を極端に過小評価したのか、という話です。</p> <p>まず、被曝のメカニズムについておさらいします。α線・β線・γ線などは、「電離放射線」と呼ばれています。α線とβ線は、電荷を帯びているため、それが飛ぶ過程で周囲の原子から電子を引きはがす、すなわちイオン化します。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-F7ixafla9Os/UpB9UxcKylI/AAAAAAAAARA/DIrVmar91nw/s1600-h/image10.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-BzGYwnvZUOY/UpB9VbxacqI/AAAAAAAAARI/JHP5Yx9TAdI/image_thumb5.png?imgmax=800" width="361" height="279"></a></p> <p>(産業医科大学医学部「<a href="http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/hosyaeis/hibakuguide.pdf">放射線学入門</a>」より電離作用の図)</p> <p>矢ヶ崎克馬氏の「<a href="http://www.cadu-jp.org/data/yagasaki-file01.pdf">内部被曝の考察</a>」によると、α線は飛程が40μmで、その間に420万電子ボルトすべてを失うため、10万個の分子がイオン化され、結合していた原子同士が切断されます。ちなみに、β線の体内での飛程はCs137の場合で1.6mm程度、ECRR2010によれば、それが65000個の原子を電離します。そして、イオン化された原子から飛び出した電子が、さらに周辺の原子を電離する。その連鎖反応が発生します。</p> <p>電離作用によって、細胞は二種類の様式によって傷つきます。一つは、DNAなど、細胞を構成する主要な分子が直接破壊される場合。もう一つは、イオン化した分子(活性酸素など)によって、間接的に重要な分子が電離される場合。いずれにしても、単位面積あたりの電離作用の密度が高ければ、細胞に対するダメージは大きくなります。これは、DNAに関する直接のダメージの場合、非常に重要な論点です。というのは、DNAは二重らせん構造をもっていて、その一本の鎖が切断されても、正常に修復することができる。ところが、二重に切断されてしまった場合、修復は不可能となるため、異常な修復を行うか、細胞死に至るか、どちらかしかなくなるからです。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-r4l1eNA-08s/UpB9VxIZfSI/AAAAAAAAARU/tRicW3dNEUY/s1600-h/image6.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-xFlYeunamnw/UpB9WThfJKI/AAAAAAAAARY/siAn1PUSGbI/image_thumb3%25255B1%25255D.png?imgmax=800" width="476" height="328"></a></p> <p>また、ターゲットとなる分子がDNAでなくてもやはり、電離密度が高い方が危険である事は、矢ヶ崎氏がだした上の図からもわかります。電離密度が薄い場合、分子が切断されても、再度正しく再結合する可能性が高い。それに対して電離密度が高い場合、周囲にイオン化した分子が複数存在するため、誤って再結合をする可能性が非常に高くなります。</p> <p>ICRPも、細胞に対する電離密度の高さ(≒単位質量あたりの吸収線量)が生物学的影響に影響を及ぼす事を知っており、それがα線の放射線荷重係数20の根拠となっています。</p> <p>ここまでは、α線とβ線の話をしてきました。α線とβ線は、被曝の影響は体表でとどまるため、外部被曝ではほとんど問題になりませんが、内部被曝の場合では、体内の局所に集中的に被曝させることになるわけです。では、γ線ではどうなるのでしょうか?</p> <p>γ線が細胞に及ぼす作用も、同じく電離作用です。ところが、γ線は光子のため、電荷をもっておらず、飛程の周辺の分子を直接電離することはできません。γ線が原子と相互作用を行い、電離させるのは、三つの形態があります。</p> <p> </p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-18ecIQnCGLs/UpB9W64rTJI/AAAAAAAAARk/8SlyQCna9mY/s1600-h/image24.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-lY07LNct-wc/UpB9Xrql-1I/AAAAAAAAARs/QZ-Edog_jfs/image_thumb11.png?imgmax=800" width="157" height="149"></a><a href="http://lh6.ggpht.com/--fT6Y71VQS0/UpB9YKHBq3I/AAAAAAAAARw/BK-YzAm8xMg/s1600-h/image29.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-rUUCYRU9ObY/UpB9Yoq5oWI/AAAAAAAAAR4/qYQkww3yTqU/image_thumb13.png?imgmax=800" width="176" height="124"></a><a href="http://lh6.ggpht.com/-OTukbhbTd2E/UpB9Y1xOnlI/AAAAAAAAASA/0VOtHsIADF8/s1600-h/image35.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-Hd_62bMaueg/UpB9ZWHAyBI/AAAAAAAAASM/VE1CtancF-I/image_thumb16.png?imgmax=800" width="158" height="154"></a></p> <p>①光電効果 γ線が軌道電子と衝突して、そのエネルギーをすべて与える場合</p> <p>②コンプトン散乱 γ線が軌道電子とぶつかって散乱する場合</p> <p>③電子対生成 γ線が電界に入るときに電子と陽電子の対を生成する。</p> <p>さて、γ線の放射線荷重係数は、β線と同じ、1ということになっています。その根拠は、結局のところ、γ線が電子(すなわちβ線)を生成することによって電離させるため、両者を同一視してもよい、という考えのようです。しかし、γ線の被曝とβ線の被曝で電離密度が同じであるのは、光電効果が支配的な場合のみのはずです。その場合、光子はそのエネルギーを1個の電子にすべて与えるからです。</p> <p>ともあれ、放射線荷重係数の妥当性についてずっと調べていたのですが、おそらく正しい回答を出しているのが、さつきのブログ「科学と認識」の<a href="http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/39383296.html">「内部被曝について考える(その1の補足:コンプトン散乱について)」</a>です。さつきさんによれば、人体を構成する軽元素の場合、コンプトン散乱が支配的であって、光電効果は無視できる頻度でしか発生しないことを示しています。<a href="http://lh5.ggpht.com/-a1ZBxtwiUtQ/UpB9aE8AIGI/AAAAAAAAASU/TeH3RjzlUJc/s1600-h/image23.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-Yjzp73zUMlo/UpB9apmD8sI/AAAAAAAAASY/V9a3n5BpvnU/image_thumb10.png?imgmax=800" width="482" height="315"></a></p> <p>すなわち、「人体に進入した一つのγ線光子は、コンプトン散乱を繰り返しながらそのエネルギーを次第に減じ、やがて人体に吸収されてしまう」、これがγ線による被曝の様相なのです。ならば、非常に素朴に考えて、概ね人体内でのコンプトン散乱の平均回数分、γ線による電離密度はβ線のそれよりも低いということになるでしょう。言い換えれば、コンプトン散乱の回数が<strong>仮に</strong>平均4回だとするならば、γ線はβ線の4倍リスクが低い事になる。(実際には、β線はエネルギーが低いほど、電離密度が高くなるため、単純計算はできません)。しかし、実効線量は主に外部被曝、すなわちγ線を基準に構成されているため、γ線の放射線荷重係数が1とするならば、β線の放射線荷重係数は4、α線は80としなければならないことになる。</p> <p>また、さつきさんは、α線について、質量がもつエネルギーが換算に入れられていないことを問題視しておりますが、その点についても、私は同様の疑問をもっております。</p> <p>私は、ここで非常に粗雑な議論をしているため、正しい放射線荷重係数については、専門家による厳密な計算が必要となってくるでしょう。しかし、γ線の被曝についてコンプトン散乱が支配的である限り、現在の放射線荷重係数について、見直しが必要であることは確かだと思われます。</p> <h5>吸収線量の詐術</h5> <p>さて、おさらいになりますが、Svは、吸収線量に放射線荷重係数と臓器荷重係数をかけたものです。放射線荷重係数の問題点については、すでに述べました。臓器荷重係数も問題がある可能性がありますが、今回はおいておきます。しかし、ICRPが内部被曝を過小評価しているとすれば、その本丸は、Svの本質である「吸収線量」という概念そのものにある、そこは反対派の衆目が一致するところです。</p> <p>吸収線量とは、単位質量あたり物質が吸収するエネルギー量のことです。そのように定義すると、先ほど述べた、生物学的影響の強度を規定する電離密度と、非常に近い概念であるように思われます。事実、細胞一つあたりの吸収線量を考えるならば、それは電離密度と比例関係にあるはずです。</p> <p>しかし、ここに呆れるほど単純かつ狡猾な数字のトリックがあります。というのは、吸収線量Gyは、つねに<strong>1kgあたり</strong>の熱量であって、したがってGyを元に構成されているSvもまた、1kgあたりの単位だからです。</p> <p>1kgというのが、どれほどの単位なのか、少し考えてみましょう。人間の身体は60兆個の細胞で構成されています。人体を60kgとすると、1kgには1兆個の細胞が存在していることになります。外部被曝の場合には、組織あるいは人体全体を、γ線によって均質に被曝させるため、1kgあたりの熱量という巨視的な単位で測定することには、概ね問題はありません。その場合、電離作用も均質に分散しているため、個々の細胞が修復することも容易です。</p> <p>ところが、内部被曝の場合、α線なら数十μm、β線ならわずか1mm強の周辺を集中的に被曝させ、何万個もの分子を切断します。すなわち、電離密度が非常に高い細胞が、局所的に発生するのです。同じ電離エネルギーを外部から均質的に受けた場合と比較すると、α線による内部被曝では、局所的な電離エネルギー密度は、10億倍も異なるのです。(それゆえ矢ヶ崎さんは、内部被曝においては低線量という言葉を使用するのは不適切であると述べているそうです)。ところが、吸収線量J/kgを使用する限り、この10億倍の差、被曝の不均質性は、ほとんど存在しないものとなってしまうのです(放射線荷重係数20で補正できる差はわずかです)。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-hC_yWCNGjZM/UpB9bGynN4I/AAAAAAAAASk/2Z1hxvJiViY/s1600-h/image39.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-FFD6xanXOmo/UpB9cOk6pQI/AAAAAAAAASs/pzKK5WzH2p8/image_thumb18.png?imgmax=800" width="483" height="277"></a></p> <p>均質な外部被曝と、不均質な内部被曝を、1kgあたりという超巨視的な単位で平均化するというのが、どれぐらいの暴挙なのか、少し比喩で考えてみましょう。</p> <p>それは例えば、同じエネルギーを吸収するからと言って、石炭で暖を取るのと、その石炭を飲み込むのと、まったく同じ人体の影響である、と言うのに等しいでしょう。</p> <p>あるいは、同じ1kgの力を受けるのでも、薄い段ボール紙が身体全体の上に乗るのと、針で刺されるのと、同じ事であると言っているのに等しいのではないでしょうか。</p> <h5>ホットパーティクル</h5> <p>さて、ICRPの被曝モデルが、内部被曝において適用不可能なのは、さらに二つの理由があります。</p> <p>まず第一に、放射性物質の化学的性質、すなわち個々の核種が、細胞の中でどのように振る舞うのかをほとんど考慮していません。とりわけ、ECRR2010によると、ストロンチウムやウラン・プルトニウムなどはDNAと結合することが知られており、じっさいリン酸ストロンチウム共沈殿物は、遺伝子研究において溶液からDNA を除く方法の一つです。DNAと結合した放射性物質が崩壊し、α線やβ線を出したとき、それがどれほどDNAにダメージを与えるのか、想像するまでもないでしょう。しかし、ICRPのリスクモデルは、こうした放射性物質の細胞内での微視的な振る舞いについて、一切考慮に入れておりません。</p> <p>第二に、核爆発や原子力施設から放出された放射性物質は、集まって不溶性の微粒子を構成する事があります。大きさは1μm以下から数十μmまで様々ですが、その中に多数の放射性原子を含んでおり、それが呼吸・食物体内に入ると、大きさによっては肺や腸から吸収されて血液・リンパ液に乗って体内を循環し、親和性が高い組織に定着・停留します。そこで放射性物質は、局所的かつ継続的に、周辺の細胞を被曝させるのです。これを、ホットパーティクルと呼びます。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-jHMTedEV3C8/UpB9cjNfNFI/AAAAAAAAAS0/UGRRwLPcsu0/s1600-h/image%25255B4%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-AWNUaIaRuQQ/UpB9dR5jN6I/AAAAAAAAAS8/oOfCf_bqsio/image_thumb%25255B1%25255D.png?imgmax=800" width="457" height="291"></a></p> <p>上の写真は、ECRR2003の表紙を飾ったものですが、プルトニウムのホットパーティクルが肺の細胞を侵す様子です。ホットパーティクルの周辺の細胞は、局所的かつ慢性的にに高線量被曝をすることを考えると、確定的影響と呼ばれる癌以外の多様な急性症状が、局所的にホットパーティクルによる内部被曝で発生すると考えても、おかしくありません。</p> <p>そして、原子力安全派の科学者たちが一様に口をつぐんでいることですが、福島第一原発の事故の主たる放射性物質は、ホットパーティクルを構成していることが、実証されています。この点については、後で詳細に述べるとして、今はホットパーティクルの危険性について、理論的に見ていくことにしましょう。</p> <p>皆さんはおそらく、科学者たちが「人間は3600BqものK-40を抱えているのに、原発事故程度の被曝を心配する必要がない」と言っているのを聞いた事があると思います。しかし、たとえ同じ線量であってもK40という自然放射能による被曝は、ホットパーティクルによる被曝とは全く様相が異なり、危険度が桁違いに小さい。まず、カリウムというのが、細胞内液を構成している、人間にとって必須の元素であることはご存じだと思います。細胞内液ということは、全身のあらゆるところに、カリウムが存在しているということです。そして、K-40は、カリウム全体の0.0017%を構成しており、その中に均等に混じっている。したがってK-40のβ崩壊に伴う被曝もまた、全身で完璧にランダムで均質なはずです。言い換えれば、K-40による被曝は、γ線による外部被曝に準じるものとみなすことができる。ついでに指摘すれば、体内におけるカリウムの濃度はホメオスタシスを通じて一定に保たれるため、カリウムに富んだバナナをどか食いしても、体内にK40が蓄積されることはありません。</p> <p>ところが、そのような均質な被曝と、原発由来のホットパーティクルによる局所的な被曝とが、Svで換算してしまえば、kg単位(すなわち細胞一兆個あたり)の被曝へと平均化され、完全に同質のものとみなされる。そして、「同じシーベルトなら、自然放射線も人工放射線も同じ健康被害である」という言説が産み出される。さらにそこから、「自然放射線では健康被害がないのだから、現に発生している健康被害は、原発から放出された放射性物質が原因とは<strong>認められない</strong>」という「科学的言説」が産み出される。</p> <p>しかし、これが科学的に言って、どれほどおかしな話であるのか、また別の比喩で考えてみましょう。</p> <p>人口一千万人の都市で、全員が1人あたり1kgの力で、何か見えない超自然的な力によって、毎日殴られているとします。赤ちゃんはちょっと泣くかもしれませんが、たいていの人は「あれ、なんかモノが当ったかな?」ぐらいに思って、滞りなく生活しています。</p> <p>この都市で、人口1000万人の都市のうち1万人だけ、突然、見えない超自然的力によって、1000kgの力で殴られたとすればどうでしょうか?その大部分は、おそらく即死するのではないでしょうか。そして、ニュースで取り上げられ、恐るべき都市伝説が生まれ、場合によっては都市全体がパニックに陥るかもしれません。</p> <p>それでは、人口1000万人のうち、1万人が、100kgの力で1日10回、毎日殴られたとすればどうでしょうか?おそらく、ほとんどの人は死にませんが、一部の人は不可解な傷みから寝込んだり、あるいはストレスを抱えたりして、場合に寄っては寝込んだり、入院したり、社会機能を果たせなくなるのではないでしょうか。その社会的負担は、もしかしたら、全員即死するより大きいかもしれません。</p> <p>さて、1万人が100kgの力で殴られ続ける世界で、この超自然的な力が社会的な大問題になったとしましょう。そこで、突然、どこかから「超自然的力の科学」を名乗る国際機関がやってきて、その社会的ダメージを測るSD(Social Damage)とかって単位を提案します、その国際機関は、SDを、1000万人あたりの力の大きさ(kg)で定義します。そして、その機関の科学者は言うのです。</p> <p>「10000人が100kgで10回殴られた事例は、科学的に言えば、たったの10000000SDである。つまり、1人あたり1kgの力で殴られているのとまったく同じダメージであって、社会的影響力は事実上皆無である。それゆえ死んだ人は、超自然的力によるものではなく、超自然的力に対する恐怖症のストレスによって死んだのだ。」</p> <p>さて、この話を信じる人がいるでしょうか。少なくとも、被害者の家族にはいなさそうです。それどころか、人は、訳の分からない超自然的力について、訳のわからない詭弁で、問題はないと言い立てるおかしな国際機関との裏の関係について、疑いはじめるかもしれません。</p> <p>ICRPによるSvの定義は、上のSDとどのように違っていて、どのように同じなのでしょうか。どうして人は、ICRPについては信じてしまうのでしょうか。その答えは、私は今のところ持ち合わせておりません。</p> <p><strong>セカンド・イベント仮説</strong></p> <p>ECRR2010は、セカンド・イベント仮説というものを提唱しています。一般にはあまり知られていませんが、ホットパーティクルの危険性という観点から極めて重要であり、かつかなり説得力のある議論のように思われるため、紹介いたします。</p> <p>これまで、放射性物質の細胞への影響について、主に物理的な視点から語ってきましたが、実際には、<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/細胞周期">細胞周期</a>によっても、その放射線への感受性は大きく異なってきます。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-OHdKJ2WIsP8/UpB9d7PXExI/AAAAAAAAATA/qG6TCCL_aYU/s1600-h/image%25255B12%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-4FkpEEv7tgQ/UpB9eV7iwjI/AAAAAAAAATM/xjwu1QH8opQ/image_thumb%25255B5%25255D.png?imgmax=800" width="239" height="194"></a></p> <p> </p> <p>生きている有機体の細胞のほとんどは、G0と呼ばれる非複製モードにあります。そのとき、通常の生命活動のために、組織に貢献しており、臓器の成長や損傷・老化などのために必要であるという信号がない限り、複製を行う必要がありません。</p> <p>さて、細胞が非複製モードから動き出すための信号を受け取ると、DNA修復と複製の周期を開始します。すなわち、細胞の状態は、G0→G1→S→G2→Mという、10-15時間かかるシークエンスをたどります。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-SUPTX9wa1To/UpB9ew2nRDI/AAAAAAAAATQ/74wNSzkwKoc/s1600-h/image%25255B20%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-ChXsCvYnfJs/UpB9fjrABgI/AAAAAAAAATY/dWLxRgNnzo0/image_thumb%25255B8%25255D.png?imgmax=800" width="490" height="285"></a></p> <p>重要なことは、この細胞周期によって、放射線への感受性が大幅に異なるということです。G0状態にある細胞は、放射線に対する感受性が非常に低い。それに対して、複製シークエンスのいくつかの点においては、放射線に対する感受性は極めて高い。これは、DNAの構造を考えれば、容易に理解できます。DNAは通常、二重らせん構造のため、その一本が途切れても修復可能です。しかし、複製過程において、鎖が一本だけの場合、それは放射線二対して、格段に脆弱になるでしょう。実際、増殖する(癌)細胞と、しない細胞との感受性の差こそが、癌の放射線治療に使用されているわけです。</p> <p>さて、みなさんは、「DNAの傷は、二重らせん構造によって修復可能だから、多少の被曝は健康上問題がない」と科学者が解説しているのを、耳にした事があると思います。確かに、放射線によって傷つけられたDNAは修復可能です。しかしそれは、<strong>放射線がDNAに与えたダメージがトリガーとなって、DNA複製シークエンスが開始</strong>されるということを意味している。つまり、G0状態の細胞が放射線によってダメージを受けると、その細胞は、一時的に、放射線に対する感受性が高い状態に移行するのです。そのときに、細胞が二度目の被曝を受けるとどうなるのかが問題なのです。</p> <p>このような状況は、通常の外部被曝の場合は、ほとんど心配する必要はありません。なぜなら、それは全身に均質に被曝させるため、細胞レベルで見れば、二度目の被曝をする可能性は無視できるからです。もちろん、体内に均質に存在しているK-40の場合も、このセカンドイベントを受ける可能性は同様に低い。ところが、内部被曝の場合、セカンド・イベントが問題になる状況が二つあります。一つは、放射性物質の系列的な崩壊です。たとえば、DNAに結合したSr-90の崩壊に引き続き、半減期64時間のY-90が崩壊する場合、一定確率で、誘導された修復過程の細胞をヒットすることができます。</p> <p>もう一つは、ホットパーティクルです。α線核種のホットパーティクルでは一日に数百発、β線核種のホットパーティクルだと、一日に数十万発ものβ線を放出する。その場合、ダメージを直接受けた細胞が修復できないどころか、細胞死あるいは変性する可能性は、同じ線量の外部被曝と比較して、文字通り桁違いになるはずです。</p> <p>さらに、これは私の個人的な推測の域を出ませんが(間違ってたらごめんなさい)、局所的な被曝による細胞死は、組織レベルでの修復を必要とするため、おそらく周辺の細胞をも複製シークエンスへと導くはずです。その細胞に対して、さらなる被曝が発生した場合、何が起こるのでしょうか。</p> <p>ともあれ、セカンド・イベント仮説も含め、ホットパーティクルの生体内での振る舞いや細胞の応答は、充分に解明されていない領域です。しかし、それが外部被曝とはまったく異なる様相を呈していることだけは、確かでしょう。</p> <h5>ゲノム不安定性とバイスタンダー効果</h5> <p>従来、放射線による健康被害(すなわち発癌)は、DNAという(比較的小さな)ターゲットが傷つけられることによって発生する、と考えられてきました。それが、被曝の確率的影響というICRPの考え方を支持する土台となってきたのです。しかし、近年、α線などの放射線を直接細胞核あるいは細胞質に狙いうちする実験が可能になり、外部被曝の場合からの推測ではなく、内部被曝の状況を実験的に再現し、直接解析できるようになってきたのです。</p> <p>そこで発見されたのが、ゲノム不安定性とバイスタンダー効果という新たな現象でした。この二つが発見されたことによって、従来の被曝に関する理論、その大前提が覆されてきています。</p> <p>ゲノム不安定性とは、被曝した細胞およびその子孫が、かなりの時間が経過した後に、遺伝子異常が起こる現象です(ゲノムとは人間の全遺伝子情報のことを通常意味します)。重要なことは、細胞核にたいする直接の放射線のヒットだけではなく、細胞質をヒットした場合でも、ゲノム不安定性という現象が見いだせるということです。すなわち、α線・β線核種による内部被曝による放射線は、確実に飛程の周辺の細胞を傷つけ、将来的な細胞の変異を引き起こす可能性があるということを意味しています。</p> <p>さらに重要なのは、バイスタンダー効果です。コロンビア大学のHeiらのグループは、細胞に狙いを定めてα線を照射する実験を行いました(以下、放射線医学総合研究所「<a href="http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/kanhoubun/kanhoubun009/siryo8.pdf">マイクロビームによる放射線生物影響研究</a>」)</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-J1QZ70iEGg4/UpB9gB79V-I/AAAAAAAAATk/MTTl4408Ytw/s1600-h/image%25255B24%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-gBWXvqtJq8s/UpB9gwegSYI/AAAAAAAAATs/181ST9ewR6c/image_thumb%25255B10%25255D.png?imgmax=800" width="488" height="270"></a></p> <p>100%の細胞の細胞核にα線を当てたとき、ほとんどの細胞に遺伝子異常が見られました(下図右上)。10%の細胞の細胞核にα粒子を照射した場合(下の図の左下)、全体の半分の染色体に異常が見られたのです。そして、細胞間のコミュニケーションを薬剤を使って遮断した結果(右下)、有意に周囲の細胞の変異は抑制されました。このことは、なんらかの細胞間のコミュニケーションによって、直接被曝していない細胞にも、異常が発生することを示しています。これを、バイスタンダー効果と言います。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-LyuXSmn_-ug/UpB9hW7P_QI/AAAAAAAAATw/ftzD_nSIS2g/s1600-h/image%25255B28%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-Z6yMXpkidEo/UpB9h4hvq6I/AAAAAAAAAT8/Rk4KO71BcEE/image_thumb%25255B12%25255D.png?imgmax=800" width="465" height="404"></a></p> <p>さらに興味深いのは、細胞核ではなく細胞質にα粒子を照射した場合でも、ヒットした細胞および周囲の細胞に染色体異常が見られたということです。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-PrzcDNIPKT4/UpB9iTbOleI/AAAAAAAAAUA/b3h8-VTPNzE/s1600-h/image%25255B32%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-jvcwwwfTkMk/UpB9iybql_I/AAAAAAAAAUM/uqj3QQSxsYI/image_thumb%25255B14%25255D.png?imgmax=800" width="465" height="223"></a></p> <p> </p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-sBWl5hya6Xo/UpB9jpPPDWI/AAAAAAAAAUQ/z8XeJFW0WWY/s1600-h/image%25255B36%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-mxXqNwrOUlE/UpB9kL9i4jI/AAAAAAAAAUc/spHpTfU7QN8/image_thumb%25255B16%25255D.png?imgmax=800" width="468" height="186"></a></p> <p>バイスタンダー効果の発見がもたらしたインパクトについて、整理してみます。</p> <ol> <li>低線量被曝における(発癌のみの)確率的影響という、ICRPの大前提が覆された。すなわち、放射線が細胞核をヒットしなくても、ヒットされた細胞および周囲の細胞が、細胞死に至ったり、変性したりすることが明らかになった。言い換えれば、<strong>α線核種やβ線核種による内部被曝の場合、多かれ少なかれ、人体に確実にダメージを与える</strong>ことが確認された。 <li>被曝の影響が、未だ未解明の細胞間のシグナルを通じて、周囲の細胞に伝搬することが明らかになった。これは、<strong>被曝のメカニズム</strong>が、細胞同士が構成する「社会」とも深く関わり合う複雑な様相を示しており、<strong>ICRPが想定していない膨大な未解明の領域があることを示した</strong>。 <li>線量に応じて直線的に発癌率が上がるという、<strong>ICRPの直線しきい値なしモデルが、メカニズムによって否定された</strong>。