理論編のおさらい
東京電力原発事故で、あらゆる健康被害が爆発的に増加しつつある。このデータを本稿でお見せいたしますが、その前に「理論編」のおさらいをしておきます。
●東京の放射能汚染は、「放射線管理区域」相当の汚染状況である。
●広島・長崎やチェルノブイリなどの過去の例からいって、被曝による健康被害の典型は癌ではなく、倦怠感・心不全・膀胱炎・ホルモン異常・免疫低下など、全身の多様な慢性疾患であること。
●「科学的にいって放射能は安全である」という議論の元となっているICRPは、論理によってデータを排除し、残ったデータで理論を強化する「神話」の「循環構造」を構成している事。
●東京電力原発事故の主たる放射性降下物は、セシウムを含む不溶性合金の放射性物質微粒子(ホットパーティクル)であることが実証されたこと。
●人工放射性物質と自然放射性物質の唯一の違いは、ホットパーティクルを構成しうるか否かであること。
●ホットパーティクルとよばれる人工放射性物質の微粒子のリスクを、ICRPの体系が過小評価していること。
●バイスタンダー効果など最新の生物学の知見によって、ホットパーティクル(放射性物質微粒子)の危険性が明らかになりつつあること。
上のことで、これからお見せするデータが、充分な理論的バックグラウンドでもって、予測・理解可能なことを示したつもりです。「科学的にいってこれは放射能のせいではありえない」という批判をしたい方は、ぜひ「理論編」を読んだ上で、批判を試みてください。
なお、本稿のデータ・本文は、引用・転載自由です。全文転載は、非商用に限り認めます。このデータと手法が、私の手を離れてできる限り拡散することを望んでおります。
Googleトレンドは嘘をつかない
ICRPとECRR。決着の刻、来たれり。
前稿で、私は主にECRR側に立って、放射能の危険性について議論してきました。まず、東電原発事故によって、東京で放射線管理区域レベルの土壌汚染があったこと。放射能による健康被害は癌だけではないこと。ICRPでは内部被曝を測れない事。内部被曝で危険なのはホットパーティクルと呼ばれる放射性微粒子であること。そして、東電原発事故の主要な放射性降下物(の一つ)は、セシウム・ホットパーティクルであったこと。
もし、私たちの議論が大筋で正しければ、これから日本で起こる出来事がどのようなものなのか、戦慄すべき想像が頭に浮かびます。何年か後、チェルノブイリ周辺地域と同じように、東京で生まれた子供のうち、健康な子どもが20%しかいない、という事態が起きてもおかしくない。私としても、そのようなことが起こるとは信じたくない気持ちもあるのですが、残念ながら、それが今、私に入手できる限りの情報と論理的思考から、たどり着く推測です。
ただし、ここで、あえて前を向きましょう。事実はつねに、理論に優先します。以上の議論は、あくまでこれまで集めた情報と理論からえた、私(たち)の推測にしかすぎません。そして、内部被曝については、まだまだ判明していない事が多い。もし、現実に健康被害が起きていないならば、私たちの議論は、どこか根本的に間違っていることになる。
事実というのは厳正なものです。たった一度でも、理論とあわないデータがあれば、その理論は修正ないし棄却されなければならない。ECRRは、チェルノブイリなどの膨大なデータをもって、ICRPを徹底的に批判してきました。その審判は、当然私が主に依拠しているECRRの被曝モデルに対しても、常に向けられるべきです。
何が言いたいのか。ICRPの被曝モデルによれば、東京での健康被害は、晩発性の発癌以外には存在せず、癌も非常に微少な増加しかないはずです。すなわち、統計的な有意差は決して表われないはずです。それに対して、ECRRがもし正しいのだとすれば、主たる放射性降下物がセシウム・ホットパーティクルであったことから、東京でも癌以外のあらゆる健康被害が、2011年3月以降、増加し続けているはずです。
チェルノブイリ原発事故の時は、あらゆる健康被害の増加のデータに対して、「放射線恐怖症」や、「ソ連崩壊に伴う社会環境の変化」といった因子で説明可能かもしれないという反論がありました。また、旧社会主義体制やその後の独裁体制による、情報の隠蔽もあった。そのため、放射能が安全か危険か、決着を付けることができないまま、両者の立場の違いが大きくなった。それに対して、東電原発事故の場合は、少なくとも東京では、こうした外的要因は相対的に小さい。「放射能が安全」であるという「科学的根拠」が社会全体に浸透し、「放射能恐怖症」の人間はごく一部となっている。311以降、社会構造の大きな変化は今のところ存在しない。そして、情報統制は、現時点では旧社会主義国ほどひどくはない。交絡因子が非常に少ないため、統計上、非常にクリアーな結果が得られる可能性が高い。
健康被害を総合的・時系列的にあらわす統計データさえ存在すればいい。そうすれば、内部被曝が安全なのか危険なのか、ICRPとECRRの論争に簡単に決着を付ける事ができるはずです。
Googleトレンド 理想的な自覚症状の統計データ
ICRPとECRRで決着をつけることができる、東京の健康被害に関するデータがどのような類のものでなければいけないのか、その条件も制約されます。
- 癌以外のあらゆる健康被害が個別に測定できるもの。もし可能ならば、個々の病名ではなく、自覚症状などの健康状態に関する指標がよい(病名で統計を出すと、病名が付けられにくい放射能健康被害が過小評価される)。
- 時系列的に、発生時点を確認できるもの。
- 他の非・被爆者を、参照群として選択できるもの。
さて、以上の条件を満たす、そのような都合が良い健康データがあるのか、という、根本的な問題にぶつかる事になります。普通に考えれば、そんなものなさそうです。なので、私としても、これまで医者に訊いたりしていましたが、統計データと呼べるものは入手できそうもありませんでした。当然と言えば当然です。統計的に有意と言えるようなデータを収集するためには、膨大なお金を使った疫学調査が必要となる。そして、政府はそういう統計を一切取ろうとしそうもないし、仮に資金繰りの問題が解決されたとして、民間でそのような調査を行おうとしても、きっとどこかから妨害が入るに違いない。
そうすると、被曝について調べる人が、個人的に自分の周りや知人のネットワークを使って、個々の健康被害について訊いて回るしかない。これまで、内部被曝の危険性について気にしている人は、みなそうしてきました。でも、仮に変な症状が起きている人が周りにいたとしても、あるいは(私のように)自分の周囲の人間で明らかに健康状態がおかしい人が増えてきたとしても、それが統計的に有意であるとはとても言えない。たまたま、私がそういう情報を選択して仕入れているだけかもしれないし、たまたま、私の周りだけ、健康被害が起きているだけかもしれない。他人に「知人の誰々さんがこういう症状があって」と言っても、「それは放射能のせいじゃなくて、あなたの放射脳のせいよ」とか、「偶然でしょう」とか、もっと典型的には「でっちあげだ」と言われておしまいになる。そして、健康被害が本当に、爆発的に多発しはじめるまで、圧倒的多数の人間は、それが被曝症状だとは気がつかないことになる・・・。