なぜなら、線量が高くなるほど細胞死に至る可能性が高い訳ですが、細胞死の場合よりも、変性した場合の方が、バイスタンダー効果(すなわち周囲の細胞への影響)は高くなるから。 <li>バイスタンダー効果を考慮に入れた場合、局所的に多数の細胞を被曝させる<strong>ホットパーティクルの危険性</strong>が示唆された。実際、マウスの細胞を培養してクラスターを作り、トリチウムを照射した実験では、均一に照射した場合はバイスタンダー効果は確認出来なかったが、不均一に照射した場合(すなわちホットパーティクルによる被曝に近い状況では)バイスタンダー効果が確認出来た(<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547643/">Evidence for Pronounced Bystander Effects Caused by Nonuniform Distributions of Radioactivity using a Novel Three-Dimensional Tissue Culture Model</a>)</li></ol> <p>バイスタンダー効果とホットパーティクルの関係という最後の論点については、少しわかりにくいと思われるので、補足しておきます。先に言及した、原子力委員会委員長代理の松原純子は次のような主旨の発言をしていたそうです。</p> <p>「たとえ細胞レベルでこのような現象が起きても、個体の放射線に対する反応には、障害があっても必ずそれを修復する作用があるはずだ。発がんまでのプロセスにおいて働くさまざまな防御機構が現実には介在する」と(<a href="http://www.cnic.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=3">CNIC 連載・低線量放射線の影響をめぐって(その1)</a>)。</p> <p>ちなみに、ごく最近、生体レベルでも、バイスタンダー効果によるネガティブな影響があることは実証されていますが、(<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3685624/">Microbeam Irradiation of the C. elegans Nematode</a>)、それは置いておきましょう。松原純子が言うように、確かに、細胞間のコミュニケーションによって、遺伝子を安定化させる機構は存在するようです(<a href="http://www.ratical.org/radiation/CNR/GenomicInst.html">Gofman Confirmation that Ionizing Radiation Can Induce Genomic Instability:What is Genomic Instability, and Why Is It So Important?)。</a>つまり、正常な細胞同士のコミュニケーションによって、突然変異を起こした細胞が複製されないように抑制します。しかし、その近傍の全ての細胞が被曝して変異してしまったらどうでしょうか?そのような出来事にさえ、抑制するメカニズムが、生体には備わっているのでしょうか?</p> <p>私は残念ながら答えを知りませんが(どなたか知っていれば教えて下さい)、進化論的に推測するなら、おそらく答えは否でしょう。なぜなら、そもそも人間が原子力という禁断の火を使い始めるまでは、局所的に多数の細胞が被曝するような事態は地球上では存在しえず、したがって生命がその出来事に適応する必要がなかったからです。</p> <h5>人工放射性物質と自然放射性物質、その唯一かつ決定的な違い</h5> <p>話を元に戻しましょう。本章の最初で私は次のような意味のことを述べました。「科学的に言ってこのような健康被害はありえない」という安全派科学者たちの最大の論拠は、自然放射線と人工放射線の同一性であると。すなわち、自然の放射性物質から私たちはこれだけ被曝している、それにも関わらず健康被害は表われていない。だからこの健康被害は、人工放射性物質に由来するものではありえない、と。</p> <p>事実、つい先だっても(2013/11/19)、大阪大学の菊池誠氏がTwitterで<a href="https://twitter.com/kikumaco/status/402650879418839040">次のような発言</a>をしていました。</p> <blockquote> <p>@buvery @yard_1957 もうさ、放射性セシウムの挙動なんて放射性カリウムとほとんど同じなんだから、放射性カリウムで問題起きてないなら放射性セシウムでも起きないのよ。少なくとも、放射性カリウムより充分少ないうちは</p></blockquote> <p>本当に放射性セシウムと放射性カリウムの生体内での挙動が同じなら、生物学的半減期の100日と30日の違いはなんなんだ、と私は思うわけですが、それはおいておきましょう。確かに、それぞれの核種の細胞内での振る舞いの違いやエネルギーの強さを捨象するならば、一発ずつのα線やβ線には、人工放射性物質由来でも、自然放射線物質由来でも、なんの違いもありません。</p> <p>ただ人工放射性物質と自然放射性物質の唯一の違い、それは<strong>人工放射性物質のみがホットパーティクルを構成できる、</strong>ということです。逆に言えば、<strong>自然放射性物質はホットパーティクルを形成できない</strong>。これだけが、人工放射性物質と自然放射性物質の本質的な差異であり、かつ外部被曝や自然放射性物質では発生しない様々な健康被害を説明しうる唯一のポイントです。</p> <p>なぜ、自然放射性物質は、ホットパーティクルを形成できないのか。高校レベルの理科の知識があれば、簡単に推測できることです。なぜなら自然界において、同位体は、その元素全体の中に、一定の割合でもって均質に混じっているからです。もちろん、放射性同位体の場合は、崩壊によって低減していきますが、その逆のプロセス、放射性物質のみが固まって発生・存在する、ということは、ほぼ地球上ではありえません。</p> <p>もちろん、これは非常に簡単な推論でしかないのですが、なぜか見過ごされている論点のようです。ただ一人、全く同じ議論をしているのが、先ほど放射性荷重係数の件で紹介した「さつきのブログ:科学と認識」です。さつきさん(本職の物理学者のようです)が、「天然放射能と人工放射能は違う」という記事で、はるかに精緻に議論しているので紹介したいと思います。</p> <p>まず、天然に普通に存在する物質で質量あたりの放射能がもっとも高いのは閃ウラン鉱(UO2)だけれど、その直径1μm、比重10の閃ウラン鉱粒子の放射能を計算すると、8.26E-7 Bqという値になってしまって、とてもホットパーティクルとは呼べません。充分に放射能が高いほど大きな粒子になると、自己遮蔽効果(放射性粒子が内側から出す自分の放射線を遮ってしまう)が働き、かつ体内に吸収・定着されるほどには小さくなくなってしまうため、やはりホットパーティクルにはなりえない。</p> <p>また、放射能が高い物質ほど、存在比が小さく、さらに半減期も短いため、濃縮する時間もない。放射能と存在比の関係をプロットしたのが下のグラフですが(<a href="http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/40073575.html">天然放射能と人工放射能は違う(その3:まとめ)</a>)、存在比(縦軸)と放射能(横軸)の両方で、ホットパーティクルを形成しうるほど充分に高い数字を表しているのは、人工放射性物質のみです。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-hv7z3jZwBjU/UpB9k1cNYYI/AAAAAAAAAUk/vFxMux3UrC0/s1600-h/image%25255B40%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-dc0mRyFosVQ/UpB9lX5bGxI/AAAAAAAAAUs/TpWTjmvh6bc/image_thumb%25255B18%25255D.png?imgmax=800" width="477" height="436"></a></p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-k2x-0sQxDdY/UpB9mY_sYII/AAAAAAAAAU0/YzGfOIlwVeo/s1600-h/image%25255B8%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-hFJVPzZAuEc/UpB9m8bk63I/AAAAAAAAAU8/Oo21zc6j6eE/image_thumb%25255B3%25255D.png?imgmax=800" width="474" height="431"></a></p> <p>さつきさんは次のように語っていますが、私はこの言葉に100%同意します。</p> <blockquote> <p>天然の環境では、ホットパーティクルは生まれ得ない。この点が、天然放射能と人工放射能の決定的な違いであり、ホットパーティクルは、生命にとっては未知の物質と考えて良い。また、天然の放射能と人工の放射能のこれ以外の差異は、おそらく何もない。</p></blockquote> <h5>ICRP元科学幹事 ジャック・バランタインの証言</h5> <p>さて、本章で言い残したことはたくさんあります。とりわけ、ICRPについては、他にも臓器荷重係数に関する疑問だったり(心臓の臓器荷重係数について調べてみてください)、ICRPの元になる広島・長崎のデータに関する数々の疑惑だったり(非被爆者=参照群として黒い雨に打たれた爆心地周辺の人が選ばれた)、ほんとは100msvで発癌率1%だったはずの係数を適当に半分にしてみたりだとか、数え切れないぐらいの争点がありますが、すでに長すぎる本稿では割愛します。</p> <p>ただ本章では、「人工放射性物質は自然放射性物質は同じだから、(あるいは外部被曝と内部被曝は同じだから)、福島第一原発の事故で健康被害が発生するはずはない」という、耳にタコができるほど繰り返された自称「科学者」の言説を、実証データおよび理論の両方から、科学的に論駁することに注力してきました。その点からすると、ICRPの2007年勧告の編集長であり、ICRPの元科学幹事(事実上ICRPトップ)であるジャック・バランタインと、セカンド・イベント理論の提唱者でECRRの現科学幹事であるクリストファー・バズビー氏の2009年の対談は、非常に興味深いものがあります(<a href="http://www.euradcom.org/2009/lesvostranscript.htm">Transcript of converstions with ICRP</a>)。</p> <p>冒頭の対話はこんな感じです</p> <blockquote> <p><strong>バズビー</strong> 科学者として私たちは全ての情報を見なければならないのに、ICRPに反証したり、あなたがたのリスク水準が間違ってることを証明する沢山の論文を引用しなかった。なぜですか?</p> <p><strong>バランタイン </strong>その質問は、私をちょっと難しいポジションに置かせますね、もちろん、というのは、私はあなたに賛成しがちだからですが―私たちはあなた方に賛成してない限り、なぜ賛成しないのか、あなたがたの論文を引用すべきだった。<br>[中略]<br>もしあなたがICRPの科学幹事を捕まえて、そいつの背中にあるボタンを押したら、そいつは言うべきだと想定されてることを言うでしょう。でも私はもう引退したから言いたい事が言えるんです。</p></blockquote> <p>ここでバランタインは非常に興味深いことを言っています。ICRPの科学幹事とはどのようなことを言うべきだと想定されていて、そのボタンを押すのは誰なのでしょうか?これは、ICRPが単なる中立的な科学者の共同体ではないことを示唆しています。が、私はさしあたってその問題には興味がないので、バランタインが「ICRPの科学幹事として言っちゃいけなかったこと」について確認しましょう。</p> <blockquote> <p><strong>バズビー</strong> [チェルノブイリ後の小児白血病のケースについて]5カ国の5グループが別のジャーナルに出した論文で、マイクロシーベルトレベルの被曝線量と計算結果されるのに、統計的に有意な結果[小児白血病の増加]が見られた。それをあなたはどうやって説明しますか?</p> <p><strong>バランタイン </strong>私は説明できません。でも、あなた方が十分な説明ができてるとも思っていません。正直に言って、あなたが正しいって事を、私に説得できるとも思ってません。テクニカルな議論があるんです。レポートをお互いに送って少しずつ、包括的に事を進めるべきでしょう。ICRPとECRRが議論を続けるのが賢いやり方ってものじゃないでしょうか。</p></blockquote> <p>この発言は、バランタインの立場を端的に表明しています。ECRRには納得していない、しかし、ICRPによってはチェルノブイリの結果を説明できない、と。バズビーは、ここで単刀直入に質問します。</p> <blockquote> <p><strong>バズビー</strong> あなたに訊くように頼まれた質問があります。「各国政府によって使用されているICRPモデルは、発癌率の観点から、原発事故の結果を予測するために使えると思いますか?」</p> <p><strong>バランタイン </strong>基本的には「ノー」です。なぜなら、1桁の大きさの不確実性があるからです。あなたは二桁と言ってますが、もし一桁だとしても、予測には役に立たないでしょう。</p> <p>[中略 バランタインは、ECRRは実行するにはあまりにもお金がかかりすぎるから認められないという主旨の発言]</p> <p><strong>バズビー</strong> 私たちは不確実性について話してるんじゃなくて、内部被曝の場合に吸収線量を使用することの不可能性について話してるんですが。</p> <p><strong>バランタイン</strong> ICRPの立場は、大きな不確実性があるにも関わらず、それを使用できるというものです。</p> <p><strong>バズビー</strong> どれぐらいの大きさですか?</p> <p><strong>バランタイン</strong> 二桁は非常に大きな不確実性と言えるでしょう。</p> <p><strong>バズビー</strong> では、ある内部被曝においては、二桁の間違いがありうる―そう私たちは同意したということですね?</p> <p><strong>バランタイン</strong> (笑)あなたが家に帰って「ジャックが私に同意してくれた!」って言うのは嫌ですけどね。</p> <p><strong>バズビー</strong> でも答えが欲しいんです。</p> <p><strong>バランタイン</strong> じゃあ答えは、「私はあなたに同意しない」ってことになりますね(笑)。</p></blockquote> <p>この対談を受けて、ECRR2010では「バランタインが、内部被曝について2桁の不確実性を認めた」という主旨の事を書いてますが、バランタインはきっと嫌な顔をしていることでしょう。しかし、東電原発事故で健康被害が発生しえないという論拠にICRPを出す日本の科学者たちに対しても、彼は同じぐらい苦々しい思いをしているかもしれません(笑)。</p> <p>ともあれ、内部被曝にICRPモデルは事実上適用できない、ということが、何らかの理由によって「ICRP幹事としては言ってはいけなかったこと」であるというのは、確実なことでしょう。その理由については、読者のみなさんがそれぞれ考えていただければと思います。</p> <h5>福島第一原発由来のセシウム・ホットパーティクルが発見された</h5> <p>ここまで、本章では主にホットパーティクルの危険性について議論してきました。もう一度まとめると、</p> <ol> <li>放射性微粒子による内部被曝で問題になるα線とβ線について、ICRPは放射線荷重係数において過小見積もりしている可能性が高い。 <li>ホットパーティクルによる細胞群の局所的な被曝は、1kgという巨視的な単位で平均化された吸収線量で測ることができない。 <li>ホットパーティクルによる局所的な細胞群の高線量被曝は、発癌以外のあらゆる急性被曝症状を引き起こす可能性がある。 <li>ホットパーティクルによる局所的な被曝は、電離密度の高さによって、DNAの二重鎖切断など、細胞に対する重大なダメージをもたらす可能性が高い。 <li>ホットパーティクルによる細胞の継続的な被曝は、被曝によって細胞が複製モードに入るため、放射線に対する細胞の感受性を高める(セカンド・イベント理論)。 <li>バイスタンダー効果およびゲノム不安定性は、ホットパーティクルによって集中的に被曝した細胞群の危険性を高める可能性が高い。 <li>人工放射性物質のみが、ホットパーティクルを形成できる。</li></ol> <p>もし、上の議論が大筋において正しいのだとすれば、東京電力原発事故の健康被害を推測するためには、ホットパーティクルこそが最も重要なファクターになるはずです。すなわち、そもそも福島第一原発からホットパーティクルが放出されたのか否か、そしてもし放出されたのだとすれば、それはどの程度の量で、どこに降りそそぎどのような科学的・物質科学的性質を持っているのか、そうした諸々のことが大切になってくるはずです。</p> <p>この論点について、「放射能が安全である」と主張する論者の大部分は、どうやら非常に楽観的な見通しを立てていたようです。おそらくその理由は、福島第一原発からはプルトニウムやウランなどの重元素はほとんど放出されず、主に放射性降下物はI-131とCs-134、Cs-137などが主体となっていたからです。元素で言えば、とりわけ今回の事故で(少なくとも土壌汚染で)中心になるのが、半減期30年のCs-137であるということは、確実です。そして、セシウムは一般に水に対して可溶性があるため、ホットパーティクルを形成するとは考えにくいとの発想のようです。</p> <p>ここで、もはや「科学者」たちをあげつらうのは、ちょっとだけ良心が引けるのですが(嘘です、実はぜんぜん引けていません(笑))、セシウムの塊とカリウムの違いについて指摘した、科学コミュニケーション論が専門の林衛氏に対して、「セシウム・ホットパーティクル」説を珍説としてTwitterで嘲笑していたのが、理論物理学者の野尻美保子氏たちでした(Togetter <a href="http://togetter.com/li/320472">珍説出現、「セシウムホットパーティクル説」って?</a>)。</p> <p>セシウムがどのような分子で放出されたかわからないのに、ホットパーティクルの可能性を頭から否定するのは科学的な態度とは言えないと思いますが、そのような論駁は多少後出しじゃんけんてきなところがあって、セシウムがホットパーティクルを構成しうるという考えが一般的なものではなかったことは確かなようです。実際、ECRR2010でも、セシウムの危険性はさほど強調されていません。</p> <p>しかし、かのNatureのオープンアクセス電子ジャーナルである”Scientific Reports”に、2013年8月30日に、<a href="http://www.nature.com/srep/2013/130830/srep02554/full/srep02554.html">’Emission of spehrical cesium-bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident’</a>というタイトルの、衝撃的な論文が掲載されました。著者はつくばの気象庁気象研究所のKouji Adachi他。内容を端的に説明すれば、福島第一原発からの放射性降下物の主たるものは、セシウム・ホットパーティクルだったというものです。</p> <p>関東には、3月14-15日と、20-21日にかけて、2回「死の灰」が降りそそぎました。しかし、それらの放射性降下物について、その化学的・物理的性質は明らかではなかった、と著者たちは言います。彼らは、つくばの気象庁気象研究所において、主に1回目のフォールアウトについて、その粒子の形・大きさ・構成・溶性を初めて明らかにしたのです。</p> <p>空気1m3あたり4100万個という微粒子のうち10個が放射性微粒子ということが明らかになったのですが、そのうち3個の放射性微粒子を特定し、観察しました(想像するだに途方もない仕事ですね)。そうして見つけた放射性微粒子の一つが、下の電子顕微鏡写真です。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-5r1f2CVbi4c/UpB9nagevII/AAAAAAAAAVA/Ne_OQ-48aq8/s1600-h/image%25255B44%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-AAoC7aF_D0w/UpB9n8xRxcI/AAAAAAAAAVM/lt3Gfa6-5F0/image_thumb%25255B20%25255D.png?imgmax=800" width="486" height="205"></a></p> <p>大きさは2.6μmの綺麗な球状。エネルギー分散型X線スペクトロメータで分析すると、セシウムの明確なピークが見られます。セシウムの他にも鉄・亜鉛・マンガン・酸素によって構成され、それらが均等に混じりあった合金であることがわかっています。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-P_ClPGKck1M/UpB9omG_UzI/AAAAAAAAAVQ/ljOP7ijz7n4/s1600-h/image%25255B48%25255D.png"><img title="image" style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; background-image: none; border-bottom-width: 0px; padding-top: 0px; padding-left: 0px; display: inline; padding-right: 0px; border-top-width: 0px" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-E26WllnlHFQ/UpB9pDYfr2I/AAAAAAAAAVc/AHmtVqN8bi4/image_thumb%25255B22%25255D.png?imgmax=800" width="451" height="412"></a></p> <p>この放射性微粒子は、Cs-137が3.27±0.04Bq,Cs-134が3.31±0.06Bq,合計で約6.5Bqあります(たった1個のパーティクルがです!)。そして、水に晒したところ何の形態の変化も見られなかったことから、不溶性であることが確認できました。観察した残の二つの放射性微粒子は、おおむね2μm,放射能は低かったものの(合計約1.4Bq)、含有されている元素は非常に近く、こちらのほうが平均的なものであると著者たちは考えています。</p> <p>また、20-21日のパーティクルは、上述のものとはまったく異なり、硫酸塩を主とした易溶性のものからなるようです。(この結果をもって、20-21日の放射性降下物と、15の放射性降下物が、同時に放出された可能性は消えました。つまり、その直前に原発で大事故が発生していたことまでははっきりしています。それに対する私の説は、「<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2011/06/20113203.html">2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発</a>」を御覧下さい。この説については、専門家の多くが支持してくださったようです)。</p> <p>ともあれ、この論文は、著者が結論で言うように、著しく重要なものです。一つには、これが原発事故で何が起こったのかを解き明かす鍵になるということ。とりわけ、鉄まで合金になっているということは、3000℃近い温度で、燃料棒が気化したことを示しているように思われます。もうひとつは、健康被害について、放射性微粒子の大きさおよび不溶性という性質に基づいて、考察されなければならないということ。</p> <p>大きさ2.6μmの微粒子といえば、肺の血管から全身をめぐることができる、ぎりぎりの大きさです。そして、その1個の微粒子が、6.5Bqもの放射能を持っていて、かつ溶解しない。これは、文字どおりの意味において、ホットパーティクルといえます。この論文のイントロダクションおよび結論で著者が示唆していること、それは、東電原発事故の健康被害を、ホットパーティクルという観点から予測・考察しなおす必要がある、ということでしょう。</p> <p>私は、本章で主に、ホットパーティクルが生体にとっていかに危険であるか、そのメカニズムを説いてきました。その考察が仮に正しいのだとすれば、今回の発見は、私たちの現在と未来について、非常に暗い想像を迫ります。</p> <p>どうでもいい話かもしれませんが、私がいら立っているのは、これまで散々放射能の安全性を説いてきた研究者たちが、私が知る限り、誰一人としてこの論文に全く触れようとしないことです。セシウム・ホットパーティクル説を嘲笑さえしていた彼らが、自分たちの誤りを訂正しないどころか、都合が悪い情報については、たとえNatureに掲載された論文であっても、存在しないことにしてしまう。それどころか、未だに「セシウムとカリウムは一緒だ」とまで言っている研究者までいる。この論文の存在を知ってて言っているのなら、倫理的に科学者として失格ですし、知らないのだとしたら、科学者として怠慢でしょう。「放射能の安全性」を説いている科学者は、この程度の人たちであって、そういう人に生命を預けられるのか―それが、東電原発事故以降、一貫して私たち一般市民が問われているのではないでしょうか。</p> <p>・・・と腹を立てても仕方がないですが、本職の科学者さんたちがやってくれないので、まったく素人の私が、今回の明らかになったホットパーティクルによる内部被曝の様相を大雑把にフェルミ推計的に計算してみることにします。</p> <p>今回発見されたホットパーティクルの大きい方(6.5Bqのもの)が1個、体内のどこかの1か所に24時間停滞したと過程します。Cs-137によるβ線の体内での飛程は概ね1.6mmです。つまり、ホットパーティクルを中心として、半径1.6mmの球が、被曝の「ホットスポット」となる訳です。</p> <p>その中に何個細胞があるか。さて、人体には60兆個の細胞があると言われています。体重が60kgとするならば、1kgの組織の中に1兆個の細胞です。人体はほとんど水と比重が一緒なので、10cm四方の立方体の中に1兆個だと考えて差し支えない。とすれば、1mm四方の立方体の中には、100万個の細胞があることになります。</p> <p>球の体積を求める公式は、4/3πr<sup>3</sup>なので、1.6mmの球の体積は、</p> <p>1.6×1.6×1.6÷3×4×3.14=17.15(mm<sup>3</sup>)</p> <p>つまり、1.6mmの球の中には、1715万個の細胞が含まれている。これが一個のセシウムホットパーティクルによって被曝する細胞の数ということになります。</p> <p>では、一個のホットパーティクルは、一日にどれぐらいの放射線を出すのでしょうか。とりあえず、ここではβ線だけ考えることにしますが、Bqとは一秒間に出す放射線の数なので、6.5Bqの放射線の場合、</p> <p>6.5×60(秒)×60(分)×24=561600(本)</p> <p>これがたった一つのセシウムホットパーティクルが、1日で放出する放射線です。仮に細胞の平均の大きさが10μmだとすると、ものすごくおおざっぱに言って、1.6mmのβ線の射程は、160個の細胞を被曝させる(ECRR2010によれば、その間、65000個の原子を電離するわけです)。電離した電子はさらに他の原子を電離させるため、間接的に被曝する細胞はもっと多くなるでしょうが、それはよくわからないのでおいておきます。ともあれ、6.5Bqのセシウムホットパーティクルが一日で被曝させる細胞の数は、のべ</p> <p>561600×160=8985万6000個。</p> <p>それが半径1.6mmの1715万個の細胞にヒットするため、</p> <p>8985万6000÷1715万=5.2</p> <p>すなわち、一日に、1715万個のすべての細胞が、一日に平均5.2回放射線を浴びることになります。セシウムの生物学的半減期は100日と言われているので(しかし、化学的組成の異なるホットパーティクルの生物学的半減期は、おそらくずいぶん異なってくるでしょう)、100日間で、おおむねのべ100億個の細胞を被曝させることになる。</p> <p>これが人体にとってどういうことを意味しているのか、被曝のメカニズムについて本章で提示した理論を適用すれば、おおむね想像がつきます。放射線の一回目の細胞のヒットがひきがねとなって、10-15時間の修復モードに入った細胞が、放射線に脆弱な修復中に2回も3回もダメージを受け、細胞死に至るか、変性してしまう。周囲の細胞もすべて被曝するため、バイスタンダー効果がお互いに増幅しあう。そして、そのバイスタンダー効果は周囲の細胞にも伝わる。そして、これらの細胞集団は、全体としてゲノム不安定状態になる・・・。</p> <p>これらの細胞が、全体として細胞死に至るのか、変性するのか、変性するとしてどのような影響を生体にもたらすのか、それは私にはわかりません。いずれにしても、これは1kgあたりに平均化された吸収線量、すなわち1兆個のうち8985万個の細胞がランダムに被曝するという仕方によっては、決して評価できないダメージを生体が被ることだけは、確かでしょう。なぜなら、ランダムな被曝なら生体は難なく修復できますが、今みたようなホットパーティクルによる被曝の場合、DNAの二重らせん構造や細胞周期・ゲノム安定性といった修復機構そのものが破綻したり、脆弱性が狙われたりするからです。</p> <p>再度強調いたしますが、今のおおざっぱな計算は、たった一個のセシウムホットパーティクルが、人体に引き起こすことなのです。事故当時東京にいた人は、そうしたセシウムホットパーティクルを、何十個も、おそらくは何百個も体内に取り入れてしまった。そして、そのパーティクルは、未だにそのあたりの土壌に存在し、土埃の中に紛れ込んでいる。それをおそらく毎日何個も吸引している。残念ながら、それが現実なのです。ホットパーティクル、人類が創り出した恐るべき物質、それが私たちの身体に今すでに何をもたらしているのでしょうか。それデータ編では、膨大なデータをもとにお見せしたいと思います。</p> <h3></h3><a href="http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/" rel="license"><img style="border-left-width: 0px; border-right-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-top-width: 0px" alt="クリエイティブ・コモンズ・ライセンス" src="http://i.creativecommons.org/l/by-nc/4.0/88x31.png"></a><br><span href="http://purl.org/dc/dcmitype/Text" rel="dct:type" property="dct:title" xmlns:dct="http://purl.org/dc/terms/">東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌</span> by <a href="http://ishtarist.blogspot.jp/2013/10/google.html" rel="cc:attributionURL" property="cc:attributionName" xmlns:cc="http://creativecommons.org/ns#">Naoki Okada</a> is licensed under a <a href="http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/" rel="license">Creative Commons 表示 - 非営利 4.0 国際 License</a>. ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com14tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-66567515793068835222012-10-09T00:12:00.001+09:002012-10-14T22:33:53.012+09:00人生における選択の方法論 その1<h3>人生の選択、その一般的な方法論</h3> <p>ありふれた言い方ですが、人生とは選択の連続です。どの就職先に就職すべきか、交際を申し込まれたけどどうしようか、学校はどこにするのか。そんないわば人生の岐路だけではなく、日常生活とは小さな小さな選択の集合です。あなたも毎日、色々悩んでいることだと思います。どの店でお昼ご飯を食べるか、喉が渇いたけど自販機でジュースを買おうかしら、気に入ったコートを見つけたけど高いな、上司に飲みに誘われたけどほんとは帰ってサッカー見たいな、運動したいけどめんどくさいなどうしようか―などなど。そうやってちょっと悩んだり、とりあえず流されてみたり、そして後悔したり。</p> <p>悩むのも重要なことだし、悩んだり考えたりすることを楽しめるということは、大切な能力です。ただし、同じ悩むにしても、思いあぐねて時間だけがひたすら過ぎていくのか、それとも筋道を立てて思考して決定ができるのかは、大きな違いだと思いませんか?結局のところ、もう一方の選択肢をたどりようがない以上、どんな選択をするにしても、その判断が正しかったのかはわかりません。ですが、ぐじぐじ考えて、決定したあとも後悔するというのは、時間と感情の無駄なのは確かです。</p> <p>私は、ここで「選択のための一つの方法論」を提案してみたいと思います。これは、人生に関する事実から積み重ねた、誰もが体感できる、ごくごく当たり前のことです。そして、みんな自覚していなくても、多かれ少なかれ人はある程度実践しているものなのでしょう。そういう意味で、決して目新しさはないです。だけど、人が本当に迷ってるときは、その基本的なことが見失われてしまう、そういうものだと思います。迷い込んだ時は、まず基本に立ち返ることで、思考が整理されていきます。それを一緒に確認していきましょう。</p> <h3>ライフコンサルティングの原則</h3> <h3></h3> <p>私が提案する方法論が役に立つのは、自分にとってというよりは、むしろ人生の選択について、誰かに相談を受けたときかもしれません。人は、知らず知らずのうちに、自分の価値観を相手に押しつけたり、相手の状況を知ろうとせずに、本人にとっては無理がある選択をさせようとしたりしてしまいます。</p> <p>たとえば、なかなか就職しようとしない子供に対して、「なんで働かないの」と怒る親のことを考えてみてください。でも、働かないには、その人なりの理由があるんです。もしかしたら、本人に自覚がなくても、何らかの潜在的な病気を抱えていて、体調的に無理があるのかもしれません。あるいは、最近の若年層の労働環境の悪化を踏まえて、「そんなところで奴隷になるのは嫌だ」と思ってるのかもしれません。そういう身体的・環境的な状況を無視して、無理に働かせると、最終的には身体も精神も壊れてしまう可能性が高くなります。その闘病生活は、最終的に、より高くつくことになるでしょう。そんな悲劇が、この国には、おそらく数十万件以上、おそらくは数百万件起っています。</p> <p>誰かにとって有意義なアドバイスをしようとするなら、「相手が生きている」という事実を踏まえる必要があります。その事実の中には、「相手が少しずつしか変わっていかない」ということと、「最終的に判断するのは相手である」ということが含まれています。謙虚な気持ちで、相手を知り、その意志に寄り添っていくことが、実践的にはもっとも大切なことです。そのために、これから提示する方法論は役に立つでしょう。</p> <h3>戦略的生活方法論の概略</h3> <p>人生選択の方法論を具体的に説明する前に、概略を出しておきます。</p> <ol> <li>死を見つめることで、自分にとっての「人生の意味」(理念)を明らかにする。 <li>理念を具体的な目標に落とし込む。 <li>現在の自分の状況を、生において不可欠な7つのパラメータに分け、点数化する。<br>パラメータ=身体的健康、精神的健康、生活環境、経済、人間関係、知性、時間 <li>各パラメータの相関関係を分析し、ボトルネックになっている箇所を見極める。 <li>2の具体的な目標を実現するために必要な各パラメータを、できるかぎり明確にする。点数と、さらに具体的な内容まで明示する。 <li>各選択肢について、それが各パラメータをそれぞれ変えるのか、さらに次のステップでそのパラメータが他のパラメータにどういう影響を与えるのか、想像する。それが、2に繋がる道ならその選択肢は適切であると判断できる。</li></ol> <h3>「人生の意味」について</h3> <p>いきなり本題に入りますが、「人生の意味」とはなんでしょうか?お金を蓄えること、地位を確立すること、家族の愛情にくるまれて生活すること・・・何が人生の意味なのかは、結局のところ人それぞれ異なるでしょう。もう一度言いますが、大切なことは、自分の一番大切な価値観と、他の人の価値観が違うということを、自覚することです。自分の人生はそれぞれにとって唯一絶対のものなので、どの価値観が一般的により優れているかを考えることには、まったく意味がありません。自分の価値観を尊重しようとしない人のアドバイスを無理に聞くことはないし、相手の価値観を尊重しないで、求められてもいないのにアドバイスをすれば、その人の信頼を決定的に失うことになります。</p> <p>でも、多くの人間は普段生活に追われていて、何が一番大切なのか、それを自覚する機会はあまりないものでしょう。では、自分にとって「人生の意味」とは何か、どうすれば自覚できるでしょうか。それは、おそらく「死を先取する」ことによってです。</p> <p>ありがちなストーリーですが、ある青年が画家に本当になりたくて美大を目指していたのに、将来を心配した親に無理に諦めさせられ、家業の開業医を継がされたとします。確かに、親は満足し、お金持ちになって安定した人生を歩みます。でも、最後の最後、死ぬ瞬間になって、彼はたった一回きりのその人生を、自分の思い通りに生きられなくて、満足できるのでしょうか?もし満足できるんだったら、その選択は、結果として正解だったと言えるでしょう。逆に、どんなに地位や金銭に恵まれていても、なにも創り出さない生を空虚だと感じて死ぬなら、その人の人生は全体として、やはり失敗だったのだと言えるかもしれません。</p> <p>結局、人生に意味があるかどうかは、その人が死ぬときに後悔しなかったかどうか、その一点に集約されます。あなたは、いつか必ず死にます。例外はありません。その逃れようのない事実を直視したとき、「こういう生を全うして死ねたら本望だな」と心の底から思えるもの、それが、あなたにとっての「人生の意味」なのです。</p> <p>人が「自分の人生の意味」と思うものは、まったく人それぞれでしょう。でも、大きく類別すると、三つに分けられるはずです。</p> <ol> <li>内在的意味<br>人生とは生まれてから死ぬまでのすべての経験の集合体ですが、その経験の内容に意味を求めることです。たとえば、経済的に充実している、美味しいものを沢山食べる、多くの信頼できる友人に恵まれる。などなど。 <li>外在的意味<br>外在的意味とは、人生に対する他人からの評価のことです。どのような地位を築くこと、一大財産を築いて大富豪として名声を博すこと、大学教授になること、ノーベル賞を取ること、などなど。 <li>超越的意味<br>自分の死を超えて、他者や社会に対して、どのように貢献できるか。たとえば、第三世界の飢餓をなくしたい、愛する人を幸せにしたい、共産主義革命を起こしたい、などなど。</li></ol> <p>人の願いは一つではないですし、たぶん、その三つの要素が混じってるのが普通です。そして、いろんな思いが沢山沸いてくると思います。でも、死の瞬間を思い浮かべて、自分にとって何が満たされた生なのか、それを想像してみてください。それを習慣化しておくと、いつかきっと「自分にとって一番大切なことは何か」が見つかると思います。それは、おそらく強烈なパッションのようなもので、それがあなたの生の一番根底にある感情です。企業で言えば、それは「理念」に相当します。そのとき、あなたは本当の、誰も知らなかった自分に出会い、他人には歩むことができない、自分だけの人生を歩み始めるのです。</p> <p>でも、生きる意味なんてそんな簡単に見つからない?そうでしょうね。確かに、それを見つけること自体、とても大変な作業で、それができれば人生の3分の1はすでに成功したようなものですから。では、混迷の中に迷い込み、自分の生の根本を織りなす「意味」がどうしても見あたらないとき、どうすればよいのでしょうか?これから私が提示する方法論は全く役に立たないのでしょうか?いえいえ、そんなことはありません。その場合のことも、また後ほどご説明します。</p> <h3>理念を具体的目標へ落とし込む</h3> <p>さて、あなたにとって人生の意味が明確になったとしましょう。でも、それはあくまで一つの情熱や感情であって、具体的に到達すべき目標ではありません。そこで、その感情を思い、具体的にイメージしてみましょう。できれば、紙やノートに、文字や絵などで具体的に書いてみると良いかもしれません。そうすることで、それまで漠然としていたイメージが、一つのヴィジョンとして血肉になります。人生に一つの芯が通り始める瞬間です。</p> <p>ところで、どうやって具体的な目標を思いえがけばよいのか、それはもう、人それぞれです。内在的意味だと、比較的わかりやすいでしょう。たとえば、豊かな生活を送りたいということが理念なら、「豊かになって何がしたいのか」を想像すれば済みます。たとえば、ブレゲの時計を身につけたい、バーがある家に住みたい、年に数回は世界中を回って美味しいものを食べ歩きたい、など次々とイメージがふくらんでくるでしょう。もし膨らんでこなければ、自分が興味がありそうな分野の情報に接していけば、欲しいものが見つかるでしょう。</p> <p>外在的意味に関しては、他人の評価に関してはどうしようもない部分もあります。自分に対する他人の評価を、自分がコントロールすることはできませんから。ならば、その目標を達成するために、自分ができる事、自分にはどうしようもないこと、それを明らかにしましょう。どんなに素晴らしい小説を書いても、ノーベル文学賞を取れるかどうかは、審査員次第です。ならば、ノーベル賞を取ってもおかしくないぐらいの水準の小説を書くこと、そこに集中する必要があります。</p> <p>超越的意味、これが実は一番困難であり、それだけに知恵の絞りどころです。誰か具体的な人を幸せにしたい、というなら、まだ割となすべきことは見えやすいかもしれません。ですが、大志を抱いた人は、ここで大きな壁にぶつかることになります。第三世界の女性差別をなくしたい、そう心から願う人は、具体的に何をすれば良いのでしょうか。資産がたくさんあって、それを寄付をする、それで十分だと思えるなら、それでも良いかもしれません。ですが、より大きく何かを変えようと願うならば、「現実の壁」にぶち当たることになるでしょう。</p> <p>もちろん、私は「現実の壁」があるから、人生における超越的意味など捨ててしまう方が良い、とお説教したいわけではありません。ただ、その壁を乗り越えるための具体的で現実的な戦略を思い描くためには、それだけの知性が必要になる。それだけです。さらに、それを現実的に実現するためには、エネルギーとリソースが必要になるでしょう。そこも含めて、どれぐらいあらかじめ算定できるのか、その能力が求められるわけです。</p> <p>以上、一番基本になるお話しを整理してみました。当たり前すぎて、平凡だったかもしれませんし、やや精神論に偏った印象を受けたかもしれません。次回、生の7つの次元とその相関関係についてご説明する予定です。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-70180689296925738292012-02-15T09:54:00.000+09:002012-02-15T11:07:04.928+09:00政治と聴くこと<p> </p> <p>先日ある会合で、政治家は自分の主張をするスタイルが良いのか、それとも有権者の声を聞くスタイルが良いのか、という話しが出たので、それについて僕の考えを述べる機会がありました。今回のブログでは、そのときに話したことを少し補って書いてみたいと思います。</p> <p>政治家を志望する人は圧倒的に少ないので、あまり役に立たない話しだと思われるかもしれません。たぶん、これは単に政治家とはどういうことか、という話しだけではなくて、コンサルティングやカウンセリングにも当てはまるところがあるのではないかと思います。</p> <h2></h2> <h2></h2> <h3>電話サポートのお仕事</h3> <p>僕は、現在のところコンピュータのユーザーサポートの仕事をしていますが、その前は、某大手家電量販店の顧客向けに、コンピュータの電話サポートの仕事をしていました。電話サポートという仕事は、ほんとうに大変で、技術力と柔軟な応用力はもちろん必須なのですが、それ以上にコミュニケーションスキルを駆使したお客様の感情的ケアが、その仕事の大部分だと言っても過言ではなかったように思います。</p> <p>さて、この仕事を始めるときに、よく会社から言われたことが、「お客様が言うことを真に受けるな」ということでした。この言い方には語弊がありますが、真実の一片を突いていることは確かです。というのは、お客様が間違ったことを言っているとこっちが思うと、オペレーターがお客様にたいして反論する態度になってしまう。それだと、お客様を怒らせてしまう。オペレーターは裁判官ではありません。お客様がいうことそのものを、まず全面的に受け入れる必要があります。</p> <a name='more'></a> <p>だけど、お客様が言っていることを受け入れる必要があっても、「真に受けて」はオペレーターとしては失格です。なぜなら、お客様は、コンピュータの知識も正確な用語も知らないからです。これは、もちろん、なんら責められるべきことではなくて、端的で当然の事実です。お客様は、自分のコンピュータにどういう問題が起きているのか、自分が何をしたいのか、それを表す言葉を持っていないのです。そして、私たちオペレーターには、お客様のコンピュータの画面を見ることができません。だから、私たちオペレーターは、説明できない言葉をなんとか振り絞りながら説明しようとするお客様の努力を全面的に受け入れながらも、その向こう側にある事態に想像力を働かせ、「お客様が本当に困っていることは何か」について、言葉を引き出していく必要があります。これは、ものすごくコミュニケーションスキルを鍛えられます。</p> <p>具体例を一つだけあげます。たとえば、お客様から「コンピュータの初期化の仕方を教えてほしい」という依頼があったとします。そのときに、聞かれたことを伝えるのは当然のことですが、それで満足していたら電話サポートのオペレーターとしては失格です。なぜかと言えば、お客様がPCの初期化をしたいのは、何かトラブルに困っていることはほぼ確実だからです。だとすれば、本当に解決しなければいけないのは、未だ言葉として表れていない、元のトラブルの方です。もしかしたら、そのトラブルは、単なるソフトウェアの不具合やバグで、ソフトウェアのアップデートで簡単に解決できるようなことかもしれませんし、初期化で直らないようなハードウェアの故障が原因かもしれません。それなのに、安易に初期化を案内して、本質的な問題が解決しないばかりか、お客様のデータを失わせてしまうならば、お客様の満足を得ることはできないでしょう。お客様の依頼である「初期化方法案内」を超えて、その「本当に困っていること」を聞き出し、それに対する実際の解決を提供していくこと、それで初めて、お客様が真に満足するサービスを提供できる。そういうことを、私は前の会社で、上司から教えられました。</p> <h3>聴政</h3> <p>このように、「本当に聴く」ということは、本当に大変なことです。人は、自分が言いたいことを、的確に表せる言葉をもっているとは限りません。むしろ、自分が言いたいことを的確に表したり、自分が困っていることがどういう政策によって解決可能なのか、それを知っている人の方が圧倒的に少ないでしょう。政治に関していえば、だからこそ政治家は、「民の声」の「向こう側の声」に耳を澄ませる必要があります。</p> <p>作家の宮城谷昌光さんの受け売りですが、中国の古代思想では、政治のことを「聴政」と言います。つまり、政治とは「民の声」≒「天の声」を聴くことだ、という考えが中国の政治思想にあるのです。そして、ここでいう「聴くということ」は、本当に深い含蓄をもっています。それを端的に表すエピソードがあります。</p> <p>中国史上でもっとも優れた政治家の一人と讃えられている人に、春秋時代の斉の宰相、管仲がいます。だいたい紀元前7世紀の人です。彼の君主が、春秋時代の五覇の一人、桓公です。</p> <p>あるとき、桓公が狩りに出て、山谷の中で迷いました。ひとりの老人を見かけたので、「これはなんという谷か」と問うたところ、おじいさんは「愚公の谷と申します」と答えました。「愚公」とは、愚か者という意味です。桓公は苦笑して「どうしてそういう名前がついたのか」と訊ねたところ、おじいさんは次のような話しをしました。</p> <blockquote> <p>以前、牝牛を飼っていて、生まれた子が大きくなったので、それを売って子馬を買ったところ、一人の若者が「牛が馬を産むはずがない」といって、その子馬を連れ去ってしまいました。近所の者はそれをきいて私を愚か者と嗤い、わたしが住むこの谷を「愚公の谷」と名付けたのです。</p></blockquote> <p>桓公はそれを聞いて、「なるほどあなたは愚かだ。どうして子馬を若者に与えたのか」と言い、宮殿に帰り、その話を宰相である管仲にしました。すると管仲はすぐさま再拝して言いました。</p> <blockquote> <p>それはわたしの過失です。もしも<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/堯">尭</a>が天子で、<a href="http://flamboyant.jp/prcmini/prcdeity/prcdeity061/prcdeity061.html">皋陶</a>が法官(それぞれ中国神話時代の帝・法官)であれば、人の小馬を奪う者があらわれましょうか。たとえ暴力をふるわれた老人のごとき人があっても、けっして自分の物を渡さなかったでしょう。その老人は、獄訟が正しくおこなわれていないので、訴訟してもむだだと知って、小馬を奪われようとしたときに争わず、奪われたあとも役人に訴えなかったのです。どうか退出させていただき、政治を修正したいと存じます。</p></blockquote> <p>民を思う心、そして民の声なき声を聴きとる圧倒的な耳の良さ。このエピソードが管仲の政治を端的に表しています。そして、彼の政治こそが、中国史において、政治の模範と考えられてきたわけです。中国思想の深遠さは、このことからだけでも窺うことができると言えるでしょう。</p> <div style="padding-bottom: 0px; margin: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; float: none; padding-top: 0px" id="scid:81867AAF-BB02-476b-AE5D-12BDAC2E750D:de45c32d-d3c4-417b-8ca3-a7366801a697" class="wlWriterEditableSmartContent"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167259176/irisheyes-22/ref=nosim" target="_blank"><img alt="管仲〈上〉 (文春文庫)" src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41IWg-OaPSL._SL160_.jpg"><br>管仲〈上〉 (文春文庫) 宮城谷 昌光 </a></div> <p> </p> <div style="padding-bottom: 0px; margin: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; float: none; padding-top: 0px" id="scid:81867AAF-BB02-476b-AE5D-12BDAC2E750D:290ec029-78eb-4d9c-95d3-ee1210d0a250" class="wlWriterEditableSmartContent"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167259184/irisheyes-22/ref=nosim" target="_blank"><img alt="管仲〈下〉 (文春文庫)" src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41pE84-mt0L._SL160_.jpg"><br>管仲〈下〉 (文春文庫) 宮城谷 昌光 </a></div> <h3> </h3> <h3>民主主義政治において、政治家が聴くということ</h3> <p>中国の政治思想の奥深さに比べると、西洋の政治思想は、僕にはどうにも底が浅いように感じられて仕方がありません。たとえばの話、― 通りすがりにハンナ・アーレントをディスるのが僕の趣味なので一言言わせてもらいますが ― 、「個々人が共通の空間に現われて個性を表出すること」というアーレントの政治の定義なんて、「は?そんなのどこが政治なの?居酒屋かTwitterで勝手にだべってれば良いじゃん」って僕は思ってしまいます。そんなの、わざわざ政治として重視するほどのことじゃありませんし、ましてや人間の条件だなんて偉そうに言われるまでのことでもありません。僕自身は、政治というのは、根源的に、他者のための政治であり、他者性を軸にして政治思想を再構築していく必要があると考えていますが、それはともあれ、またの機会に話すことができればいいなと思います。</p> <p>話しを元に戻すと、民主主義政治の時代において、中国思想における理想的な政治のあり方をそのままもってくることができないのは、確かです。管仲は、老人が訴訟を行わなかったということから、自分が責任を負っている司法制度の欠陥を知りました。ここにおいて、老人の声に耳を傾ける必要がある主体は管仲であって、老人自身が司法制度の欠陥をなんとなく感受していたとしても、そのことを明確に言語化された形で自覚し、さらに批判する必要はない訳です。</p> <p>ですが、民主主義政治においては、有権者はそれぞれ、自分が何を望んでいるのかを知り、その主張に基づいて投票行動をする、ということになっています。もちろん、これは建前にしか過ぎません。実際には、人は自分が何を求めているのかを明確に自覚せず、自分の不利になる政策を支持する投票行動を行い、結果として自分たちが苦しめられるということがままあります。たとえば、小泉政権にたいする若い世代の圧倒的支持が、何を彼らにもたらしたのか考えればわかることでしょう。そういうのを衆愚政治というのかも知れませんが(この言葉もあまり良い言葉ではありませんね)、衆愚政治とは、おそらくは通念に反して、エリートによる政治と本質的に同じものです。エリートは、自らの利益になる政策を大衆に支持させる、そしてそれが自らの不利益になっていることを大衆は知らない。それが衆愚政治だからです。そしてこれが、残念ながら、私たち現在の日本における政治の水準でもあります。</p> <p>そのような時代において、人びとのための政治家であるためにはどうすればよいのか。たとえば、多くの若者が時代の閉塞感から、北朝鮮や中国との戦争を望んでいるとして、政治家はそれを聞いて、「はい、そうですか、では中国に宣戦布告しましょう」と言えばいいのでしょうか。その戦争によって誰が傷つき、誰が死に、日本国民や中国国民に何をもたらすのかを考えれば、そのような行動は政治家としてあまりにも無責任なことは明白です。戦争を主張する人たちの大部分は、まさか自分たちが軍隊で使い捨てにされ、上司や敵に虐殺されることを望んではいないでしょう。では逆に、それは民衆のためにならないので、自分たちエリートが、愚かな民衆をさしおいて政策を決定しましょうということになれば、独裁政治になり、歯止めが効かなくなります。</p> <p>本当の意味で民主主義政治を実現するためには、選挙民自身が、自分で「本当は何を欲しているのか」を自覚する必要があります。これが、「未だ到来していない民主主義」の必要条件です。ところが、もう一度言えば、これは私たちのいる日本に限らないのかもしれませんが、人は、自分が本当は何を欲しているのかを明確に知らず、そしてかなりの場合、自分にとって不利になる政策を支持していたりするわけです。ガヤトリ・スピヴァックが「サバルタンは語ることができるか」という論文で言うとおり、自分の欲望や状況をぺらぺらと語れる被抑圧者というのは幻想にしか過ぎず、多くの場合、主体は「脱臼」しているのです。</p> <p>(この論文は、私の京大文学部の卒業論文の主題だったのですが、なにせ非常に難解なテクストなので、またの機会に紹介できればと思います。さしあたり、この論文が、私がいま書いているブログに通底している、ということだけ述べておきます。)</p> <div style="padding-bottom: 0px; margin: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; float: none; padding-top: 0px" id="scid:81867AAF-BB02-476b-AE5D-12BDAC2E750D:ff7f37a5-0b51-489d-b711-5a38366e10de" class="wlWriterEditableSmartContent"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622050315/irisheyes-22/ref=nosim" target="_blank"><img alt="サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー)" src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41732TR1Z2L._SL160_.jpg"><br>サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー) G.C. スピヴァク </a></div> <p>真の民主主義政治を実現することが政治家としての自分の役割だと考える人は、それゆえ、民衆の声なき声を聴きとることで、「自分が何を欲しているのか」を自覚させるように媒介することを、自らの使命としなければなりません。それはある意味で、カウンセラーの仕事に近いと言うことができるでしょう。カウンセラーは、依頼者の悩みにたいしてアドバイスをしたり、批判点や問題点を指摘したりする訳ではありません。カウンセラーは、依頼者の言葉を、判断することなくただ耳を傾ける。そのことで、依頼者自身が自分の声や欲望に気づき、自分で解決を見つけることができる。その媒介をするだけです。</p> <p>もちろん、政治家はカウンセラーではありません。有権者の声を聞きとどけ、それで有権者が自分の悩みを解決できるならば、それはただのお悩み相談です。もし、個人の苦境が個人の気持ちの持ち方やら認識の変更やらですべて解決できるならば、政治はそもそも必要ありません。政治家が提示するのは、個人的な悩み解決策や心理学的知識ではなく、政策です。すなわち、<strong>有権者の言葉にならない苦しみや悩み、不安や問題意識を深く聴きとっていき、それがどのような社会構造上の問題に起因するかを考え、その問題を解決するための政策を提言し、有権者に説明し、支持を得て実行する。それが政治家の役割です。</strong></p> <p>何度も繰り返すように、有権者が抱えている本質的な問題と、それに対する処方として支持している政策とが、現実には矛盾するということはよくある話しです。そのような事態に直面したとき、政治家はどうすればよいのか。例えば、多くの大企業の経営者層は法人税減税と消費税増税を支持していると思われます。ですが、消費税を増税すれば、マクロレベルで言えば、即座に自動的に、個人消費が4.5%落ちることはほとんど明白です。とすると、それは多くの企業の売り上げも、自動的に4.5%前後落ちるのです。そうなると、利益は出ないため、法人税減税の恩恵はなくなります。そのあまりにも単純な経済のメカニズムに、多くの経営者は―そして多くの官僚や経済学者も―まったく気づいていない。そして、大企業を支持基盤としてもつ政治家が、もしその事実に気づいているならば、消費税増税を支持する声が多かったとしても、「それはあなたがたの利益にまったくならない」ということを、支持者にたいして説明すれば良いのです。説得には時間がかかるかもしれません。ですが、そこに真心があるならば、通じる可能性が十分にあると思います。</p> <h3>結論</h3> <p>民主主義政治において、理想の政治家像とはどのようなものでしょうか。有権者の個人的な苦境や感情に耳を傾け、その背景にある社会構造上の問題を把握し、社会制度改革など政策に落とし込んで有権者に提示する。もちろん、提言した政策に、至らない部分があったり、修正する必要があったり、さらに言えば根本的に間違っていたりすることがあり、それを有権者や他の政治家とともに批判的に検討し、そして実現していく。そのように私は考えています。</p> <p>そのために、政治家には「良い耳」が必須なだけではなく―それではただのカウンセラーです―、その耳が聴きとった問題を解決するための、社会的・政治的知識が要求されます。そして、それをわかりやすく説明する能力、そしてもちろん、その政策を実行する意志と力が必要です。本当に大変な仕事です。</p> <p>私個人は決してしたくありません。