とまあ、私はそう半ば諦念していました。しかし、たった2-3ヶ月前、あるアイディアが、私に去来しました。おそらく一つだけ、リアルタイムで健康被害の統計として使えるツールが存在する事に気がついたのです。
もし仮に、ECRRが正しいとして、何かしら、身体に異変を感じる人が増えてきたと仮定します。そうすれば、その人たちの一部は、何かしら情報を集めたり治療を行ったりするために、自分が抱えている自覚症状で、Web上のサーチエンジンで検索するはずだ。つまり、自覚症状の全体の検索数の中で、その自覚症状の検索の割合が、必ず増えているはずだ。
そんなことが分かる、都合が良いサービスがあるのでしょうか。それが、あったことに私は突然気がつきました。マーケティングの分野ではすでに必須のツールとなっているため、ご存じの方も多いでしょう。Googleの無料サービス、Googleトレンドです。
Googleトレンドは、日本はもとより、世界中で使われているGoogleのサーチエンジンの膨大な検索に基づいて、ある検索キーワードのトレンドをグラフで表示してくれます。しかも、2004年以降なら、期間や地域を細かく規定して、その検索トレンドを調べることができる。まさに、上に挙げた条件を満たした、理想的なツールです。
いや、Googleトレンドは、理想的以上と言って良いでしょう。
- 2010年7月以降、それまで日本国内の検索エンジンのトップだったYahoo!がGoogleの検索エンジンを採用したため、以後現在に至るまで、日本における検索エンジンのシェアの9割を得ている。つまり、自覚症状についてサーチエンジンを検索する人のほとんどが、Googleを使用しているはずである。
- 私たちはパソコンやタブレット、スマートフォンを持っているインターネットユーザーなら、誰でもそのサービスを無償で使える。そして、誰でも簡単に検証ができる。つまり、その情報はデマである・捏造だ、という批判を受ける余地が全くない。
- インターネットの普及率、Googleの検索エンジンのシェアなどによる検索ボリューム数などの変化などの外部要因による複雑な統計処理は、全部あらかじめGoogleがやってくれた上でデータを出してくれているため、非常に簡便である。
- 調べる対象の検索キーワードを変えれば、別の角度や、別の症状、あらゆる角度から検証できる。
しかし、仮にそうだとしても、本当にGoogleトレンドは、身体症状に関する統計データとして使用できるのでしょうか?Google自身が、インフルエンザのリアルタイム統計として使えるということを既に検証して、その論文がNatureに掲載されています(Detecting influenza epidemics using search engine query data ※有料記事 Googleによる無料公開版はこちら)。
簡単に内容を紹介すると、インフルエンザに関連する検索数は、インフルエンザ患者の医者の訪問数と非常に高い相関関係があると思われます。(インフルエンザらしき症状に罹った患者は、病院を検索するということでしょう)。そこで、複数の検索キーワードを重み付けして、インフルエンザ関連の病院訪問数を最も説明できる、線形的な検索キーワードの組み合わせを選ぶ、それが彼らの研究の目的です。
アメリカ疾病予防管理センターのインフルエンザに関するデータを使用して、その増減傾向と合致する検索キーワードのトップ100を選んだところ、トップ45は全てインフルエンザ関連でした。その45キーワードに適切な重み付けをして線形的な予測モデルを作り、未解析期間のインフルエンザデータと合致させたところ、0.97という非常に高い相関係数で予測できました。
この手法は、もちろんきちんとした疫学データに代えられるものではないですが、通常の疫学データよりも優れた点があります。それは、疫学データよりも圧倒的にリアルタイム性が高く、パンデミックのいち早い予測と予防に使えるというところです。ここで開発したインフルエンザ予測ツールは、Googleインフルトレンドというサービスして公開されています。
さて、GoogleトレンドとGoogleインフルトレンドの違いは何かと言えば、前者が単一の単語の検索トレンドなのに対して、後者がそれらの検索トレンドを複数足しあわせて、現実のデータに合致するように、一定の重み付けをしたものだということです。言い換えれば、Googleインフルトレンドは、Googleトレンドを変数とした、多変数一次関数です。
残念ながら、今回、被曝に関するデータは現実には未だ存在しないので、インフルトレンドのような手法は採用できません。ただ、先の論文がいうように、インフルエンザ関連キーワード単体でも、概ねインフルエンザ流行の動向とかなり高い相関関係がある。そう考えると、人が自覚症状で検索しそうなキーワードを適切に選びさえすれば、その背後にある健康被害の増減傾向を見る指標としては、十二分に使えそうです。少なくとも、ECRRとICRP、どちらがより正しいか、判定することぐらいはできそうです。
ともあれ、被曝統計データとしてのGoogleトレンドというアイディアが私の脳裏に去来したとき、即座に確信しました。ECRRがもし仮に正しくて、微量の内部被曝が大きな健康被害をもたらすのだとすれば、日本語で数々の自覚症状でGoogleトレンドを検索すれば、必ず、2011年3月を境に、増加トレンドが見られるはずだと。
そして、覚悟を決めました。それまで私は、自分なりに色々調べていて、理論的に言っても実証的に言っても、ICRPよりもECRRの方が正しいだろうと考えていました。しかし、今回Googleトレンドを調べてみて、自覚症状の増加が見いだせなかったとしたら、理論はどうであれ、ICRPの方が現実に合致すると判断し、放射能安全側に立場を移そう、と。
Googleトレンド自体は、放射能安全派でも、放射脳でもない。それは、ただ現実を、より正確に言えば、たくさんの人が経験してきた現実を、映し出す鏡にすぎない。だから、Googleトレンドという手法の「発見」は、東電原発事故による癌以外の健康被害がないと信じているICRP側にとっても、「放射能危険デマ」を潰す、千載一遇のチャンスのはずです。
大切なことは、立場を問わず、科学者として、あるいはこの世界に対して責任を負う一人の人間として、その現実に向かい合う勇気があるかどうかではないでしょうか。
私は、ここですぐに結論は出しません。もしこの記事を、パソコンやスマートフォンなどから見ていらっしゃれば、簡単に自分で確かめる事が出来ます。あなた自身の目でで確かめてほしい。もし、紙で読まれていらっしゃるのでしたら、ぜひ、インターネットに接続できるパソコンやタブレット端末を用意してほしい。今から、そのご案内をいたします。
Googleトレンドの使い方
まず、Googleトレンドのページを訪問してみましょう。下のリンクをクリックしてみてください。
http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q