わかりやすく説明するのが苦手ですから(笑)</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-15197902506443689322012-01-14T16:37:00.001+09:002012-01-14T16:37:35.242+09:00「震災復興講演会 ~がれき受け入れの意義と問題点」のお知らせ<p>イベントの告知がまわってきたので、お知らせしておきます。</p> <h3>震災復興講演会~がれき受け入れの意義と問題点</h3> <p>1月21日13時30分から16時まで、<strong>兵庫県三田市フラワータウン市民センターホール</strong>で講演会会が開催されます。フラワータウン市民センターは、神戸電鉄フラワータウン駅を降りてすぐです。<a title="http://www.city.sanda.lg.jp/community/flowertown.html" href="http://www.city.sanda.lg.jp/community/flowertown.html">http://www.city.sanda.lg.jp/community/flowertown.html</a> <p> <h4>講師</h4> <p>元京都大学理学部教授(理論物 物理学)山田耕作先生<br>元京都薬科大学教授(分子細胞 生物学) 大和田幸嗣先生<br></p> <h4>内容 </h4><br> <p>1.放射性物質で汚染されたがれき処理の意義と問題点<br>「第二のフクシマ」を起こさない ために<br>がれき付着の放射性物質が受け 入れ地区に与えるだろう汚染<br>(希釈拡散の問題として)につ いて<br>2 .チェルノブイリ原発事故25年の 健康被害の実態から学ぶ<br>がれきに付着してくる放射性物 質が地域住民へ与える健康被害 の可能性(放射線被害の危険性 )について<br>3.質疑応答</p> <p>主催は「未来工房」です。</p> <p>ご興味あるかた、ふるってのご参加をよろしくお願いします。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-8788439976976577502012-01-04T18:37:00.001+09:002012-01-05T23:38:59.257+09:00内面の豊かさと経済システム ① ―「経済と生の対立」について―<p> </p> <p>日本の経済成長が20年以上停滞している状況の中で、内面的・精神的な豊かさを人生の基本的な価値観とする人が、とりわけ若い世代に少しずつ潜在的に増えてきている。僕にはそんな印象があります。これは、LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)として名指されるクラスタであると言ってもいいと思います(名指される当人たちの中には、商業的に利用されてきているこのネーミングを拒絶する人も多いでしょうが、他に適切な言葉が思いつかないので、さしあたりこの名前で呼ぶことにします)。</p> <p>そして、こうした傾向は今後、より一層強くなってきて、社会の表層にあらわれてくるだろうと予想されます。というのは、福島第一原発の事故によって、従来の権力構造とそれを支えてきた価値観が大きく揺るがされる中で、必然的に多くの人が生命や生活というものを見つめなおしつつあるからです。</p> <p>こうしたムーブメントは個人的には喜ぶべきことだと考えています。それはおそらく、僕自身が、大きくわけるとそのクラスタに属しているからでしょう。僕自身は美味しいもの、美しい音楽を至上の喜びと感じる官能主義者ですし、生活全体を芸術化したいという欲望もあります(実現には程遠いですが。てかまず部屋を掃除しろよw)。</p> <p>ただ率直に言うと、そうした方向性を向いている人たちが口にしているイデオロギーに対して、僕は少し違和感と、もっといえば危惧を感じています。彼らは、「経済よりも生活・命が大切だ」「経済成長という神話を捨てて、内面を充実させるべきだ」と主張することが多いからです。すなわち、経済と内面の豊かさとを対立項ととらえており、経済を否定することによって精神を充実させる―とまでは言わないけれど、精神的豊かさを追求することは経済システムの廃棄・否定に繋がる、と考えている節があるからです。そうした考えの背後には、経済というものに対する無理解と、もっと言えば侮蔑があると思います。</p> <a name='more'></a> <p>僕は、「そんなこと言ってもね、経済は大切だよ」と単純なことを言いたい訳ではありません。たとえば、「原発は命を脅かすっていうけど、原発がなければ経済が落ち込むよ」とか、「消費税を上げると消費者の生活は成り立たなくなるっていうけど、上げないと政府財政が破綻しますよ」とか、「国際競争で企業が勝ち抜くためには、労働者の給与を下げないといけないんだ」―とか言う経済学者さんや評論家さんたちはいっぱいいます。そうしたイデオロギーに対する反動として、「いや、経済よりも生活が大切だ」というLOHAS的なイデオロギーが称揚されてきた。それは、通時的に言いかえれば、日本の高度経済成長期を担ってきた、そしてバブルを謳歌した少し上の世代に対する、若い世代の反感・反動もあるんじゃないかと思われます。それは、心情的には僕も理解できます。だけど、僕は、その両者のどちらも生活・生命と経済を対立的に考えている時点で、経済と生命の本質的な関係を理解しておらず、それゆえ経済について無知である、ということです。そして、無知の社会的・実践的な帰結は、いずれの場合も悲惨です。</p> <p>まず指摘したいことは、LOHAS的な反経済主義は、すでにして経済至上主義に対して、構造的に負けているイデオロギーだということです。たとえば、「コストの安い原発」に対して「(現時点では)コストが高い自然エネルギー」を称揚することは、その短期的な非現実性(とイデオロギー的には見えること)によって、結局は原子力産業に荷担することになることは、多くの人がすでに指摘している通りです。念のために言えば、もちろん、原子力発電のコストは、運用コストだけ見ても実際には非常に高い訳ですが、その前提条件を精査することなく、イデオロギー的な対立構造に持ち込まれた時点で、すでに負けることを宿命づけられているというのです。一般論で言うと、経済というもの端的に拒絶した時点で、自給自足生活への復古を志向せざるを得ない訳ですが、それはすでにして失敗を宿命づけられているのです。</p> <p>逆に、経済至上主義には、より大きな問題点があります。その問題点は、そのイデオロギーが、派遣労働や過労死といった労働問題、あるいは放射性物質の拡散や被曝労働といった原発問題などなどを通じて、単に生命・生活を脅かすというだけではありません。経済活動が個々人の生によって支えられ、また個々人の生を支えているという、経済と生の本質的な関係にたいして無知であるが故に、経済至上主義は生を破壊し、そのことを通じて経済を破壊する自滅的なイデオロギーだからです。たとえば、低線量被曝の最も典型的な症状は、発がんなどではなく、むしろ「ぶらぶら病」と呼ばれる不定愁訴であるわけですが、そのことによって労働意欲も消費意欲もなくなり、かつ医療費もかかるようになった人間が大量出現することが、どれほどマクロ経済の観点からして―その観点自体の非人間性はさしおいてあえてこういう言い方をするわけですが―「重荷」となるかを考えればよいでしょう。これは単なる仮定のお話しではありません。現に、過剰な不払い労働によって鬱病に追い込まれ、企業から使い捨てられた人間が日本では数十万人単位で存在するわけですが、彼らについても、まったく同じ事が言えるからです。</p> <p>実は、僕は、むしろ日本人に蔓延する「経済至上主義」こそが、20年以上にわたる日本の経済停滞の最大の要因だったと考えています。これは、また別途論証が必要なことなので、詳しくは別稿にあらためて書ければと思いますが、いちおう、簡単に説明しておきたいと思います。失われた20年(とりわけ1997年以降)で起きたことは、企業の行動としても、中央政府の政策としても、家庭から企業への大規模な所得移転でした。サービス残業や不正請負による不払い労働の蔓延、消費税増税と法人税減税、労働者派遣法改悪、ゼロ金利政策、こうしたことによって、労働者の所得総額は大幅に抑制されてきたのです。</p> <p>労働者の所得が抑制されるということは、ほとんど必然的に、個人消費が伸び悩むということを意味していることは、ちょっと頭を働かせれば理解できることです。個人消費が抑えられるということは、個人消費に直接関係する諸産業の売り上げが落ち込み、それに間接的に関連する業種、たとえば運輸業や工業生産用機械を作っている企業の売り上げも落ち込み、それゆえ投資需要も低下するということを必然的に意味しています。この状況では、イノベーションが行われ消費者の需要が喚起されたとしても、投資によってより大量生産が可能な機械が導入されたとしても、経済は回りようがありません。なぜなら、欠如しているのは潜在的需要ではなくて、消費者の手元にあるお金だからです。企業から労働者=消費者へ、そして消費者から企業へという、経済システムを構成するもっとも基本的なサイクルが壊れている限り、どのような経済政策も金融政策も効果をもちえません。</p> <p>経済学者や経営者たちは、企業が利潤を上げることと、経済成長とが同一であるということを、自明視しています。ところが、その大前提が、じつは根本的に誤っているのです。その点について私は以前のブログ記事「<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2010/06/blog-post_20.html">経済成長とはなにか</a>」でもっとも簡単なモデルで示しましたが、交換のサイクルで誰かが利潤を得てそれを還元しないことは、経済成長を阻害し、デフレを起こす要因なのです。<a href="http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-11-19/2009111901_01_1.html">赤旗の記事(2009年11月19日)</a>によれば、それまでの10年間に企業の内部留保が429兆円と倍増している訳です。その一方で、給与所得は大きく抑制され続けている。これがもし仮に労働者に給与として還元されていたら、その大部分が企業の売り上げ増に繋がっていたはずで、そうすれば労働者ももっと潤い、さらに企業の売り上げも増えていたでしょう。別の言い方をすれば、マクロ経済レベルで見れば、企業が労働者への給与支払を抑制し、利潤を確保したことによって、経済全体の成長も、企業としての自分たちの成長をも、結果的に阻害していたのです。</p> <p>日本経済にもっとも強い影響力をもっている経済学者や経済評論家、経営者たちが見落としていること、それは、生産されたものは消費されて初めて生産になる、というごく当たり前の事実です。労働と消費、経済と生活は、決して対立するものではありません。労働によって作られたモノが誰かに消費されて、それが誰かの生活の活力になって、さらに彼・彼女の労働者としての生産に繋がる、このサイクルこそが経済だからです。</p> <p>結局のところ、経済至上主義にとらわれている経済学者たちは、生産や労働の向こう側に消費者の生活が存在する、という事実を忘却しているように思われます。それに対して、「経済を否定して生活を大事にしよう」と安易に言っているLOHASの人は、消費のむこう側に生産者の労働がある、という事実に思い至っていません。どちらにしても、生産物や貨幣が、その向こう側にいる他者との暗黙のコミュニケーションである、という事実に気づいていないという意味において、まったく同じ、誤ったイデオロギーの土俵に立っているのです。生産物と貨幣を通じた暗黙のコミュニケーションを経済活動と呼ぶならば、経済学者も経済を否定する人も、経済について本質的なことを知らない、と言って良いでしょう。</p> <p>私たちは、自分たちの生の喜びと苦しみの原因について知るために、経済について、とりわけ経済と生命の本質的な関わりについて、そして経済と他者との関わりについて、根本的に考え直す必要があります。そのためにもっとも手っ取り早いのは、マルクスを読み直すことです。なぜならマルクスこそが、私がここで言っている意味において、「経済」というものを見いだし、人間の生との関わりにおいて哲学的な考察を開示した、ほとんど唯一の人間だからです。</p> <p>次稿では、マルクスの重要なテクストを側に置きながら、経済とは何かを、できるだけわかりやすく説明したいと思います。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-31443222423356539212011-06-25T21:51:00.001+09:002011-07-02T18:31:14.011+09:002011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発<p align="right"> </p> <h3><font style="background-color: #ffffff" color="#000000">はじめに</font></h3> <p>12日1号機の水素爆発、14日の3号機における水素爆発、15日2号機のサプレッションチェンバー爆発。これら相次ぐ事故によって、福島第一原発から今まで放出されてきた放射性物質の大部分は15日までに放出されてきたものであるかのように東電・政府は発表しています。</p> <p>ところが、<strong>もっとも重要な放射能汚染は3月21日に起きている</strong>ことは、あまり一般には知られていません。その汚染源が<strong>3月20日-21日にかけての3号機格納容器内爆発</strong>であること、それを<strong>東電・政府は当然知りながら、隠蔽していること</strong>―これがほぼ「事実」であると断定できるだけの判断材料がすでに揃いました。</p> <p>ちなみに、こうした結論の大部分は、実のところ、以前に私が、3/24までに出したものです。それについてはTwitterで当時連続ツイートして、その成果をTogetterにまとめました(<a title="http://togetter.com/li/115299" href="http://togetter.com/li/115299">http://togetter.com/li/115299</a>)。ただし、このとき私は、気象に関する知識とデータがなかったため、絶対的な確信を得るまでには至りませんでした。</p> <p>最近になって、他のブログで、気象方面からのアプローチで、まったく同じ結論を出している人が複数出てきました。また最近になって、東電が修正データを発表したため、再臨界の可能性を含めて再検討できるようになり、また東電による印象操作にかんしてもより詳細に論じることができるようになり、こうして新たにブログに記事をアップする次第です。</p> <p> </p> <p>以下、論証が極めて長いので、概要として、結論だけ箇条書きで記しておきます。</p> <ul> <li><strong>3/21に関東地方を襲ったフォールアウトは、大気圏核実験が全盛期だった過去50年間の同地域の総量に匹敵する莫大なものであった。</strong> <li><strong>この放射性物質は、よく言われるように、3/15までに福島第一原発から放出された放射性物質が雨によって落ちてきたものでは決してなく、直前に放出されたものである。</strong> <li><strong>その汚染源は明らかに3号機であり、おそらく福島第一原発最大の事故であった。</strong> <li><strong>パラメータを分析すると、3号機では、3/20-21に圧力容器設計圧力を大幅に超える圧力が記録され、また格納容器内の爆発的事象によって圧力容器・格納容器とも大破したことが明らかである。</strong> <li><strong>その事故は再臨界を伴う可能性が否定できない。</strong> <li><strong>この異常事態を受けて、放射性物質の放出を防ぐために、1000トンを超える放水が行われた。</strong> <li><strong>3/21に行われた海水サンプリング調査・土壌採取などは、3号機格納容器内爆発という事態を受けたものである。</strong> <li><strong>3/21の3号機原子炉建屋から出た煙は、原子炉が破損した物理的な帰結であるが、東電は当然それを認めることができない。</strong> <li><strong>東電・政府はこうした最悪の事態を知りながら隠蔽している。</strong> <li><strong>東電は、こうした事態を隠匿するため、データの間引きや悪質な印象操作をいくつも行っている痕跡がある。</strong> </li></ul> <p> </p> <a name='more'></a> <h3>3月21日前後、関東地方を襲った放射性物質降下について</h3> <p>現在、様々な農作物や海産物などから放射性物質が検出され、内部被曝が懸念されておりますが、<strong>そのもっとも重要な被害は、主に関東地方に降りそそいだ3月21日の放射性物質降下(以下フォールアウトと呼びます)によってもたらされました</strong>。3月15日にも放射性物質が放出されたことはよく知られていますが、それは希ガスが主体であり、農作物や人体への被害は比較的軽微だと考えられるからです。それにたいし、21日のフォールアウトは、ヨウソ・セシウム・ストロンチウムなどが主だったと考えられています。</p> <p>東大の早野先生(@hayano)のチームが作成したグラフがあります。</p> <p><a href="http://lockerz.com/s/98062719"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-6eTgezhq1iU/TgXZdCy4uMI/AAAAAAAAAEM/soedsz9APXw/image10.png?imgmax=800" width="432" height="307"></a></p> <p align="center">図1 全国の放射線量 3月15-5月2日</p> <p>これを見れば全国、とりわけ関東地方で、まったく同型のグラフの動きが確認できます。15-16日に非常に大きなピークがありますが、それは直後に急降下しています。それに対して、21日にピークがありますが、それは漸近線を描いて下がっていっています。これらピークが福島第一原発由来のものだとすると、両者の違いに関する解釈は、論理的には二つありえます。一つは、21日以降、恒常的に福島第一原発から放射性物質が放出されている可能性です。もう一つは、21日に後者で放射性物質が地表に降下して、それが空間線量に影響を与えている可能性です。もちろん、この二つが複合していることも十分ありえるでしょう。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-ckCpuzTuTsg/TgXZdxhBy5I/AAAAAAAAAEQ/rdCm0jGaxMg/s1600-h/image17.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-cA5FMEFCtmI/TgXZeVWJuUI/AAAAAAAAAEU/DuDA6UWGibI/image_thumb7.png?imgmax=800" width="425" height="255"></a></p> <p align="center">図2 日本分析センターにおける空間線量率(<a href="http://www.jcac.or.jp/lib/senryo_lib/senryo_2011_3.pdf">PDF</a>より)<a href="http://lh3.ggpht.com/-iBKDoeItCDc/TgXZeoE34vI/AAAAAAAAAEY/HK9bKFDSGH8/s1600-h/image19.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-1lxJgIOBKhk/TgXZfHCfZkI/AAAAAAAAAEc/sI9LWAIxf0U/image_thumb9.png?imgmax=800" width="428" height="280"></a></p> <p align="center">図3 東京都健康安全研究センターにおける放射線量と降下物</p> <p align="center"> </p> <p>諸々の研究機関による核種分析により、15日と21日では、その主成分が異なることが判明しています。15日は、キセノン133など人体に軽微な影響しかない希ガスが主ですが、21日のフォールアウトでは、セシウムやヨウソ・テルルなどが主体であることが判明しています。15日に希ガスが多かったのは、原因が2号機のサプレッションチェンバーの破損であるため、放射性物質が一度水を通してから放出されたためであると考えられます。すなわち、事実上、ウェットベントをしたのと同じ効果があったのではないでしょうか。</p> <p>さて、21日のフォールアウトは想像を絶するものだったことが、直後から判明しています。文部科学省は、毎日の全国各地のヨウソ131とセシウム137のフォールアウトを「環境放射能水準調査結果(定時降下物)」として発表していますが(<a title="http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305495.htm" href="http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305495.htm">http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305495.htm</a>)、その3月20-21日、21-22日のデータは以下の通りです。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-yfPluWmj3N8/TgYi6DzBaRI/AAAAAAAAAHc/peuex38o-qk/s1600-h/image20%25255B1%25255D%25255B1%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-LMv4Ofpmmnw/TgXZf3FOVMI/AAAAAAAAAHg/e-9MdFVGuTY/image20%25255B1%25255D_thumb.png?imgmax=800" width="192" height="118"></a><a href="http://lh6.ggpht.com/-Nxw6NSbBy-A/TgXZgUhLm9I/AAAAAAAAAHk/N86hEIlGZEU/s1600-h/image26%25255B1%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-MKXkH_4aJNY/TgXZgvpfWMI/AAAAAAAAAHo/R23M9gXew18/image26_thumb.png?imgmax=800" width="189" height="118"></a></p> <p>図4(<a href="http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/28/1303977_20_21.pdf">PDF</a>) 図5(<a href="http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/05/02/1303977_032219.pdf">PDF</a>) <br>定時降下物20日9時-21日9時 定時降下物20日9時-21日9時 </p> <p>上記のデータから3月19日9時から3月26日9時までの積算フォールアウトの表を作成してみました。</p> <table style="border-collapse: collapse" border="1" cellspacing="0" cellpadding="0" width="422"> <colgroup> <col style="width: 163pt; mso-width-source: userset; mso-width-alt: 6944" width="217"> <col style="width: 54pt" width="72"></colgroup> <tbody> <tr style="height: 15.75pt" height="21"> <td style="vertical-align: middle" height="21" width="150"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000"></font></font></td> <td style="vertical-align: middle" class="xl65" width="134"> <p align="right">I-131(MBq/km^2)</p></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">Cs-137(MBq/km^2)</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">山形県(山形市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">68532</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">7860</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">茨城県(ひたちなか市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="background-color: #ff0000; font-size: 11pt" color="#000000">208130</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right"><font style="background-color: #ff0000">25790</font></td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">栃木県(宇都宮市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">55710</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">992</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">群馬県(前橋市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">21306</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">1173</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">埼玉県(さいたま市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">67517</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">2973</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">千葉県(市原市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">45294</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">3593</td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">東京都(新宿区)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="background-color: #ff0000; font-size: 11pt" color="#000000">84333</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right"><font style="background-color: #ff0000">6409</font></td></tr> <tr style="height: 13.5pt" height="18"> <td style="vertical-align: middle" height="18" width="149"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">神奈川県(茅ヶ崎市)</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="134" align="right"><font face="MS Pゴシック"><font style="font-size: 11pt" color="#000000">5556</font></font></td> <td style="vertical-align: middle" width="136" align="right">440</td></tr></tbody></table> <p> </p> <p>特筆すべきは、ひたちなか市と新宿の値です。MBq/km<sup>2</sup> はBq/m<sup>2</sup> に換算可能なので、<strong>ひたちなか市では1平方メートルあたり20万ベクレル以上のヨウソ131が、25000ベクレル以上のセシウム137が地表に降り積もった</strong>と考えられます。<strong>新宿では同じく、ヨウソ131が約85000ベクレル、セシウム137が6400ベクレル</strong>です。そして、これら大部分が、20日から23日までの3日間に降りそそいでいるのです。</p> <p>これは、どの程度の値なのでしょうか。</p> <p>また、一瀬昌嗣・神戸高専准教授(<a href="http://smc-japan.org/?p=1428">サイエンスメディアセンター 核実験フォールアウトとの比較</a>)によれば、「1963年6月に、日本に降った最大のフォールアウトのセシウム137の放射能は、550Bq/m<sup>2</sup>」であり、「Cs-137で比べると最も多かった1963年の1年間に東京で1935 Bq/m<sup>2</sup>、1957年4月~2009年3月の合計では7095 Bq/m<sup>2</sup>」です。<strong>大気圏核実験が頻繁に行われていた(チェルノブイリ事故の影響も含む)過去50年間と、ほとんど同量のCsセシウム137が、たかだか3/21-3/23の2日間で降り積もった</strong>ことになります。なお、<strong>広島原爆の黒い雨のCs-137の土壌沈着量は、最大で493 Bq/m<sup>2</sup>であった</strong>と論じられています。</p> <p>マーチン・トンデル氏のスウェーデンにおけるチェルノブイリ事故調査によると、1平方メートルあたりのセシウム137の汚染が10万ベクレルで、ガン発生率が11%あがるとの結果が提出されています。