次のような画面が出てきたら、準備ができたことになります。
ただし、ブラウザに制限があるようで、Internet Explorerだとうまくグラフが表示されないことがあるようです。うまく行かない場合は、ブラウザを代えてみてください。Googleが出しているブラウザGoogle ChromeやOperaでは、個人的に動作を確認できています。
そこで、調べたいキーワードを上の検索ボックス、あるいは「キーワードを追加」のところに入れると、トレンドグラフが出てきます。試しに、好きな言葉を何でも入れてみてください。たとえば、「オリンピック」と入れると、四年に一度の大きなピークと、四年に一度の小さなピークが見られます。
また、地域を絞るためには、「すべての国」から国→地域と選び、期間を絞り込む為には「2004年-現在」というところをクリックすればいいです。
ちなみに、Googleのアカウントを持っていれば、右上の歯車のマークから、CSV形式でダウンロード可能です。Excelなどで加工して使えます。
注意点だけ付けておきます。これはビッグデータ解析なので、充分に検索数がある検索キーワードでなければ、有効なデータは出にくい。したがって、地域で絞ったときに有意なデータが出やすいのは、大都市圏ということになってしまう。
もう一つ、これはあくまで、すでにGoogleによって統計処理されて指数化された数値なので、実際の検索ボリュームはわかりません。その統計処理のアルゴリズムは、私が知る限り公開されていないため、そこがブラックボックスになっている。つまり、私たちとしては、さしあたりGoogleを信用するしかありません。これが、Googleの指数が現実の検索トレンドを反映しているかどうかは、非常に複雑な検討が必要になってくるでしょう。
さらに、これはGoogleも論文で書いており、容易に想像がつくことですが、ニュースなどで話題になったキーワードは、飛び抜けて高く表示されます。そのため、何か不自然に突出する動きが出てきた場合、そこにはそうした因子が混じっていないか、確認する必要があります。
自覚症状を調べてみる―まずは「心臓」から
これで準備は完了です。今から、Googleトレンドを検索してみましょう。
まず、「心臓 痛い」で検索してみたグラフが次の通りです。
ある時期から、明確にトレンドが変わり、爆発的な増加傾向を示しています。そのポイントが具体的にどこなのか、補助線を引いて見てみましょう。
少し色が薄いため見にくいと思いますが、2011年の前半のどこかが、ターニングポイントであることは疑いようがない。ちなみに、2011年3月を縦にマークしてみると、概ね合致しているようにも見えます。
地域別に絞ってみてみましょう。ただし、検索数の関係で、よほど大きな大都市圏でなければ、うまくグラフが表示されない事が多いです。そこで、今回の記事では、主に対象を東京に絞り、参照群として、大阪に絞ります。ただし、重要な事は、大阪であっても「非-被曝群」とはとても言えないということです。なぜなら、汚染された食品はすでに日本中を出回っていると考える必要があるからです。ただし、土壌汚染の度合いから考えると、直接の放射性降下物由来の呼吸からの内部被曝は、西日本ではほとんどないと言ってよいでしょう。そういう意味で、参照群にする意義は充分あります。
東京 「心臓 痛い」
大阪 「心臓 痛い」
今回、大阪は、2012年ぐらいまで全くなかったのに、急激に跳ね上がっているように見えますが、これは検索ボリュームが少ないときのグラフの特徴です。この場合は、さほど参考にはならないと言えるでしょう。それに対して、東京は、割と有意なグラフが表示されているように思われます。(これが、実は今回、東京の健康被害を前面に取り上げた、最大の要因です)。
さて、ここで一つ、注意しなければならないことがあります。ちょうど2011年のところに「メモ」という項目があります。ここにマウスポインタを当てると、「Googleの地域区分の変更は2011年1月1日に適用されました」と表示されます。つまり、ここで、データの前後で不連続性がある、とGoogleは言っています。この件についても、具体的にどのように前後が接合されているのかブラックボックスとなっていますが、2011年1月1日をまたがない期間での増減傾向については信用できます。
また、地域を限定しなければ、不連続性の問題は発生しません。おそらくは人口比の関係から、地域が限定されないグラフは、おおむね東京の動向ともっとも強い相関関係があるように思われます。
より、このトレンドを明確にするため、関連しそうなキーワードのトレンドをあわせて参考にすることでよりデータを確実なものにできます。
たとえば、「心臓 痛い」「不整脈」「胸 痛い」をあわせて、地域を絞らずに検索したのが次のグラフです。
「胸 痛い」にだけ見られる11年5月のピークについては、よくわかりません。ただ、この三つをあわわせると、非常に明確に、2011年3月に、どの指標もそれまでのトレンドからのターニングポイントを迎えていることが、はっきりと分かります。どのグラフも、そこで近似曲線に変化が見られます。
では、たとえば「心筋梗塞」で調べてみるとどうでしょうか?
そうすると、あからさまに突出したピークが浮かび上がってきます。ただし、このピーク上のアルファベットにマウスをあわせると、著名人が心筋梗塞になったニュースがあったため、検索が増えたということがわかります。そのため、病名は検索キーワードとして、気をつけなければなりません。なぜなら、病名の場合、メディアや本などでの一般的知識としての検索が混じってくるからです。それに対して、自覚症状で検索する人の大部分は、自分あるいは身近な人の症状を改善するために検索することが多い、と容易に想像できます。
そのキーワードがどのような目的で調べられているのかは、下の「関連キーワード」の人気・注目を見るとよいでしょう。2011年11月23日現在の、「心臓 痛い」の関連キーワードは、以下のようなものでした。
こうしてみると、自覚症状を改善するために検索している可能性が、やはり高いように思われます。そして、右側の「注目」で「ストレス」が二つあることから、心臓の痛みは、ストレスが原因だろうと、現在の検索者は考えているらしい、ということも何となくわかります。
さて、そうだとすると、おそらくGoogleトレンドのグラフは、「罹患率」よりも「発症率」と高い相関関係にあるのではないか、というのが私の予想です。なぜなら、人はその自覚症状の初期に原因や病院を調べるために検索すると思われるからです。おそらく、慢性的に抱えている場合は、初期よりも検索しなくなるのではないか。ただし、これは、今のところ根拠がない憶測にすぎません。
また、このGoogleトレンドのデータには、もう一つ欠陥があります。それはトレンドが―おそらく発症率が―従来の何倍になったかは調べられますが、実際にそれが何人に、そして人工の何%に相当するのか、推定するのが非常に難しいということです。こうしたことは、おそらく現実の疫学データと付き合わせる必要が出てくるでしょう。
心臓の異変は「放射脳」のせいか?