<a title="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/tondel.pdf" href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/tondel.pdf">http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/tondel.pdf</a> これに照らし合わせると、くだんのフォールアウトによるひたちなか市での発がんリスク増加は、3%弱であると考えることができるでしょう。</td></tr></p> <p>ただし、重要なことは、発がんリスクは放射性障害のごく一部にしかすぎず、心疾患、脳溢血、消化器疾患、呼吸器疾患など様々なリスクが確認されており、またもっとも典型的な兆候は、「原爆ぶらぶら病」や「湾岸戦争症候群」に見られるような不定愁訴であることです。発がんリスクはあくまで健康被害の一つの指標にしか過ぎず、内部被曝によって表れる様々な症状を、発がんリスクへと還元するかのような統計は、住民たちの実際の健康障害を著しく低く見せる効果があることに、私たちは留意する必要があります。</p> <h3></h3> <h3>3月20-21日の放射性プルームの動き</h3> <p>3月21日前後に関東を襲った甚大なフォールアウトが福島第一原発由来のものだとして、それは何号機からいつ発生したものでしょうか?</p> <p>東大の早野龍五先生などは、主な放射性物質の放出は3月15日までに発生しており、21日の降雨とともに上空の放射性物質が降下してきた、という説を以前提唱しました(<a href="http://getnews.jp/archives/108522">ガジェット通信「3月15日に福島原発より大量放出。以降、大気への大量放出は起きていない</a>」)。</p> <p>そして、同様の説が、現在もまたメディアや一般人の大部分が信じており、それゆえ、21日前後のフォールアウトについて「いまだ発表されていない大事故が起こったのではないか」という点の追求は不十分であったと言わざるをえません。それは、Twitter上で最大権威となった早野先生の影響もあるでしょうし、またテレビ映像で爆発として目に見えた(結論を先取りすれば、それゆえ東電が隠蔽することが不可能であった)事故が15日までに集中していたこと、がもう一つの原因でしょう。</p> <p>ところが、早野先生の説は、看過できない欠陥を何個も抱えており、議論としては維持不可能である、と私はこれまでずっと考えてきました。(以下の考察は、主にkenkenさんのブログ「<a href="http://kenken4433.blog51.fc2.com/blog-entry-1.html">3/21 柏市を汚染した放射能プルームについて</a>」を参考にさせていただいており、また、図10と図12を拝借いたしました。この場を借りて感謝申し上げます。)</p> <blockquote> <p><font color="#ff0000">※重要な追記</font> 早野先生にTwitterで確認したところ、この説はすでに撤回したとのことです。非常に真摯な回答に感謝いたします。ただ、現在の早野先生の考えとは別に、この説はそれ自体として検証されるべきであるということ、また、3/15以前に放出されたという説は一般に流布してしまっていること、その点から未だに、以下の批判的記述は意味があると私は考えるため、そのまま置いておきます。<br>実際に、早野先生とどのようにやりとりをしたかは、本記事の末尾に記しておきます。</p></blockquote> <p>一つは、直感的に言って、一週間近く前に放出された放射性物質からなる放射性プルーム(放射性雲)が、関東地方といったせいぜい数十キロー数百キロ圏内の上空を、大部分の放射性物質を落とさずに、また拡散せずに、漂い続けることが可能なのだろうか、というものです。たとえば、ドイツのシュピーゲル誌などが、オーストリア中央気象台による放射性物質拡散シミュレーションを掲載していますが、これをみると、放射性雲は偏西風に乗って時速数十キロで移動し、拡散しているように見えます。これは、他のシミュレーションでも同様です。</p> <p><a href="http://www.asyura2.com/11/genpatu7/msg/366.html"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-29fse7VRAHs/TgXZg-oWIQI/AAAAAAAAAEw/Wx8sYOq9x24/image52.png?imgmax=800" width="412" height="293"></a></p> <p>図6 オーストリア中央気象台 I-131拡散シミュレーション 3/15-3/18</p> <p>また、早野先生は、日本分析センター(千葉)のデータ(本ブログ記事の図2)をもとに、「3月16日を最後に原子炉からの直接放出の証拠であるXe-133がほとんど見え」ないということを根拠に、それ以後の放出はなかったと言っていますが、よく拡大して見れば、他のグラフに隠れているだけで、確実にXe-133のピークは確認できます。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-7_I2SDnpgrE/TgXZinP7HxI/AAAAAAAAAE0/iB292Dli098/s1600-h/image%25255B28%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-bvz9tIUF-DU/TgXZi9e-c2I/AAAAAAAAAE4/5SEQqOoOV5k/image_thumb%25255B15%25255D.png?imgmax=800" width="208" height="126"></a><a href="http://lh4.ggpht.com/-Mdei-p9Xg-c/TgXZje8pLqI/AAAAAAAAAE8/ASAdf75zvJ0/s1600-h/image%25255B27%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh4.ggpht.com/-5XjPocBKgvE/TgXZjr-MexI/AAAAAAAAAFA/t8mFmgasutM/image_thumb%25255B14%25255D.png?imgmax=800" width="205" height="123"></a></p> <p>図7 3/18-3/20 空気中の核種 図8 3/20-3/22 空気中の核種</p> <p>また、つくばの高エネルギー加速器研究機構で採取された「<a href="http://www.kek.jp/quake/radmonitor/index.html">空気中の放射性物質の種類と濃度の測定結果</a>」のグラフを抜粋しました。図7が第六回採取資料(2011年3月18日10:16〜3月20日9:55)で、図8が第七回採取資料(2011年3月20日10:00〜3月22日9:54)です。両者を比較すると、その組成が全く異なることがわかります。このことは、21日以降の空気中の放射能汚染が、それまでとは別の汚染源からもたらされたものであることを示唆しています。</p> <p> 早野先生は上記の図2の降雨量と放射性物質降下との相関関係に注目し、前者が後者の原因であったと論じています。確かに、原発事故後、21日で初めて広範囲の降雨があったことは確かです。ですが、この比較は、あまりにも時間軸を荒く見過ぎだと思います。じっさい、3月21日の雨のデータと、空間線量の上昇データとの時間データをより細かく調べれば、茨城県では雨が降る前に、放射線量が上昇していることが確認できます。</p> <p><a href="http://tenki.jp/past/detail/pref-11.html?year=2011&month=3&day=21&selected_image=rader"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-c1YjcMaYKUE/TgXZkB1d75I/AAAAAAAAAFE/3wFkHR0xilY/image66.png?imgmax=800" width="219" height="167"></a><a href="http://lh4.ggpht.com/-__mc_bFoWxw/TgXZkgi0ocI/AAAAAAAAAFI/MDAiPBSRiIU/s1600-h/image67.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-ak15Xci7XKg/TgXZlJQc9ZI/AAAAAAAAAFM/T27gSlttwmw/image_thumb35.png?imgmax=800" width="201" height="170"></a></p> <p>図9 3/21 4時の茨城県の雨雲 図10 3/21 茨城県の空間線量 </p> <p>これは、「3/21のフォールアウトは上空の放射性物質が雨によって落ちてきただけである」という説明とは相容れません。</p> <p><a href="http://www.chitaro.com/src/chitaro1526.gif_VpumIIAC3MgHrfI8LrEG/chitaro1526.gif"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; margin: 0px 14px 0px 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; float: left; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" align="left" src="http://lh4.ggpht.com/-8SRxwcWR85A/TgXZlfbRUcI/AAAAAAAAAFQ/c77W0KjOLSk/image%25255B46%25255D.png?imgmax=800" width="163" height="293"></a></p> <p><a href="http://blog-imgs-46.fc2.com/k/e/n/kenken4433/20110605123749cd2.jpg"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-joIVIhxIAL0/TgXZl4TKm-I/AAAAAAAAAFU/UxgSA5oedVY/image%25255B45%25255D.png?imgmax=800" width="233" height="289"></a></p> <p>図11 図12</p> <p>また、3/21、全国的に雨雲は西から東に移動してきています(<a href="http://tenki.jp/past/detail/?day=21&month=6&selected_image=rader&year=2011">tenki.jp 3/21 雨雲の動き</a>)。 もし、早野先生の説が正しければ、フォールアウトもまた西から東へと進んでいなければいけないはずです。ところが、図9 「<a href="http://ag.riken.jp/u/mon/anim.html">茨城県東部 放射線モニターデータ解析</a>」(理化学研究所仁科加速器研究センター専任研究員 板橋健太様作成)の3/21のデータを 茨城県の空間線量の増加を確認すると、疑いなく北(福島第一原発方面)から南南西へと、放射性プルームが移動していることが確認できます。また、先にご紹介したブログ「<a href="http://kenken4433.blog51.fc2.com/blog-entry-1.html">3/21 柏市を汚染した放射能プルームについて</a>」によると、時速20-30kmで、「午前3時20分に大沼で観測された上昇が東海村、水戸、鉾田、つくば市へ伝播している」ことが確認できます(図12)。</p> <p> </p> <p>さて、以下の論考は、<a href="http://minkara.carview.co.jp/userid/863031/blog/c691778/">chocovanillaさんのブログ【シリーズ 3月21日】</a>による、気象学的な考察をおもに参考にさせていただきます。</p> <p>国立情報学のページ「<a href="http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/radiation/timeline/documentary.html">福島第一原発事故タイムライン(ドキュメンタリー)」</a>によると、3月20日、福島第一原発の周辺の風向きは、朝10時から東風、夕方には南風になり、夜の10時から12時にかけて北風に反転したということです。</p> <p>ちなみに福島第一原発から日立市大沼までの距離は106km、日立市大沼で放射線量が上がり始めたのが21日3時20分なので、そのとき風速20km-30kmで運ばれていたと仮定すると、その放射性プルームはちょうど福島第一原発を午後10時-12時に放出されたものであるということになり、ぴったり符合します。</p> <p>3月21日の午前9時の天気図は以下の通りです。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-yFvAXNoCeAw/TgXZm1rmr0I/AAAAAAAAAFY/mi_7wQRaDr8/s1600-h/image%25255B72%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-MKUNEdzS7Ms/TgXZnjKbTYI/AAAAAAAAAFc/sfmTBm2sBwQ/image_thumb%25255B37%25255D.png?imgmax=800" width="419" height="304"></a></p> <p align="center">図13 3/21 9:00の天気図</p> <p><strong>停滞前線沿いに上昇気流が発生し、放射性プルームは静岡にある低気圧の中心へと流れて停滞前線に沿って運ばれたと考えられます。</strong></p> <blockquote> <p>プルームは海を南下し、停滞前線に当たって進路を変えます。一部は上昇して、低気圧の中心近くで降雨し、大部分は前線に沿って移動して、柏東葛地域での雨で、地上へと落下し ホットスポットを形成したものと考えられます。進路に関わらず前線に沿ったとすれば、雨の振り出しが関東ではほぼ同時であった為、 非常に直線的な汚染が辻褄が合うのです。(<a href="http://minkara.carview.co.jp/userid/863031/blog/22734919/#tb">chocovanillaさんのブログ</a>より)</p></blockquote> <h3>福島第一原発3号機炉心で起こったこと パラメータ分析</h3> <p>さて、3月20日から21日にかけて、福島第一原発では何が起きたのでしょうか。これだけの莫大な汚染をもたらした事故が発生したとすれば、それが公式に発表されていないということはありうるのでしょうか。</p> <p>3月20日の福島第一原発の動きは、私の手元にある3月21日発表の官邸発表資料(<a title="http://www.kantei.go.jp/saigai/201103211900genpatsu.pdf" href="http://www.kantei.go.jp/saigai/201103211900genpatsu.pdf">http://www.kantei.go.jp/saigai/201103211900genpatsu.pdf</a> 削除済み)を見れば非常によくわかります。彼らはそのとき、3号機に注視していました。抜粋します。</p> <blockquote> <p>20日 08:00 3号機に関し、炉内の温度が三百数十度になっており、炉圧が高くなっている。(原子炉の通常運転中は280-290℃) </p> <p>14:30 3号機に関し、原子炉格納容器内が高めで推移していることから注視。</p> <p>21:30 3号機に関し、緊急消防援助隊(東京消防庁)の消防車による連続放水(約1、137トン)を実施(-21日03:58)</p> <p>15:55 3号機に関し、灰色の煙が噴出(調査中) 16:49 3号機の煙に関し、煙量に変更はないが、灰色から白色に変化 18:02 3号機に煙に関し、沈静化を確認</p></blockquote> <p>事実関係だけ述べるならば、<strong>20日午前から午後まで3号機格納容器内の圧力が非常に高まり、その後圧力低下を受けて、21時半から1000トン以上の放水を行った</strong>。これは、同時期の他号機への放水が軒並み100トン以下であることを考えれば、異常な量と言えるでしょう。そして翌日午後3時に、原子炉建屋から煙が出始めました。</p> <p>さて、当時のメディアでは、3号機についてどのように報道されていたでしょうか?実は、このときドライベントを行う予定でした。3月22日の毎日新聞は次のように報道しています。</p> <blockquote> <p>3号機では20日、格納容器内の圧力が急に高まり、東電は一時、容器内の水蒸気を直接、大気中に放出する「ドライベント」と呼ばれる方法での排気を検討した。・・・3号機はその後、格納容器内の圧力が下がったため、ドライベントは見送られた。</p></blockquote> <p>もしその通りだとして、<strong>なぜ圧力は低下したのでしょうか?そして、本当にドライベントは見送られたのでしょうか?</strong>これが1つ目の謎です。</p> <p>もうひとつの謎は、翌21日に3号機原子炉建屋から放出された煙についてです。東電は、おおむね次のように釈明していました。「煙については調査中です。どこから出てるのかはわかりません。放射線レベルから見て、問題はないです。でも、念のため、作業をいったん中断して、作業員全員を退避させました」。そして、私が知る限りにおいて、その点について今まで一切の説明はありません。</p> <p>しかし、<strong>なぜ何週間・何カ月たっても、煙の原因がわからないのでしょうか?これが火事である可能性が仮にあるのだとすれば、本来、すぐにでも消化活動を行わなければ、以後の復旧作業に差し支えるのではないでしょうか?なぜ、彼らはこの煙を放置したままでいられたのでしょうか?</strong></p> <p> </p> <p>実は、5月16日に東電は3号機パラメータの膨大な修正資料を提出しました(<a title="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11051612_level_pr_data_3u-j.pdf" href="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11051612_level_pr_data_3u-j.pdf">http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11051612_level_pr_data_3u-j.pdf</a>)。その結果、以前よりも詳細で正確な分析が可能となっています。このデータから、圧力容器内の原子炉圧力(A)をグラフ化したものがこれです。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-W5FtiNuZu74/TgXZn4Ne95I/AAAAAAAAAFg/fl8vbzeDAOE/s1600-h/image%25255B36%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-ASLjRXwD1Ic/TgXZoaj7TlI/AAAAAAAAAFk/_SpBY8VmmTc/image_thumb%25255B19%25255D.png?imgmax=800" width="418" height="306"></a></p> <p align="center">図14 3号機原子炉圧力(A)の動き</p> <p><strong>3月21日の未明に、著しく異常な事態が発生していることが見てとれます。具体的には、それまで0.1MPa前後を推移していたのに、突然21日1時25分には8.968MPaを、1時45分に11.571MPaを、2時30分に10.774MPaを記録し、その後4時には0.2MPaまで下がっています。</strong></p> <p>さて、以上の数字が突出しすぎているため、細かい動きがほとんどわからなくなってしまっていることを踏まえて、もっと細かいグラフを出します。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-LYb9NN9L1AA/TgXZomfH5JI/AAAAAAAAAFo/XzqB14GDL-o/s1600-h/image%25255B67%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-W9ac5XLJIWY/TgXZpGVpZcI/AAAAAAAAAFs/ZXuEMRzqas0/image_thumb%25255B34%25255D.png?imgmax=800" width="421" height="246"></a></p> <p align="center">図15 3号機原子炉圧力(A)(B)および格納容器圧力(ゲージ圧に換算)</p> <p align="left">まず、19日未明に格納容器圧力と原子炉圧力(B)ともに大幅に下がっているのが確認できます。このときに、何が起きたのかははっきりわかりませんが、その後格納容器・圧力容器とも圧力が上昇したことから、両者とも健全性が保たれていると思われるため、おそらく、この時点でベントを行ったのではないかと推測できます。実際、図16を見れば、格納容器の圧力低下とともに、格納容器内の放射線量が低下していることが確認できます。</p> <p align="left"><a href="http://lh4.ggpht.com/-q-SM6Vd4fss/TgXZpUUFF2I/AAAAAAAAAFw/DRbUP72MjRw/s1600-h/image%25255B71%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-2Vla0-KSHKA/TgXZp4l25SI/AAAAAAAAAF0/AUCCZ-mT4pw/image_thumb%25255B36%25255D.png?imgmax=800" width="424" height="247"></a></p> <p align="center">図16 格納容器圧力と格納容器内放射線量の比較</p> <p align="left">しかし、18日に格納容器内放射線量が54.4Sv/hから105Sv/hまで急増していること、その後おそらくはベントとともに急落し、その後上昇をする、これは何を意味しているのでしょうか?<strong>単なるメルトダウンでは、ここまでの放射線量の増減を説明することは困難</strong>ではないでしょうか。ここで<strong>再臨界が発生していた可能性を指摘することは可能</strong>かも知れません。実際、図8で示した、筑波における空気中の核種分析で見られたテルルやテクネチウム99m(半減期6時間)などは、そうした可能性を示唆しているようにも思われます。また、既出の<a href="http://www.kantei.go.jp/saigai/201103211900genpatsu.pdf">官邸資料</a>によれば、20日の午前8時に炉内の温度が、通常運転時よりも高い三百数十度を記録したことも、これを裏付けています。</p> <p align="left"><font color="#ff0000">※追記<br></font><font color="#000000">放射線量の急激な上昇については、メルトダウンでは考えにくい、と言いましたが、必ずしもそんなことはないことを、Web上のご指摘でいただきました。たしかに、圧力容器外部に大量に溶けた燃料が落ちると、放射線量が増大する可能性はあります。</font></p> <p align="left"><a href="http://lh6.ggpht.com/-d6KDKEIY2gk/TgXZqHwkf2I/AAAAAAAAAF4/hMTSLEfwhqY/s1600-h/image%25255B87%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-UlLc9mQY3Ck/TgXZqrG5PXI/AAAAAAAAAF8/UCP35nzGSRk/image_thumb%25255B46%25255D.png?imgmax=800" width="426" height="129"></a></p> <p align="left">圧力変化の分析を続けましょう。3月19日のお昼ぐらいから、圧力容器・格納容器ともに上昇を続けています。また格納容器内放射線量のデータは19日の大部分が抜けているのですが、20日に入ったあたりから急上昇を続け、この三つのパラメータは20日午前4時にピークを迎えます。その後、圧力容器・格納容器圧力は緩やかに下降していきますが、格納容器内放射線量はほぼ一定水準を保ったままです。このときの圧力低下が、何かしらの爆発的事象なのか、それともベントなのかははっきりとは判明しませんが、おそらくは何らかの形で放射性物質が漏れており、それが図1の、茨城県の20日12時前後の小さなピークと対応していると考えられます。</p> <p align="left">その後、9-11時前後に不可解な微増減がありますが、それから15時ぐらいまで、格納容器圧力・圧力容器圧力ともに漸減していっています。このとき、原子炉水位が上昇していることから、注水作業が行われたことが推測でき、圧陸低下はその結果だと考えると、この時点まで圧力容器・格納容器の健全性が保たれていたと考えるのが妥当でしょう。</p> <p align="left">その後、<strong>15時から格納容器圧力・圧力容器圧力ともに急降下</strong>しています。この前後の敷地内の放射線量はほとんど公開されていないのですが、唯一公開されている事務本館北の放射線量の数値が、14時までの2.5mSv前後から15時前後に3.3mSvまで急増したことから、このときに一度目、<strong>格納容器内の爆発など、なんらかの形で格納容器の健全性を損なう出来事があった</strong>ことは想像に難くありません。そのとき、ちょうど西風が吹いており、また<strong>夕方になって南風に変わったため、20日19時以降西に110km離れた山形市でフォールアウトが発生し</strong>、また北の秋田市でも午後9時ごろ、わずかに放射線量が増大したものと考えれば、完璧につじつまがあいます。</p> <p align="left"><a href="http://lh6.ggpht.com/-J8cADvUqUUE/TgXZrKbcV6I/AAAAAAAAAGA/Os8iW28vXW8/s1600-h/image%25255B56%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-gdOy-4CbZtQ/TgXZrdyMvNI/AAAAAAAAAGE/LnHp9-LkZ4A/image_thumb%25255B29%25255D.png?imgmax=800" width="417" height="295"></a></p> <p align="center">図17 東北地方の空間線量</p> <p align="left">その後、<strong>21時半から翌21日の3時58分まで、1000トンを超える莫大な量の放水作業を、3号機に向けて行っています。そして、その放水と、原子炉圧力(A)が11.5Mpaを超える異常値が検出された時間は、完全に重なっています。</strong>これは、どのように解釈できるでしょうか?もし、この異常値が実際の圧力容器内の圧力を反映していたのだとすれば、これは明らかに異常な事態です。というのは<strong>、福島第一原発の圧力容器の設計圧力は8.61MPa</strong>(=87.9kg/cm<sup>2</sup>g)なので、大幅に超過しており、<strong>圧力容器がこの時点で大破した可能性は高い</strong>と思われます。そして、<strong>圧力容器における異常な圧力上昇という事態に対処するために、東電は莫大な放水を行ったということになります</strong>。</p> <p align="left">あるいは、原子炉圧力計の異常値は、放水の結果であるという可能性も全否定はできません。すなわち、圧力計になんらかの形で水が当たり、それが異常値を引き起こした可能性です。この仮定のもとでは、この時点ですでに圧力容器が破損していたということになるでしょうし、さらに、破損していなければなぜ東電が莫大な放水を行ったのか、説明が困難となります。しかし、この可能性は論理的には否定できないものの、あまり考えられないことです。というのは、データ採取は放水を一時的に中断したときにしか可能ではないだろうと推測できるからです。</p> <p align="left"><a href="http://lh4.ggpht.com/-qsbrvrv8uTo/TgXZr7dTCcI/AAAAAAAAAGI/jOmHytl2nW4/s1600-h/image%25255B63%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-F4nKE52Ku-0/TgXZsS4GKeI/AAAAAAAAAGM/piusl87USFg/image_thumb%25255B32%25255D.png?imgmax=800" width="434" height="257"></a></p> <p align="center">図18 3号機格納容器圧力(ゲージ圧に変換)(東電修正前データで作成)</p> <p align="left">ともあれ、放水終了後も圧力は低下し続け、<strong>格納容器圧力は21日15時までにほぼ大気圧と一致し、その後6月21日現在まで、ずっと大気圧と平衡</strong>を保ちつづけています。このことから、<strong><font color="#ff0000">3月20日に格納容器が完全に損壊した</font></strong>と断定できます。</p> <p align="left">また圧力容器内圧力も、3月21日以降ほぼ平衡を保っております。原子炉圧力計(A)と(B)の値の違いを解釈することは、非専門家である私には困難ですが、その後(A)が安定して下がりつづけて(B)と一致し、現在は-0.1MPa前後で平衡を保っていることから、圧力容器も健全性を保っていないことが見てとれます。</p> <p align="left">いずれにしても、<font color="#ff0000"><strong>20日15時から翌日4時までの間に、3号機で相当に異常な事象が発生したことは疑いようがありません。そして、これが、おそらくは福島第一原発最大の事故であり、20日の山形のフォールアウトと、翌21日の関東地方のフォールアウトの汚染源であったことも確実です</strong></font>。</p> <p align="left">ただ、午後20時から翌日の1時25分までのパラメータが、5時間半にわたって完全に欠如していることが問題です。現在わかっている範囲では、午前1時45分から4時までの原子炉圧力(A)の低下が、図12での日立市大沼の午前4時のピークをもたらしたと考えるのは、両者の距離が100km以上離れていることから考えると、非常に困難が伴います。