先ほど見たように、心臓に関する自覚症状について、どの指標も2011年3月以降、明らかに急増していることがわかりました。あえて統計処理をするまでもなく、これは偶然ではありえない。そのときをきっかけに、何かが根本的に変わったのです。しかし、それが「放射能」のせいであると断言するのは、議論として拙速にすぎるかもしれません。念のため、他の可能性を検討しておきましょう。
まず第一に、「放射線恐怖症」、あるいはいわゆる「放射脳」のせいで、身体に異変が起きている、あるいは異変が起きると思い込んでいるのではないか、という可能性を考えてみます。もし、関連があるとすれば、「被曝」や「放射能」というキーワードと、それぞれの自覚症状との間に、相関関係・親和性が見られるはずです。
放射能(東京)
「被曝」「セシウム」(東京)
どのグラフも、2011年3月をピークに、20分の1程度に減少しています。(セシウムだけは、2011年8月、米から微量に検出されたというニュースと相関しています)。グラフを出したのは東京ですが、これは日本ではどこでも変わりない傾向です。つまり、原発事故の直後はみな被曝について心配したけれど、ごく一部の人を除いては、急激に忘れ去ってしまったということを意味しています。放射能がその一方で、心臓の異変はあきらかに急増している。この二つの間には、まったく相関関係は見いだせません。
「でも」、と「放射能安全派」の人は言うかもしれません。そのごく一部の「放射脳」の人が、心配して、「心臓が痛い」という気になっているかもしれないか、と。念のため、その可能性も検証しておきましょう。もしそうだとすれば、心臓の自覚症状について調べている人の大部分は、放射能などのキーワードと一緒に調べているはずです。
これが結果です。どうやら、日本人の圧倒的大部分は、心臓と被曝の関連についてほとんど想像していないらしい。そして、そもそも、自覚症状について調べる人のうち一定数以上が、その原因を被曝に関連づけているならば、下の「関連キーワード」のところに表示されるはずです。しかし、これから膨大な量のグラフをお見せしますが、そのどれ一つとして、放射能関連・福島第一原発事故関連のキーワードは出てきません。
では、他の要因は何かあるでしょうか?たとえば、最近、福島周辺で、健康被害に関する症状について、「避難生活疲れ」によるストレスが原因とされることが多いようです。たとえば、毎日新聞の2013年9月8日の「震災関連死:福島県内で直接死上回る 避難生活疲れで」という記事には次のように書かれています。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者の死亡例のうち、福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が8月末現在で1539人に上り、地震や津波による直接死者数1599人(県災害対策本部調べ)に迫っていることが、毎日新聞の調査で分かった。少なくとも109人について申請中であることも判明。近く直接死を上回るのは確実だ。 長引く避難生活で体調が悪化したり、自殺に追い込まれたりするケースがあり、原発事故被害の深刻さが裏付けられた。〔中略]
死因については多くの市町村が「今後の審査に影響する」と回答を避けた。復興庁による昨年3月末のデータを基にした県内734人の原因調査では「避難所などの生活疲労」33.7%▽「避難所などへの移動中の疲労」29.5%▽「病院の機能停止による既往症の悪化」14.5%など。自殺は9人だった。
しかし、東京に絞っていえば、いまだに東京都内で避難生活をしている人は非常に少ないと思われるので、まず可能性としては排除できるでしょう。ちなみに、「心臓 痛い」「不整脈」「胸 痛い」で、東京で絞ったときも、絞らなかった場合と同じように、2011年3月以降どれも増加傾向にあります。東京の震災ストレスは、私が知る限り一過性のものと考えられるため、継続的な増加傾向は、震災ストレスが原因ではありません。
●「心臓 痛い」 「不整脈」「胸 痛い」(東京)
また、2011年3月以降、大きな社会構造の変化があったとは、私には思えません。また、景気も悪化しているどころか、一時的に改善してさえいる。これも、要因としては外せます。
では、放射能が原因であるという可能性を否定・肯定する方法はないのでしょうか?あるとすれば、参照群を正しく設定して見る、ということになりそうです。もし、これらの身体症状の異変が関東以北に降り積もった「死の灰」が主たる原因なのだとすれば、大阪では全く違うグラフになるはずです。
●「心臓 痛い」 「不整脈」「胸 痛い」(大阪)
このグラフに見るように、どうもかなり違う様相が浮かびあがってきます。胸・心臓の痛みは、2011年12月以降から少しずつ増えているように見える。その後平行に推移し、2012年12月ぐらいからまた増えるようです。それに対して、不整脈はほとんどトレンドが変わらない。ただ、いずれにしても、大阪でさえも、健康被害が少しずつ増えてきているということは確からしい。これは、セシウムに汚染された食物が、秋に収穫される事で、主に体調が悪化すると考えれば、説明がつくような気がしますが、これについては、別途検討が必要でしょう。
ともあれ、大阪を参照群としたときに、東京とのグラフのあからさまな違いから、何か根本的に異なるものがあるということは確かだと思われます。しかし、社会生活で根本的な差が311以降あるとも思えない。気候にしても、とりわけ東京が猛暑であったとか、寒冷であったとか、そういうこともなかったと記憶しています。
だとすると、私には今のところ、一つの要因しか思い浮かびません。それは、セシウムによる土壌汚染です。バンダジェフスキーの議論における、不整脈と体内セシウム濃度との相関関係のグラフを出してみます。
ただし、バンダジェフスキーの議論は、非常な批判に晒されています。私が知っている限り、批判者の根拠は、60Kgの人体で4000BqのK40を含んでいるからです。つまり、私たちの体は67Bq/kgの放射能を持っています。それにもかかわらず、10Bq/kg程度のCs137で心臓に異常が発生するわけがない、と。
自然放射能と人工放射能の違いについては、すでに述べたとおりなので、繰り返しません。バンダジェフスキー批判に対する再反論に限定すると、大山敏郎さんという方がブログなどで残されている議論が、もっとも説得力があるように私には思われます(セシウム内部被曝によるBandazhevskyのデータの理解)(より詳細なPDF版)。非常に専門的な議論ですが、簡単に要約すると、細胞のカリウムチャネルを通過する時間はカリウムの場合一瞬だが、セシウムはがちがちに嵌り、通過時間が非常に長くなる。そこでセシウムが崩壊すると、カリウムチャネルを壊す。心筋細胞の電位系は直列なので、ごく一部の細胞のカリウムチャネルの崩壊も、QT異常になって表れる、と。とにかく、セシウムによる心臓異常を説明しうるメカニズムが存在する以上、「そんなことは科学的に言ってありえない」という「言い訳」は、もはや通用しません。
もしバンダジェフスキーや大山氏が正しいとするならば、東京で心臓の自覚症状が増えていなければおかしいでしょうし、今回のGoogleトレンドのデータは、それを実証しているように見えます。ただ、それを最終的に確定的な事実にするためには、日本でも、セシウム濃度と不整脈との関係を、きちんと研究する必要があると思われます。