むしろそれは、午前6時過ぎの二つ目のピークと対応していると考えるほうが自然でしょう。ならば、3号機からの主要な放射性物質の放出は、20日午後11時から翌0時半ぐらいまでに発生したと考えなければ、関東地方の放射性プルームの最大のピークと符合しなくなります。ところが、何度も言いますが、ちょうど放水中のためか、その時間帯のデータが欠落しているのです。</p> <p align="left">このあたり、具体的に何が起きたのか、そして再臨界はあったのか、原子炉の専門家による分析と、(もし存在するならば)東電・政府からのさらなるデータの発表を待ちたいところです。</p> <h3 align="left">20-21日にかけての東電・政府の対応</h3> <p align="left">3号機の異常にたいして、東電・政府はどのように対応したのでしょうか。彼らは、こうした異常事態を知らなかったのでしょうか、それとも、異常を知っていたのでしょうか。もし、当時把握していたのなら、事故を知っていて隠蔽していたことになります。</p> <p align="left">3月20日の格納容器・圧力容器圧力の上昇、そして格納容器CAMSの上昇を受けて、東電・政府がドライベントをする予定であったことは、すでに述べたとおりです。しかし、彼らの発表によれば、圧力が低下したため、ドライベントを行う必要がなくなった、とのことでした。この圧力低下がどの時点のことを意味しているのか、定かではありません。ともあれ、私たちの分析が正しければ、3/19の未明と3/20の午前4時に、二回ベントを行っているはずです。もし、発表内容と整合性を保って理解しようとするならば、これらはドライベントではなく、ウェットベントであり、それゆえ特段の釈明を必要としないと彼らが考えたのではないか、という推測がなりたちえます。</p> <p align="left">ところで、私たちはこの文脈で、3/20 11:30に発表された首相官邸の声明「<a href="http://www.kantei.go.jp/saigai/20110321ame.html">東北、関東の方へ――雨が降っても、健康に影響はありません。</a>」を解釈することが可能でしょう。</p> <p align="left"><a href="http://lh4.ggpht.com/-8gZDyPO57Bg/TgXZsh-wAWI/AAAAAAAAAGQ/kPOEufw71kQ/s1600-h/image%25255B77%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-KUmV-Id85Xo/TgXZtCFRH-I/AAAAAAAAAGU/NjvLBTiiTuA/image_thumb%25255B40%25255D.png?imgmax=800" width="420" height="389"></a></p> <p align="left">この声明を読んで誰もが変だと思うのは、健康には何ら影響がないと言いながら、「雨がやんでから外出」「雨に濡れないようにする」「雨にぬれても心配はないが・・・念のために流水でよく洗う」ことを東北・関東の国民に勧め、そうしなくても「健康に影響」は出ないと言っていることです。表面だけ読めば、言ってることめちゃくちゃですね(笑)。この声明のメタメッセージは、「<strong>健康に被害があることは官邸としては立場上言えないけれども、できるだけ雨に当たらないようにしてください</strong>」ということのように思われます。</p> <p align="left">この声明が、3号機での異常事態の進行にあわせて発表されました。これが、ドライベントを前提としたものなのか、それともドライベントが不可能であることから、格納容器内での爆発的事象の回避が不可能であると彼らが考えたために発表したものなのか、そこは定かではありません。実際のところ、判断するための材料の一つは、午前4時半から10時までのパラメータの詳細な動きがわかれば、ウェットベントに限界があったのかどうかなど、もう少し具体的な判断材料がはっきりするのですが、この間ちょうど5時間以上も、データが欠落しています。そして、<a href="http://www.kantei.go.jp/saigai/201103211900genpatsu.pdf">官邸資料</a>には</p> <blockquote> <p align="left">08:00 3号機に関し、炉内の温度が三百数十度になっており、炉圧が高くなっている</p></blockquote> <p align="left">と記述があります。これは、この時点でデータ採取がなされていた証拠であり、そのデータを(未発表の温度データも含めて)未だ東電は発表していないということになります。だとすれば、この午前8時時点でも、隠蔽せざるを得ない異常な事態がすでに発生していた、という推測が可能かもしれません。</p> <p align="left">そして、午前9:55から11:00にかけて、4回もデータ採取を行っています。そして、この時、原子炉圧力のパラメータが、二つとも、微増源を繰り返しているのが気になります。</p> <p><a href="http://lh4.ggpht.com/-nTQYiR651nY/TgXZt42jLyI/AAAAAAAAAGY/Wi62J81QLgY/s1600-h/image%25255B81%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-pV7wxV0QBQI/TgXZuRPXaAI/AAAAAAAAAGc/1L5weoai7R0/image_thumb%25255B42%25255D.png?imgmax=800" width="396" height="260"></a></p> <p align="center">図19 3/20 原子炉圧力の推移詳細</p> <p align="left">これは想像に過ぎませんが、10-11時の間にドライベントを試みたが、それが失敗に終わったことを示しているのかもしれません。その時点で、格納容器内の爆発的事象は時間の問題となったため、11時30分に官邸が「雨に濡れないように」という主旨の声明を出した、このように考えることもできるのではないでしょうか。</p> <p align="left"><a href="http://lh5.ggpht.com/--ug29lEh9pQ/TgXZupWlBZI/AAAAAAAAAGg/u5HGBJj3whI/s1600-h/image%25255B91%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-7uAht-DXnVk/TgXZvaxwPCI/AAAAAAAAAGk/_MD1IMjJKAw/image_thumb%25255B48%25255D.png?imgmax=800" width="429" height="268"></a></p> <p align="center">図20 東電修正後パラメータ抜粋</p> <p align="left">その後おそらく、15時から圧力容器圧力・格納容器圧力は急降下を始めます。15時で0.155Mpaあった原子炉圧力(A)は、19:40には0.095Mpaに、格納容器圧力は0.189MPaから0.124MPaにまで下降しました。先に述べたように、この時点で格納容器に損傷があったと考えるのが妥当ならば、おそらくは格納容器内で爆発があったのではないかと推測できます。</p> <p>21時30分からの1000トンの放水は、この圧力低下を受けて行われたものでしょうか?爆発的事象が15時前後であると推定するなら、これは遅すぎる対応である気もします。しかし、19:40分から3回、10分刻みで測定していることを考慮すると、彼らはこのときに初めて、圧力低下が注水の結果ではなく、格納容器・圧力容器の破損が原因であると気づいたのかもしれません。(パラメータの値だけではなく、データ測定の頻度や欠落もまた、重要なメタデータです。)あるいは、発表されていないデータで、20時以降に原子炉圧力計(A)が急激に上昇し、それが放水のきっかけになったという可能性も否定はできません。</p> <p><strong>いずれにしても、事実として確実に言えることは、21時30分から翌3時58分まで、異例の長時間にわたって1000トン以上の放水が行われたこと、このときすでに格納容器が破損していたこと、そして放水の間、原子炉圧力計(A)が11MPaを超える異常値を示したことです。<font color="#ff0000">この放水には、2つの意味があったと考えられます。一つは、格納容器・圧力容器の温度低下・圧力低下を目的としていたということ。もう一つは、放水によって、放射性物質の空気中への飛散をできる限り抑えようとした、という目的です。</font></strong></p> <p>21日4:00にデータ採取を行ったところ、原子炉圧力計(A)は、ほぼ正常値である0.202MPaまで下がっています。この間隔の短さからすると、3:58の放水終了後すぐにデータ採取を行ったというよりは、むしろ放水を一時中断してパラメータを測定したところ、ほぼ正常値まで下がっていたため、それをもって放水終了とした、と推測する方が妥当でしょう。すなわち、この時点までに圧力容器が完全に損壊し、圧力容器内の放射性物質放出は止んだ、と東電は判断したのではないかと思われます。</p> <p>ところで、海江田経産相が、東京消防庁に対して長時間の放水を強要し、「速やかにやらなければ処分する」と恫喝まがいのことを言ったとして、21日に石原都知事が菅首相に抗議を行った、と報道されています(<a href="http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110322-OYT1T00290.htm">読売新聞 22日</a>)。ちなみに、21日の官邸資料によれば東京消防庁が長時間放水を行ったのは、19日の14:05-翌3:40と、いま私たちが問題にしている20日21:30-翌3:58の二回なので、この発言が、どちらの放水の時に行われたのかは判然としません。読売新聞によれば、13時間連続放水と言われているため、19日に開始した放水の方と解釈できます。</p> <p>ところが、より情報ソースに近い猪瀬副都知事のブログ記事「<a href="http://www.inosenaoki.com/blog/2011/03/post-8bab.html">福島原発の放水活動で東京消防報告。今後の教訓にしたいこと。</a>」には、次のような記述があります。</p> <blockquote> <p>○ 本部は原発の現場より20km離れたところに前線指揮所が設置されている。 <br>(中略) <br>○ 現場を知らない本部の人達から、東京消防庁が現場で判断した方針を変更するよう度々要求された。 <br>・放水は当初4時間の予定だった。その後状況を勘案し、必要に応じ再度放水することにしていた。しかし、連続して7時間放水し続けるよう執拗に要求された。結果として、7時間放水することになったが、そのため2台ある放水塔車のうち1台がディーゼルエンジンの焼き付きにより使用不能となった。 <br>・東京消防庁にて海から放水塔車までの給水ホースの設置ルートを800メートルの最短距離で、設定していたが、遠回りにするように執拗に要求された。 <br>・「俺たちの指示に従えないのなら、お前らやめさせてやる」の発言もあった。 <br>○ 職員の命を預かる隊長としては、現場をわかっていない人達に職員の命を預けるわけにはいかない。</p></blockquote> <p>当初4時間の予定であった放水が、連続7時間の放水になったと副都知事は述べているわけですが、それは20日21:30に放水を開始しながら、翌1:25、1:45、2:30、4:00とパラメータ測定を行いながら、原子炉圧力計(A)がほぼ正常値に戻るまで放水を続けたという私たちの想像と、ほぼ一致します。ならば、逆に言えば、<strong>放水塔車のディーゼルエンジンを破壊し、また経産大臣が直々に現場作業員に対して恫喝を行いながらも、それでもなお放水を行わねばならない深刻な事情があった</strong>、そしてそれについて、東京消防庁や東京都には知らされていない、という推測が成り立つでしょう。</p> <p>逆に、ごく常識的に考えて、東電・政府は東京消防庁の現場の職員に、今3号機のパラメータと炉心で進行していると思われる事態を説明する必要がないため、現場の作業員としては「現場をわかってない人たちに不可解で、かつ実行に無理がある指示をされた」という憤りを感じることは必然です。</p> <p>ともあれ、この、おそらくは確度が高いと思われる推測が意味するものは、非常に大きい。なぜなら、このとき<font color="#ff0000"><strong>東電ばかりでなく、経産大臣をはじめとした菅政権の中枢部分が、3号機で起きていた異常事態を周知していたということを</strong></font>意味しているからです。</p> <p> </p> <p>さて、3/21の14:30に、事故後初めての海水サンプリング調査を東電は実施したことは、みなさんご記憶の通りです。<a href="http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110322a.pdf">東電の発表</a>によると、その調査によって基準値を大幅に上回るI-131、Cs-134、Cs-137が検出されました。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/-V5CTLPemFNY/TgXZvsAfaHI/AAAAAAAAAGo/AsVyuNJ7v9I/s1600-h/image%25255B95%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-3Er60mtScMY/TgXZwDZJ9WI/AAAAAAAAAGs/0WT2x-HWUO0/image_thumb%25255B50%25255D.png?imgmax=800" width="289" height="181"></a></p> <p>図21 東電発表 3/21 海水サンプリング核種分析</p> <p><strong>なぜ、この時期になって初めて東電は海水サンプリング調査を行ったのか。それは、3号機からの放射性物質の放出を防ぐために放水した大量の水の一部が、おそらく海に流れ込んだからだ</strong>、と考えれば辻褄が合います。</p> <p>また、<a href="http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a5%d7%a5%eb%a5%c8%a5%cb%a5%a6%a5%e0&k=201103/2011032700148">3月27日の時事通信</a>によると、<strong>21・22日に東電は福島第一原発敷地内の土壌を採取して、プルトニウムの検出検査を行ったことも</strong>、20日にMOX燃料を使用している3号機の格納容器内で爆発があったと考えると符合します。そして実際に、28日の東電の発表によると、プルトニウム238、239、240が検出されました(<a href="http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110329-OYT1T00003.htm">3月29日 読売新聞</a>)。これも、3号機格納容器が爆発したことの有力な証拠になるでしょう。</p> <p> </p> <p>3号機の話に戻ると、21日15時から灰色の煙が放出されていることが確認されました。23日の<a href="http://www.kantei.go.jp/saigai/201103231900genpatsu.pdf">官邸資料</a>(削除済み)から引用します。</p> <blockquote> <p>15:55 3号機に関し、灰色の煙が噴出(調査中) <br>16:49 3号機の煙に関し、煙量に変更はないが、灰色から白色に変化 <br>18:02 3号機に煙に関し、沈静化を確認</p></blockquote> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/-b9lixe6LtQw/TgXZwhiVPrI/AAAAAAAAAGw/sFsJ1MoqPHI/s1600-h/image%25255B100%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-pIU-BF9W7K0/TgXZxF6lU4I/AAAAAAAAAG0/OQ3PmnleEnU/image_thumb%25255B53%25255D.png?imgmax=800" width="416" height="313"></a></p> <p align="center">図22 3/21 3号機の煙の様子 共同通信 東京電力提供</p> <p>また、この煙について、<a href="http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/03/22/kiji/K20110322000473800.html">sponichi</a>の記事では次のように書かれています。</p> <blockquote> <p>東京電力によると、21日午後3時55分ごろ、3号機の原子炉建屋屋上の南東側から煙が上がっているとの連絡があった。煙は黒色で、時折灰色に変わりながら減少。6時ごろに収まった。煙の発生場所は使用済み燃料プールの上側。放水作業のため正門近くにいた東京消防庁の部隊は約20キロ離れた指揮本部に退避。安全が確認されるまで放水活動を中止する。東電の作業員も避難し、復旧へ向けた作業は1日程度足踏みする見通しとなった。</p></blockquote> <p>原子炉の構造を考えれば、使用済み燃料プール上側ということは、原子炉の上側ということになります。そして、この煙がどういうものかははっきりとはわかりませんが、官邸資料にあるように、灰色から白色に変化したということは、水蒸気が混じっているであろうことは推測できます。</p> <p>さて、この煙は、以前に述べたように、非常に謎が多いものです。まず<strong>第一に、なぜ煙の原因は現在まで特定できなかったのか</strong>。<strong>第二に、なぜ東電は消火活動を行わなかったのか</strong>。しかも、<strong><font color="#000000">放水活動を行う準備ができている東京消防庁の部隊が、現場付近にいるにも関わらず</font></strong>。第三に、「3号機の原子炉圧力容器および原子炉格納容器のパラメータ、周辺環境のモニタリング値に大きな変動」はみられない(<a href="http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032102-j.html">東電発表</a>より)としながらも、<font color="#29303b"><strong>なぜ作業員は退避したのか</strong></font>。さらに東京消防庁の部隊は、なぜ煙が出ているのを見ながらも、20kmも退避したのか。</p> <p>こうしたことを総合すると、<strong><font color="#ff0000">この煙が通常の火事では決してないということを、東電が熟知していたということを示唆している</font></strong>、としか私には思えません。</p> <p>では、反対方向から推論してみましょう。私たちは、すでに3号機格納容器と圧力容器が破損していることを、パラメータから確認しました。その時の原子炉内の温度は発表されていないものの、<a href="http://bit.ly/lq3qWL">原子力安全・保安院のデータ</a>によると、3月23日4:00の圧力容器底部の温度は253度もあり、かつ内部に水分が存在するため、多かれ少なかれ原子炉から水蒸気が放出されることは物理的に必然です。</p> <p><strong>逆に言えば、東電はこの煙を決して原子炉から放出されたものと認めることができません。なぜなら、それを認めたならば、圧力容器も格納容器も破損していることを認めざるをえないからです。だから、長期間にわたって「原因不明」とみなしながら、消火活動も行わずに放置した。しかし、この煙が放射性物質を大量に含んでいることが明らかなため、作業員を退避させた。このように推測すれば、東電の行動は、非常に納得がいくものとなります</strong></p> <p><font size="1">※ちなみに、なぜ煙が当初灰色で、その後白色に変わったのか、この問題に関しては、専門家の見解を仰ぎたいところですが、フランスのIRSNは、これはコアコンクリート反応であったという見解を提出しています。(</font><a title="http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2792610/7005562" href="http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2792610/7005562"><font size="1">http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2792610/7005562</font></a><font size="1">)</font></p> <h3>東京電力の隠蔽工作・印象操作について</h3> <p>今まで、3月20-21日にかけての関東地方のフォールアウトが直前の3号機から放出されたものであるという仮説について、気象やプラントパラメータ、東電・政府の行動など様々な角度から検証してきました。その結果、3号機格納容器内で爆発的事象が発生したことは疑いようがなく、さらにそれが再臨界を伴っていた可能性まで示唆されました。</p> <p>そうだとすれば、東電・政府はこの極めてシビアな事故を、現在に至るまで隠蔽し続けていたことになります。いかにして、このようなことが可能だったのでしょうか。おそらく、この問いをいま、直截的な形で、メディアや研究者たちに向けることは、さほど生産的なことではないでしょう。ただ、東電がこの事態をどのように隠蔽してきたのか、その印象操作の一端を簡単に見せておくことは、私たちにとって非常に有意義なことだと思います。そのことを通じて、私たちが今後、情報操作に惑わされないような教訓を得ることができるからです。</p> <p>まず、前節最後に述べた、3号機の煙の話です。21日15:55分-18時までの煙の発生前後で、「3号機の原子炉圧力容器および原子炉格納容器のパラメータ、周辺環境のモニタリング値に大きな変動」はみられない(<a href="http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032102-j.html">東電発表</a>)と東電が述べたため、これが異常な事象の兆候である、とは一般に受け止められなかったきらいがあります。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/-E1kr8AV6f7c/TgXZxhceSJI/AAAAAAAAAG4/fgUXH-W6jNE/s1600-h/image%25255B108%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-1m5xbS1zleg/TgXZyAynj9I/AAAAAAAAAG8/4FeiCQfNZKU/image_thumb%25255B57%25255D.png?imgmax=800" width="385" height="139"></a></p> <p>図23 <a href="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11051612_level_pr_data_3u-j.pdf">東電発表修正パラメータ</a>抜粋 右がD/W圧力(絶対圧)、その左の二つが原子炉圧力(ゲージ圧)</p> <p>ところが、実際のパラメータを見ればわかるのですが、煙が出始めた時点では、すでに格納容器圧力も圧力容器圧力も、ほとんど大気圧と平衡になっており、それゆえ両方とも破損していたことが確実だったのです。これでは煙がでても、原子炉パラメータに「大きな変動」が見られるはずがありません。当然、東電はこのことを知っていたはずです。</p> <p>また、<strong>東電発表のパラメータを、修正前と修正後を比較すると、データを間引きすることでどのような印象を東電が作ろうとしてきたのかも</strong>見て取ることができます。</p> <h4></h4> <h4></h4> <h4><a href="http://lh3.ggpht.com/-TiShPIQ1xU8/TgXZyX_k_3I/AAAAAAAAAHA/cSEPYcjFfiU/s1600-h/image%25255B113%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-DZPywWC96bc/TgXZy958CLI/AAAAAAAAAHE/E7wH5gLzPqs/image_thumb%25255B60%25255D.png?imgmax=800" width="406" height="300"></a></h4> <p align="center">図24 格納容器内放射線量 修正前(赤線) 修正後(青線)</p> <p align="left">たとえば、3号機格納容器内CAMS(A)(=放射線量)のグラフですが、修正前は赤の点で断続的にのみ発表されていました。これだけ見ると、順調に放射線量が下がっていったかのように見えます。ところが、修正後のパラメータをグラフにしてみると、そのグラフの直前に放射線量が急増しており、その後18-20日までの間に乱高下していたことがわかるのです。</p> <p align="left">また、修正後パラメータで設計圧力を大幅に超える11.5MPaを記録した原子炉圧力(A)(図14参照)に至っては、<strong>修正前はデータそのものが公表されていませんでした</strong>。</p> <p align="left"><a href="http://lh3.ggpht.com/-14jifkcCR8U/TgXZzYH4lRI/AAAAAAAAAHI/pH2oC_mA-ds/s1600-h/image%25255B121%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-cSqW93t9b_Y/TgXZzhGpt3I/AAAAAAAAAHM/i-uqUS-OPO4/image_thumb%25255B64%25255D.png?imgmax=800" width="414" height="253"></a></p> <p align="center">図25 修正前原子炉圧力(A) (3/21発表官邸資料)</p> <p align="left">では、東電による修正後のパラメータには問題がないのでしょうか。私たちは、すでにそれに関しても、存在するはずのパラメータが発表されていない、として疑念を唱えましたが、一つ決定的な印象操作が見られます。<a href="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/11051612_level_pr_data_3u-j.pdf">修正資料</a>の1ページ目のグラフをお見せします。</p> <p align="left"><a href="http://lh6.ggpht.com/-thwc7ma9pNc/TgXZ0Br8jXI/AAAAAAAAAHQ/hUUaKB4EcLg/s1600-h/image%25255B125%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh3.ggpht.com/-F2cZXT0surk/TgXZ0iP39tI/AAAAAAAAAHU/Nrd0Pr37cbM/image_thumb%25255B66%25255D.png?imgmax=800" width="425" height="264"></a></p> <p align="center">図26 東電修正資料1ページ目、3号機水位・圧力にかんするパラメータ</p> <p align="left"><strong>このグラフには、3/21未明の原子炉圧力(A)の異常値が表示されていません</strong>。</p> <p align="left">なぜ、このようなことが可能だったのでしょうか。この答えは、3/21未明の異常値が、8.968, 11.571, 10.774と、すべて縦軸(右側)の最大値8MPaを大幅に超えていたことにあります。逆に言えば、<strong>東電は、この異常値をグラフに残さないために、わざとグラフの最大値を8MPaに設定したと</strong>疑るのは、決して不穏当なことではないでしょう。逆に、最大値をもっと小さく取れば、21日の推移がより具体的に見えることになるでしょう。つまり、8Mpaという最大値は、21日の事態をもっとも小さく見せることができる値です。これは、決して偶然ではない、すなわち、東電は、<strong>パラメータを精査せずグラフだけ見た人に、20-21日に特別な緊急事態が起こったという印象を与えないために恣意的な操作を行った</strong>、と言って差し支えないと思います。</p> <p align="left"> </p> <h3 align="left">追記</h3> <p align="left">このブログ記事執筆後、ブログコメントやTwitterなどで寄せられた情報の中で、個人的に重要だと思われるものについて記していきたいと思います。</p> <p align="left"><a href="http://lh3.ggpht.com/-rsFFzntBIaw/Tgrbr-q17YI/AAAAAAAAAHs/432IR9606KQ/s1600-h/image%25255B3%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh5.ggpht.com/-n1_2YX11ioM/TgrbszXnfCI/AAAAAAAAAHw/V5n8Ci0d3b0/image_thumb%25255B1%25255D.png?imgmax=800" width="500" height="384"></a></p> <p align="center">図25 3/20 15時-17時30分 福島第一原発放射線量サーベイ</p> <p align="left">これは、コメントで、ふるじゅんさんから教えていただいたものです。色々出所などを調べてみましたが、3/22に2chにこの画像だけ投稿されたものが初出のようで、それ以上の情報はほとんどわかりません。ただ、このフォーマットによるサーベイ結果自体が東電によって公式に発表されたのがずっと後であることなどから考えて、捏造の可能性は非常に低いと個人的には思います。関係者がリークしたものと考えるのが妥当でしょう。その観点で見ると、3号機周辺、とりわけ風下である西側・北側の線量で100mSvを超えるなど異常に高いことから、本記事での推測(15時前後に格納容器破損)と見事に一致します。</p> <p align="left">もし、仮にこの情報が誤っていたとしても、17-21日のモニタリングポストの値などはほとんど公表されていないことが最大の問題な訳で、こうしたリーク情報を東電に突きつけることで、東電にデータを提出させることがもっとも重要だと私は思います。