東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌
さて、ここまで、2011年3月以降、東京で心臓に関する異変が急増していること、そしてその最大の原因が、セシウムによる土壌汚染であるらしいことを確認してきました。
では、他の健康被害についてはどうでしょうか?これについては、ただ、私はひたすら、グラフを貼付けていきます。以下のグラフは特に断りがなければ、すべて東京で絞り込んだものです。リンクを貼っておきますので、お望みならば、大阪など他の地域と対照させてみたり、逆に地域の絞り込みを外したり、近いキーワードで調べてみることで、検証してみてください。
特に注釈が必要でなければ、解説はいたしません。解説するまでもなく、結果が明白だからです。ただし、チェルノブイリと対照させたり、こういう異常な症例があったとか、そういう話があれば、その都度追加していきます。また、グラフもその都度追加していければと考えております。
その他 循環器系
●「血圧 高い」「血圧 低い」
●「動悸」
このグラフで、2010年12月と2012年1月のギャップ(40→60)は、地域変更による不連続性によるものだと思われます。実際、地域による絞り込みを外すと、このギャップは消失し、2011年3月以降急増する、すでに見慣れたグラフが表われます。
●「動悸」(地域絞り込みなし)
●貧血
全身症状
たまたま、先に循環器系を取り上げましたが、すでに述べたように、被曝症状の典型は、「ぶらぶら病」と呼ばれる、全身の倦怠感です。放射性物質の影響を判断するためには、それの有無を確認する必要があります。
●倦怠感
●だるい
この二つには、明らかに年に一度、6-8月ぐらいにピークがありますが、それは梅雨・暑さによる季節性トレンドであると思われます。しかし、2011年以降は、明らかにピークが大きくなると同時に、もっとも低い冬の時期ですら、上昇トレンドであることがわかります。
●疲れやすい
●微熱
皮膚疾患
●「湿疹」「発疹」
●帯状疱疹
●爪 剥がれる
●ほくろ
「Togetter ほくろが増えたのは原発由来の放射能のせい?」2011年7月9日
最近ほくろが増えた気がするというツイート
↓
放射能のせいじゃないの?
↓
わたしも増えた!あざも放射能のせい?という人続々
↓
徐々に冷静なツイートも増加(←イマココ)
放射能で増えたかどうかは定かではありませんが
TLには確実にほくろが増えているようです。
昨日あたりから。
確かに、ほくろは増えているようです。ちなみに、大阪でのトレンドと対照させて見ると、分岐点が明確に異なるのがわかります。
ほくろ(大阪)
東京・大阪のどちらにも、2013年6月のピークがあります。これはちょっと戸惑っていたのですが、原因がはっきりわかりました。このときに、「ほくろ占い」の爆発的な流行があったようです(笑)。
参考 ほくろ占い
そのため、厳密には、ほくろ占いが除外されるキーワードを見つけなければいけないですが、「黒子」だと「黒子のバスケ」が混じってくるので、苦しいところです。たぶん、ほくろからほくろ占いを引いて処理をすればうまくいくのでしょうが、しかし、ちょうど他の皮膚疾患のピークもまったく同じ時期にあるため、かなり悩ましい。時間の関係で今回はパスさせてください。
●痒い
●水虫
参考のために、水虫を出してみます。少しだけ上昇トレンドにあるようにも見えますが、他のグラフほど明確ではありません。むしろここ二年の猛暑などの気候要因の方が、今のところ主立ったものであるようにも思われますが、来年以降の動向を見ないと、判断は難しいでしょう。
呼吸器系
●咳
●肺 痛い
●喘息
●呼吸 苦しい
●痰
●血 吐く
●鼻血
鼻血に関しては、311の直後に、Twitterなどで被曝症状か否かということで、ずいぶん話題になったことがありました。このようにしてみると、やはり2011年3月以降、明らかに増えています。関連キーワードを見ると、子どもが鼻血を出していて、ちょっと異常なので、何かの病気ではないかとGoogleで親が検索している様子が目に浮かびます。
●喉 痛い
http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E5%96%89%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&geo=JP-13&cmpt=q
泌尿器系
●膀胱炎
チェルノブイリにおいて、前癌状態である膀胱炎の多発が見られたことは、すでに述べました。東電原発事故ではどうでしょうか。
ただし、これは先に述べた、地域の不連続性によって、ターニングポイントがやや不明瞭になっています。地域の絞り込みをなくしてみます。
膀胱炎(地域絞り込みなし)
◎がついているところが、2011年3月ですが、ここが明確にトレンドの分岐点になっていることがわかります。
ついでに、大阪を見てみます。
膀胱炎(大阪)
まったく違う形状のグラフが表われました。明らかに上昇トレンドと言えるのは、2012年の後半になってからで、とりわけ2013年に入ってから明確になっているように見える。これはむしろ、「心臓 痛い」の大阪のグラフに、形状としては近いように思われます。
「心臓 痛い」「胸 痛い」(大阪)
これは、大阪においても、東京においても、単一の要因が、心臓の異変と膀胱炎の両方を引き起こしている、と考える他ないでしょう。これは、放射性セシウムが原因であると思われますが、統計的に有意かどうかは、現時点では省略させてください。
●残尿感
消化器系
●下痢
これは、分岐点は2011年1月ぐらいのように見えますが、これは地域の不連続性が要因かもしれない。ただ、もう一つ可能性があって、2011年1月頃に風邪が非常に流行っていたため、その季節性トレンドの効果で、分岐点が早まっているように見える可能性があります。
参考 風邪
ただし、風邪もまた、2011年から上昇トレンドにあるように見えます。これは、免疫力の低下が原因ではないかと思われます。
● 「吐き気」 「嘔吐」
●血便
このグラフ、見覚えがあるような気がしませんか?私は、これが、膀胱炎のグラフと非常に近いように見えます。同時に検索してみましょう。
参考「膀胱炎」「血便」
●便秘
便秘も、血便や下痢と同じようなグラフを描いています。どのようなメカニズムなのかは分かりませんが、いずれにしても、消化器が弱っていることは確かなようです。
●虫歯
●口内炎
神経系
●「目 ぼやける」「目 かすむ」(地域絞り込みなし)
●覚えられない
●頭痛
http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E9%A0%AD%E7%97%9B&geo=JP-13&cmpt=q
●眠れない
生殖器系
●「不正出血」「生理不順」
●子宮 痛い
●流産
圧倒的なデータの前には、言葉を失うしかありません。関連キーワードは次のような感じです。
この一つ一つのデータを形作っている、その魂の叫びが垣間見えそうな気がします。お腹の子どもを喪った、あるいは喪いかけているお母さんたち、あるいはお父さんたちは、どんな思いで、パソコンに向かって検索したのでしょうか。何が自分の子どもを殺しているのか、その答えは、インターネットを通じて得られたのでしょうか。