</p> <p align="left">と、思って追記したあと、ちょっと調べてみたら、東京電力が3/23のサーベイマップを公表していたことに気がつきました。</p> <p align="left"><a title="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/index3-j.html" href="http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/index3-j.html">http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/index3-j.html</a></p> <p align="left">一番古いものが3/23で、これは上のサーベイ結果と基本的に矛盾していませんね。</p> <p align="left"><a href="http://lh4.ggpht.com/-ZOLuZZYP8_E/Tgrkeg4PJHI/AAAAAAAAAH0/yzP9jIphyHk/s1600-h/image%25255B7%25255D.png"><img style="background-image: none; border-right-width: 0px; padding-left: 0px; padding-right: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px; padding-top: 0px" title="image" border="0" alt="image" src="http://lh6.ggpht.com/-0OhbuZ6An8Y/TgrkfA3HeJI/AAAAAAAAAH4/A6kPAMuLCBI/image_thumb%25255B3%25255D.png?imgmax=800" width="491" height="379"></a></p> <p align="center">図26 3/23 福島第一原発サーベイマップ (東京電力公表)</p> <p align="left">ただし、このPDFのプロパティを確認したところ、4/25作成です。</p> <p align="left"> </p> <p align="left">ところで、東大の早野龍五先生の3/15大放出説に関するダイアログを残しておきます。</p> <blockquote> <p>ishtarist 岡田直樹 <br>@hayano 不躾ながら質問よろしいでしょうか?以前に、大規模放出は3/15以降なく、3/21のフォールアウトは雨によるものだ、という説を提唱されていたと記憶しております。その後、5月末のツイートを拝見したところ、20日前後に放出があった可能性を示唆されているように見えました。<br><a title="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025459539779584" href="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025459539779584">http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025459539779584</a></p> <p>ishtarist 岡田直樹 <br>@hayano 当初の説は、撤回されたと考えてよいでしょうか?それとも、まだ、可能性としてはありうると考えていらっしゃるのでしょうか?くだんの説は、社会的影響力が非常に大きく、そのまま信じている人が多いため、現在の早野先生の見解を是非お訊きしたく存じます。<br><a title="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025900604407808" href="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025900604407808">http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86025900604407808</a></p> <p>hayano ryugo hayano <br>@ishtarist ご質問ありがとうございます.3/21早朝ににプルームが茨城を通過した様子など,これまでにも繰り返しツイートしております,3/15の物とは別のプルームが南下し雨によって地面に落ちました.<br><a title="http://twitter.com/#!/hayano/status/86027713198043136" href="http://twitter.com/#!/hayano/status/86027713198043136">http://twitter.com/#!/hayano/status/86027713198043136</a></p> <p>ishtarist 岡田直樹<br>@hayano お返事ありがとうございます。ということは、15日までに放出されたという以前の説は、基本的には撤回されたと考えてよろしいでしょうか?<br><a title="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86031356634742784" href="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86031356634742784">http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86031356634742784</a></p> <p>hayano ryugo hayano <br>@ishtarist はいtwilogをまだ調べてないのですが,かなり前にそのように認識しました.<br><a title="http://twitter.com/#!/hayano/status/86032057393881088" href="http://twitter.com/#!/hayano/status/86032057393881088">http://twitter.com/#!/hayano/status/86032057393881088</a></p> <p>ishtarist 岡田直樹 <br>@hayano 了解しました、お手数おかけいたしました。ありがとうございます<br><a title="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86032239808352256" href="http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86032239808352256">http://twitter.com/#!/ishtarist/status/86032239808352256</a></p></blockquote> <p> </p> <p align="left">以上、批判・反論・補足など歓迎いたします。</p> <p align="left">筆者への連絡は<a href="ishtar@gaia.eonet.ne.jp">こちら</a>までお願いします。</p> <p align="left">追記 マスコミ関係者各位、もし記事にしたい方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com36tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-68624798201628053212010-08-01T00:42:00.001+09:002010-08-01T08:33:56.602+09:00消費税増税のシミュレーション 2 予測編<p>さて、<a href="http://ishtarist.blogspot.com/2010/07/1.html" target="_blank">前回のブログ</a>、消費税増税シミュレーションのメタ理論編に引き続いて、消費税増税について検討してみましょう。</p> <p>まず、消費税増税をすると、年金不安が解消されて消費が増え、デフレが解消されると自民党の谷垣総裁が発言し、菅首相も同様の発言をその後したと記憶していますが、それは明らかな誤謬です。というのは、すでに見たように、個人消費の低迷は、そもそも民間給与総額の低下にあるからです。収入が減っているのに、「年金は将来も安心だからお金をぱーっと使おう」と思う人はいませんよね(笑)。というか、思っても、先立つものがなければどうしようもありません。それに、少なくとも年金不安より大きな問題は、収入不安・雇用不安です。もし将来的に収入が減る、あるいは解雇されるという恐れがあるならば、消費は抑制されます。つまり、個人消費を決定する要因は、おそらく</p> <p><strong>現在の収入>近い将来の収入・雇用不安≫年金不安</strong></p> <p>です。</p> <p>もう一つ検討しないといけないことがあります。消費税増税は、政府でどのように使われるのか、です。つまり、財政再建のためなのか、それとも小野理論が提唱するように、福祉目的の雇用に使われるのか、という問題です。後者だとすると、消費税増税前に法人税を減税すべきだとなぜ主張されているのか、整合性がとれません。まあ、財政再建のためだとしても、法人税減税と整合性はとれないのですが(笑)。ともあれ、今回の消費税増税騒ぎのバックにいると思われる財務省や財界の動き、そして現在の民主党政権の動向から考えるならば、消費税を増税してその分福祉が充実する、という期待は、あらかじめ念頭から排除しておいた方が、国民としては賢明でしょう。</p> <p>ちなみに、私の前稿を読んで理解してくれた人は、法人税減税で景気が回復する見込みがまったくないことも、容易に理解してくれると思います。というのは、減税された分、従業員の給与に還元される可能性は、現在の日本では限りなく低く、それゆえ個人消費も低迷するからです。これでは設備投資需要は生まれませんし、余ったお金は世界のどこかでバブルを発生させるだけです。そしてバブルは必ずはじけ、また企業の債務超過を生み出します。そもそも、企業の内部留保の拡大(≒賃金抑制)こそがデフレの最大の原因だったわけですから、法人税減税は、財政赤字を増やさない限り、デフレを生み出すのです。</p> <p> </p> <p>さて、消費税を増税すると、何が起こるのか推測してみましょう。過去の増税の時から考えると、増税前のかけこみ需要と、その後の消費の大幅な冷え込みがあるはずですが、一時的な現象であるのと、またその後の効果を計算しづらいこともあり、今回は捨象します。とりあえず、確実に言えることは、貯蓄率が一定であると仮定するなら、消費税を5%増税すると可処分所得が事実上目減りするということです。</p> <p>たとえば、今、私が10500円持っていたとします。それで、10000円のモノが買えていたわけです。ところが、消費税が10%になると、</p> <p><strong>10500÷1.10=9545円</strong></p> <p>しか使えなくなるわけです。</p> <p>つまり、可処分所得が</p> <p><strong>(10500÷1.10)÷(10500÷1.05)=95.45%</strong></p> <p>に減るというのと事実上同じなのです。</p> <p>さて、そうすると、貯蓄率がもし一定という条件ならですが、個人消費が4.55%減ります。ということは、<strong>消費税を5%引き上げると言うことは、個人・家庭向けに商品やサービスを売っている企業の売り上げ(利益でも粗利でもなく、売り上げです!)が、自動的に4.55%減るということです</strong>。もちろん、この売り上げ減は、自動的に物流業や卸売業、製造業などに波及し、また設備投資需要も大幅に落ち込ませるので、完全に海外向けの製造業以外、日本経済のほぼ全領域にその効果は行き渡ります。</p> <p>(このあいだも言いましたが、もう一度言わせてください。利益に対する税である法人税の減税の代わりに、売り上げを自動的に落ち込ませる消費税増税を要求する財界は、朝三暮四の猿より頭が悪いです)。</p> <p>前稿で見たように、<strong>個人消費総額と名目GDPは完全に連動しています。それゆえ、個人消費総額が4.55%減れば、名目GDPもまた、だいたい4.55%程度下落するのです。</strong></p> <p>さて、売り上げあるいは名目GDPが4.55%減ると、大部分の企業の収益は大幅に悪化します。そして、これが消費税減税の、いわば恒常的な効果であることを(やっとその時点になって)理解し、疑いなくリストラや賃金カット、サービス残業の拡大、非正規雇用への切り替え、などなどによる賃金抑制で対処しようとするはずです。そうすると、さらに個人消費が落ち込み、さらにリストラが進行し・・・このデフレスパイラルが続くのです。</p> <p>前稿でも述べたように、この賃金抑制と個人消費低迷のデフレスパイラルは、すでに90年代末から少しずつ進行しており、それが日本経済のデフレの大部分の原因でした。そのメカニズムが、消費税増税によって、いっきに増幅するのです。</p> <p>では、増税後のデフレスパイラルは、どの程度の規模になるでしょうか?ここで、景気後退期に、リストラおよび賃金カットによって、どの程度賃金が抑制されたのかを示す「雇用弾性値」および「賃金弾性値」の過去の統計が参考になります。</p> <p><a href="http://lh6.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFRERNndA0I/AAAAAAAAADQ/Kq8XVoctBTY/s1600-h/%C3%87%28%3E%27%24%C3%BB%C3%83%C3%91%3E%27%24%5B4%5D.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="雇用弾性値・賃金弾性値" border="0" alt="雇用弾性値・賃金弾性値" src="http://lh4.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFRER6RQOHI/AAAAAAAAADU/PgQHF9IS7Fc/%C3%87%28%3E%27%24%C3%BB%C3%83%C3%91%3E%27%24_thumb%5B2%5D.jpg?imgmax=800" width="377" height="258" /></a> </p> <p>これは、例によって『平成21年度労働経済白書』のp151から採らせてもらいました。90年代末の景気後退期では、GDP1%減につき、賃金総額が0.91%低下したことがわかります。2000-2002年ではそれが1.03%に増えています。これは、非正規雇用の拡大やリストラの合法化による、労働環境や雇用の不安定化が如実に表れています。もっとも、2007年度末からの景気後退過程では、2008年度の末までには雇用減が見られなかったため、雇用弾性値はわずかにマイナスになっていますが、実はその次の四半期から失業率の大幅な悪化が見られており、この景気悪化期全体で1.6%程度上昇していました。GDPの落ち込みがだいたい4%ですので、後退全期間の雇用弾性値は、概算で0.40程度だと思われます。賃金弾性値も引き続き悪化しているので、きっちり計算していないですが、景気後退過程全体では、1.1ポイント程度だったのではないかと推測するのは、おそらく的外れではないでしょう。</p> <p>引き続き雇用条件が悪化していると考えるならば、次に、数年後、消費税増税で景気が後退したときに、賃金弾性値・雇用弾性値あわせて、1.2ポイント低下すると予測するのが妥当なところでしょう。さしあたり、<strong>GDP1%下落につき、給与総額が1年間で1%、次の1年間で0.2%低下する</strong>、と仮定してみます。</p> <p>そして、<strong>この賃金低下が、そのまま個人消費の低下に直結すると</strong>便宜上仮定します。これはもちろん、現実にはありえないことです。本来は、失業保険の効果、預金取り崩しによる貯蓄率の減少なども考慮にいれないといけないのですが、一方で、賃金カットやリストラに遭ってない人も、雇用不安とデフレのため貯蓄率を増加させる可能性が高いため、計算を簡単にするため、この両者は相殺すると考えます。</p> <p>さらに、もう一つ考慮に入れなければならないことは、賃金低下によるデフレは、実は98年度からすでに始まっているということです。消費税増税がなくとも、あるいは好景気であっても、賃金は年間わずかずつ減少していっていると、さしあたり仮定しておかないと、正確な予測が困難です。実際、1997年と2007年の名目GDPはどちらも515兆円ですが、給与総額は220兆円から201兆円と、約10%低下しています。とは言っても、これは00年代前半に給与が急激に下がったことを反映しているため、その点を差し引いて、年間0.7%ずつ給与総額は自動的に低下する、ととりあえず仮定しておきましょう。(このあたりの処理方法は、相当に議論の余地があります。)</p> <p>ついでに、個人消費総額280兆円の内訳ですが、そのうちどの程度、民間給与所得から支出されているのか、それがかなりの難問です。マクロで見ると、日本人の平均貯蓄率はだいたい3-4%(国民経済計算による)なのですが、家計調査によると勤労者家計の貯蓄率は30%前後の高率を保っています。これは、高齢者の預金取り崩しを差し引いても、まったく計算があいません。ので、とりあえず<strong>民間給与所得者の貯蓄率を15%</strong>と仮定し、<strong>280兆円のうち、民間給与家計からの支出が170兆円、残りが110兆円</strong>と考えましょう。この110兆円の内訳は、公務員給与と年金(この二つでおそらく70兆円弱)、自営業収入、家賃収入、株式配当、預金取り崩しですが、これらは当然景気変動によっても変わってくるはずですし、年金は増えるはずですが、正確な計算がほぼ不可能なので、全体として、便宜上定数とみなします。</p> <p>さて、これで準備が整いました。あとは、前稿で述べたように、現在の経済システムにおいて、<strong>個人消費と名目GDPがほぼ完全に連動する</strong>、</p> <p>具体的には</p> <p><strong>名目GDP≒個人消費総額÷55.5%</strong></p> <p>という条件を足して、エクセルで計算するだけです。結果はこちら。</p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFRESQaZbNI/AAAAAAAAADY/x_TBDBhkBUU/s1600-h/Image.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="消費税増税シミュレーション2" border="0" alt="消費税増税シミュレーション2" src="http://lh4.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFRES39k3dI/AAAAAAAAADc/yNqPv2lQ0I8/Image.jpg?imgmax=800" width="400" height="245" /></a> </p> <p><strong><font color="#ff0000">5年間でGDPが16.0%、10年で21.1%下落しました</font></strong>。</p> <p> </p> <p>(以前にTwitterでは5年で18%、10年で27%と書きましたが、なぜ違いが出たのか説明します。前回は、民間家計の貯蓄率を10%と考えましたが、調べた結果、15%の方がより実態に近いのではと推測し、変更しました。また、前回のシミュレーションでは、消費税増税にあわせて、毎年1.0%給与総額が低下させる効果があると考え、それらをあわせて、個人消費低下→翌年の給与総額低下を累乗的に計算しましたが、今回は0.7%定率で低下すると考え、消費税増税の効果のみを累乗化して計算しています。実際のところ、どちらがより正確な計算が可能なのか判断は難しいです。あるいは、この賃金低下を初期値にのみ入れて計算するべきなのかもしれません。いずれにしても、5年予測では、14-17%のGDP減少という結果が出ます。10年予測になると、さらに差が開くのですが、たぶんその頃には経済構造も変わっており、政府の施策も何かしら出てくるか、あるいは完全に大恐慌に突入しているので、この予測には意味がなくなっている可能性が極めて高いです。)</p> <p> </p> <p>しかし、なぜ消費税をたった5%増税しただけで、ここまでのメルトダウンが発生するのでしょうか?たぶん直感的には考えづらいことですが、そのメカニズムを端的にあらわすグラフがこちらです。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFREUSKLvbI/AAAAAAAAADg/FskA-Ro5q-0/s1600-h/Image.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="消費税増税時の給与総額低下率" border="0" alt="消費税増税時の給与総額低下率" src="http://lh4.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFREUy8syzI/AAAAAAAAADk/utsuAv-rulw/Image.jpg?imgmax=800" width="407" height="286" /></a> </p> <p><strong>消費税増税で個人消費が(前年からの給与総額低下とあわせて)5%下落し、それが給与総額を5%以上削減させ、さらに個人消費の低下が続き、・・・この縮減プロセスが10年以上にわたって均衡化していく様子が理解できると思います。</strong></p> <p> </p> <p>以上が私の定量的なシミュレーション結果です。私が扱ったのは、むろん経済的現実それ自体ではなく、計算を容易にするために単純化されたモデルにしかすぎません。将来的に、私あるいは他の人が、より正確なシミュレーション、より正確な推測を行うために、もう一度、このシミュレーションにおいては、何が捨象され、何が考慮に入れられていないのか、説明しておきます。預金の取り崩しによる貯蓄率の変化は無視していますし、失業保険の効果についても考慮に入れていません。もちろん、その他の景気変動、為替など対外的要因、あるいは政府の施策については予測不能なので、捨象しています。また、最低賃金の効果も考慮していません。</p> <p>さらにもう一つ考慮に入れていないのは、株価の変動や連鎖倒産、金融恐慌などですし、産業構造の変化も考慮に入れていません。というのは、この縮減プロセスでは、基礎的支出を担う産業についてはあまり影響がないでしょうが、選択的支出を担うサービス業などが、一定の時期を過ぎると持続不可能になり、倒産する企業が続出するでしょう。なので、産業構造も大幅に変化するはずですし、予測よりも失業率はむしろ高くなるでしょう。</p> <p>また市場の心理的効果も含めて予測してみると、こういう風に事態は推移するんじゃないかと思います。消費税増税前に駆け込み需要があり、その次の四半期で、数十パーセント単位で個人消費が低迷します。ここまでは、市場も最初から予測しているでしょう。その後、ある程度回復しますが、増税前より回復しないため、その時点で経済学者や経営者たちは、消費税増税で個人消費が減ったことに(今更ながらw)気づき、その新たな環境に適応するために、各企業は賃金を抑制します。でも、その合成の誤謬の結果は予想していません。ごく一時的な縮小均衡だと思っていたのに、2年たっても3年たってもGDPが年率2%以上落ち続けるため、市場はその原因を理解できず、パニックになり株価が暴落、金融恐慌の発生、債務超過による連鎖倒産が発生するでしょうし、企業はより一層内部留保を高めようと賃金を激しく抑制し、家庭は自分たちの身を守ろうと貯蓄率を高め、加速度的に経済が急降下する。</p> <p>まあ、もっとも、海外の投資家は(日本の市場よりもたぶん)賢いため、1997年の消費税増税時とまったく同じ事態が、さらに大規模に起きる可能が、実は最も高いのかもしれません。つまり、消費税増税=財政再建をしはじめて数ヶ月で、これからの日本経済に何が起こるかを予測し、円と株のを売り始め、銀行の債務超過から金融恐慌が発生し、一気に大恐慌に突入するというシナリオです。</p> <p>発生時期はともかく、この十分に起こりうる大恐慌に対して、政府が何もしない訳もないですが、そもそも消費税を増税してしまう彼らの経済感覚では、適切な薬を投与できる可能性は極めて低いと考えざるを得ません。つまり、あいも変わらず量的金融緩和や法人税減税、財政再建などで対処しようとして、経済を完璧に崩壊させるでしょう。</p> <p>あるいは、政府が仮に正しい手段、すなわち財政出動をしたとしても、おそらく百兆円規模の支出を迫られるため、かえって財政赤字が増大するでしょう。</p> <p> </p> <p>以上が、私の暫定的な予測です。批判・異論・反論歓迎いたします。私の議論を、消費税増税について、より正確に考える際の、一つの踏み台にしてもらえればと願っています。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-60571969468184050962010-07-31T02:26:00.001+09:002010-07-31T02:51:34.374+09:00消費税増税のシミュレーション 1 メタ理論編<p>消費税増税で日本経済がどうなるかシミュレーションしてみたので、その根拠と計算方法、そして限界を示しながら説明したいと思います。</p> <p>先日、Twitterで、消費税増税後5年後、10年後のシミュレーション結果を提示したのですが、多くの人は、私のシミュレーション結果と、経済学者や政府が言っていることとの間に大きな乖離があることに驚いたことでしょう。なぜ、かくもかけ離れているのか、それは経済にかんする理解の相違に基づくわけですが、まずそれを本質的なところからまず説明してみたいと思います。</p> <p>まず、一国の経済システムは主要な四つのプレイヤーに分かれます。企業・家庭・銀行・政府(日銀含む)、です。企業の内部にも様々な産業があり、それらが(たとえば卸売業と小売業を物流業が媒介するというように)複雑に連関しあっているわけですが、そうしたことを捨象すると、だいたい図のようになります。 </p> <p><a href="http://lh3.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMOWmoJ-RI/AAAAAAAAADI/TFDJVQk_TvQ/s1600-h/Image.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="国家経済モデル" border="0" alt="国家経済モデル" src="http://lh6.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMOXPmGchI/AAAAAAAAADM/-nsmYJFwoik/Image.jpg?imgmax=800" width="385" height="387" /></a> </p> <p>この図では線はお金の流れを示しています。青い線は、たとえば商品や労働力と引き替えにお金を支払う、実体経済のコアの部分です。言い換えれば、この青の線と逆方向に、モノやサービスが回り続けています。緑の線は、お金の貸し借りをあらわしており、そこには国債購入や年金なども含まれています。赤い線は、税金をあらわしています。この図には、いくつかの要素が欠けていて、たとえば日銀が米国債を買ったり、銀行や企業の海外への資金流出などもあるはずですが、とりあえずその実態がどれぐらいの規模なのか調べていないので、今回は省きました。</p> <p>この図のポイントは、日本経済の実態にあわせて、あくまでだいたいですが、流通金額と線の太さと比例させて書いているということです。そして、図のようにお金が、時に速くなったり遅くなったりしながら、ぐるぐる回りつづけて自らを再生産する、それが経済システムなのです。</p> <p>ここからわかるように、私たちの経済システムの中核は、家庭と企業、そして企業間の経済循環であって、その他の取引は、それを補完したり調整したりする、いわば周辺部分なのだ、ということです。たとえば、今の日本のGDPはだいたい500兆円ですが、民間給与の総額が200兆円、個人消費の総額が280兆円です。それに対して、グローバル化とか言われていますが、輸出総額は70兆円、輸入総額は60兆円程度にすぎません。国内での企業間取引もあわせると、海外との貿易は、国内経済の、たった5分の1以下の影響力しかないのです。</p> <p>あるいは、「みんなの党」などリフレ論者が主張する量的緩和ですが、それは政府・日銀が、銀行などから直接国債を買うことで資金供給しましょう、そしたら<strong>「理論上は」</strong>お金が溢れてインフレになりますよ、ということです。でも彼らは、2001年からの量的緩和の<strong>「実際の」</strong>効果の程をあらわすこのグラフについてどのように説明するつもりなのでしょうか? <a href="http://lh5.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLRsLrNUI/AAAAAAAAACw/05_WusxJK0I/s1600-h/%C3%91%C2%8D%C3%A9%C2%8Cn1W%5B9%5D.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: block; float: none; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="金融緩和の失敗" border="0" alt="金融緩和の失敗" src="http://lh5.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLSIm1UoI/AAAAAAAAAC0/s16ZlQY8iNk/%C3%91%C2%8D%C3%A9%C2%8Cn1W_thumb%5B7%5D.jpg?imgmax=800" width="362" height="228" /></a></p> <p></p> <p>このグラフは、<a href="http://amzn.to/bZO4Fz" target="_blank">リチャード・クー『「陰」と「陽」の経済学』</a>の45ページにあります。量的緩和をおこなっても、民間向け信用は減り続けています。なぜ、理論に反して、このような事態になったのか、リフレ論者は説明できているのでしょうか?もしそのメカニズムを彼らがわかっていないのだったら、今後も同じ政策を採用しても、同じ失敗を繰り返す可能性が高い。普通の人ならそう考えます。</p> <p>例えば、栄養失調患者の症状を示している患者がいるとしましょう。直感的には、栄養を与えれば栄養失調からは回復できる、と考えます。そこで医者は、ニンニクエキス、うなぎ、などを患者に与えますが、どんどん弱っていきました。そこで医者は「栄養がまだ足りてない」と考え、ニンニク20個、ウナギ10匹で効かなければウナギ30匹、そしてダメなのでスッポンやマムシの生き血を大量に飲ませます。その努力に反して、患者はどんどんと衰弱していく・・・。まさにこんな印象を上のグラフは抱かせます。</p> <p>この医者の何がダメだったのでしょうか?「思い込みが強いところと、反省しないところ」。確かにそのとおりです(笑)。反論の余地はありません。まあ、理論的な間違いを言えば、栄養を与えれば、自動的に栄養失調が改善されると考え、栄養が吸収されるメカニズムについてまったく考慮していないのが間違いだったのです。つまり、患者は栄養摂取不足ではなく、胃腸が極度に衰弱していたために、栄養が吸収できないのが、栄養失調の原因だった。にも関わらず、医者はどんどん強い食べ物を大量に与えていって、胃腸をさらに衰弱させ、かえって栄養失調を促進していたのです。</p> <p>まあ、実際にはこんな医者は非常に少ないと思いますが、マスコミに出てくる経済学者はこの手の人間が大部分です。理論によって現実が動いていると信じている。だけど、理論より現実の方がはるかに複雑で、人間には、その全体像を認識することも把握することもできません。その現実をなんとか理解し、予測しやすくするために、現実を部分的に取り出して単純化したのが理論なのです。だから、すべての理論、とりわけ社会理論と経済理論は、それが成立する文脈や経済システムの条件を、常に念頭においておかないといけないのです。(このあたりの話は、カール・マルクス「経済学批判 序説」に書いてあります。)</p> <p>先のリフレ政策の例で言えば、経済学では、中央銀行の流動性供給とマネーサプライ、そして民間企業への貸し出しが非常に強く連動することになっています。上のグラフをみると、確かに90年まではその連関がはっきり見られます。ですが、それ以後は、この三つの指標が完全にばらばらに動くようになってしまったのです。なぜか。それは、この連動性は、つねに民間の資金需要が存在することを条件としているからです。当たりまえですよね。だって、日銀がお金を銀行に貸しても、企業が銀行にお金を借りなければ、市場には回らないわけですから。そして、リチャード・クーによれば―それは私は明らかに正しいと思う訳ですが―、90年代、多くの企業がバブル崩壊で債務超過になってしまったせいで、お金を借りるどころか借金返済にまわったわけです。今でこそ、ほとんどの企業は債務の返済を完了して綺麗になっているのですが、それでも企業はお金を借りようとしません。クーは、それをバブル崩壊を経験した経営者による借金恐怖症のせいだと主張していますが、僕の考えは微妙に違います。彼がいう、投資不足による「バランスシート不況」のメカニズムは2003年頃に終わっているのですが、1998年から、サービス残業の拡大と非正規雇用の拡大による、給与削減メカニズムが作動しており、それが個人消費不足となってデフレを生み出している。経済全体のパイが縮小し続けているため、投資需要が生まれない。こういうことだと思っています。ともかく、銀行から企業へ、企業から家庭へ、家庭から企業へ・・・こういうお金の流れがスムーズに働いて、初めて金融政策が意味をなすわけです。その経済循環がないのに、銀行をお金でじゃぶじゃぶにしても、企業はそもそもお金を借りようとしないし、どこかでバブルを生み出すだけですし、もしそれでもなお企業がさらに設備投資をしたとしたら、生産性が増大することで、リストラを促進し、かえって需要と供給のあいだにギャップがうまれ、デフレを生み出してしまうのです。それは、胃腸が弱ってる人はあまり食欲がないし、その結果栄養失調になるけれど、でも無理に食べさせるとかえって胃腸を壊して栄養失調を促進するのと、構造的にはほぼ同型です。</p> <p>経済学者は、理論が現実から抽出された、単純なモデルであることを忘れ、理論それ自体を信じはじめます。そして、現実は理論どおりに動か「なければならない」と考え、現実がもはや理論と整合しなくなっていればいるほど、理論に固執するのです。研究者たるもの、本来は、理論と現実の齟齬こそを、より整合的な理論へと破壊的創造を行うための一つのチャンスであると受け止めなければならないはずです。そのための一つの導きの糸(というのは現実自体は認識ができないので)が、最初にあげた国家経済の再生産モデルです。この図をもう一度みてください。経済学者が精緻に理論化していて、マスコミで「経済学者の知見」として取り上げられるのは、政府から銀行への流動性供給や、政府から企業への公共事業、銀行と企業の間のお金の貸し借り、税制、そして輸出と輸入です。ですが、これらはすべて、はっきり言ってしまえば、どれも多くが10兆円単位の、日本の経済システムの周辺部分にしかすぎないことが見てとれます。もちろん、それらは条件によっては重要な調整機能や逆機能を果たします。だけど、経済システムの根幹は、国内での民間給与→個人消費→(企業間取引→)民間給与という循環であることは、この全体像を見る限り疑いようもないことです。ですが、この領域は、ほとんどの経済学者の認識からすっぽりと抜け落ちているのです。</p> <p>それにも関らず、実は、00年代以降の日本経済は、まさにこの基底的な循環によって、構造的に強く規定されています。それが、経済学者の解説や予測がまったく的外れになった理由ですし、まさにこのメカニズムの理解によって、消費税増税のシミュレーション結果が、彼らと私の間で決定的に異なる理由なのです。</p> <p>00年代以降の日本経済が、民間給与と個人消費のサイクルによって強く決定されているということを、まずグラフで示してみたいと思います。<a href="http://lh6.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLSp_8tkI/AAAAAAAAAC4/SyQgOqUrw6s/s1600-h/t%C3%8EhGDP%C3%87%C3%95%C3%AC%C3%BC%C2%BF%C3%BC%5B4%5D.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="年収とGDPデフレーター" border="0" alt="年収とGDPデフレーター" src="http://lh4.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLS5EVPPI/AAAAAAAAAC8/HkcrWFsh5Sc/t%C3%8EhGDP%C3%87%C3%95%C3%AC%C3%BC%C2%BF%C3%BC_thumb%5B2%5D.jpg?imgmax=800" width="407" height="232" /></a> </p> <p>まず、一人当たりの年間給与とGDPデフレーターとの相関関係をあらわすグラフです。もちろん、年間給与が左目盛りで、GDPデフレーター(積年)が右目盛りです。だいたい、2002年ぐらいから、給与所得とGDPデフレーターが非常に緊密に連動していることがわかると思います。これは、デフレの構造的要因が、給与が下がる→個人消費が低迷するため、企業が値段を下げる→リストラや賃金カットにより給与が下がる、というメカニズムによって生じていることを強く示唆しています。厚生労働省が発行している<a href="http://amzn.to/9Nrmrq" target="_blank">平成21年版労働経済白書</a>も、90年代半ば以降のデフレは、このメカニズムによってデフレのほとんどすべて説明できると主張しています(p110)。また、「まとめ」の次の論述は、非常に簡潔で的確です。私の解説と冗長になりますが、引用しておきます。</p> <blockquote> <p>バブル崩壊以降、我が国の状況は一変した。総需要の停滞は著しく、完全失業率は継続的に上昇するとともに、1990年代末からは物価の継続的な低下がみられるようになった。こうしたもとで、企業は賃金抑制傾向をさらに強め、それがまた消費と国内需要の減少へつながり、さらなる物価低下を促すという、物価、賃金の相互連関的な低下が生じるようになった。総需要が減退し、価格が継続的に低下する状況は、企業の前向きな投資環境として好ましいはずもなく、我が国経済は極めて深刻な事態に直面した。(p212)</p> </blockquote> <p>「労働経済白書」の論述の明確さに比して、<a href="http://webronza.asahi.com/business/2010072600002.html" target="_blank">経済学者の論じるデフレ対策</a>のなんと愚鈍なことか。デフレ対策をするならば、まず企業が従業員の賃金を下げ続ける事態に歯止めをかけなければいけない。まして、好況の時にも平均給与を下げ、派遣社員を増やすことで給与総額を抑制していれば、個人消費は増えず、経済は自律回復のしようがない。この自律回復を妨げている原因が、企業の内部留保の拡大、その反面の被害総額年間40兆円にものぼるサービス残業と、非正規雇用の拡大による賃金抑制なのです。(前回のブログで、非常に単純なモデルで、儲けようとした人がかえって収入を減らしたことを思い出してください)。ここにメスを入れなければ、デフレ対策など絶対に不可能です。</p> <p>さて、もう一つ、個人消費と名目GDPとの関連についてもグラフで示しておきます。</p> <p><a href="http://lh5.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLTX70iTI/AAAAAAAAADA/coIVgFIjAEY/s1600-h/Image.jpg"><img style="border-right-width: 0px; display: inline; border-top-width: 0px; border-bottom-width: 0px; border-left-width: 0px" title="個人消費総額と名目GDP" border="0" alt="個人消費総額と名目GDP" src="http://lh6.ggpht.com/_zeoRKxe7k2Y/TFMLTzMr3WI/AAAAAAAAADE/Ur2TF6KOJ8E/Image.jpg?imgmax=800" width="412" height="293" /></a> </p> <p>給与総額と個人消費総額が左目盛り、名目GDPが右目盛りです。これもまた、2001年ぐらいから、驚くほど個人消費総額と名目GDPが緊密に連動しているのがわかると思います。具体的に言うと、名目GDPのうち個人消費が占める割合が、55.5%から56.5%の間で安定しているのです。</p> <p>念のために言っておきますが、常に「GDPデフレーターと平均給与が連動し」し、「個人消費と名目GDPが連動する」という相関関係が、常に、経済法則という真理であると主張しているわけではありません。そうではなく、ここ10年ちかい日本の経済システム全体の再生産構造においては、この二つの要因が、決定的に日本経済を規定しているおり、そのため近似的に、上記が「経済法則」である「かのように」、私たちの目に映っているだけなのです。</p> <p>(ちなみに、経済・社会システム論者であったマルクスの労働価値説も、同様の議論です。つまり、19世紀イギリスの経済システムにおいては、労働力の値段と利潤率が市場全体で平準化する傾向にあったため、あたかも投下された労働力に比例して値段が決定される「かのように」見えている、言い換えれば価値法則が成立している「かのように」見える、そのシステム論的なメカニズムをマルクスは「資本論」で示そうとしていたのです。)</p> <p>では、この二つのグラフの背後にあるメカニズムを、一貫したものとして理解するのはけっこうな難問です。もう一度説明すると、平均給与の低下はGDPデフレーターと連動しています。それは、給与が下がるとモノが売れなくなるため、企業が利益を維持するために、結局給与水準の下落と同程度値下げをせざるを得ない、こういうメカニズムが働いていることが容易に予測できます。その一方で、平均給与が下がり、従業員(ほぼ非正規雇用)が増えているため、民間給与所得は横ばいになっていますが、個人消費はわずかに増えており、それが日本経済を下支えしていたわけです。問題は、個人消費の微増と給与総額の横ばい、この間のギャップをどのようにして説明するかです。どうも様々な要因があるようで、基礎的支出の物価上昇が半分以上を占めることは確かなのですが、その他が説明できません。収入面で言えば、年金が5兆円程度増えているのは確かです。もしかしたら、企業の利益拡大に伴って、富裕層の消費が増えたのかもしれません。</p> <p>ともあれ、民間給与ー個人消費というサイクルと、経済システムとの非常に強い連関が現在見いだされることは、十分に示せたと思います。この連関が維持されている以上、消費税増税がどのような結果を生み出すのか、ある程度の精度のシミュレーションを示す準備が整ったわけです。具体的なシミュレーション方法とその結果については、次回のアップデートで提示します。</p> ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-84436875203875828722010-06-20T07:13:00.002+09:002011-08-05T14:00:26.402+09:00経済成長とはなにか―経済システムを理解するための簡単なレッスン―色々書きかけで申し訳ありません。僕の癖なので、たぶん一生なおりません(笑)。<br />
最近の僕の関心が、消費税増税問題に向かっていました。で、消費税増税でどのような怖ろしい事態が起こるのか、きちんとシミュレーションを示しておこうと思った。のですが、この問題の根本に、一般人のみならず、経営者、そして経済学者の、経済というものに対する根本的な無理解があることに気づきました。はっきり言ってしまえば、彼らが経済とはどういうものなのか、まとまったイメージができておらず、全体像をまったく把握していないのが問題なのです。<br />
たとえば、消費税を増税することに経営者や経済学者の大部分は賛成しています。だけど、消費税を10%に増税しても日本人の給与の総額は変わらないので、個人消費が4.5%落ち込むことは確実です。たとえば、私の月給が10500円として、そのお金で1万円分のモノを今は買えます。ですが、消費税を10%にすると、9545円分しか使えなくなります。<br />
僕は、消費者が単に損をします、といいたいのではありません。そうじゃなく、個人消費が4.5%おちるということは、消費者にモノを売っている企業、サービスを提供している企業、それらの製造業、物流業まで、全体として売り上げが自動的に4.5%下落するということを意味しているのです。そして、驚くべき事に、その事実を指摘している経済学者や経営者が、少なくとも表立ってはほとんどいないのです。はっきり言わせてもらいますが、彼ら、朝三暮四の猿※より頭悪いです。<br />
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結局、この問題は、経済を循環するシステムとして理解できていない、ということに帰着するのではないかと思うわけです。だから、消費税を「消費者が負担するお金」としてしか考えられず、それが企業の売り上げにどのように影響するのかも想像ができない。<br />
また、今、法人税減税と消費税増税がセットになって景気回復のためのパッケージとして提示されているのは、法人税増税が企業の利潤を低下させるから経済成長を阻害するのに対し、消費税は消費者からお金を取るため経済成長を邪魔しない、というのが彼らの暗黙の前提だからでしょう。言い換えれば、経済学者や経営者・政治家たちは、経済成長とは企業が利潤を最大化することだ、と考えている。<br />
でもそれははっきり間違っています。経済成長とは、生産→分配→消費(→生産・・・)の循環を強化し、その速度を高めることです。そして企業の利潤を最大化することが経済成長に繋がるのは、インフラを整備する高度経済成長期や、政治的・経済的植民地を拡大し続ける帝国主義的時代など、経済のパイが拡大しつづけているごく一部の特殊な条件においてのみです。多くの成熟した経済システムにおいて、公平な分配がされていないということは、経済を停滞させるどころか、その規模を縮小させる自滅的な行為なのです。本稿では、ぜひ皆さんに、そのことを理解してもらいたいと思います。<br />
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「経済成長とはどういうことか」を、もっとも簡単なモデルで説明します。僕とあなたが小石100個と1000円を交換する閉鎖的な経済システムです。全世界には、僕とあなたと小石と1000円札しかないと考えてください。小石じゃ意味が無いと思うなら、フライドチキンでもマックナゲットでも構いません。<br />
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まずあなたが小石を100個持っていて、僕が1000円をもっています。それを一日に一度交換するとしましょう。まず、僕が小石を100個もらって、1000円札を渡します。次の日、あなたの小石と私の1000円を交換します。さらに次の日、私の小石をあなたの1000円と交換します。一ヶ月が30日だとすると、私とあなたの月収はそれぞれ15000円で、そのお金で小石をそれぞれ1500個買えました。この2人きりの経済システムの月間GDPは30000円です。<br />
さて、このGDPを二倍にするにはどうしたらいいでしょうか?千円札の代わりに、今は影も形も見られない2000円札(あれ、そういえばほんとどこに消えたんだろう?w)を導入してもあまり意味はないですよね。小石の値段が変わらなければ2000円の半分しか使えないし、小石の値段が半分になれば、実質GDPは変わらない。なので、小石の量も二倍にする。それが普通の答えかもしれません。<br />
でも、もっとシンプルな解決法があるんです。1日に1回交換していたのを倍の速度にして、1日に1往復交換する。つまり、私が今日小石を売って、同じ日に買い取る。そうすると、月収がそれぞれ30000円で、そのお金で3000個の小石が買えたことになります。動いているお金が1000円札1枚であることには代わりありません。でも交換速度が倍になったことで、経済規模が月間GDP30000円から60000円と、2倍になったのです。<br />
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えっと、論理的に一番シンプルなモデルにしたため、登場人物をふたり、商品を一種類にしました。まあ、ほんとのことを言えば、商品が1種類しかないなら、交換することに意味はないですよね。でもイメージがつかめれば良いんです。商品を2種類にしても一緒です。私がマックナゲット生産者で、あなたがハーゲンダッツやさん。で私はハーゲンダッツが大好きで、あなたがマックナゲット大好き。今日マックナゲットをあなたに売って得たお金で、次の日ハーゲンダッツを買う、という交換速度を倍にして、今日すぐにハーゲンダッツに使っちゃお☆ってことにしちゃうと、お互いに収入が倍になって、しかもハーゲンダッツもマックナゲットも、2倍食べれますよね。<br />
ともあれ、経済とは、生産して、分配・交換して、消費する、そのサイクルだということが理解してもらえればそれで良いです。そして、経済規模が思ったより増えない、あるいは落ち込む場合、その経済システムのサイクル(再生産構造)のなかで、どこがボトルネックになっているのか、それを考えなければいけない。それも、なんとなくイメージしてもらえるのではないかと思います。<br />
最初モデルに戻ります。わたしがお金が好きなので、できるだけ手放したくない><って思って、私がお金を持つターンでは、2日間滞留させるとします。そうすると交換が往復するのに3日かかることになるので、それぞれの月収は10000円、小石は1000個、月間GDPは30000円から20000円と、33%落ち込んじゃいました。ここで面白いのは、この経済の落ち込みの原因は私の強欲にあるわけですが、みんな(って2人ですが(笑))が等しく損をするってことです。僕の強欲は、単にお金を持ってるターンを長くしただけで、ぜんぜん自分の得になってません。なので、こういう場合、必要以上に長くお金を持てばレッドカードを出すとか、逮捕して監禁しちゃうとか、そういうことをすれば、経済は回復します(笑)。<br />
<br />
さて、僕の強欲が、経済システム全体の成長にとってプラスの結果を生み出さない、という話をしましたが、もっと現実に即した強烈なお話しをしましょう。私がこのシステムで、自分の利潤の最大化を目指したらどうなるのか、をシミュレーションしてみます。私(ジャイアン)はあなたより力が強くて傲慢、あなた(のび太)は力が弱くて優しいと仮定します。(あ、あくまで仮定ですよ。)なので、この力関係を反映して、私があなたに売るときは小石100個で1000円、あなたが私に売るときは小石100個で500円とします。私が最初小石を100個もっているため、あなたが1000円で小石100個買います。次の日私はその100個を500円で買います。私はいま手元に、小石100個と現金500円があるので、500円タダで儲けた計算になりますね♪すばらしい成果です。<br />
でも、次の日からなんだか雲行きが怪しくなります。あなたは500円しかもっていないので、次の日、小石を50個しか買えないのです。私の手元には、小石が50個、現金が1000円あります。その50個を、翌日私は250円で買い取ります。さらに次の日、あなたは250円しかもってないので、25個しか買えません・・・・。こうやって、私が儲けた分、交換は半分ずつ縮小していくのです。<br />
ここでそれぞれの月の収入を考えてみましょう。私の月間の収入は、1000+500+250+125+62.5+31.25+・・・≒2000円で、小石が100+50+25+・・・で200個買える。あなたの月間の収入(つまり私の支出)は500+250+125・・・≒1000円で、最初の手持ちの1000円とあわせて、小石を200個買ったことになります。このシステムでは、私はあなたの倍儲けたことになります。<br />
ですが、あれ?私はほんとに儲かってますか!? だって、公平な交換のシステムだったら、私はもともと15000円の収入があったし、小石だって1500個も買えたんですよ。なのに、私が強欲を出して儲けようとしたとたん、7.5分の1の収入になっちゃいました><。システム全体の月間GDPで見ても、3000円なので、経済規模は10%まで落ち込んでます。<br />
で、さらに悲惨なのは翌月です。不公平な交換を繰り返したので、その前の月までに、私の手元には小石が100個、1000円、ほとんどもってることになります。それに対し、あなたは事実上一文無し、鉄鎖の他には所有するモノがなにもない完璧なプロレタリアートです(笑)。でも、なにもないってことは、交換ができないってことです。なので、次の月には、経済システムそのものがもうなくなっちゃってます(笑)。<br />
まあ、さすがにそうなると、僕も困っちゃうので、いくら頭が悪くても、どこかで気がついてもうちょっとマシな解決策を探って生き延びようとするでしょう。たぶん、どこかで僕が売る小石の値段を少しずつ下げて、できるだけあなたに買って貰おうとするでしょう。まあ、最初から小石100個500円で売ってたらいいのですが、そうすると、自分の交換とあなたの交換とが同じ条件になっちゃう(笑)。「そんなことしたら儲からないじゃないか、儲からなければ経済は発展しない」と思い込んじゃってるので、やっぱり有利な条件は維持しようと思って、「100個750円」ぐらいまで値段を下げて様子見をするんじゃないかと思うわけです。もちろんデフレが起きますし、それでも売れないので、交換速度がどんどん落ちていきます。面倒なので厳密なシミュレーションはやめときますが、破滅までは行かなくても、経済規模が大幅に縮小するのは確かです。<br />
結局なにが問題なのか。それは交換の際に「相手に充分にお金を渡していない」ことです。言い換えれば、自分が儲けた分、相手はお金が減っていくから小石が売れないのです。そうなってから、どんなにがんばってセールスをしても、小石に綺麗なラッピングをして相手の気を引きつけても、無駄です。相手がどんなに小石が欲しくても、買うお金がないんですから(笑)。だから、私は「公正な交換をしないと結局自分が損をする」、「自分だけが利潤を最大化しようとすると経済システムが破壊される」っていう根本的な事実に気づかないといけないのです。<br />
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現実の経済システムに関しては、もうちょっと(っていうかはるかに)構造が複雑です。生産設備を生産したり、税金があったり、あるいは銀行システムがあって、利潤や貯蓄が他の部門に投資されたり。だけど一般化していうと、この生産→分配→消費というサイクルこそが経済システムであるという事実には代わりありません。それさえわかっていたら、経済学者がいまメディアで言ってることの大半が、さっきのモデルの「儲けようとして経済を壊した僕」と同じぐらい、頭がおかしいことが理解できると思います。たとえば、内需が足りないから需要創出イノベーションしなきゃとか言ってる人がいますが。企業が支払う給与総額が一定なのに、供給側の努力で内需が増える余地などないし、少なくともゼロサムゲームで消費のパイを奪い合うだけなのが、どうしてわからないのでしょうか。<br />
それとか、消費税増税で年金不安が解消されて、消費が増えるからデフレが解消する?(笑)とか。解説は不要だと思いますが、あまり馬鹿な事を言うのもほどほどにしてもらいたいな、と思います。<br />
とりあえず、本稿で日本経済にかんして私がここで言うことは一つだけです。唯一有効な経済政策とは、経済システム全体の循環の中で、一番弱いところ、もっとも滞っているところ、そこを強化したり流れをよくしたりすることで、全体の流れをよくすることです。現在の日本の経済システムのサイクルの中で、ボトルネックになっているのは個人消費です。より厳密に言えば、企業から労働者への貨幣流通チャンネル、つまり給与の支払いが抑制されている事が根本的な原因です。そして、この根本的な原因は、サービス残業という名の不払い労働です。サービス残業で企業が労働者に違法に払っていないお金は年間50兆円近く、GDPの1割に達しています。それだけ払っていなければ、お金が経済全体に回るわけがありません。<br />
というと、「そんなに払ったらほとんどの企業が倒産する」とかいうひとがいますが、経済が循環するシステムであることさえ理解出来れば、その50兆円の大部分がさらに企業の売り上げになり、企業の業績も大幅に向上する、(そして労働生産性も大幅に向上する)ことがたやすくわかると思います。逆に、企業が外需などでどんなに儲かっても、それを不払い労働の強化によって対処し、労働者へ全く還元しようとしない現状では、経済の自律回復など望むべくもありません。<br />
サービス残業が日本の経済と社会にどのような影響を与えるのかは、またそのうち稿を改めて、きちんと説明したいと思います。ともあれ、今回は<b>「企業による利潤の最大化」という経済学者・経営者の暗黙の前提こそが、じつは経済を縮小させる最大の原因</b>なのだ、ということだけ理解していただければと思います。<br />
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※朝三暮四 もちろんみなさん知ってるかとは思いますが、確認のため(笑)。非常に猿と戯れるのが好きな男がいた。この男は家族のことも放っておいて、猿を可愛がるものだから、餌の時間になるといつも猿が寄ってくる。ところが、それが原因である日、奥さんに「猿の餌を減らしてくれないと、子供たちの食べる物までなくなってしまう」と窘められてしまう。困った男は何とか猿たちを籠絡しようとし、一斉に呼びかけた。これからは「朝には木の実を三つ、暮(ばん)には四つしかやれない」と告げるも、猿たちは皆不満顔。それならば「朝は四つ、暮は三つならどうだ」と言うと、合計七つと変わらないにも係わらず猿は皆、納得してしまったのである。ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8450071703701982220.post-74990581405908500022010-06-07T19:33:00.001+09:002019-06-01T14:45:24.679+09:00菅直人首相への公開書簡先ほど、<a href="https://www.blogger.com/u/3/kan-naoto@nifty.com" target="_blank">菅直人首相</a>にメールを送付いたしましたしたので、全文アップいたします。あ、ちなみに、面識はありません。<br />
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件名 消費税増税は恐慌と財政破綻を同時にもたらす可能性があります。ご再考ください<br />
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5月8日の「責任」と題された文章を拝読しました。
確かに、国家財政の問題は非常に深刻な状態にあり、早急に対処が必要です。
しかしその対処法として、消費税増税は、考えうる限りで最悪の選択肢であり、大恐慌と財政破綻を同時にもたらしかねないことを、菅首相には理解していただきたく存じます。
経済システムは、単純化すれば、生産-分配・交換-消費(→生産・・・)サイクルによって成り立っています。
そのサイクルが滞れば、経済は停滞し不況に陥ります。
各種経済指標を見ていると、現在の日本経済のボトルネックは明らかに個人消費です。
その原因は、企業がサービス残業という名の不払い労働を年間40兆円以上に拡大させ、
労働者から消費する時間とお金を奪い、非正規雇用を拡大させることにより、給与総額を抑制しつづけたことです。
このボトルネックを放置しては、日本経済の自律回復はありえません。
消費税を増税するというのは、この個人消費を締め付ける行動です。
消費税をさらに5%アップすることは、給与総額は変わらないので、単純計算で個人消費を4.5%縮小させます。
この消費部門の低下は、生産部門など、他の分野に波及し、連鎖倒産・恐慌を引き起こしかねません。
そうなると、財政収入は思ったより伸びないどころか縮小し、さらに大規模な財政出動を余儀なくされます。
正確なシミュレーションが必要となりますが、最悪のシナリオでは大恐慌と財政破綻が同時に起こるというシナリオまでありえます。
そうなると、日本の経済も社会も、完全に死滅します。
前回、1997年に消費税を増税した後、恐慌になり、、財政出動を余儀なくされ、
かえって国家財政が大幅に悪化したことを考えてください。
繰り返しますが、国家財政の均衡化は非常に大きな課題であり、
それに対して首相が責任感を感じていらっしゃることを、私は嬉しく存じています。
ただ、増税は、経済システムのボトルネックとなっていない余剰部分から取らなければ、
悲惨な結果を生み出してしまう、そのことを日本のためにも、もちろん菅首相のためにも、ご理解いただきたいのです。
なお、このメールは、公開書簡として、私のブログにアップさせていただきます。
あらかじめご了承ください。
<a href="http://ishtarist.blogspot.com/">http://ishtarist.blogspot.com/</a>
お返事をいただけるのでしたら、その際、ブログへの公開・非公開の可否もご指示いただければと存じます。
大変なご多忙の中、恐縮ではございますが、ご検討いただければと存じます。</pre>
ishtaristhttp://www.blogger.com/profile/11141828318936186594noreply@blogger.com0