本章の最後に
以上のデータ自体は厳正なもので、かつ今後なんらかの改竄・データ変更やアクセス遮断がなければ、みなさんがご自身で確かめられるものです。どの自覚症状のキーワードをとっても、東京では、2011年3月を境にトレンドがまったく変ってしまった。そして、もしこれらの指標が、罹患率ではなくて発病率に近いという推測が正しければ、健康被害は現在もなお、おそらくは爆発的に増え続けていることになる。そして、この手法は、検索ボリュームが多い大都市圏でしか使えないため、今回は東京に絞りましたが、福島で起こっていることは、これよりはるかに悲惨な現実であることは、想像に難くありません。現在、震災関連死に関して、「避難生活ストレス」が原因であるとの見解が横行しておりますが、それもまた、このデータを元に、大幅に見直されなければならない。
ともあれ、関東以北で、生活の質が大きく低下しつつある。そして、西日本も、決して人ごとではない。何らかの形で―おそらくは汚染食品とがれき焼却によって―健康被害が遅れて進行しつつある。
それでもなお、このデータを否認するということもできるかもしれません。私自身、正直、信じたくない気持ちがあるので、理解できます。もちろん、これが「放射脳」のせいではないことはすでに示したとおりですし、このデータを充分に説明できそうな気候変動や社会変化も想像出来ません。これは何か他の要因こんなことが現実に起こるはずがない、と。ただし、Googleのアルゴリズムがそもそも間違っている、という批判?はありえるでしょうが、それは残念ながら私たちにはブラックボックスになっているため、検証は難しいでしょう。
ただし、理論編を読んで、理解していただいた人はご存じのとおり、このデータは、あらかじめ予測されたものでした。これは、チェルノブイリ原発事故において、ウクライナやベラルーシにおいて起こった事とまったく同じ事のように思われます。そして、主たる放射性降下物がセシウムホットパーティクルであることから、理論的にいっても、「起こらないはずがない」出来事でした。
それでもなお、「科学的にいってそのような事がありえない」と言う人はいるでしょう。ただし、その「ICRP」という名の「科学」が、事実の前に無力である事を示しているだけです。以上のデータは、ICRPよりもECRRの方が圧倒的に正しい事を支持しているように思われます。
ただし、Googleトレンドのデータが、本当に間違いがないものであるかを確認するためには、疫学データや人口統計、薬の出荷量など、他のデータと付き合わせていく必要があると思われます。
それと、本稿を書いた私の意図は、二つあります。一つは、もちろん、事実を示したいということです。そうすることで、たとえばいま、体調不良で苦しんでいる方が、対処する一助になれば、本望です。関東や東北から避難した人に、自分の選択が正しかったと思っていただけるなら―また、放射能を怖がっていることで、孤立し、避難など必要な措置がとれない人が、実証的・理論的に、必要な人を説得できるツールとして使ってもらえるなら、何より嬉しい。
もう一つの意図は、Googleトレンドという手法を拡散することです。私は、残念ながら医学的素養が欠如しているため、上のデータを見ても、くみ取れる事は少ない。ただ、専門家がみれば、もっとわかることがあるかもしれない。たとえば様々な角度からデータを収集し、解析する事で、たとえば健康被害のうちの、呼吸経由と食物経由の内部被曝の比率を割り出す事もできるかもしれない。Googleトレンドという、誰でも容易にアクセスができる手法をベースにして、多くの国の、多くの分野の専門家や一般市民が集まって、集合知によって、東京電力原発事故やチェルノブイリの問題を分析を深めていったり、あるいはGoogleトレンドという手法そのものを洗練・進化させていったりできるかもしれない。それが、私の望みです。
幸い、すでに国内外の専門家何人かにお話しして、手法とデータ双方に、非常な関心を持ってもらっております。この記事を今回投稿し、さらに多くの人と繋がっていければと願っております。本稿は、無断引用かつ非商用なら全文転載自由としたのは、そのためです。
もし、皆さんも、こういうキーワードで調べたら興味深いことがあったとか、あるいは他のデータや事例と整合したなど、何かあれば、どんどん公表してもらえたらと存じますし、私にも教えていただければ、非常にありがたく存じます。
結論に代えて
ここまで読んでいただいた方の中で、データが告げるものを目の前にして、非常に暗い気分になった方も多いのではないかと存じます。私自身、胸が塞がれる気持ちで、いっぱいになることが多かった。
でも、私は絶望を告げたくて、本稿を書いたわけではありません。むしろ、この絶望こそが希望なのだ、とさえ考えています。なぜなら、実際に東京で、あるいは日本全国で不可解な健康被害が増加しつつあったとして、それで苦しんでいる人の圧倒的大部分は、何が元凶なのか知らないまま、原因不明の不調を抱えて生きている。
しかし、Googleトレンドは明らかにしました。そうした個々人の不調をマクロな視点から眺めれば、2011年3月に起こった出来事が原因であることをはっきりさせた。ならば、たとえそれが困難な敵であったとしても、対処方法はあります。
被曝への対処方法については、他の人が書いていることでもあるので、ここでは簡単にまとめておきます。大切なのは、これ以上の被曝をしないことです。可能ならば、西日本あるいは海外に移住できるとよい。私が個人的に知っている人も含めて、西日本に移住する事で、劇的に体調が改善した人がたくさんいます。ほんとうに、自分が抱えている症状が被曝症状で、移住で改善する可能性があるかを確認するために、一度、ショートステイするとよいかもしれません。
もし、移住することが困難なら、外出時にマスクを着用するだけでも、大丈夫でしょう。今回のセシウムホットパーティクルは、直径2μmなので、医療用のN95マスクで充分に防げるはずです。
そして、これは西日本でも言えることですが、食品に気をつけること。私の推測では、今危ないのは農作物よりも、太平洋の魚です。土壌汚染は主にセシウムで、しかも土壌に定着しているため、チェルノブイリのときよりも、食物に移行する割合は低い。
しかし、海は違います。超高濃度汚染水が漏れていますが、それらは燃料が溶解した原子炉を通過しているため、セシウム以外のあらゆるα線核種・β線核種が含まれている可能性が高いのではないか、そのように私は予想しています。にも関わらず、相変わらずセシウムしか測定していない。非常に危険なことだ、と思います。
本当は、東京の除染など、国家レベルでできることもたくさんあるはずなのですが、それは現状、望んでも得られそうもないので書きません。ただ、事実に向かい合う事で、はじめて適切な対策を取る事ができる。それは、国家でも、企業でも、個人でもかわりありません。本稿が、将来的に、皆様の健康と幸福の一助になることを祈りつつ、筆を置きます。
東京電力原発事故、その恐るべき健康被害の全貌 by Naoki Okada is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 4.0 国際 License.
非常に論理的に説いてくださって有難うございます。一緒に読み進め、グラフも分かり易く異議深く感じました。
返信削除今後とても役立ちそうです。
感謝します。
多くの人に知って貰いたいです
とても興味深い解析をご紹介いただき、ありがとうございます。身の回りの有志と議論してみたいと思います。今後もよろしくお願いします。
返信削除やさしく説明がなされ一気に読めて一読で大体理解できました。こういう方法で現実に近づくこともできるわけですね。
返信削除自分でも検索をしてみようと思います。ありがとうございます。
肝心の画像が全て見れないのですが。。。
返信削除はじめて訪問し、論文二稿を拝読しました。たいへん示唆あふれる論考です。ビックデーターを市民の側で使うという新しい方法の可能性を提示していただいたことも、新鮮でした。今後の論考を大いに期待しております。まずは、執筆ごくろうさまでた。とお伝えします。
返信削除メディアコーディネーター杉山義信
すばらしい研究論文をありがとうございます。(関西在住)
返信削除大阪については、2013年2月から9月まで岩手県のがれき焼却が実施されていますので、なんらかの影響があると思われます。
また、2013年夏ごろからスーパーで東日本産の野菜が急激に増えました。
非常に面白く読んだ。深謝。
返信削除身近に切迫早産の可能性で入院した人が5人いたので同じ方法で調べたら同じようなグラフになりました。
返信削除貴重なデータをありがとうございました。
返信削除データを集約してみました。
知人などにMLで送りました。
◆東京
福島原発事故以前(2011.2)および現在(2013.10)、
東京の人たちがどのような各種疾病に関してインタ
ーネットで検索したかを集計したものがグーグル
トレンドというホームページで見られます。
岡田直樹さんという人がまとめたものから、
引用させていただきました。
http://ishtarist.blogspot.jp/2013/11/google.html
■震災後、検索数が増えた倍率を示します。
ほぼ、どれも右肩上がりに増えています。
心臓・痛い(3.7倍) 不整脈(1.3倍) 胸・痛い(3.5倍)
血圧・高い(3.7倍) 血圧・低い(3.5倍) 動悸(2.1倍)
貧血(2.0倍) 倦怠感(1.6倍) だるい(2.0倍)
疲れやすい(2.5倍) 微熱(1.7倍) 湿疹(2.0倍)
発疹(2.2倍) 帯状疱疹(1.6倍) ほくろ(2.0倍)
痒い(3.1倍) 咳(2.4倍) 肺・痛い(2.1倍)
喘息(2.2倍) 呼吸・苦しい(2.4倍) 痰(2.8倍)
血・吐く(大幅) 鼻血(1.5倍) 喉・痛い(6.3倍)
膀胱炎(1.7倍) 残尿感(2.7倍) 下痢(1.8倍)
吐き気(2.4倍) 嘔吐(1.5倍) 血便(1.7倍)
便秘(2.2倍) 虫歯(1.7倍) 口内炎(1.5倍)
目・ぼやける(2.0倍) 目・かすむ(3.5倍)
覚えられない(3.0倍) 頭痛(1.8倍) 眠れない(2.4倍)
生殖器不正出血(2.3倍) 生理不順(2.1倍)
子宮・痛い(3.9倍) 流産(2.2倍)
画像が見れない場合があるみたいで、申しわけありません。
返信削除ブラウザを更新したら見れる場合があると思います。
とても痛快です、ありがとうございます。
返信削除本当に多くの人にみてもらいたいです。
ただ放射【脳】アレルギーのような人にも読んでもらうためには、
タイトルの「その恐るべき健康被害」というのはちょっとどうでしょう?
「捻挫」でも2011年から増加しています。「吐き気」では震災以前から増加し始めています。英語で同様の調査をすると、多くの単語で2009年ごろから増加の傾向を示します。
返信削除近年、病気やけがの原因や対処法などをネットで調べる人が増えた、というファクタは大きくないでしょうか?
素晴らしい。
返信削除「突然の死」ってキーワードが目茶目茶増えましたね。
返信削除http://www.google.co.jp/trends/explore#q=%E7%AA%81%E7%84%B6%E3%81%AE%E6%AD%BB
とても興味深いです。
返信削除「喉 痛い」2011.3.11 以降の上昇がなかなかすごいです。
http://www.google.co.jp/trends/explore?hl=ja&q=%E5%96%89%E3%80%80%E7%97%9B%E3%81%84&cmpt=q&content=1 #googletrendsexplore
単純に「亡くなった」で検索しても驚きました。
返信削除でも一点分からないのは、2010くらいから
結構多くのワードが増加傾向にあることなんです。
何か見落としがあるのかもしれません(自分がです)。
分かる人いましたら、教えてください。
どのようなキーワードを用いても同様な傾向が伺えることから、ネット利用率の向上という点のみ、真実です。現時点での比較検討も真実でしょう。しかし母数が劇的に変化しているので、経時変化を見ることはできません。統計学の落とし穴である、母数を見ない検討は危険です。あなたに見落としはありません。
削除はじめまして。
返信削除私はECRRの云う放射能の危険性論が正しいと思います。それも「低線量による癌疾患以外の健康被害」が深刻だと思います。
これに関する調査データを蓄積し、改善の方法を探る事で今後の日本に備える活動をしているNPOがあります。
その方法は、チェリノブイリ後27年のウクライナにおいて現地コディネーターとともに被曝住民への聞き取り調査をしています。
食品と暮らしの安全
http://tabemono.info/
~放射能被害の新事実 誰も知らない27年後のチェルノブイリ ~
http://tabemono.info/report/chernobyl.html
興味深い分析視点でした.
返信削除ただ, データの性質自体があまり明確でないのが残念ですね.
検索回数みたいな定義がはっきりした指標なら更に議論が出来そうですが.
>匿名 2013年12月23日 1:12
データの性質が不明なのではっきりとはわかりませんが,
総検索回数の上昇が影響してるのではないでしょうか?
スマートフォンの普及が影響してそうかなと予想してます.
興味深いですね。
返信削除相関関係があるかもしれないという内容なので、その他の可能性を否定していけばいいのでしょうか。
たとえば火力発電による大気汚染やPM2.5の影響は否定できそうですかね。
>匿名 2013年12月23日 1:12
返信削除>単純に「亡くなった」で検索しても驚きました。
>でも一点分からないのは、2010くらいから
>結構多くのワードが増加傾向にあることなんです。
>何か見落としがあるのかもしれません(自分がです)。
>分かる人いましたら、教えてください。
確かに、様々なジャンルの色々なワードを調べると
2011年前後から増加傾向にある物が多いようですね。
その理由はともかく、確実に言えるのは
この記事の「2011年以降に増大=原発事故の影響」という主張自体には
妥当性が無いってことです。
おそらくスマートフォンの普及によるものでしょう。
削除http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120120313500
これを見ると2011年頃から爆発的にスマートフォンが普及し始めていますしおそらく間違いないです。
グーグルトレンドは絶対的な検索数を集計しているので、全体の検索数との割合がわからないと、このデータは無意味ってことになりますね。
ページ作成の方、貴重な情報分析公開方法をありがとうございます。
返信削除これから見る方がもっと使いやすいアイデアとして
下記のリンクを、別tabか、別ウィンドウで開くtagにして頂けると
もっと色んな人がスムーズにこのページを進められると思います。
>まず、Googleトレンドのページを訪問してみましょう。下のリンクをクリックしてみてください。
>
>http://www.google.co.jp/trends/explore#cmpt=q
着想も論考もすばらしいの一言。現時点での決定版ではないでしょうか。
返信削除着眼点がすばらしい。私もつい最近「膀胱炎」でググりました。20年近く良好だった症状が、ここ数ヶ月膀胱炎を繰り返しています。(関東在住)食品には気をつけていますが、学校給食などは結局国の基準に従っているので、スーパーで売られている物は使います、という方針です。じゃあ弁当持たせるかといえば、そこまでやっていなくて自己嫌悪にも陥りながら、なんとなく現状に甘んじて暮らしています。この甘さが子どもの健康に害を及ぼしてしまうかもしれません。
返信削除今までの状況が、客観的にわかり整理できてとても良いシリーズでした。特にここでは大山敏郎(仮名)のブログの紹介があり、私以外で宣伝している方に始めて会い、うれしい限りです。大山氏はそのうち実名を明らかにするとは言われているのですが、まだのようです。2012年12月の取手の小中学生の心臓健診での異常に、QT延長症候群があがっていたので、カリウムチャネルによる心不全は、確かだと思います。私は折あれば、心電図をとるように言っています。
返信削除セシウムパーティクルの性質はPM2.5で考えるといいみたいです
返信削除http://d.hatena.ne.jp/sivad/20140528/p1
理論編と合わせて、とても明快で説得力のあるすばらしい議論ですね。
返信削除同時期にスマホの普及による総検索数の増加があったからだ、というシンプルな反論には西日本とと東日本でDifference in Defference分析をされればよいかと思います。
これとは別に、震災以降、僕のような「放射脳」な人々が自分自身の症状の有無とは関係なく、原発事故による健康被害の存在を調べるために検索するようになった、というバイアスもなんらかの方法でとりのぞく必要があるかと思います。
すでに他の方も言われていますが、原発事故とも震災とも関係無い「肉じゃが」「メイク」「デート」などのキーワードでも2011年春以降ダブルスコア以上の急増です。問題意識はともかくとして、妥当性がある考察とは言えませんね。
返信削除福島出身者ですが、原発があったおかげで4,5兆円もの大金が福島に投入されました。事故の後にも日本中では大雨の被害や、熱中症、火山による被災など、災害天変地異が収まりません。ほんとに発症するかどうかわからない事象より、目の前の河川の氾濫何とかせねばいけません。福島県民を非難させる前に九州人を沖縄や中国に非難させる必要が起きています。オリンピックは仙台でもよかったね、東京では空間に余裕がないもんね、、ではまた。
返信削除パーティクルより怖いのは、細菌や、ウィルスや化学物質。生物代謝や化学反応とくらべりゃ、放射能は屁みたいなもんでさ、、
返信削除2014年の10月から手のしびれ、紫斑、夕方三時には仕事中体力が落ちて何もできなくなるような状況があり、顕著に体がおかしいと感じはじめて色々な情報を調べました。意味があるかわからず、マスクも毎日し始め、濡れガーゼもしました。ここで効果があるというのがわかり、感謝いたきます。ただ、爆発当時からずっと続けていれば良かったと今は少し後悔しています。
返信削除ツイッターもされているので既にご存知かもしれませんが、Google Trendの結果が今年5月頃から大幅に変わっているようです(下記リンクをご参照ください)。
返信削除https://twitter.com/mosi2kimu2/status/732132952956493824
この点に関して、何故このように変動したか(Trend計測方法が変わったとして、それが何故どのような理由で変わったのか)もし分析されていたら、教えていただけないでしょうか。
最近、原発汚染以降日本全体の劣化が目につく気がしておりますが、より大きな問題の前兆ではないか懸念しています
絶望しました。そして、同時に感動しました。貴方のような人がまだ日本に居てくれて本当に良かった。7年僕を苦しめてきた物がひとまず去ったのを感じました。全てを捨てて逃げた事の意味があったのだと感じたためです。これで7年前まだ少年だった僕に色々諭すことができそうです。そして何より、まだ郷里に残した多くの物の為に頑張れそうです。ありがとう。
返信削除素晴らしい記事を書かれておられたのですね。勉強になりました。また、当理論をご紹介いただきまして、ありがとうございます。2019年末をもってYahooブログが終了しましたので、他所に記事を移行しました。移行に伴い、以前未公開だった記事を幾つか公開いたしました。また、ishtaristさんには当理論をご評価、ご理解いただき、感激いたしておりますが、まだまだ当理論を誤解されておられる方が大変多い印象です。理論の根幹は、震災直後より一貫して不変なのですが、誤解しやすい随所に注釈などを追加したりしています。今後もよろしくお願い申し上げます。https://geruman-bingo.hatenablog.com/entry/8557672
返信削除申し遅れましたが、今後は、あと数カ所細かい部分を、きちんと修正・補完ができましたら、1−2年中には、きちんとした科学論文の形式で、どこかに発表したいと考えています。長い目では、科学の議論の遡上に乗せて行かなければ、とは思っております。またよろしくお願い申し上げます。
返信削除俎上、でしたね。
返信削除その後、コメント欄を拝見していました。肉じゃが、デート、メイクの指摘はなるほど、ですね。経時的データというのは、医学生物学でも、取り扱いが難しいことが多いので、多くの方が知りたいと思うポイントかと思います。このあたりの批判を踏まえ、分析をどう進化させていけばよいのでしょうね。自然増の検索トレンドと、なにか区別するよい方法があるのか、この方法の限界なのか。場所情報や、関連検索などから、何か洞察しうるのか。限界があることを踏まえつつも、興味深い分析ですね。
返信削除